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涙の向こう側 ― 第2部
最終更新:
lupinduke
涙の向こう側 ― 第2部
The Far Side of Tears, Part Two
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フリーポートのセイジより購入できる本です。
もちろん、購入後クエストをクリアしないと読める形にはなりません。
涙の向こう側 ― 第2部 |
この一連の書の第2部では、”戦禍の時代”におけるフリーポートの軍艦L.M.S. Assault号が、カラディム以来、謎の船の追跡を受けながら涙の海を航行することになる。 |
艦長はAssault号の艦首から艦尾へと走りながら、あちこちに命令を叫んでまわった。油断していた水兵たちにはどの方向から艦長が来るのかわからず、艦長とぶつかりそうになる者もいた。 我々は、艦長が興奮しながら突進してくることには慣れっこになっていた。毎朝の習慣の最中に突然何かを思い起こしたときには、片側しかひげを剃らずにいることもよくあった。サーベルの代わりにひげそり用ブラシを揺らしながら甲板を歩き回る艦長を見て、必死に笑いをこらえるあまり息が詰まりそうになったこともあった。だが、このときばかりは、艦長も我々も真剣そのものだった。 |
すでに港の外側にある比較的安全な海域へと出ていたことは、我々にとって幸いだった。謎の船が涙の海に到達し、風を最大限に活用できるようになるにはまだいくらか時間がかかるはずだった。一方、我々の帆はすでに一杯に風を受け、予定より早く涙の海へと達していた。艦長のねらいは、すでにカラディムを包囲しているデスフィスト海軍の船に邪魔されない場所でこの謎の船と対峙することだった。 |
涙の海の航行では、たとえ絶好の環境下でも面倒なことが起こることがあった。我々乗組員は、涙の海でも特に危険な場所をさけるために必要な急変針に慣れていたし、この航路を何度も通っていた。もっとも、追跡されながら通ったことは滅多になかったのだが。普通の船とは異なった造りのおかげで、Assault号は攻撃側に立つことが多かった。また、我々に対して作戦行動をしかけてきた他の船は、我々の手によって破壊されていた。 | しかし、このときばかりは状況が違った。Assault号の性能に自信を持ってはいたが、我々が追われていることを思うと、あの謎の船がどこまで来たかとつい船尾に目をやってしまう水平も少なからずいた。謎の船は早々に港を出て、我々に速度を与えているその同じ風を帆に受けて進んでいた。その船はまた遠く離れてはいたが、Assault号に迫りつつあるのではないか、と心の中では皆そう思っていた。 |
やがて、例の船がAssault号に確実に追いついてきていることが誰の目にも明らかになってきた。我々はこの事実に驚いた。仮にあの船がAssault号の同型艦であれば、同じように風を受けている状況でこちらに追いつけるほどに速く走れるはずがない。艦長はこれまで口にしたこともないような悪態をつきながら例の船の進み具合を確認すると、大声で命令を下した。 | 心ならずも海軍に配属された新入り水兵の1人は、船酔いのせいで吐き気に苦しみながらほとんどの時間を舷側で過ごしていた。甲板を見廻っていた艦長は、立ち止まって彼に励ましの言葉をかけた。少年は袖で口をぬぐいながらその姿を追った。艦長はたとえ自分の気持ちが高ぶっている状況であっても、こんなふうに部下たちの前で足を止めて言葉をかけていく男だった。 |
我々は”涙”の真ん中にいて、フリーポートはまだはるか先にあった。太陽が、空を黄金色に染めながらアントニカの頭上に昇ってきた。いつもこの時間は油断がならないのだ。山々に沿って吹く突風が海に押し寄せ、風向きが変わるからだ。全員であらゆる兆しから敏感に風向きの変化を読み取り、船の体勢をいち早くそれに合わせなければならなかった。 | あの同型艦は追撃の手をゆるめようとせず、潮流のようにアサルト号に迫り続けた。逃げ切れそうに感じる時もあれば、これまでにないほど近づいたと感じるときもあった。そして、耳を疑うような罵りのことばを再び吐いた艦長に、皆が一斉に注目した。彼の視線の先をたどると、驚いたことに我々の前方に、つまりアサルト号とアントニカ大陸のあいだの海上に船団が現れたのだった。 |
「くそっ、奴らめ!」艦長は叫んだ。「もしあれが我々の海軍の船でないとしたら、フリーポートまで奴らに奪われたのかもしれん! 待て! まずは針路変更だ。とにかく用心深く接近する必要がある」「あの同型艦はどうします?」と誰かが艦長に尋ねた。艦長は鼻で笑って答えた。「目の前にいるあの船が味方であることを祈ろう。あの同型艦がそうでないのは明らかだからな。さあ、とにかく俺の命令に従って速力を維持するんだ」 | 乗組員は艦長の命令を遂行するために機敏な動きを見せた。フリーポートに向けて航行していた我々は、アントニカ大陸と併走を続けるべく北に変針したのだった。日没が訪れると黄金色の光は急速に消えていき、辺りは青い暗闇に包まれた。”涙”の黒い海面が、Assault号の船体にぶつかって音を立てていた。我々の後方にはあの同型艦が迫り、少しづつ距離を詰めているのだ。 |
迫る同型艦、現れた第三の船、謎が謎を呼ぶ第3部へーみたいなー
えーと、本作はちょっと分かりづらい表現が出て来るので解説を。
第1部2ページ目、"フリーポートは、以前からずっとアントニカの~"
この場合のアントニカは、いわゆる500年前の"アントニカ大陸"を指します。
ラクリンぶっ壊れて割れちゃう前の大陸ですね。
で、EQAtlas先生によりますと、
ttp://www.eqatlas.com/eantonicamap.html
アントニカ大陸の東の端がFreeportで、
ttp://www.eqatlas.com/wantonicamap.html
西の端にQeynosがあるわけです。
現在のゾーン名で通っている"アントニカ"は、旧カラナ平原…のどの辺までかは分かりませんがそのへんに当たります。