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Ver3.5 |
Ver3.5 |
身長 |
あなた専用になってます♡ |
体重 |
やん♡ 増やしてくれる? |
最高速度 |
今回けっこうかかっちゃった♡ |
生息域 |
あなたの息が掛かるトコ♡ |
目的地 |
どこでもOKよ♡ |
捕食対象 |
はじめっから、あ・な・た♡ |
イラストレーター |
ゆきさめ |
フレーバーテキスト |
「……えと、思えばあんたとこうして話すのも久しぶりね」 私は彼女の懐かしい横顔を眺めながら話を切り出した。 実際のところ、思わぬ場所での思わぬ再会に、喜びよりも戸惑いの方が勝ってしまっていたが、それは悟られないようにいつもの調子を装ってみせる。 「――リリス」 久しぶりに会った妹は、相変わらず変化に乏しい物憂げな表情を浮かべている。 「……そうね」 淡々としたその口調もやはり良く知る妹そのものだ――しかし、うまく言えないがどこか変わったようにも見える。 いや、もしかしたら変わったのは私の方なのかもしれない。 私はある決心をしてここにいた。その気負いの所為もあるのだろうか……妹の佇まいは、私にその決心をさせた“あの子”をどこか思い起こさせた。 あのどこか放っておけない、今はもう離れてしまった私の可愛い『ロード』。 淫魔として、いつも本心を隠して人と接していた私が、あの子とだけは本音で語り合えていた気がする。今思えば、私はあの子に、どことなく雰囲気の近しいこの妹を重ねて見ていたのかもしれない。 とにかく、私はその『ロード』とある約束をした――そしてその約束のために、ここにいる。 そんなもやもやした胸の内を吹き飛ばすように努めて明るい声を出す。 「そういやあんた、あれから何があったの? 随分と、らしくない噂を聞いたけど……」 「噂……どんな……?」 「ルティアたちと一緒にいたとか……いろいろよ」 「……いろいろ……」 言葉少ななリリスは、喋るつもりがないのではない。むしろ、喋りたいことがありすぎて、うまくまとめるのに時間がかかるといった感じだ。あまり豊かではないその表情を眺めて待っているうちに、ついいつものように助け舟を出してしまう。 「それって、楽しかったの?」 彼女はコクリと小さく頷いた。 だったらどうしてこんなところに――そう言いかけて口を閉じる。 その答えは、聞かずとも“わかって”いるからだ。 「……お姉様は?」 同じことを聞き返されただけなのだが、少し言葉に詰まった。 「私も……」 たくさん出会って別れた。 この世界に来て初めて会った優しい『ロード』。 彼と別れ、失意のうちに出会った、可愛い『ロード』。 この世界で出会った新しい仲間たち。 誰も――今ここにはいない。 「………まぁ、いろいろよ」 結局私も濁してしまう。 歯切れの悪い私の言葉にリリスは「そう」と目を伏せ、 「……聞かなくてもわかる。お姉様はいつも追いかけていたもの、“あの人”を」 と言った。 彼女の言葉に、ピクンと尻尾が跳ねる。 あの人――私の獲物であり、最初の『ロード』であり、そして……とても大切な人。 「ほ、ほんと、あいつったらいっつも無茶ばっかりで困るわよね」 彼は、あまねく世界の敵――『混沌』を討つべく一人旅立った。 それは彼の使命感ゆえか、それとも『混沌』に身を染められつつあったときの罪滅ぼし、あるいは復讐――いずれにせよ、彼はまた選んでしまったのだ。 同じ宿命を背負う彼のただ一人の妹すらも置いて、たった一人で戦い続ける道を――。 「……あの人は、そういう人だから」 私の考えていることを察したように、リリスは言った。 さも彼のことを理解していますといったその口調に、少しだけムッとしてしまう。 「ま、あんな無茶苦茶じゃ、今度こそみんな愛想尽かすわよ」 「……そうね」 私はお手上げといった風に両手を上げて、わざとらしくため息をついて見せる。リリスもまた小さくため息をついて目を閉じる。
「私以外はね」 「私以外は……」
「…………」 「…………」
気まずい沈黙が流れる。 いいや、ダメだ。ここは姉として妹に教えてあげるべきだろう。 「……リリス、この際はっきりさせておくけど、“彼”の隣は私のものだから。私だけいれば十分だから、ね?」 「……私は、旅で出会ったみんなに教えられて、本当の気持ちを伝えると勇気と、たくさんの人を幸せにする方法を学んだわ……今の私なら、彼の隣にふさわしいと思う」 「なっ……!」 リリスは全く目を逸らすことなく、挑むような視線でそう言った。 この子がここまではっきり私に逆らうなんて、やはり、彼女もこの世界に来て変わったようだ。 「……それに、“彼は私みたいのに弱い”って、手伝うように言ったのはお姉様じゃない」 うぅ、またずいぶんと古い話を……確かにそんなこともあったけど……ったくこの子は……! 「だーかーらー! 私と彼との絆は、あんたとは年季が違うの! あんたはお呼びでないの!」 「……それ程たくさんの絆を結んでおきながら、いまだに何も進展しないお姉様より、私の方が向いていると思う」 「んなっ……! あーもー! あんた、いい加減諦めなさいよ!」 「……その言葉、そのままお姉様に返すわ」 「ふ……ふふふ……わかったわ……あんた、わたしと本気で張り合おうっていうのね? 姉でかつ、大淫魔であるこの私に」 これは徹底的にわからせないとダメなようだ。私は生意気な妹に一歩つめよる。 しかしリリスにも一向に引く気配はない。 「……お姉様は自分の気持ちを押し付けるばかり。あの人に必要なのは静かな癒しと、いつでも求めに応えてあげられる確かな包容力よ」 「はぁぁ!? ほんっと、今日はよく喋るじゃないリリス。私だってバリバリ癒せるわよ! 癒しまくりよ!」 淫魔が、捕食対象でしかないはずのただ一人の男を独占すべく言い争いをする姿は、傍から見ればひどく滑稽なものだろう。それ以前に、癒しだの包容力だので妹と張り合う姉というのもなかなか情けない話ではあるが――確かにそれは若干欠けてる気もするけど……ここは譲るわけにはいかない。 「それに、包容力なんてふわふわしたものより、明るさよ明るさ! ほら、“彼”って思いつめて暗くなっちゃうところあるじゃない? そんな時に本当に癒せるのは、とびきりの笑顔で彼を包み込める私しかいないわ!」 「……私」 「わ・た・し!!」 このままじゃ埒があかない――そう思ったときに、背後に気配を感じた。ちょうどいい。 「――で、実際そこんところどうなの?」 「……そうね、あなたが決めて」 「「ニド!!」」 二人して振り向いた先には――如何にしてこの場を収めようかと苦笑する青年が立っていた。 今まさにレムギアを発とうとする『戦船』へと勝手に乗り込みついてきた私たちを、呆れたように見つめる紅い瞳。 それは彼が混沌に支配されかけていたときに垣間見たような冷たいものとはほど遠い、暖かく優しさに満ちた眼差しで――夢じゃない、彼は帰って来たんだ……私たちの元へ。 「――っ!」 突然こみ上げた衝動に任せて、私は彼の腕へと抱き着いた。やはりここは私の居場所だ――反対の腕にリリスがぶら下がっているのがいささか不満ではあるけれど。 ――自分にとっての“一番の大切”を守るためなら、ためらわないこと……アナタも、ワタシも。 そのためなら互いを顧みる必要はない――彼の温かさを感じながら、可愛い『ロード』と交わした約束を思い出す。 冷めてるなぁ、とそのときは思ったが、それが私と彼女の最良の在り方、お互い胸の奥に別の“一番”を抱えた者同士の約束だった。そして、その言葉に後押しされるように、こうして私は彼との再会を果たすことができたのだ。 「……おかえり、ニド」 これから赴くのは『混沌』の領域。それは間違いなく死地であり、辛く苦しい戦いの道。 それでも私は明るく笑って見せた。 どうして――そう言いたげに開きかけた彼の唇へと人差し指を添える。 「――知ってると思うけど、私があきらめるわけないでしょ?」
あなたは私の最初の獲物。 そして私の最後の獲物。 刑死場の泥から生まれた魔物サキュバスは、“ミリア”となったそのときからあなたのもの。 あなたと離れ、裂かれるような想いの中、たくさんの人に出会ってたどり着いた私の答え。
私は、もうあなたを放さない。 あなたが辛いときも、壊れてしまったときも、そして死ぬときも……一番側にいるのは私でありたい。 これが私にとって“一番の大切”。 これこそが、私がたくさんの愛の中でみつけたたったひとつの“真愛”なのだから――。
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