細田守

登録日:2025/07/15 Tue 07:03:24
更新日:2025/07/16 Wed 21:45:02
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細田(ほそだ) (まもる)とは、日本のアニメ監督。


1967年9月19日生まれ。富山県出身。
別名義で、「橋本カツヨ」*1「遡玉洩穂(そだまもるほ)」がある。


来歴(1990年代)

金沢美術工芸大学(油絵専攻)卒業後、1991年に東映動画(現・東映アニメーション)に入社。
東映アニメ作品の原画を担当する。

1996年、『ゲゲゲの鬼太郎(第4シリーズ)』で演出デビューし、東映内で注目され始める。
そして1999年には、テレビアニメ『デジモンアドベンチャー』の前日譚短編映画『劇場版デジモンアドベンチャー』の監督に抜擢。監督としてデビューした。
同作は僅か20分の短編ながら、写実的な生活描写や、デジモンという「異物」が日常を侵していくサスペンス、巨大感のある迫力のバトル描写といった高い演出力を見せつけ、アニメファンの間でも「最注目の若手監督」として話題となった。

アニメ『デジモン』では、テレビシリーズにおいて第21話「コロモン東京大激突!」の演出を担当。こちらはテレビシリーズの中でも異色の回となった。
更に翌年には、テレビシリーズの後日談である『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』を監督する。
こちらは40分の中編だったが、当時発展しつつあった「インターネット」を題材にし、「電脳世界でのバトル」を画期的に描いた作品としてまたしても絶賛された。

その後は東映アニメーションの作品で演出や、アトラクションアニメの監督を担当。
そんな中、『もののけ姫』等でお馴染みのスタジオジブリの代表、鈴木敏夫から声がかかる。
それは、児童文学『ハウルの動く城』のアニメ映画の監督にならないかというものだった。
当時、同スタジオの代表監督である宮崎駿は乗り気ではなかったため、「たまたまジブリに遊びに来ていた」細田に鈴木が声をかけ、やる気満々で承諾したという。


来歴(2000年代以降)

しかし、スタジオジブリでの仕事は細田にとって負担となっていった。
ただでさえ、企画・プロデュースを担当する宮崎が、あれやこれやと口出しし、なおかつ発言が変わるため、『ハウル』での仕事にプレッシャーを感じるようになる。
そうして、何をしても上手いアイデアが出てこず、製作が空回りする日々が続き、遂に製作は中断され、監督の降板も言い渡された。
その後、『ハウルの動く城』は宮崎駿が監督を務め、2004年に公開を果たしている。

しかし、『ハウル』の降板は細田にとって大きなショックとなった。
この精神的な落ち込みは相当のものであり、次作として請け負った初の長編監督映画『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』でその影響を直接的に反映させている。
単純な作品としての出来は悪くないのだが、「ONE PIECEのキャラクター理解が極めて浅い」など何かと問題になる作品。
こちらは『ONE PIECE』としてはあまりに異色な、「生々しいぶつかり合いを交えた人間ドラマ」が描かれ、ファンの間で賛否が分かれた作品である。
……というか、細田守自身ONE PIECEを好んで読んでおらず、キャラ理解も浅い状態であったにもかかわらず業界を干されかけていた時に掴んだ5年ぶりの映画・初めての長編映画のチャンスであるため、断ることができなかった、というのが実情。誰も得していないがなんで東映はここで細田に頼んだのだろうか


そして細田は、2005年に長年勤めていた東映アニメーションを退社し、フリーのアニメーターとなった。
自身の道を見つめ直す上で、退路を断つためでもあった。

その最中、細田はアニメスタジオ・マッドハウスの丸山正雄プロデューサーからアニメ映画の監督を打診される。
丸山は、細田の演出作『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』の第40話「どれみと魔女をやめた魔女」を見て、彼の作劇を気に入ったのだ。
そうして2006年に完成したのが、筒井康隆の小説を現代風にリメイクしたアニメ映画『時をかける少女』であった。
同作は当初、ミニシアター系列の小規模公開であり、「知る人ぞ知る」作品であったが、口コミを通じて徐々に知名度を上げ、全国規模の公開を実現。
数々の映画賞でも絶賛され、一気に知名度が世界的なものとなる。

これによりアニメーターとして再起した細田は、2009年に次回作『サマーウォーズ』を完成させる。
こちらは代表作『ぼくらのウォーゲーム!』を下敷きにした、「インターネット上の戦い」を迫力満載に描き、ワーナー・ブラザース配給で、全国規模でヒットを飛ばした。

やがて細田は、自らを「挑戦者」とするために、新アニメスタジオ「スタジオ地図」を設立した。
第1作『おおかみこどもの雨と雪』を皮切りに、次々とヒット作を連発し、日本を代表するアニメ監督の仲間入りを果たした。
第2作『バケモノの子』からは単独で脚本も担当するようになった。

最新作は、2025年公開予定の『果てしなきスカーレット』。



作風

作風としては、主に「家族」や「友人」といった人間関係に主題を置く作品が多い。
問題を抱えている人間達がぶつかり合い、やがて大切な人間であることに気づき、互いを想えるほどに成長する過程を描くことに定評がある。
大家族を主人公とした『サマーウォーズ』、狼人間とのハーフの子供を育てる母親を描いた『おおかみこどもの雨と雪』、獣人と孤児の疑似親子を描いた『バケモノの子』はその代表と言える作品群である。

しかし、そうした人間関係の「光の面」ばかり描いているわけではなく、同時に「生々しい人間同士のぶつかり合い」を時にえげつないタッチで描いている。
『時をかける少女』の同級生間のいじめや陰口、『竜とそばかすの姫』の女子間の「勢力争い」、そして『オマツリ男爵の秘密の島』の麦わらの一味の凄まじい口論など、人間の負の面をリアルタッチで描写し、えげつなさでは定評のある人物である。
先述した家族の関係についても、『サマーウォーズ』の侘助の排斥感や、『おおかみこども』のスタンスの違いによる雨と雪の大喧嘩、『未来のミライ』のくんちゃんのミライちゃんへの嫉妬心というように、負の面もしっかり描かれ、何とも言えない余韻を残す。

このように「人間関係の厭らしさ」を描いているためか、アニメファンの中では賛否両論問われる作風となっている。

キャラクターについては、女性主人公が多いが、どちらかと言うと男性キャラの方が人気が出ることが多い。
特に、『サマーウォーズ』の池沢佳主馬、『バケモノの子』の九太といったような少年キャラは爆発的に人気が出る。
前者の場合はインタビュー時に「小麦色に焼けた少年の色気」を嬉々として語っており、ひょっとしてその気があるのでは?と邪推されることもあった。
動物キャラに関しても気合が入っており、『サマーウォーズ』のアバターや『おおかみこども』『バケモノの子』の「動物人間」キャラといったように、ケモナー系のファンからも評価が高い。

演出としては、「雲の出る青空」を美しく描写することに定評がある。飛行機雲や入道雲など、「夏の風物詩」が象徴的なシーンを挿入し、強い印象を残す。
また、キャラクターの作画の特徴として、「影をつけない」というのがある。これは、自分が「映像作家」ではなく「絵の作家」というこだわりがあり、「アニメーションは映像ではなく絵画」というスタンスの下で創作しているためである。



オメガモンに関して

今やデジモンシリーズでもトップクラスの人気を誇り、シリーズの顔となった人気デジモンであるオメガモンに関してだが、このオメガモンのデザインには細田氏の声が大きく関係している。
オメガモンは元々、ウォーグレイモンとメタルガルルモンのデザインを掛け合わせたような姿で様々な姿が模索されていた。
そんな中、『ぼくらのウォーゲーム』の監督を務めた際に細田氏は「全体的にヒョロっとしたデザイン」と「つぶらな瞳」というデザインを要望。
それにより、我々のよく知るウォーグレイモンとメタルガルルモンを両腕に備えた細身な本体と、キラキラした瞳を持つオメガモンが誕生した。
そのため、細田守氏はオメガモンの生みの親の1人と言っても過言では無い。




監督作品

太字は脚本も担当。

東映アニメーション


フリー


スタジオ地図


テレビアニメ演出作品






追記・修正はクジラに乗って飛行機雲を見ながらお願いします。

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最終更新:2025年07月16日 21:45

*1 ただし、本人はあくまで「自分の友人」と主張している。