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Ver3.5 DS |
Ver3.5 DS |
身長 |
思うまま |
体重 |
望むまま |
好きだったもの |
人間 |
嫌いだったもの |
人間 |
なりたかったもの |
人間 |
かつての宿敵 |
太公望 |
イラストレーター |
カスカベ アキラ |
フレーバーテキスト |
少し長くはなるけれど、妾と、二人の男の話をしようか。
――妾は、何も感じられなかった。なぜそうなのかはわからない。名も無き子狐の頃は違ったような気もする。けれど、何故そうなったのか覚えてはいない。ただ、いつの間にかそうだったし、ずっとずっとそうだった。
楽しく感じられないから、もっと楽しくしようとしたし、気持ちよく感じられないから、もっと気持ちよくしようとした。痛みを感じなかったから、もっと痛くしようとした。
けれど、結局何も得られなかったし、結局何もわからなかった。
気がつけばいつも、些細なことで泣いて、笑って、心のままに生きている人間の姿ばかりを目で追ってた。同じように生きられたらと思って、人間の真似をして、真似をして――人間に恨まれただけだった。
そうやって何も得られないまま時が過ぎて、世界のすべてを敵に回したときには、妾の胸の内は、ただまっ黒に、乾ききってた。
――お前らと妾は何が違う。なぜ妾だけがお前らのようになれない。否定するというなら、それもいい。…もうすべてが、どうでもいい――
何も感じないし、そうすることが当たり前になってしまっていたから、いつものように人を殺し続けた。特に理由なんかはない。みんなが、妾を憎み、怒りの目を向けるから、ただ同じように、そいつらが妾にしようとしたことをし返した。
そんな風に世界の敵でいたら、一人目の男が妾の前に現れた。あいつは、なんとも優男な仙人で、妾を前にして怒るでもなく、叱るでもなく、ただ妾に、なんともいえない笑顔を向けてきた。そいつとは、その後何度もやりあったが、初めに会った時の、あの笑顔が忘れられなかった。
妾を恐れるでも、睨むでもなく、あんな風に笑いかけられたのは初めてだったから――
けど、今思うと、あれはただ笑っていたのではなく、悲しくて、何かに迷っているような、そんな笑顔だったのかもしれないと思う。それでも、妾は嬉しかったし、世界の敵でいることに、ほとほと疲れていたから、最後は得意の人真似の笑顔を返し、そいつに封神されてやった。
それからどれほど経った頃だったか――封神台が開いて、女媧とかいう太古の神が妾の前に現れた。
奴は言った、世界を滅ぼせ、と。
人間になろうとすると、お前は人間になれないという。世界を滅ぼそうとすると、お前が滅べという。世界から身を隠すと、もう一度世界を滅ぼせという。
……この世界というものは、どうにも妾と相容れないものらしい。
ならばいい… そんな世界なんか、妾はいらない――そう思って飛び出した時、二人目の男に会った。
その紅い瞳の男は、妾を責めるでも、罵るでもなく、妾に尋ねた――なぜ、世界を壊すのか、と。
妾は言った――世界が、妾を受け入れてくれないから、と。
あいつは言った――なら、俺がお前を受け入れよう、と。
妾は言った――そんな言葉をどうして信じられるか、と。
あいつは言った――なら、信じられるまで共にいよう、と。
だから、妾は神を裏切って、あいつと共に戦った。妾にそのようなことを言ってくれた者は、あいつだけだったから。
もっと前に、一人目のあいつに会っていたら、妾も笑えるようになっていたのかもしれない。
もっと前に、二人目のあいつに会っていたら、妾も誰かを信じられるようになったのかもしれない。
けれど妾は、また、世界の敵になることにした。
二人目のあいつの心が泣いていたからだ。二人目のあいつは、全てを忘れ、世界の敵になっていた。昔の妾のように、黒く乾いてしまっていた。
お前が妾に言ってくれたように、妾もお前に言おう。
妾は、そんなお前を受け入れよう。お前が誰かを信じられるようになるまで、共にいよう。もう、人間も、混沌もどうでもいい。世界に憎まれるのは慣れっこだ。共に世界を滅ぼそう。
――けれど、そうだな、妾は我が儘も得意だった。だから、願わくば、そうして討たれるのならば、一人目のあいつがいい――あいつはまた、妾に笑いかけてくれるかな…?
そして妾の最後は、二人目のあいつを信じて共にあり、一人目のあいつのような笑顔をうかべて、お前らふたりのそばで――そんな最後をむかえたいと、そう思う。 |
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