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 それは幻想郷で起きた小さな異変にして人理の危機。
 しかしここに巫女も守護者も居やしない。

「今日も地底は核融合日和ね」

 莫大な熱エネルギーを地底に齎すは地獄の鳥。黒い羽根と赤い目を持つ太陽の神性を宿した少女。名は『霊烏路 空』という。
 かつて神より貰った太陽の力、核エネルギーをもって地底を照らし、地上に新たなる灼熱地獄を生み出す……はずだった。
 しかし、地上の巫女(いっぱいいるが見分けがつかないため巫女とだけ表現する)に敗北し、あと何をするつもりだったか素で忘れてしまったため、とりあえずいつもの通り幽霊を毎日焼く仕事をしながら遊んでいた。

「暇ね。私の中の核反応が暴れたいと囁いているわ」

 有り余る力を手に入れた少女。そんな少女が勤める旧灼熱地獄に異物が紛れ込む。
 もしかしたら異物ではなく怪文書というのかもしれないが。

「異物発見!」

 飛翔していた少女は最深部にてとある物が落ちているのを発見して急降下、着地した。

「これは……流石の私でもわかる!
 これは、なんということだ!
 これは、そう、本だ!」

 本ではなくホチキス止めされたとある学会の実験結果をまとめたレポートだった。
 英語で書かれており、もしも彼女に英語の技能があればトリニティ実験やロス・アラモスという言葉で何の実験なのかわかっただろう。

「なんだこの汚い字! 全く読めないぞ!!」

 もう一度言おう。英語である。
 あと綺麗な字で書かれた日本語でも彼女が読めるかどうかは怪しいことも付け加えておく。

「何でこんなものがここにあるんだろう」

 ここは最近活性化した間欠泉センター最下層。灼熱地獄である。人が来ることなど滅多に無いし、紙媒体のモノなど紛れ込む可能性は輪をかけてありえない。
 ならばコレは何か。奇怪極まるこの状況はどういうことか。体がぶるりと震えて寒くなった気がした。

「とにかくさとり様に聞いてみよう」

 そう思って浮いた時だった。
 気流の影響か、紙がめくれて一番最後のページが露わになる。

「あれ?」

 裏側に何か読める文字を発見した。
 難しい字と平仮名が混ざっており、まるで馬鹿でも読めるようにしているというように難しい字にはふりがながされている。

「にゃるしゅたん、にゃるしゃがんな、にゃるしゅたん、にゃるしゃがんな、いあ。
 くりかえすつどにごど、みたすときをはきゃくする?」

 声に出して読んでみたが何を意味するかさっぱりわからない。
 しかし、変化はあった。
 間欠泉センターに乱気流が発生する。
 暴力のごとき魔力が、地獄中の怨霊を集めて煮たがごとき悪意が氾濫する。

「────」

 空は眉をしかめ、油断なき瞳をソレを見る。
 空は無知ではあるが無能ではない。
 ここに現れたのが自分に、ひいては主に害なす敵であると本能のうちに理解した。


 乱気流が収まった時、そこには人間……いや、男がいた。
 もしも空に服装についての知識があれば、その男が一分の隙も無い完璧な紳士服を着こなしていることに気が付いただろうか。いや、知識があったとしても今の彼女には余裕が一切無いからどのみち変わらないだろう。

「お前は、何だ?」

 目の前のコレは人間ではないと感じていた。サーヴァントであるとかそういう事ではなく、もっと根源的なもの。
 言うなれば夥しい怨霊を固めて作った人形や人に擬態した害虫の群れを想像させる悪神(サバエ)そのもの。

「問おう」

 男は言った。

「私を使役するマスターよ。君は何者かね?」
「私は霊烏路空(れいうじうつほ)だ! お前は誰だ」
「私の名前はアンブローズ・デクスターという。クラスはキャスターだ。これにて契約は完了した」
「五月蝿い。知るか。お前なんか追い出す前に排除してやる」
「何だねその頭痛が痛いみたいな戯れ言は?」

 霊烏路空の右手、制御棒に熱が点る。核融合を操る程度の能力が生み出す核エネルギー。制御棒から漏れた僅かなものでも空間を一気に高熱へと変える。

「ふむ、今回の聖杯は────何、異界だと。
 これでは人類とはあまり関係が無いではないか。
 なんということだ。この聖杯戦争に呼ばれた時点で我が望みは潰えてしまった」

 目の前の男は空に一顧だにせず、虚空を見上げていた。月なら魔菩薩だぶらかしたのにだの、冬木なら出産させただのわけの分からないことをブツブツ呟いている。
 これは異常だろう。霊烏路空の核エネルギーという神域の力を無視する者は人、妖怪、神にすらもいない。
 ならばコレは、本当に、何なのか。

「まぁ仕方ない。今回は嫌がらせに徹しよう」

 貌がにゅるりと空の方に向かい────パキリと二人の間の空間が割れて『孔』が出来た。
 割れた孔の先は暗黒そのもの。そして全てを飲み込むように、空気が、景色が孔へと吸い込まれる。空と男も例外ではない。

「うにゅあ!?」

 核熱を解き放つ寸前であったがタイミングを崩され不発に終わる。
 暗黒に飲まれていく中、男の頭と両手が燐光を放ち、口を歪ませる。

「では頑張りたまえ。私も特等席で拝見するとしよう────『燃える三眼』」

 男の輪郭が融ける。
 空の輪郭も熔ける。

「止めろおおおおお」

 吐き気を催す恐怖と悍ましさを感じて絶叫をするも現実は非常である。
 融けて、熔けて、解けて、混ざり合い、そして────融合(フュージョン)を果たす。
 デミ・サーヴァント『霊烏路 空』の誕生であった。



       *       *       *



「こんにちわセンセー」

 東京都某所の学校で少女が快活に挨拶を交わす。
 少女は空だった。しかし漆黒の羽も胸元の赤い眼も制御棒も、溶岩の足も存在しない。
 現代風の服を着た彼女は周りに誰もいなくなったことを確認すると呟く。

「遂に始まるぞ、聖杯戦争が」

 見た目にそぐわぬ落ち着いた声が響いた。



【サーヴァント】
【クラス】
キャスター

【真名】
さまようもの、もしくはアンブローズ・デクスター、もしくは[削除済み]

【出典】
クトゥルフ神話(尖塔の影)

【属性】
混沌・邪悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:C++ 敏捷:C+(E) 魔力:C(E) 幸運:A(-) 宝具:C(EX)

【クラススキル】
陣地作成:E
 魔術師として自分に有利な陣地を作り上げる。
 彼の場合、作り出されるのは工房ではなく実験場である。
 なお、空の能力はこの実験場内でのみ使用が可能。

道具作成:-
 スキル『エンチャント』によりこのスキルは失われている。


【保有スキル】
星の開拓者:C
 人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
 あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。
 アンブローズ・デクスターは核技術を生み出し、戦争の在り方を変えた者である。
 その後の人類史において今まで人の営みから切り離せなかった『戦争』のやり方に大きな変化を与えた。

病弱:D
 アンブローズ・デクスターが肌の黒さを「放射能汚染により非常に体が弱い」と言っていたために付いたスキル。
 空の場合は若干体力が下がる程度のスキル。
 また闇の中だと汚染が進み、[閲覧禁止]により肌が燐光を放つ。

エンチャント:D
 概念付与。他者もしくは他者の持つ物品に強力な機能を付与する。
 基本的にマスターを戦わせるためのスキル。
 アンブローズ・デクスターの場合は付与対象が生物の場合は狂気を、
 無生物の場合は若干の炎属性と放射能を付与するのみに限られる。
 このスキルにより少なからず霊烏路空の能力にも影響が出ている。

神性:A+
 物理的な神との習合の度合いを示す。
 邪神の化身であるアンブローズ・デクスター、それと融合した霊烏路空も太陽神の力を宿していたため、ほぼ神と言っても差し支えない。


【宝具】
『予言の時来れり、人理を彩れ狂気の極光(トリニティ・カタストロフ)』
 ランク:E 種別:対城宝具 レンジ:330メートル 最大捕捉:レンジ内のもの全て

 『陣地作成』によって作り出された実験場内でのみ有効かつ実験場内にしか影響のない宝具。
 かつてアメリカで行われた世界最初の核実験「トリニティ」を再現する。
 時代が近代であるため神秘は無に等しいが、魔力を帯びた核熱、放射能は実体化したサーヴァント、マスターを殺して余りある。

 三という数字は古代より完璧や神を意味する。三位一体、三貴神、三賢者、トート・トリスメギストス……etc。
 それらはジャンケンのように相性が異なる三つの調和をすることによる完全性を得る事を意味していた。
 トリニティの名を冠するこの宝具も然り三つの調和が働いている。
 すなわち戦争を終わらせようとする人の意思、星の地肉より生み出せし原子(プルトニウム)、そして人を唆し大地を犯す邪神の思惑である。


『燃える三眼』(ナイアー・トリスメギストス)
 ランク:C(融合前はEX) 種別:対人宝具(融合前は対人理宝具) レンジ:- 最大捕捉:自分
 [削除]が本体、あるいは何らかの化身、もしくは知的生命体や神性に憑依して現界する宝具。
 見た目は変身や憑依に見えるが、変身と違い、別の体を用意してそれに乗り移る形になるため用意した体で死んでも元の体に再構築されるだけである。
 この宝具でマスターと憑依、融合(フュージョン)した。空の場合は自分の化身として人間の体になることで一般人に紛れることができる。

【サーヴァント背景】
 とある邪神の化身。人の世に核兵器の技術をもたらし、世を混沌ヘ、人類を終焉へと導く科学者。
 人類史の破滅、即ち人理の崩壊を目論むアンブローズ・デクスターはあくまでこの存在の尖兵であり、化身にすぎない。

 マスターが聖杯戦争で拉致られる前に召喚され、マスターと強制的に融合した状態で参戦した。
 舞台が現実世界から切り離されているため空をはじめとした他者が破滅するのを特等席でみる所存。

【マスター】
霊烏路 空

【出典】
東方地霊殿

【マスターとしての願い】
色々と戻したい

【能力・技能】
核融合を操る程度の能力がスキル『エンチャント』により核分裂を操る程度のエネルギーに変化している。
原子力エネルギーによる弾幕は変わらないが、魔力による一時的な擬似放射能汚染がつく。

【人物背景】
東方地霊殿より。
本来ならば核融合、太陽と同じクリーンな核エネルギーを行うはずが、
アンブローズ・デクスターにより核分裂によって生じる原子力エネルギーにされてしまった。
融合したことで聖杯戦争に関するものをはじめとした知識だけは増えているが、応用する頭は空っぽである。

【方針】
とりあえず見つけ次第敵をやっつけてとっとと帰る。



候補作投下順


『東方Project』の候補作品



最終更新:2016年03月03日 11:41