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開発者日記:脱出!Vastin城 ページ1


Cardell "Annuvin" Herr

 バイオテクノロジーの退屈な仕事をした後、そして人生において"癌を治す"とかそういうことよりももっと他の事をやりたいと決意しながら、私はTurbineに働きに来た。AC1ではコンテントデザイナーと、それに加えAC1:Dark Majestyの仕事をいくらかし、その後AC2とDDOのシステムのリーダーをやり、そして今、LOTROのデザインディレクターをやっている。


 あなたはヒソヒソ声のする薄暗い照明の部屋に入り席に座った。発表が始まろうとしているのだ!あなたは間よく入ってきたようで、すぐにデザインディレクターのAnnuvinが静かにステージに上がった。期待に満ちた静寂が聴衆に落ちる。

   もし「よぉAnnuvin!フォーラムの俺だよ!」と叫ぶのならページ2へ。
   もし敬意をもって傾聴するならばそのまま下へ。

偉業と君と!

 こんにちはAnnuvinです。多くの人が、特にLOTROの偉業システムについて「どこから発想を得たのか」興味をお持ちだということを知りました。ええと、この長くて(そして大変くどい)開発者日記を通して、私は以下のことを説明できればと思います。

  • ポイント1:我々デザイナーはシャワーを浴びている時に一番頭が働く。
  • ポイント2:我々デザイナーはしばしば完全な気まぐれで行動する。何かを解決するにしろ、新たな問題を抱えるにしろだ。
  • ポイント3:私は冗談が苦手だ。
     さて難儀ですが記憶を遡ってみます。

 DDOからLOTROに最初に配置転換したとき、この2つのゲームは非常に異質なものだということを強く念を押されました。我々はLOTROを違うプレイサイクルのものにしたかったんです。(つまり、LOTROを何時間もプレイできるものにしたかったわけです。DDOのプレイサイクルは概してより大きなインパクトで、短いものでしたが。)そして私はシステムでは無く、主役であるプレイヤーを中心に据えようと思いました。何故ならばDDOはシステムがベースになっているものですが、LOTROはまず物語がベースになっているからです。

 とは言っても話はそれだけではありません。初期のLOTROの開発では(前身のMEOの、ではありません。私がプロジェクトに参加したのは2004年の11月からです。)メディアのタイプ(例えば、本、映画、ゲーム)とその長所と短所についてもう一人のデザイナーと長い論争をしていました。彼の意見は…まぁこれを書いているのは私ですから重要なことではありませんね。(しかし彼の頭脳は素晴らしいと思いますよ。)私の意見は、(前述の)ポイント1の数え切れない例によって強まり、ポイント2のど真ん中で組み立てられました。その意見はこうです。本は非常に深く個人的な物語を表現できます。映画はそこから要素を絞り込んだ(または見方によれば、つまらなくした/的外れな物にした)ものです。しかしゲームは…ええとゲームは(多くの人にとっては)前述の2つの様に物語を語るものではありません。その代わり、働きかけることが許されます。これは映画では中々できないことです。本に関しては昔、君自身の冒険の本シリーズ(choose your own adventure books)だけはよくやりましたね。(ゲームでないメディアとしては。)

   もし君自身の冒険の本シリーズを読んだのならページ7へ。

   もし「君自身の冒険の本シリーズって何?」と疑問を声に出したのならページ2へ。

 だから何?ええ。それはいい質問ですね。それにお答えするために、皆さんには「自由な発想」の強い薬を飲んで頂く必要がありそうです。

 MMOにおいて物語を語ろうとすれば苦しい戦いになります。勝利の保証の無い血で血を洗うような戦いです。加えて、そうしようとすれば、ただ「座って聞く」のでは無く受け手に働きかけを許すというゲームと言うメディアの特性に反することになります。つまり、ゲームの中に凝視した物語の糸を織り込みながら(これについて語ろうとすれば開発者日記がもう1つ必要です)、プレイヤーに自身の物語を語ることを許容する必要がありました。

 困難になってきたのはこの辺です…。プレイヤーが語れるようなのはどのようなタイプの物語でしょう?そしてそれはどのようにESRB(年齢制限をつけている機関)の評価に影響するでしょう?私たちはあらゆるプレイスタイルに対応できる包括的なシステムを作ることに重点を置いていました。この問題は議論していくうちに段々複雑になってきたので、一歩下がって基本に戻ろうとしました。

 問題を見通す基準として、私は我らゲームデザイナーの友、Richard Bartleに回帰しました。彼のプレイヤーのタイプについての研究は未だに最も啓蒙を感じます。なので偉業を4つの類型、つまり社交好き、達成好き、冒険好き、殺人好き、に分類しようとする作業に取り掛かりました。

   もしあなたが何よりも人との交流を楽しむ社交好きならページ3へ。
   もしあなたが普通の人には困難な目標に向かって邁進する達成好きならページ4へ。
   もしあなたが常に新しい景色、物語、敵や技などを見るのが好きな冒険好きならページ5へ。

   もしあなたが他のプレイヤーを打ち負かすことが好きな殺人好きならページ6へ。

 βをプレイしている皆さんに申し上げておくと、達成好きと冒険好きの偉業は殆どできあがってます。社交好きと殺人好きに関しては?ええ、楽しみにしていてください。偉業のタイプはまだ増えます…(はい。モンスタープレイと殺人好きの偉業は関係しています。)

 Annuvinはこう考えをまとめると、ステージのカーテン裏では大騒動が起こっていた…突然、コンテントデザイナーのVastinが現れたのだ!一瞬Annuvinの穏やかな顔に痙攣が起きた。まるでこれから何が起きるかを予期しているように。しかし彼は他には何の兆候も表さず席に戻った。


Jesse "Vastin" King
ゲームデザイナー 1995-2005 (Cyberlore Studios, Inc) コンテントデザイナー 2005-現在 (Turbine, Inc)

特技:あのもったいぶったレゴラスの様に雪の上を歩けます。

関わった作品:
 - WarCraft II: Beyond the Dark Portal
 - HOM&M II: The Price of Loyalty
 - Majesty: The Fantasy Kingdom Simulator
 - Santa Strike


   もし「Vastin! あんたはすごいよ!」と叫ぶならページ2へ。
   もし敬意をもって傾聴するならばそのまま下へ。

 Vastinは演壇に上がり、マイクを叩いてから話し始めた。

どうして気にする?

 これまでの話はLOTROの偉業システムの創出に関係のあることかね?大した話じゃないね。他の人のIPでコンテントデザイナーとして大はしゃぎした経験は多くあるが、私のジョークのセンスはむらっけがあると思われるかもしれない。

 他ならぬ私が今日のゲーム市場における完全な、そして魂が引き裂かれるようなWoWの支配の舞台を作ったという、私の自尊心をまずは呼び起こしたい。それはWarCraft IIの初期に"ヒーローユニット"の構想を発表した時だ。この構想はWCIIIのヒーローユニットにかなり借用され、そしてそれがもちろんDiabloと結合されて今日のモンスターゲームができたのだ。私が閃いたデザインは君達の人生の何千時間も無駄にしただけではなく、望むと望まざるとLOTROを待ち望む君達に更に多くの時間を無駄にさせることになりそうだ。

さて、偉業システムの話に進もう。

偉業システム

 偉業システムとは何か?まぁ広い意味では世界の背景に鎮座するクエストの一種で、中つ国での仮想体験をする中であなたが行ったあらゆる種の事を記録するものだ。そしておかしなことに、その大半は戦闘関連のものだ。誰が考えたのだろうか?

 クエストと違って、偉業は特に指示をされているわけではない。闇の軍勢が全てを飲み込む前に早く遂行するよう言ってくるNPCはいない。ところで闇に飲み込まれると言えば、とぼとぼオークの穴を歩いてる日常の光景の中でも、山をもう少しリアルな縮尺にすれば喜ばしくない凍傷のデバフがついて、特に靴を履いてない馬鹿でチビなホビットどもは泣いた事だろう。

 あああああそうだ。私がそこら辺のバランスの担当だったら、霧降山脈の凶悪な雪の吹き溜まりにピンクの足を踏み入れようものなら、そういうアホどもは人生で一番の悪夢より恐ろしい移動ペナルティを与える。背の低いキャラクターをお持ちの君達には幸運な事に、そのような決定は私ではなくAnnuvinの役割だが。

 明白な安堵の波が聴衆の間を渡った。Annuvinは彼の名前がずうずうしく言葉にされた時も底知れず不可解な表情のままだったが。Vastinは続けた。目に憎悪と悲哀の光を湛えて…。

偉業の称号

 偉業はLOTROにおける称号の主要な源だ。これらを用意するのはかなり楽しいものだが、デザイナーの視点から見れば少し奇妙な代物だ。ここにいる君達には称号など全く気にしない人間がいるだろうが、伝説に出てくるような武器よりも高い価値を見出す者もいるだろう。

 君達のキャラクターの性格によって(ああ。ああ。君達の多くがただ走り回って大暴れしているだけなのは知っているよ。しかし時折、ちゃんとロールプレイをしているプレイヤーもいるし、大暴れするだけの君らにこそ相応しい称号もいくつかある。)…何にせよ君達のキャラクター作りのコンセプトによって、名前の横に絶対にくっつけなきゃならない不可欠な称号を一つは見つけるだろう。

 これは称号が完全に主観的な価値を持つものであることを意味しているから、奇妙なものだというわけだ。少なくともいい物だし、用意するのは楽しいので、それらを評価してくれる君達には喜んで用意しよう。

 何にせよ、称号を気にするかしないかは君達次第だ。頑張って集めてくれ!ああ、最後になるが、プレイヤーが妙な事をしなければならない、かなりの数の隠し偉業と称号が作られていることを警告しておきたい。ああ、しかしそうだな、この話題については既に語りすぎた…。

良、悪、醜

 偉業システムを作っている中で一番良かったのは、私の文章作成能力を向上させてくれたことだ。技術的な形式はとても単純なので、表現の豊かな文章を(時々)書くことができた。もちろん、50個ぐらい目かそこらの討伐偉業(Slayer Accomplishment)を書く頃には、何かおもしろい文を考え付くのが非常に困難なっていたが!

 私が好きなのは探検(Exploration)と知識(Lore)の偉業だ。それぞれ比較的個性的で、特色という色彩や歴史模様を織り込む必要があった。ここに来て私のトールキンの著作に関する知識が役に立った。私は大砲の前に立っていないとわかっている限り、歴史文献や地域の特色について書ける。

       

 最も文章を作るのが難しかったのは恐らくクラスの偉業だろう。これはどのスキルを何回使ったか記録するものだ。まず最初に、追加するのは簡単だ。しかしいつも、壁の向こうでゲームシステムを作っている連中の一人が、馬鹿馬鹿しく短命なゲームバランスとか操作性なんかの為にスキルの効果を変更することを決定するのだ。

 ハァ。それはつまり曼成的なおせっかい焼きの一人が、βの間君達のキャラクターのスキルを調整に取り組むたびに、私が半ダースもの文章を書き直さなければいけなくなるということだ。

死んだ回数

 君達が私に持っている最も大きな疑問はこれだと言うのは分かっている。

 「おいおい。〜という偉業を達成するのに〜回殺さないと/使わないと/ほにゃららしなきゃいけないって何を考えてるんだよ!バカバカしい!これを達成しようと思ったら3週連続ぶっ通しでやり続けなきゃなんないじゃん!」

   もし「そうだよ。何だそれは!?こら!」と叫ぶならばページ2へ。
   もし敬意をもって傾聴するならばそのまま下へ。

 私は理性的で科学的な精神の持ち主であるから、数字とゲームデザインの話をすれば、様々な偉業の回数を計算するに当たっては、極めて厳格でよくテストされた手法を適用した。換言すれば、私が全て作った。それも独断的に。実際の所は偉業の回数は私が適当に考えた物だと言おうと思ったが、これは科学的な根拠のあるものだ。本当だぞ。科学だ!

       

 どのくらいで達成できるかなんて生きて呼吸をしているプレイヤーが実際に達成してみなきゃわからんよ。スキルのクールダウンタイマーや、ゲームシステムの連中が出してくる平均的な戦闘時間を見ることはできるが、最終的には現実世界、或いは仮想世界でもそんな数字は何の意味も持たない。私が注目しているのはβテスターのそれぞれがどのくらいの間で、偉業を達成するか、つまり何人達成したか、どのくらいかかったか、などだ。ああ。Big BrotherはMMORPGの領域で元気にしてるよ。私の友人や、我々が…彼だ。(訳者注:よくわからん\(^o^)/)

 本当の所を言えば、回数については意図的に適当な数値を使った。どれが機能するか見たかったし、もちろんどれが機能しないかも見たかった。これをゲームデザイン用語で問題の持ち越し(bracketing your solution)と呼ぶ。

 何にせよ、これについては我々は十分な情報を得た。なので次回の数値設定は適正なものに近づくはずだ。私は君達に目から出血するまで困難な偉業達成の為に何かを殺し続けてほしいと思っているわけではない。これは結局の所MMOGなのだから。ただ将来的にはもう少し正確なものさしで計れるようになるはずだ。

 君達の目から流れる血をなぁああああ…

 そう言ってVastinは甲高い声で笑い声を上げた。大きな音と共に視界を奪う閃光が起き、火薬の臭いが漂った。そしてもう一度壇上を見た時には彼は消えていた。

最終更新:2007年10月27日 15:45