結局、カツオが心を決めるまでには、かなりの時間を要した。
悪い点のテストも早めに見せれば小言で済む――
そうと分かっていても、いつもそれができずにカミナリを喰らってしまう。
そしてそれを何度も何度も繰り返す。
それが磯野カツオという人格なのだ。この局面においても、彼の性格が簡単に変わるわけがない。
そうと分かっていても、いつもそれができずにカミナリを喰らってしまう。
そしてそれを何度も何度も繰り返す。
それが磯野カツオという人格なのだ。この局面においても、彼の性格が簡単に変わるわけがない。
(でも……行くしかないよね。他に利用できそうな人もいないみたいだし)
タワーのように目立つ場所ならば、他の人物が来るかもしれない、という淡い期待があった。
もしも新たな登場人物が出現すれば、適当な話をデッチ上げ、衝突を演出することもできただろう。
けれども、いくら待っても誰も現れない。あんまり時間を置けば、明神弥彦が戻ってくる恐れもある。
もしも新たな登場人物が出現すれば、適当な話をデッチ上げ、衝突を演出することもできただろう。
けれども、いくら待っても誰も現れない。あんまり時間を置けば、明神弥彦が戻ってくる恐れもある。
(明神があの2人に何を言ったかは分からないけど、明神が言ったことこそ嘘だ、って信じさせなきゃ……)
カツオは恐る恐る、タワーとの距離を詰める。
まず第一声は、「逃げ出してしまってごめんなさい」、だろうか。
あの鋭そうな灰髪の男の子ではなく、もう1人の方を上手く取り込むようにしないと……。
まず第一声は、「逃げ出してしまってごめんなさい」、だろうか。
あの鋭そうな灰髪の男の子ではなく、もう1人の方を上手く取り込むようにしないと……。
……カツオは、知らなかった。
彼よりもずっと冴える人物がもう1人、タワーの中にいたことを。
その人物が既にカツオの嘘を見抜き、完膚なきまでに叩きのめしてしまっていたことを……!
彼よりもずっと冴える人物がもう1人、タワーの中にいたことを。
その人物が既にカツオの嘘を見抜き、完膚なきまでに叩きのめしてしまっていたことを……!
* * *
「あの……誰かいま」
タワー1階のホール。恐る恐る扉の隙間から覗き込んだカツオの言葉は、途中で断ち切られる。
暗がりの中から飛んできた、小さな風斬り音。咄嗟に首を引っ込めようとするが、あまりに遅い。
飛んできた物体はカツオの頭を掠める。急に頭が軽くなる。
慌てて頭に手をやるが、触れるのは「自分の」髪の毛のみ。思わず間抜けな声が漏れる。
暗がりの中から飛んできた、小さな風斬り音。咄嗟に首を引っ込めようとするが、あまりに遅い。
飛んできた物体はカツオの頭を掠める。急に頭が軽くなる。
慌てて頭に手をやるが、触れるのは「自分の」髪の毛のみ。思わず間抜けな声が漏れる。
「えっ、ああッ!?」
「……なるほどね。最初会った時、何か違和感あったんだが……そういうことだったか。
言われてみりゃ、髪の色と眉毛の色が違い過ぎたな。
『アイツ』の言った通り、ってのが気に喰わねーが」
「……なるほどね。最初会った時、何か違和感あったんだが……そういうことだったか。
言われてみりゃ、髪の色と眉毛の色が違い過ぎたな。
『アイツ』の言った通り、ってのが気に喰わねーが」
ヒュンヒュンと音を立てて投擲者の手元に戻っていったのは、1つのブーメラン。
ブーメランが掠め取っていったのは、茶色の毛が植えられたカツラ。
その2つを手にしていたのは、さっきの2人組の片割れ。もう1人の姿は見えない。
暗いホールの中、あの鋭い目をした灰髪の少年がカツオを睨みつける。
ブーメランが掠め取っていったのは、茶色の毛が植えられたカツラ。
その2つを手にしていたのは、さっきの2人組の片割れ。もう1人の姿は見えない。
暗いホールの中、あの鋭い目をした灰髪の少年がカツオを睨みつける。
「野比のび太、だな? 『本当の』一部始終、全部聞かせてもらったぜ」
* * *
……Nは言っていた。
『商店街の方向? なら、間違いありませんね。
茶髪で眼鏡をかけた少年です。チラチラとタワーの方を窺っていましたよ』
茶髪で眼鏡をかけた少年です。チラチラとタワーの方を窺っていましたよ』
ちょうど、太一の持っている首輪探知機の表示と同じあたりに、タワーを窺う不審人物がいたこと。
その動きから見て、展望台にいるNではなく、キルアたちのことを気にしている様子だったこと。
Nの語るその容姿は、間違いない。少年の惨殺死体と遭遇する前、キルアたちと接触してきた茶髪眼鏡だ。
その動きから見て、展望台にいるNではなく、キルアたちのことを気にしている様子だったこと。
Nの語るその容姿は、間違いない。少年の惨殺死体と遭遇する前、キルアたちと接触してきた茶髪眼鏡だ。
『ほう、既にその人と会っていたのですか。
……なるほど、そんな話を吹き込まれていたなら、あのような言動に出るのも分かりますね。
証拠が無い以上、私の話と彼の話、どちらを信じるもあなた方次第ですが……
少し考えれば、分かりますよね?』
……なるほど、そんな話を吹き込まれていたなら、あのような言動に出るのも分かりますね。
証拠が無い以上、私の話と彼の話、どちらを信じるもあなた方次第ですが……
少し考えれば、分かりますよね?』
自分の方が正しい。臆面もなくそう主張するNの言葉は、キルアをいちいち苛立たせる。
だが、理屈で考えればNを信じるしかない。
だが、理屈で考えればNを信じるしかない。
『展望台の上からでは、顔の細かい造作などは分かりません。ですが……
眼鏡に半袖半ズボン、というのは、弥彦から聞いた野比のび太の特徴と一致しますね。
子豚の解体直後とは服の色が違うようですが……返り血でも浴びて着替えましたかね?
髪の方は、カツラで誤魔化しているのかもしれません。染めるだけの時間は無かったはずですから。
どちらにしても、何故そんなことをせねばならなかったのか、とても気になるわけですが』
眼鏡に半袖半ズボン、というのは、弥彦から聞いた野比のび太の特徴と一致しますね。
子豚の解体直後とは服の色が違うようですが……返り血でも浴びて着替えましたかね?
髪の方は、カツラで誤魔化しているのかもしれません。染めるだけの時間は無かったはずですから。
どちらにしても、何故そんなことをせねばならなかったのか、とても気になるわけですが』
堂々と偽名を名乗るNに言われたくはない、とも思うが、その情報と分析は確かだ。
やや決め付けるような口調が気になったが、具体的に反論すべき穴も見当たらない。
眼鏡が手放せないなら、姿を偽るにも服やカツラを変えるのが精一杯なのだろうし……。
やや決め付けるような口調が気になったが、具体的に反論すべき穴も見当たらない。
眼鏡が手放せないなら、姿を偽るにも服やカツラを変えるのが精一杯なのだろうし……。
『首輪の反応が、2つある? それも近接して? ……なるほど、それは興味深いですね。
しかし上から見た限りでは、1人しか居ませんでしたよ。
なら、おそらく誰かの死体から奪った首輪を持ち歩いているのでしょう。
そうなると、弥彦の帰りが遅くなるかもしれませんね……いや失礼。こちらの話です』
しかし上から見た限りでは、1人しか居ませんでしたよ。
なら、おそらく誰かの死体から奪った首輪を持ち歩いているのでしょう。
そうなると、弥彦の帰りが遅くなるかもしれませんね……いや失礼。こちらの話です』
首輪探知機が示すのは、あくまで首輪の存在だけだ。なら、そういうことも起きるかもしれない……
だが、何故? 何故そいつは首輪なんかを持ち歩いている?
だが、何故? 何故そいつは首輪なんかを持ち歩いている?
『そんなモノを持ち歩く理由は、いくつか考えられますが……話すことはできません。
ええ。『分からない』のではなく、『伝えられない』でもなく、『言えない』、です。
キルアさんなら、意味を分かってくれますよね?』
ええ。『分からない』のではなく、『伝えられない』でもなく、『言えない』、です。
キルアさんなら、意味を分かってくれますよね?』
奥歯にモノが挟まったような、何かを気にしたような物言い。
だがNのヒントのお陰で、キルアもようやく理解する。
確かジェダは、3人斬り達成の際、『首輪に向かって』「ご褒美を下さい」と言うように、と指示した。
ということは……この首輪にはマイクや通信機の機能もあると見るのが自然。
いわば、参加者全員が盗聴器を仕込まれているようなもの。
これでは、ジェダに反抗するための重要な相談を、言葉でするわけにはいかないことになる。
そして、ジェダに反抗するための第一のハードルは、この首輪の解除――
だがNのヒントのお陰で、キルアもようやく理解する。
確かジェダは、3人斬り達成の際、『首輪に向かって』「ご褒美を下さい」と言うように、と指示した。
ということは……この首輪にはマイクや通信機の機能もあると見るのが自然。
いわば、参加者全員が盗聴器を仕込まれているようなもの。
これでは、ジェダに反抗するための重要な相談を、言葉でするわけにはいかないことになる。
そして、ジェダに反抗するための第一のハードルは、この首輪の解除――
『と、なると、その少年の目的もいくつか絞れます。
彼が我々と同じ目的を持っているなら、話は楽ですが……。
もしもその正体が変装した野比のび太だったとしたら、信用はできません。
あっさり弥彦を見捨てて逃げだし、あまつさえ正体を偽り嘘をつくような人間ですからね。
ゲームに乗っていて、でも支給品に恵まれないのでまずは交渉に活路を見出そうとしている、
といった所でしょうか』
彼が我々と同じ目的を持っているなら、話は楽ですが……。
もしもその正体が変装した野比のび太だったとしたら、信用はできません。
あっさり弥彦を見捨てて逃げだし、あまつさえ正体を偽り嘘をつくような人間ですからね。
ゲームに乗っていて、でも支給品に恵まれないのでまずは交渉に活路を見出そうとしている、
といった所でしょうか』
そう、そしてそれは「ゲームに乗った者」でも簡単に想像できるはずのこと。
となれば、首輪は脱出を目指す者以外にとっても、取引などの材料として重要な役目を果たすことになる。
首輪を持ち歩いているからといって、簡単に味方として扱うことなどできない。
となれば、首輪は脱出を目指す者以外にとっても、取引などの材料として重要な役目を果たすことになる。
首輪を持ち歩いているからといって、簡単に味方として扱うことなどできない。
『くれぐれも、警戒して下さい――そして、できるなら、彼の持ち物を確保して下さい。
私には『それ』を有効活用する自信があります。……『何』について言っているか、分かりますね?』
私には『それ』を有効活用する自信があります。……『何』について言っているか、分かりますね?』
実物さえ手元にあれば、Nには首輪の解析や解除ができる。そう言いたいのだろう。
おそらく、弥彦に頼んだ「外でのおつかい」というのも、その首輪の解析に関することか。
キルアの隣では、太一が首を捻っている。どうやらNの回りくどい言葉の意味が分からないらしい。
キルアはあえて詳しい説明をせず――説明なんかしたらNの深慮が全部無駄になる――、腰を上げる。
おそらく、弥彦に頼んだ「外でのおつかい」というのも、その首輪の解析に関することか。
キルアの隣では、太一が首を捻っている。どうやらNの回りくどい言葉の意味が分からないらしい。
キルアはあえて詳しい説明をせず――説明なんかしたらNの深慮が全部無駄になる――、腰を上げる。
「太一、ここはちょっと頼む。Nとの電話を続けて、奴が変な動きしないか見張っててくれ」
「いいけど……キルアはどこ行くんだよ?」
「その茶髪眼鏡に接触する。そしてNの話の裏を取るんだ。Nを信用するのは、それからでもいい」
「え、でも……あっ!?」
「いいけど……キルアはどこ行くんだよ?」
「その茶髪眼鏡に接触する。そしてNの話の裏を取るんだ。Nを信用するのは、それからでもいい」
「え、でも……あっ!?」
Nの言ってること、信用してたんじゃないの? と言いかけた太一が、驚いたような声を上げる。
彼は慌てて手にした首輪探知機をキルアに示す。
彼は慌てて手にした首輪探知機をキルアに示す。
「向こうから動き出した! こっちに近づいてるぜ!」
「手間が省けるな。よし……」
「手間が省けるな。よし……」
そしてキルアは受話器を太一に押し付けるようにして管理室の扉を開け、そして……!
* * *
「野比のび太、だな? 『本当の』一部始終、全部聞かせてもらったぜ。
大人しく本当のことを話すならよし、さもなくば……あっ、ちょっと待て!」
大人しく本当のことを話すならよし、さもなくば……あっ、ちょっと待て!」
灰髪の男の子が何か言っている。
けれどカツオはそれを最後まで聞くことなく、すぐさま開けかけていた扉を閉め、脱兎の如く逃げ出した。
カンッ! カンッ! と背後で音がする。
灰髪の少年が投げたナイフが、紙一重の所で閉ざされた扉に阻まれたのだ。
けれどカツオはそれを最後まで聞くことなく、すぐさま開けかけていた扉を閉め、脱兎の如く逃げ出した。
カンッ! カンッ! と背後で音がする。
灰髪の少年が投げたナイフが、紙一重の所で閉ざされた扉に阻まれたのだ。
(な、なんでバレちゃってるんだ!? いったい何を聞いたっていうんだ?
それに、こんな問答無用で殺そうとするなんて……!)
それに、こんな問答無用で殺そうとするなんて……!)
キルアはちゃんとカツオの手足を狙って投げていたのだが、素人の彼に分かるはずもない。
全速力でタワーから飛び出しながら、それでも必死に考える。
全速力でタワーから飛び出しながら、それでも必死に考える。
(あいつは僕のことを、「のび太」と呼んだ……!
きっと弥彦に聞いたんだろうけど、この誤解は使えるかもしれない……!)
きっと弥彦に聞いたんだろうけど、この誤解は使えるかもしれない……!)
思わぬところで変装が役に立った、ということか。
逃げながら、カツオは手持ちのカードを考える。
「のび太」との誤認。交渉に使えそうな首輪。使い道のない天体望遠鏡。そして禁止エリア指定装置。
さて、何をどう使えばこの失敗を取り戻せるだろう?
かなり不利な状況の中、カツオはまだまだ諦めてはいなかった。
逃げながら、カツオは手持ちのカードを考える。
「のび太」との誤認。交渉に使えそうな首輪。使い道のない天体望遠鏡。そして禁止エリア指定装置。
さて、何をどう使えばこの失敗を取り戻せるだろう?
かなり不利な状況の中、カツオはまだまだ諦めてはいなかった。
* * *
「くっ、待てッ!」
逃げ出した「のび太」を追い、キルアはタワーから飛び出す。
こっちはNに散々やり込められて、苛立っているのだ。せめてあいつくらいは殴り飛ばさないと気がすまない。
相手は一般人にしては逃げ足が速いが、あくまでそれは一般人のレベル。
暗殺者としてのエリート教育を受け、念能力も身につけたキルアの敵ではない――すぐに捕まえてやる!
こっちはNに散々やり込められて、苛立っているのだ。せめてあいつくらいは殴り飛ばさないと気がすまない。
相手は一般人にしては逃げ足が速いが、あくまでそれは一般人のレベル。
暗殺者としてのエリート教育を受け、念能力も身につけたキルアの敵ではない――すぐに捕まえてやる!
だが、そんなキルアの足が、ふと止まる。タワーの入り口で、はッと振り返る。
……このまま追いかけてしまって、いいものだろうか?
タワーの展望室には、まだNがいる。管理室には太一もいる。
彼らをここに残して、キルアだけ出て行ってしまって、本当にいいのか?
もちろんキルアは、すぐに「のび太」を捕まえ引き摺ってタワーに戻ってくるつもりではある。
けれど、留守にしている間に、他の参加者がタワーに来る可能性は?
留守にしている間に、Nが太一に何らかの策略を仕掛けてきやしないだろうか?
……このまま追いかけてしまって、いいものだろうか?
タワーの展望室には、まだNがいる。管理室には太一もいる。
彼らをここに残して、キルアだけ出て行ってしまって、本当にいいのか?
もちろんキルアは、すぐに「のび太」を捕まえ引き摺ってタワーに戻ってくるつもりではある。
けれど、留守にしている間に、他の参加者がタワーに来る可能性は?
留守にしている間に、Nが太一に何らかの策略を仕掛けてきやしないだろうか?
キルアは、Nが提示した情報については、ほぼ信じている。
弥彦がゲームに乗っていないことも受け入れた。「のび太」が嘘つきの悪人だという仮説も受け入れた。
けれど、Nの人格については、未だに信じきっていない。
あまりにも一方的にやり込められてしまったがために、心から信じることができないのだ。
キルアたちの想像も超えるような、さらに一回り大きな策略を企んでいるのではないか――
そんな不安が、拭いきれないのだ。
弥彦がゲームに乗っていないことも受け入れた。「のび太」が嘘つきの悪人だという仮説も受け入れた。
けれど、Nの人格については、未だに信じきっていない。
あまりにも一方的にやり込められてしまったがために、心から信じることができないのだ。
キルアたちの想像も超えるような、さらに一回り大きな策略を企んでいるのではないか――
そんな不安が、拭いきれないのだ。
キルアは迷う。ほんの僅かな時間ながら、激しく迷う。
その間にも「のび太」の姿はどんどん遠ざかる。迷っている時間がそう無いのは分かっている。
キルアはそして、決断を下し――!
その間にも「のび太」の姿はどんどん遠ざかる。迷っている時間がそう無いのは分かっている。
キルアはそして、決断を下し――!
* * *
「き、キルア!? 1人じゃ――!」
太一が手にした首輪探知機の中で、2つの光点がタワーの外に向かって動いていく。
展望台と直通通話の繋がった受話器を手に、太一は何をどうするべきか一瞬迷う。
展望台と直通通話の繋がった受話器を手に、太一は何をどうするべきか一瞬迷う。
喋っていた内容の全てが理解できたわけではないが、キルアとNとの会話は全て聞いていた。
2人の推理によれば、今キルアが追いかけているのは、あの茶髪眼鏡だという。
そしてその茶髪眼鏡は、以前遭遇した際、太一たちに対して嘘をついていたらしい。
2人の推理によれば、今キルアが追いかけているのは、あの茶髪眼鏡だという。
そしてその茶髪眼鏡は、以前遭遇した際、太一たちに対して嘘をついていたらしい。
太一は思い出す。
路上で茶髪眼鏡と出会った時も、キルアはまるで相手を殺さんばかりの鋭さで威嚇していた。
では今回はどうなる?
嘘をつかれ、正体を偽られていたとなった今、あの時以上に過激な手段に出てもおかしくないのでは?
今度こそキルアは、あの少年を殺してしまうんじゃないか? 太一は激しい不安にかられる。
路上で茶髪眼鏡と出会った時も、キルアはまるで相手を殺さんばかりの鋭さで威嚇していた。
では今回はどうなる?
嘘をつかれ、正体を偽られていたとなった今、あの時以上に過激な手段に出てもおかしくないのでは?
今度こそキルアは、あの少年を殺してしまうんじゃないか? 太一は激しい不安にかられる。
「と、止めにいかなきゃ――」
『もしもし。何がどうなったのですか? その場を離れるなら、せめてその前に現状を説明して下さい』
『もしもし。何がどうなったのですか? その場を離れるなら、せめてその前に現状を説明して下さい』
腰を浮かしかけた太一の動きを止めたのは、受話器越しの冷たい声。
展望室にいるNだ。焦る太一とは対照的に、淡々とした口調は変わることがない。
展望室にいるNだ。焦る太一とは対照的に、淡々とした口調は変わることがない。
『それから、えーっとあなた、何さんでしたっけ。1つお願いがあるのですが』
「太一だ。お願いって何だ?」
『良ければ電源を戻して貰いたいのですがね。
いやエレベーターは止めたままでも構わないのですが――』
「太一だ。お願いって何だ?」
『良ければ電源を戻して貰いたいのですがね。
いやエレベーターは止めたままでも構わないのですが――』
そしてNは、太一の名前を覚えてもいなかったNは、実につまらないお願いを口にした。
この緊急時に言う必要があるとも思えない、実につまらないお願い。
この緊急時に言う必要があるとも思えない、実につまらないお願い。
『――なにせ、電気が止まると展望室まで水道が来ないもので。トイレが流せません』
太一が迷ったのは一瞬。そして彼は、素早く決断を下し――!
* * *
「電気が止まると展望室まで水道が来ないもので。トイレが流せません」
抑えきれず顔に浮かぶ笑みが声色に現れないよう、注意しながらニアは告げる。
……言っていることに、嘘はない。揚水ポンプが止まれば展望室の水道は使えない。水洗トイレも流せない。
けれどもちろん、本気で「トイレを流すために」電源の復旧を願っているわけではないのだ。
彼が考えているのは、ただ1つ。
……言っていることに、嘘はない。揚水ポンプが止まれば展望室の水道は使えない。水洗トイレも流せない。
けれどもちろん、本気で「トイレを流すために」電源の復旧を願っているわけではないのだ。
彼が考えているのは、ただ1つ。
(電気さえ戻れば、定期放送が聞けます。タワー内の放送も使えます。そうすれば……!)
あえてシモの話を持ち出したのは、相手に「バカにしてもらう」ためだ。「甘く見てもらう」ためだ。
普通なら、こんな緊急時にトイレも何もないだろう、と考える。そんなことを言い出す相手が馬鹿に見える。
そして、そこに油断が生まれる。
いくら馬鹿なこととは言っても、人間生きていれば排泄は必要だ。この要請を断るのは難しい。
普通なら、こんな緊急時にトイレも何もないだろう、と考える。そんなことを言い出す相手が馬鹿に見える。
そして、そこに油断が生まれる。
いくら馬鹿なこととは言っても、人間生きていれば排泄は必要だ。この要請を断るのは難しい。
あの『キルア』はNのことを激しく警戒しているし、頭もキレる。だからこんな手は通じないだろう。
裏の裏まで考えて、冷たく断ってくることだろう。
けれど、『太一』なら。素直で真っ直ぐな『太一』なら。
裏の裏まで考えて、冷たく断ってくることだろう。
けれど、『太一』なら。素直で真っ直ぐな『太一』なら。
(タイチ……きっと名簿番号71番、八神太一のことですね。
こうすんなり名前を聞きだせるとは思ってなかったのですが。きっと「いい人」なのでしょうね)
こうすんなり名前を聞きだせるとは思ってなかったのですが。きっと「いい人」なのでしょうね)
キルアはニアのことを信用してないようだが、頭はいい。理詰めで動く分、操縦はしやすい。
太一はニアの言うことを理解しきってないようだが、性格は真っ直ぐだ。これも操縦しやすい。
彼らが『首輪を探知する機械』を持っていることも考えると、実に有効な人材だ。
太一はニアの言うことを理解しきってないようだが、性格は真っ直ぐだ。これも操縦しやすい。
彼らが『首輪を探知する機械』を持っていることも考えると、実に有効な人材だ。
(私自身には、戦う力はありません。探索を行う能力もありません。
けれどその分、誰かに働いて貰えばいいんです)
けれどその分、誰かに働いて貰えばいいんです)
名探偵Lの後継者を自認するニアは、ニンマリと笑う。
知恵こそ最強。最も知力に優れた者こそが、全てを支配するのだ――!
知恵こそ最強。最も知力に優れた者こそが、全てを支配するのだ――!
【B-7/タワー前道路路上/1日目/真昼】
【磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:少し疲労、パニック気味
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、天体望遠鏡@ネギま!、禁止エリア指定装置、首輪(しんのすけ)
[服装]:オレンジ色のシャツ、紺色の短パン、中島風伊達眼鏡 (イメージは夜神月@デスノート)
[思考]:なんでこうなるの!?
第一行動方針:キルアたちから逃げ切る。
第二行動方針:捕まっても、「のび太」と誤解されている状況や持ってる首輪を活かして最悪の展開は避ける。
第三行動方針:臨機応変に動き、状況の変化に惑わされない
第四行動方針:首輪を調べてみる。または交渉に利用する
基本行動方針:優勝する
[備考]:自分がキルアに「のび太」だと誤解されていることに気づきました。
【磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:少し疲労、パニック気味
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、天体望遠鏡@ネギま!、禁止エリア指定装置、首輪(しんのすけ)
[服装]:オレンジ色のシャツ、紺色の短パン、中島風伊達眼鏡 (イメージは夜神月@デスノート)
[思考]:なんでこうなるの!?
第一行動方針:キルアたちから逃げ切る。
第二行動方針:捕まっても、「のび太」と誤解されている状況や持ってる首輪を活かして最悪の展開は避ける。
第三行動方針:臨機応変に動き、状況の変化に惑わされない
第四行動方針:首輪を調べてみる。または交渉に利用する
基本行動方針:優勝する
[備考]:自分がキルアに「のび太」だと誤解されていることに気づきました。
【B-7/タワー入り口付近/1日目/真昼】
【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:健康
[装備]:ブーメラン@ゼルダの伝説、純銀製のナイフ(10本)、
[道具]:基本支給品、調理用白衣、テーブルクロス、包丁、食用油、 茶髪のカツラ
[思考]:太一は置いていこうか? それとも一緒に来させるか!?
第一行動方針:逃げ出した「のび太(実はカツオ)」を追い、持っているはずの首輪を奪う。
第二行動方針:展望室にいるNに警戒。手放しで信頼できる相手だとは考えていない。
第三行動方針:ゴンを探す
第四行動方針:太一に協力し、丈、光四郎、ミミを探す
基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくる馬鹿は容赦なく殺す
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nの仮説をおおかた信じていますが、Nの人間性を信じきっていません。
カツオのことを「のび太」という名前で認識しました。「のび太」がゲームに乗っていると考えています。
【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:健康
[装備]:ブーメラン@ゼルダの伝説、純銀製のナイフ(10本)、
[道具]:基本支給品、調理用白衣、テーブルクロス、包丁、食用油、 茶髪のカツラ
[思考]:太一は置いていこうか? それとも一緒に来させるか!?
第一行動方針:逃げ出した「のび太(実はカツオ)」を追い、持っているはずの首輪を奪う。
第二行動方針:展望室にいるNに警戒。手放しで信頼できる相手だとは考えていない。
第三行動方針:ゴンを探す
第四行動方針:太一に協力し、丈、光四郎、ミミを探す
基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくる馬鹿は容赦なく殺す
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nの仮説をおおかた信じていますが、Nの人間性を信じきっていません。
カツオのことを「のび太」という名前で認識しました。「のび太」がゲームに乗っていると考えています。
【B-7/タワー内1F管理室/1日目/真昼】
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:健康、 混乱
[装備]:フライパン
[道具]:基本支給品 首輪探知機、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣
水中バギー@ドラえもん、コンチュー丹(10粒)@ドラえもん、調味料各種(胡椒等)
[思考]:キルアを追うか、Nとの連絡役として残るか?
第一行動方針:キルアを追うかどうか思案中
第二行動方針:タワーの主電源をONにしていいものかどうか思案中
第三行動方針:丈、光四郎、ミミを探す
第四行動方針:キルアに協力し、ゴンを探す
基本行動方針:丈、光四郎、ミミを探した後、この場からの脱出方法を考える
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nのことを「本当はいい奴だったんだ」と考え信じていますが、Nの仮説の一部を理解できていません。
カツオのことを「のび太」という名前で認識しました。「のび太」がゲームに乗っていると考えています。
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:健康、 混乱
[装備]:フライパン
[道具]:基本支給品 首輪探知機、包丁、殺虫剤スプレー、着火用ライター、調理用白衣
水中バギー@ドラえもん、コンチュー丹(10粒)@ドラえもん、調味料各種(胡椒等)
[思考]:キルアを追うか、Nとの連絡役として残るか?
第一行動方針:キルアを追うかどうか思案中
第二行動方針:タワーの主電源をONにしていいものかどうか思案中
第三行動方針:丈、光四郎、ミミを探す
第四行動方針:キルアに協力し、ゴンを探す
基本行動方針:丈、光四郎、ミミを探した後、この場からの脱出方法を考える
[備考]:
ニアの本名を把握していません(Nという名しか知りません)。
Nのことを「本当はいい奴だったんだ」と考え信じていますが、Nの仮説の一部を理解できていません。
カツオのことを「のび太」という名前で認識しました。「のび太」がゲームに乗っていると考えています。
【B-7/タワー内展望室/1日目/真昼】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静、自信回復(ちょっと自信過剰気味?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:さて、どうしますか
第一行動方針:キルア・太一両名の動きに注意する。可能なら指示を出す。できれば電源を回復させる。
第二行動方針:「のび太(実はカツオ)」の動きや目的に注意。できれば彼から首輪を確保する。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
タワー内は非常灯や電話を除いて停電しています。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康、冷静、自信回復(ちょっと自信過剰気味?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考]:さて、どうしますか
第一行動方針:キルア・太一両名の動きに注意する。可能なら指示を出す。できれば電源を回復させる。
第二行動方針:「のび太(実はカツオ)」の動きや目的に注意。できれば彼から首輪を確保する。
第三行動方針:弥彦、またはキルアたちが首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第四行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:
盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
タワー内は非常灯や電話を除いて停電しています。
キルアと太一の声・性格を大方理解しました。彼らが首輪探知機を持っていることを知りました。
カツオのことを「のび太」ではないかと誤って推測しています。
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