ビアンカ萌えサイト@Wiki

卵おかゆとうさぎりんご

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medaka

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「コホン、コホン…」
 ビアンカの小さな咳を、母が耳にとめてふりかえった。
「大丈夫かい、ビアンカ?」
「うん、だいじょぶ……」
 そう返事をする声は、かすれてつらそうである。
 母のひんやりした手が、ビアンカの熱い額の上に乗せられた。
「まったく、おてんばな子だよ。ダンカンさんとこのビアンカが、いじめっこを追いかけ回して池につっこんだって、町中のうわさになってるよ。それで風邪ひいてるんだから、世話のない」
「ちがうわ、かあさん。追いかけ回したんじゃなくて、ケンカしてるうちに池に落ちちゃったの。
でもね、ヨーシュはそれで泣いちゃったけど、あたしは泣かなかったんだから。それにあたしの方が三発も多く蹴りをいれてやったのよ」
 熱で苦しそうな息の下で、なお自慢げに語るビアンカに、母マグダレーナはやれやれと首をふった。
女の子ならおしとやかに、などとは言う気はないが、おてんばな分、怪我や事故の絶えない娘である。
親としてはひやひやされられる。
「……母さんの手、つめたくて気持ちいいなぁ…」
 うっとりと、ビアンカが息をつく。
「何か食べたいものはあるかい?」
「りんご、食べたい……」

 ビアンカがそう言うので、母はうなずいて台所に向かおうとした。
 その背中に、ビアンカは声をかける。
「うさぎの形にしてね」
「はいはい」
 台所へ遠ざかっていく母の背中を見送りながら、ビアンカはぼうっとした視界の中で、いくどかまばたきをした。熱のせいで、少し涙がにじんでいたから。
 毛布を口元までひきあげて、やわらかい枕に頭をうずめる。
 お粥のいい匂いが漂ってきた。ビアンカが熱を出すと、いつも母が作ってくれる、卵と香草のはいったおいしいお粥。

 とろとろとまどろみながら、ビアンカは目を閉じた。
 おかあさん、大好きよ。
 あたし大きくなったら、母さんみたいなお母さんになりたいな。あたしみたいなおてんばは、お母さんにはなれないかな?
 男の子たちと取っ組み合いのけんかをするお母さんなんて、聞いたことないものね。
 うーん。
 でもあたし、きっときっと、優しいお母さんになるんだから。
 風邪ひいた子供に、たまごのおかゆと、うさぎのりんごをつくってあげる、優しい優しい、お母さんに…なるんだから……
「ふぁ…」
 ビアンカは小さくあくびをした。
 ……少し眠くなってきた。

 少女は、日いちにちと、大きくなる。
 たったいま眠りに落ちたビアンカが、次に目をさますとき。
 そのときはもう一歩、大人に近づいた彼女がいる。

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