虚構魔獣襲撃
幸せから一変、エレジェンドは再び地獄へと変化した。
しかも今回は戦争ではない。一方的に行われる残虐な狩りだった。
エレジェンドのクリーチャー達の悲鳴が響く中、アスタフ=グラフは部下に呼びかけ、周りの住民を守るよう命令した。
そんな中ライジングリベリオンは、セイヴァージャンヌに致命傷を与えた ゼロデーモンに怒りの攻撃を仕掛けた。
しかし奴はそれを見越していたのか、次元の奥底から 《死界剣ダーク・ゼロサイザー》を持ち出し、それで応対した。
ドラグハート・ウエポンはドラゴンの魂を封印した武器であり、その力は封印されてもなお強大な力であった。
怒りに任せて攻撃しているのに、ライジングはどんどん追い詰められていった。
光の力 革命ドロン・ゴー
アークノアは何とかセイヴァーを治癒しようとしたが、もはやどうにもならない状況だった。
しかし彼女はその命ギリギリのところで、自分の力をアークノアに与えようとしたのだ。
「約束...です。この力は貴方に返します....。ですが...どうか、最期の望みを聞いてください.....。この都市....私達の故郷を.....救ってください」
みなぎるパワーで、苦戦を強いられているライジングに加勢する。
その光のオーラで何かに勘づいた彼は、その想いを押し殺しアークノアと共にゼロデーモンと激戦を繰り広げた。
流石に劣勢と感じたのか、奴はダーク・ゼロサイザーを龍解させるも、もう時すでに遅し。
そのドラグハートごと2人の攻撃がゼロデーモンを貫いたのだ。
真紅竜王の復活
ゼロデーモンを貫き、奴を倒した。
しかしそんな状況下で、彼はニヤッと薄気味悪く笑った。まるで自分が死ぬことは想定ないかのようだった。
その瞬間、聖都市エレジェンドの空は一気に不気味な赤黒い空へと変貌し、黒い渦が巻き上がる 地獄となった。
そして空からは真紅色の巨大な剣が降り立ち、胎児が脈を打つようにして振動をさらに響かせていた。
「ふふふ....私の目的はスカーレットゼロ様の復活と、虚構魔獣の反映だけ。この死など、いくらでもくれてやろう」
奴は灰となる寸前に、その真紅の剣の龍解を完了させたのだ。
その剣からは邪悪な力が解き放たれ、鎖状を破りその封印をこじ開けたのは、かつてアークノア達が倒したはずのスカーレットゼロが進化した 《超真紅竜皇 スカーレットゼロ・ドラグーン》だった。
もはやそのオーラはこれまでと比べ物にならないほど強く、悍ましいものとなっていた。
復活したスカーレットゼロは、手始めに巨大な火球でアークノアとライジングを打ち落としたのだ。
マスティアの覚醒
あれだけの力を持つ2人があっけなく撃ち落とされたことにより、住民達は更なる絶望へと落ちてしまった。
しかしアークノアは自身の持つ革命ドロン・ゴーの力により、持ち堪えており、再び空へと舞い上がりスカーレットゼロに立ち向かったのだ。
しかし未だ光の力を使う感覚を思い出せずにいるアークノアは、変わらず苦戦を強いられていた。
一方、アークノア以上に大きなダメージを負ったライジングは最期の賭けとして自身の半分を与えたマスティアに、革命の力を呼び起こそうとした。
しかしマスティアの身体は人間の少女そのものであり、その革命の力はあまりに大きすぎた。
だがそこに現れたのは星剣王アスタフ=グラフだった。彼は自分の持つ超次元を操る力をオルタの方に与え、2人で一つの力を手に入れさせたのだ。
すぐさま彼女達はアークノアに加勢し、スカーレットゼロを倒そうと戦い始めた。
超真紅竜皇vs2つの革命
スカーレットゼロと2人で立ち向かうことで、その力はやっと互角となった。
アークノアも徐々に感覚を思い出し、その形勢はアークノア側が有利なものへと傾き始めた。
だがここは、展開されたD2フィールドによりスカーレットゼロ側に適した環境となっており、決して油断はできない戦況であった。
何か後一歩欲しいと感じたアークノア。その瞬間、彼の胸に謎の紋章が現れたのだ。 《禁じられし法皇の紋章》は瞬く間に一部のアーク軍にも発生し、彼らにも革命ドロン・ゴーの力を目覚めさせたのだ。
そして側に謎の人物、 《アーク・金翼の聖職者》も現れたことで一気に戦況は逆転。アークノア達が有利なものへと変わっていった。
厄介そうな顔をしたスカーレットゼロは、近くにいた虚構魔獣達を呼び寄せて、アークノアとミネルヴァを前に壁として立ち塞がせた。
しかしその壁を打ち破ったのは、復活したライジングと闇の力を目覚めさせた 《星剣卿アスタフ=ガレット》だった。
邪魔な存在は全て自分達が引き受けると言うように、彼らは虚構魔獣達相手に剣や爪をたてたのだ。
これにより再びスカーレットゼロ相手に集中することが可能となった2人は、一気に勝負を決めようと全力でスカーレットゼロに立ち向かった。
その空での攻防は住民達からも見えており、彼らはどこか希望を感じていたのだ。
もしかしたら勝てるかもしれない。もしかしたら助かるかもしれない.....。
そんな希望が今、赤黒い空の下で輝いていた。
だが、そんな輝きを奴が許すはずもなかった。
まるで待ち構えていたかのように、全てが計画通りだったかのように....2人が近づいてきた瞬間、奴はスカーレットゼロ・クラッシュを放ち、その2人を大きな爆撃で撃ち落としてしまった。
唖然となるライジングやアスタフ=ガレット、そして聖都市エレジェンドの住民達。
しかしそんな数秒の間すら、原始の竜王は許しはしない。
強化されたスカーレットゼロ・クラッシュを何十発も放ち、ライジングもアスタフ=ガレットも、残ったアーク軍も星剣士も革命軍も......その全てを爆撃したのだ。
空から地に落ちるクリーチャー達の雨は、もはや世界の終わりのように感じただろう。
いかんせんさっきまで希望を感じていた住民達は、その終焉のような光景に、もはや取り返しのつかないほどの深い絶望を与えられてしまった。
黒き鋼の輝き
虚構魔獣達の邪悪な声が響く。無邪気で、残酷で、そのうえ悍ましい様子を覚える。
祈ることすら放棄してしまった住民達は、もはやなるべく苦しまずに死ねることを願っていた。
絶望に絶望を塗り重ねられ、希望という希望を奪われた今、この聖都市エレジェンドは崩壊を迎えかけていた。
しかしそんな中、たったひとり立ち上がるものがいた。
それはライジングリベリオンだった。
姿形はボロボロで、もはや立っていられるのが不思議な様子だが、彼自身の持つ不屈の魂が、無理矢理立たせていると言っても過言でなかった。
「誰が...ここで.....負けるものか......」
故郷を無茶苦茶にされた怒り、自分がこうも無様にやられてしまっている怒り、そして大事な存在だったセイヴァーを殺された怒り.....。
彼の怒りはいつなんたる時でも激しく、火山の噴火のように危険で恐怖を覚えるものだったが、この時ばかりはすべての住民達が彼の後ろ姿に僅かながらの希望を感じていた。
「貴様らを打ち滅ぼすまで......オレは......死ぬわけにはいかないんだぁ!!」
ライジングが大きな叫びをあげ、スカーレットゼロに1人で突撃した。
そんな無謀な姿を鼻で笑うかのように、スカーレットゼロは部下達を突撃させた。
もはや回避もせず、一直線に突き進むライジングは、さっき以上にボロボロな姿になりかけていた。
恐怖でうずくまっている住民はその姿に刺されるような苦しみと同時に、激しい希望と願いをかけていた。
暗き闇に輝く、たった一つの光の如く、ライジングは虚構魔獣相手に戦い続けた。
だが所詮光は光でも、線香花火程度の光でしかない。
線香花火の光がどうやって暗き夜の闇を照らしてくれるのだろうか。
スカーレットゼロは向かってくるライジング目掛けて、無情にもスカーレットゼロ・クラッシュを撃ち放ち、今度こそライジングを撃退してしまった。
もう声も音も聞こえない。
輝きを終えた線香花火のように、彼は地面へと墜落していった。
もう希望はない。そんな現実がここにいる全てのクリーチャーの心に行き渡った。
だが、そのたった小さな輝きが、その小さな革命の炎が、アークノアの心に潜む、セイヴァーの心を呼び覚ました。
線香花火のその小さな炎が、まるでガソリンで溜まった黒い水溜りに着火し、燃え上がり爆発するほどの力を覚醒させたのだ。
エレジェンド・スパーク
堕ちていくライジング。その身体を掴んだのは、復活したアークノアだった。
アークノアの身体には、さっきまでとは比べ物にならないほどの光のパワーで溢れており、明らかに内なるセイヴァージャンヌの力が覚醒していることを表していた。
その瞬間、聖都市エレジェンドにいる虚構魔獣達以外の全てのクリーチャーの脳内にある言葉が聞こえてきた。
その声はセイヴァージャンヌのものであり、脳内に直接語りかけてきたのだ。
「皆さん聴いてください。この聖都市エレジェンドには、ある隠された力があります。
全ての希望や光の力が結束し一つになる時、どんな闇すらも払い除ける最強の光が放たれます」
聖都市最強の技、エレジェンド・スパーク....。
それはこの聖都市が崩壊しかける時の最後の希望とも言えるものだった。
「この光の輝きには皆さん自身の力が必要です。中途半端な光では、あの強大な闇の力に太刀打ちできません。
ですから皆さん、どうかお願いします!希望を....奇跡を....すてないでください!!」
その声は確かに全員の元へ届いた。
ライジングの小さな輝きがもたらした、たった一瞬の奇跡だった。
だがその一瞬の奇跡は確かに、クリーチャーの心に伝わり、その希望は潰えることはなかった。
アークノアの身体に光のエネルギーが溜まろうとしていた。
その輝きは虚構魔獣達にとってはあまりに眩しく、鬱陶しいものであった。
すぐさま消し去ろうと攻撃を仕掛けたが、それを食い止めたのはマスティアとオルタだった。
希望を信じた彼女達は、その奇跡が実るのを絶対に妨げないよう、アークノアの盾となることを決意したのだ。
輝きはどんどん膨張していく。
それと比例するかのように、虚構魔獣達の攻撃はどんどん激しくなっていった。
それでも希望は消えることなく、どんどん大きくなっていく。
それはここにいるクリーチャー達全員が、セイヴァーの言葉を信じ、アークノア達を信じ、未来を信じているからこそ為されるものであった。
頼りきりの希望ではない。皆が必ず成し遂げると信じて疑わない勇気の希望だったのだ。
絶対不変の希望は強い力となり、その闇をどんどん晴らしていこうとする。
ついに痺れを切らしたのか、スカーレットゼロがスカーレットゼロ・クラッシュを放ち、アークノアごと爆破しようとした。
だがそれをアスタフ=ガレットが真正面から塞いだのだ。
彼の持つ超星剣エクス=カリバーの鞘である エクス=コリウスの力によって一度だけスカーレットゼロ・クラッシュの力を相殺し、奴に大きな隙を作らせたのだ。
もはや邪魔するものは何もいない。
希望が膨れ上がるのを断ち切ろうとするものはいなかった。
その光は最大にまで溜まり、ついに解き放たれた!!
その光は全ての虚構魔獣を飲み込み、光の中で消滅させていった。
スカーレットゼロは自身の持つ死と闇の力で必死に抵抗するものの、クリーチャー達全員の希望の力には抗うことができず、そのまま最大エネルギーで貫かれ、ついに撃破されてしまった。
闇を貫いた光はそのまま、空に広がる赤黒い雲すら突き破り、ついに上空を再び青き光で満たしたのだ。
その輝きを、奇跡を見たエレジェンド全てのクリーチャーは歓喜に包まれ、その地獄からの解放に心の底から喜びをあげたのだった。
終局
2度の危機を乗り越えた聖都市エレジェンドには喜びの声が尽きることはなかった。
しかし、アークノアが抱えて来たものに、全員が息を呑んだ。
それはライジング....正確に言えば、ライジングの亡き姿だった。
最後まで希望を捨てず、己の命すらもかけて戦い抜いたの姿がここにはあった。
彼の小さな輝きが、最後に奇跡を起こすこととなったのだ。
ライジングとセイヴァー...ふたりの死に、ここにいた全員が悼んだ。
彼らが戦い続けたことで、今の...やっと平和なエレジェンドが戻ってきたのだ。
「ありがとう、セイヴァー...ライジング.......」
アークノアはそう言うと、彼の遺体をある場所まで持っていった。
旅立ち
アークノアとマスティア、オルタは少し休んだ後、聖都市エレジェンドを出ていった。
この街は再びアスタフ=グラフが守ることとなり、もう二度とこんなことが起きないよう、より強く守っていくことを決めたようだ。
今、城の前にはふたりの像が建てられている。
この聖都市エレジェンド、奇跡の象徴としての革命の像であった。
「あの 勾玉....やっぱりそう言うことだったんデスネ」
オルタのふとした一言がマスティアの心の中に響き続ける。
あのとき拾った勾玉、そしてもう片方のセイヴァーのアジトにあった勾玉をふたりの墓に飾ってある。
もう離れなくてもいいように、今度こそ一緒にいられるように。
深い森の奥底....かつて彼らの故郷が存在していた場所に、その墓は建てられた。
かつて、失われてしまったかけがえのない時間を取り戻すために.........
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