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Ver3.3 |
身長 |
三[丈] |
幼き頃の私は不幸だった。戦で親を失い、家を失い、寄る辺を失い、飢えを凌ぐのもままならぬ日々を送っていた。 あの日、十日も飯にありつけなかった私はとうとう倒れた。 そして、目を閉じ、野垂れ死ぬのを静かに待っていた。 不幸な人生だった…と嘆いていると、優しき声が聞こえた。 「…生の歓び知らぬまま、死して成仏したりても、愉しむ術を知らぬなら、極楽浄土も地獄も同じ…」 力なく目を開いた私が見たものは、黄金に輝く仏様だった。 「小童よ、今が如何に苦しかろうと、精一杯の生を全うできねば、汝が魂は救われん。…イヨォッ!」 ポポン。仏様が一つ鼓を叩くと、私の腹は満たされた。 「人が生きるは飯食うためのみに非ず。汝が魂は、生を楽しむほどに仏へと近づかん。…イヨォッ!」 ポポン。仏様が二つ鼓を叩くと、体に気力が満ちてきた。 「さあ仕上げだ、小童よ… イヨォ~ イヨォ~ッ!!!」 ポポンポポポンポンポポポン。ポポポのポンでポポンポン! 仏様が奏でる軽やかな鼓の調べにつられ、私の体は自然に動き出し、夢中で踊り続ける間に暗い夜は明けていた。 朝日照らす中、疲れ果てて眠りに落ちる間際に見えたのは、満足そうな笑みを浮かべて去っていく、仏様の姿であった。 ――歴史に埋もれし猿楽の開祖の自叙伝より |
体重 |
二百五十[貫] |
最高速度 |
一秒に四十叩き |
好き |
笑顔 |
探索 |
毘沙門天 |
目的 |
仏頂面を笑わせる |
イラストレーター |
高村 英彰 |
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