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火文明最大都市『メラバスチーム』へ
アークノアと別々の行動をすることになったストライキジークは、火文明に危機が迫っていることを伝えるため、火文明最大の都市“メラバスチーム”へと向かうことにした。
そんなとき《ドライブ・ピッピ》と《ドライブ・コッコ》が彼の目の前に現れた。 どうやら村を救ってくれたお礼に何か手伝えることはないか探していたようだ。 そのことから3体は共にメラバスチームへ向かうことを決めた。
メラバスチームは火文明の最大の都市であり、火山や地熱...あらゆるエネルギーを総動員したこのクリーチャー界でも最先端の都市と言える。
水文明との協力のもと発展した都市であるため、その水文明の最大国家であるブリトア王国が侵略されたことを伝えれば、すぐに火文明の上層部が対策に動くと踏んだのだ。
あれから数十分が経ち、3体はメラバスチームへ到着した。村から出たことないピッピとコッコは、その壮大な光景に思わず口を開けたままになっていた。
「いくぞ、俺達が会いに行くのはこの都市のボスだ。失礼のないようにするんだぞ?」
「「わかったッピ!!」」
そのときだった。突然道の真ん中をある行列が横切ったのだ。まるで軍隊の行進のようにして歩くそのクリーチャー達は、どうやら水文明のクリーチャー達であった。真ん中には水文明の叡智の王と呼ばれる《サイバーロード・エンペラー》がいた。
そのときジークは自身が思っていた以上に、情報の伝わるスピードが早いことと、その対策行動を取るのが早いと感じていた。
まるで最初から何かが起こるのを知っていたように、もしくは侵攻が開始されるから何かしらの行動を取っていたかのようであった。
秘密裏の計画
それはそれとして、ちゃんと情報を伝えにこの都市最大のタワーである『タワーオブクライシス』へと向かったジーク達。
そこには、混沌とした火文明を統治する5体のクリーチャー、五老龍が並んでいた。
早速自分が今まであったことの全てを話すジーク。アナザーバイオレンスが復活し自分の仲間が全員殺され、闇文明が実質的な崩壊状態を迎えたこと。同時期に自然文明の帝国であるヴォルカ帝国が他の文明に侵攻を始め、その影響で水文明が陥落し、光文明が危機的な状況に陥ってることを伝えた。
それを聞いた五老龍はすごく驚いた表情をしたものの、やはりそうかとどこか察しているような顔も見せた。
すると彼らはジークにとある事実を伝えた。
「やはり時代は混沌へと進んでいくのだな。そのときのための準備をしておいて正解だった。....来てくれるか?」
そう言うと彼らは奥の方にいる謎のクリーチャーを招き入れた。そこからやってきたのはさっき街の中で見たサイバーロード・エンペラーであった。
五老龍は彼をとある秘密裏の計画のために呼んだと言った。 その計画は
「最終...兵器だと!?」
困惑するジークにその説明書が配られる。しかしそこには彼の想像だにしない恐ろしいことが書かれていたのだ。
最終兵器E・C・Dは次元を超えた力を手にした人工クリーチャーを作る計画であり、かつて火文明や水文明に存在したとされるクリーチャーの遺伝子を利用して最強の生物を誕生させるつもりのようだ。
しかしここからが問題であった。そのE・C・Dを用いて自然文明に逆に宣戦布告をすると書いてあったのだ。当然自然文明にはヴォルカ帝国以外のあらゆる国がある。それらの国も全てヴォルカ帝国の植民地にされたわけだが、それらも全部焼き払うというのだ。
つまり書いてあることは、自然文明を壊滅させるための計画書である。それによって水文明と火文明以外の文明にも大きく牽制することも目的として書かれていたのだ。
対立
あまりの内容に思わずジークはこの計画書に反対の意見を示した。あくまで敵とするのはヴォルカ帝国ただ一国だけであり、それ以外の自然文明を壊滅させることはやりすぎだと主張した。
何よりピッピやコッコの村のように、自然文明に近いところは巻き添えで破壊されてしまうことなりかねないと彼は言ったのだ。
だがそれに再び反論したのはサイバーロード・エンペラーであった。
自然文明を滅ぼすことは他の文明に一つの警告行為を行うことにあると主張した。今後他の文明にも碧雷の帝王と同じ存在が現れてもおかしくない。故に今後の平和のために、一つの文明を犠牲にして圧力をかける必要があると彼は言ったのだ。
ジークとエンペラーで互いの正義が食い違う。
ジークは関係ない者を犠牲にしたくないという考えを持ち、エンペラーは他の文明を犠牲にしてでも水文明、そして同盟文明の火文明を永久的に守りたいと考えていた。
そんな膠着状態の中、とある提案をしたのは五老龍であった。
「よかろう...ならば英雄龍よ。其方が我々の作ったクリーチャーと戦うのだ」
「なんだと!?」
思いもよらない提案につい乱暴な口を聞いてしまったジーク。しかしそれを気にせず五老龍は話を続けた。
「E・C・Dの力を我々も確認したいところではある。いくら英雄龍と言えど其方たった1人を倒せないようでは、対他文明用の兵器としてはきっと役には立たない。計画は頓挫というわけである。
ならばもし其方が勝てば、その間の対自然文明の指揮権は其方に与えるとしよう。 しかし其方が負ければ予定通り我々はサイバーロード・エンペラーに指揮権を与え、自然文明に宣戦布告を仕掛ける」
それは即ち決闘であった。
互いが互いの正義を貫くための戦いであった。
「いいでしょう。私達のE・C・Dが負けるはずありません」
「....ああ、やってやる。俺も負けるつもりはない」
数十分後、火文明のコロッセオにて英雄龍がとあるクリーチャーと決闘するという情報が出た。それは瞬く間に火文明中に広がり、今日この日コロッセオには火文明のおおよそ7割以上のクリーチャーが集まることとなった。
VSエンペラー・キリコ・ハザードゲノム
「ジークさん!本当にやるんだッピか!?」
「もしかしたらとんでもない重症を負って、アークノアさん達と合流するどころじゃなくなるッピよ!!」
コロッセオに出場する前に、ピッピとコッコが彼を必死に止めようとした。しかしそんな彼らをジークは優しく撫でて答えた。
「安心しろ。俺はそうはならないって約束する。あくまで俺の目的はアナザーバイオレンスの討伐と、碧雷の帝王の討伐。
こんなところで重症を負って戦線離脱なんてあってたまるか」
そう言うと彼はステージへと入っていった。
今回はジークvsサイバーロード・エンペラーの率いるE・C・D軍団の3体である。
ジークはその3体のクリーチャーに連続で勝利することがこの戦いの条件であった。 一見不利に思えるかもしれないが、そうでもないと逆に彼に対自然文明の指揮権を与えるのは危険という判断なのだろう。
ステージに入ると多くの歓声が彼を迎え入れた。
そして目の前にはまず最初の敵《エンペラー・キリコ・ハザードゲノム》が目の前にいた。 かつて水文明にいたクリーチャーの遺伝子を復活させ人工的に作り出したクリーチャー...それがE・C・S。 当然強さも現代のものにアップデートされているはずだった。
2人が向かい合うと沈黙が訪れる。そして次の瞬間
「勝負開始!!!」
審判の声が響き、ジークの一回戦が始まった。
ジークはまずは様子見を行い、奴がどのような戦法を取るのか観察することにした。するとキリコは自身の体から幻影と思われるサイバーロードを生み出したのだ。 それは奴が攻撃するたびにポンポン生まれていき、いつのまにかコロッセオ全体をその幻影達が覆っていた。 その幻影一つ一つすらも強い一撃を持っており、その強さを武器にして、奴らは徒党を組んでいっせいにジークを襲った。
ジークはその一撃の強さを警戒し《フルアーマード・バーニング・ブレイブ》を装備した。
これにより防御力、機動力共に強化されたジークは先ほどまでより安全な立ち回りをすることができた。 そうやってしばらくするうちに、突然幻影達が消滅した。
ジークは一瞬驚いたものの、キリコが再び攻撃を開始するとその幻影は再出現した。
彼はそれを見てあることが思い浮かんだ。それはあの幻影には時間制限があり、それを過ぎれば消えてしまうということであった。そうなったらキリコは再び自分が攻撃をしなくては幻影を出現させることができない...そう考えた。
ジークはさっきまで攻めることを考えていたが、今度は守りの立ち回りに入った。キリコが出した幻影の攻撃を避けて、その時間が来るまで逃げ続ける。
すると再びやってきた。やはり彼の予想通り、ある一定の時間を過ぎるとキリコの幻影は消滅するのだ。
「やはり今がチャンスか!くらえ!!」
すると無防備となったキリコ相手にジークは《速攻戦術 神凪炎羅》を発動。以前よりもはるかに研ぎ澄まされたその術により、キリコの不意をついたことで、たった斬撃一発で撃破したのだ。
VSボルバルザーク・エンペラー
何とかほぼ無傷でエンペラー・キリコ・ハザードゲノムを倒したジーク。このまま次の試合に進む...そう思った時であった。突如としてキリコの体が爆散し、中から実体を伴った幻影が次々と現れ、ジークを襲ったのだ。無限にも思われるその幻影に驚いたものの、ジークはすぐに次々と倒し始めた。
それから数分後、彼は何とか全員を倒すに至る。しかし予想外のダメージと体力の消費により、決して楽な状況でなくなったのは確かであった。
「これより続けて、2回戦を開始する!」
その合図によって暗闇から現れたのは《電脳竜機ボルバルザーク・エンペラー》であった。
さっきのキリコよりも更に強力なオーラを纏う敵の登場に、ジークに緊張が走る。
「勝負開始!!」
先手必勝。ジークは残る3体目のためにもすぐに勝負を決めようと動いた。
しかしそのときだった。突如としてボルバルザークから機械の起動する音が聞こえて、あたり一帯の景色が変化した。
歪な紫色の景色が広がる。最初は訳がわからなかったが、すぐにこの正体を理解した。ジークの攻撃がボルバルザークに届かないのだ。
奴の能力は無限のエネルギーと永遠の時間を操る能力。衰えることを知らない無尽蔵のエネルギーをフルで活用しながら、永遠に続くエネルギーをジークにぶつけることで、いっさいの攻撃を受けなくなるという恐ろしい力であった。 これぞボルバルザーク・エンペラーのE・C・D、無限と永遠の世界であった。
それによりボルバルザークの攻撃を一方的に喰らうジーク。早期決着を図るどころか、逆にいいようにやられてしまう。
「くっ!本当はこのタイミングで使いたくなかったが仕方がない。いくぞ!英雄ハイパー化!!」
すると彼の身体は黄金に輝き、全ての無秩序な攻撃をシャットアウトした。ジークのハイパーモードによってボルバルザークの作り出した無限と永遠の世界を破壊したのだ。
その姿は火文明の誰も見たことがなかったのかかなり驚いた様子で、ジークを見ていた。
「なるほど....あれが英雄龍の切り札というわけか.....」
戦いの様子を見ていたサイバーロード・エンペラーもその様子であった。
無限と永遠の世界を打ち破られたボルバルザークは再び起動しようとするも、ハイパーモードの力がそれを上回り、無限と永遠の世界ごとボルバルザークを斬り倒し、この2回戦を制覇した。 VSボルメテウス・エンペラー・クルーガー
「流石、英雄龍と呼ばれるだけある。私の最高傑作2体を最も簡単に倒してしまうとは」
観覧席から見ていたサイバーロード・エンペラーはジークの戦いぶりを見て素直に感心していた。ある国から魔王を倒す勇者として派遣されたのにも関わらず、仲間を失いその魔王にすら勝てず敗走したというのを聞いて、最初彼はジークのことを甘く見ていたようだった。
「だが、次の相手はそうも行かない。あいつは不動の王....。絶対孤高の存在であり、お前1人が相手できる存在ではない」
そう言うと彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
一方、残り一戦というところまで来たジーク。しかし切り札のハイパー化をこの段階で見せた以上、ここからは自分の戦い方が物を言う時だと考えた。
そうこうするうちに最後のクリーチャーが現れる。
それを見た瞬間、ジークの背筋がゾクっとした悪寒に包まれた。そのオーラの上がり幅はキリコからボルバルザークの比ではない。間違いなく今までとは比べ物にならないほどの強大な力を感じさせた。
《ボルメテウス・エンペラー・クルーガー》...その名前を聞いた時、彼自身も覚悟を決めた。
「勝負開始!!」
そしてついに戦いのゴングが鳴らされる。しかしその瞬間は異質であった。互いに攻撃をせず、睨み合う。
どちらが先に動くかの牽制のしあいであり、静かな緊張感が会場を包んでいた。そして先に動いたのは....。
「!!!」
ボルメテウスであった。身体に取り付けられた砲台が、ジークに目掛けて一直線に光を放つ。
最初彼はそれを真正面から受け止めようと試みた。しかしその1秒後、瞬間的に彼は“死”を予測した。 瞬時にハイパーモードとなり、その攻撃を避けたのだ。その砲台から放たれた光はジークの真横を通り、その会場に大きな穴を開けた。
肝を冷やした彼だがこれを機に、彼からも攻撃を開始する。神凪炎羅でボルメテウスを切り倒そうとした。しかしまるで効いたような感覚がなかった。大きな山を押しているかのような不動っぷりである。
瞬間、今度はボルメテウスがその手を振るった。今度こそ彼はガードで耐えようとしたが、その一撃は彼自身に直撃した。
「ぐはっ!!ばかな!!」
さらに追い討ちをかけようとするボルメテウスに、聖なる炎を吹きかけるも、それに一切怯むことなくこちらに猛スピードで突き進んできたのだ。
奴に防御や妨害は効かない。ジークはその恐ろしいまでの事実を叩きつけられた。 死闘
全くもって攻撃に動じないボルメテウス。どれだけ殴ろうが、どれだけ燃やされようが、その動きを止めることはできなかった。
加えてキリコやボルバルザークとの戦いで体力を減らしていたジークはそろそろ限界を迎えていた。
しかしそれでも、ジークは諦めるわけにはいかなかった。自分の正しさを証明するため、自分の正義を貫くため。
自身が亡くした仲間達との思いを決して無駄にしないため。
「...悪いピッピ、コッコ。少し無茶をさせてもらう」
その瞬間彼の体を白き光の炎が覆った。その炎が出す光は一瞬にして観客達の視界を奪うほどであった。
これはジークの持つ必殺技《不滅と不屈のストライクマイハート》を自身に適応した技であった。
これにより残りの体力全てを使って、彼はボルメテウスを倒す手段に出たのだ。
「ばかな!?まだ切り札が残されていたのか!?」
思いもよらない行動に驚愕しているサイバーロード・エンペラーであったが、先ほどの考えは間違いではない。間違いなくジークにとってハイパーモードが切り札であったのだ。
このモードは著しく自分に負荷を与える技のため、使い続けると自分が死ぬ可能性もあった。
故に彼は最初はこれを使うつもりはなかった。だがここで中途半端本気を出さずに負けてしまえば、それこそ亡くなった仲間達に顔向けできないと思ったのだ。
無論、彼自身も死ぬつもりはない。しかし死ぬ寸前でも生き続け目の前の壁を打ち破る覚悟を見せたのだ。
向かってくるボルメテウス。ジークはそれに対して巨剣を振るった。先ほどまでなら大したダメージにもならないであろうこの技も、今の彼ならボルメテウスを傾け倒すこともできた。
しかしそれでも奴は負けていない。背中の砲台からジークに目掛けて全てを焦がすビームを放った。 だが今度はジークがそれを正面から受け止め、跳ね返したのだ。
一進一退、互いに譲ることなく本気の戦いを繰り広げていた。しかし決着はいづれつく。自身の制限時間を感じたジークはここで勝負に出た。
神凪炎羅と《英雄王秘伝 ジョーカー・ストライク》を使いボルメテウスを打ち倒そうと動いた。
激しい音と共に極太の光線がボルメテウスに向かう。対してボルメテウスも《ボルメテウス・ロード・フレア》を放った。
爆発的なエネルギーがぶつかり合う。しかし刻々とジークの身体に限界が迫る。
「負けて....たまるかあああああああ!!!」
瞬間的に彼のジョーカー・ストライクがボルメテウス・ロード・フレアの出力を上回る。そのときジョーカー・フレアが全てを呑み込み、轟音を奏でてボルメテウス・ロード・フレアを正面から打ち払い、ついにボルメテウス・エンペラー・クルーガーに強大な一撃を与えたのだ。
始まる本当の戦い
ついにボルメテウスに大ダメージを与えたジーク。しかしこの瞬間、彼はパタリと倒れてしまった。ついに《不滅と不屈のストライクマイハート》の時間制限が来てしまったのだ。
それと同時、砂埃が消えてボルメテウスの姿が徐々に見えてきた。ボルメテウスも決して無事ではなく、もはや原型が残らないほどボロボロになっていたのだ。
だがそのとき、突如としてボルメテウスの身体から紫の光が放たれた。これはボルメテウス自身が出した《叡智と暴炎の命令》による修復機能であった。
それによりボルメテウスの傷ついた部分は次々と修復され、ついには完全復活を遂げた。
「...ということは、勝者!ボルメテウス・エンペラー・クルーガー!!よって今回の総合的勝者はサイバーロード・エンペラー!!」
まさかのジークの敗北となってしまった。そのことにピッピとコッコは絶望的な表情をしていた。
しかしこの状況...一番驚いていたのは、サイバーロード・エンペラーであった。なぜならば、彼自身ジークのあの攻撃をボルメテウスが耐えられるわけないと思っていたからだ。 それに彼はE・C・Dクリーチャー開発の全てに関わっていたはずだが、奴の最後に使った《叡智と暴炎の命令》は彼自身が知らない機能だったのだ。
「ちょっと待て!いったんボルメテウス・エンペラー・クルーガーのメンテナンスを行う。何か嫌な予感がする!」
観覧席から立ち上がり、ボルメテウスの元まで向かおうとしたその時だった。突然ボルメテウスが動き出し、その砲台を観客席の方に向けた。誰もが一瞬、静止しただろう。しかしその困惑の静止をやつが気にするはずもなく、その観客席に向けてボルメテウス・ロード・フレアを放ったのだ。
それはあまりに一瞬であった。そこにいた観客は逃げることもできず、その炎に呑み込まれ、消滅してしまった。
そのとき全員が事態を把握する。そして皆が声を上げながら逃げ惑い、このコロッセオは大混乱へと巻き込まれた。
「バカな!?ボルメテウス・エンペラー・クルーガーには対象のクリーチャーしか攻撃しない機能があったはずだ!!」
青ざめた様子で暴走するボルメテウスを見るサイバーロード・エンペラー。そんな彼の元に、何者かがやってくる。
それは五老龍であった。
「ふふふ....よくぞやってくれたサイバーロード・エンペラーよ」
「あの厄介なジークを戦闘不能にまで追い込んでくれたのだからな」
「どういうことです!?まさか貴方達がボルメテウスに、機能を追加したのですか!?」
「その通りだ。修復機能、無差別攻撃機能...その全ては我々が追加した」
あっさりと告白したことにサイバーロード・エンペラーは絶句していた。
だがそれでも納得はできなかった。
「なぜです...なぜ....?貴方達は火文明を治めるこの文明のトップじゃなかったんですか!?」
「トップ?ああそういうことだな。....ならばその正体を見せてやろう」
瞬間、五老龍の身体から黒い煙が放たれる。そしてその煙から出てきたのは全く別のクリーチャーであった。
「!!!!」
「五老龍はもういない。我々が全員殺した。そして私の名は《帝下兵竜 グロリアダークラギエル》。これより火文明侵略を開始する」
目の前に現れたのは、あれだけ敵としていたはずの自然文明、ヴォルカ帝国、碧雷の帝王直属の部隊、帝下兵竜軍であった。
明かされる真実
五老龍の正体は帝下兵竜、碧雷の帝王の送り込んだ兵士であった。
正体を晒し、演技をしなくなったダークラギエルはこの侵攻作戦の全てを語った。
実は各文明には戦争を起こす前から帝王のスパイを送り込まれており、帝王からの命令を待機していた。そしてこのときすでに五老龍は奴らによって殺害されており、すでに成り代わっていた。
そして無沌世壊クリーチャー達が闇文明の瘴気の怨霊殿にてアナザーバイオレンスを復活させたことを聞いたと同時に、侵攻作戦を開始したのだ。
そのため周りの文明から見ると突然あらゆる文明に同時に侵略をかけられたように見えたのである。
火文明には古代兵装軍を、水文明にはギアドール軍を、光文明には神蟲を送り込んだ。
しかし古代兵装軍がファイアー・バードの森の破壊と、シャイニング・カリバーンの魂を封じたドラグハートの破壊に失敗した時、彼らは第二の作戦に移行した。
それがE・C・Dの強奪であった。本来であれば古代兵装軍と共に火文明を侵略するつもりだったが、それが無理になってしまった以上、新たな戦力が必要となった。 それがきっかけとしてサイバーロード・エンペラーと接触。そして彼に最強の生物兵器を作らせ、さらなる帝国の強化を図った。
「ばかな....ならば私は利用されていたというのか......」
「その通りだとも。かつて自身の故郷を我が帝国軍の配下に侵略され、滅ぼされたお前なら簡単に乗ってくれると思ったのだよ」
「ッ!!貴様!!」
サイバーロード・エンペラーは怒りを露わにして、ダークラギエルに殴りにかかった。
しかしダークラギエルはそれを難なくかわし、彼を撃沈。動けなくなったところを拘束した。
「ふふふ...まあ見ていくがいい。お前の作った兵器のせいで火文明が滅ぼされていく様をな」
「くっ!!くそォォォォォォォォ!!!」
何もかも奴らの思惑通りであった。
ジークとサイバーロード・エンペラーの対立。そして決闘。
全ての布石はこの侵略のためにあったのだ。
奮闘する鳥達
暴走するボルメテウスから逃れるために逃げ惑う火文明のクリーチャー達。
しかしそこに立ち上がる者がいた。ピッピとコッコである。 ヴォルカ帝国の邪悪な思惑を知った二羽は、火文明を守るために再び合体し《永遠の不死炎鳥 ドレイドリー・サクラカグヤ》となってボルメテウス相手に立ち向かった。
若干ボルメテウス相手に不利ではあったが、自身の不死性を存分に利用した後先を考えない自爆攻撃の連打により、互角に渡り合っていた。
「お前らだけは絶対に許さないッピ!!」
サクラカグヤは《神秘なる炎翼の礫》を放ち、ボルメテウスを一撃で仕留めようとした。
しかしその攻撃は何者かによって邪魔された。それは他のE・C・Dのクリーチャーであった。キリコやボルバルザークだけでなく、今回決闘に利用されなかった《電王超竜 バジュラ・ジ・エンペラー》や《アストラル・エンペラー》といったクリーチャーまでもが帝下兵竜軍によって操られていた。
ただでさえ厄介なクリーチャーが複数いることで身動きが取れなくなるサクラカグヤ。そこにさらに追い討ちをかけるかのように、ダークラギエルが現れる。
そして《帝下装魂 ナイトメアホーン》を装備してサクラカグヤの前に立ち塞がった。
すると突如としてサクラカグヤの力がなくなり、全くもって身動きが取れなくなった。
これはダークラギエルの能力とナイトメアホーンの超魂Xによる力であった。
唯一あった希望すらも打ち砕かれて、火文明には絶望の空気が広まっていた。
復活する炎
次々と破壊されていく火文明。サイバーロード・エンペラーはその光景にかつての自分の滅ぼされた故郷をフラッシュバックした。
このまま見ているだけでは再び全てが終わってしまう。
彼がそう感じた瞬間、不思議と体が勝手に動いた。あまりにも脈絡のない行動だったためか帝下兵竜がその動きに対応することができず、逃してしまった。
火の粉が散る戦場を駆け抜け、彼が辿り着いたのは気絶するジークの元であった。 彼の手元にはあるものがあった。それはボルシャックのDNAである。 本来であればもう1体E・C・Dを作る予定があったのだ。しかし奴らに利用されていることを知った以上、もうあれを作るわけにはいかない。
「...すまない英雄龍よ。このままではこの火文明も...いづれ水文明も全てが奴らによって侵略されてしまう。
だから頼む英雄龍!奴らと...私のE・C・Dを止めてくれ!!」
そう言うと彼は倒れるジークにボルシャックのDNAを刺し込んだ。
瞬間、彼の中で何かが爆発的なまでに膨張する。湧き上がる炎、勇気、正義....。 沈んでいた彼の魂はいま一度動き出そうとしていた。
手がぴくりと動く。そして立ち上がった。
「ぐおおおおおおおおおお!!!!」
瞬間、黒い煙が立ち上るメラバスチームに巨大な光が天を貫いた。今までとは比べ物にならないほど爆発的なエネルギーがここら一帯を支配した。
ストライクジークはボルシャックのDNAを取り込むことで《ボルシャックジーク・ガチャレンジ・ドラゴン》へと進化したのだ。
「英雄龍...!!」
「........」
目を覚ましたジークはあたりを光景を見て全てを悟った。そして再びサイバーロード・エンペラーの顔を見て言った。
「...皆まで言う必要はない。全てを理解した」
「英雄龍....私を責めないのか?」
「........」
「奴らは私の作ったE・C・Dを乗っ取ってこのようにしたのだ。...そうだ私が騙されなければこんなことには....。何が叡智の王だ!私はとんだ愚か者だ!!復讐や憎しみなんぞに心を支配されてなければ!!」
悲痛な叫びがこだまする。最も憎いはずの相手に利用されたこと...それが彼の中でとんでもない怒りと悔しさを滲ませていたのだ。握りしめた拳の打ちどころを失い震えるしかなかった。
するとジークが口を開く。
「最初、お前と会った時、なぜだかこいつとは気が合わないと感じていた。...それもそのはずだ。最初のお前は間違いなく、仲間を失って自暴自棄になりかけていた、俺が最も嫌うかつての俺と一緒だったからだ。
...仲間を失った時、その時初めて自分の英雄龍っていう称号を憎く思ったよ。誇り高い称号が初めて重く感じた」
ジークは前に出て、火文明を暴れるE・C・Dの姿を目で捉えた。
「でもそれで終わりでいいはずがない。
俺達は何かを積み上げてここまできたはずだ!俺の英雄龍って称号もお前の叡智の王って称号も、ただ与えられたわけじゃなかったはずだ。 今その称号が重たく感じたなら、その貧弱さを克服できるほどまた強くなればいい!それが俺達にならできるはずだ!! 立ち上がれサイバーロード・エンペラー!!今この状況で、お前にはお前にしかできないことが確実にある!!」
「.....!!」
ジークはそう言うと、暴走するE・C・Dのクリーチャーに目掛けて、突っ込んで行った。
残ったのはへたり込むサイバーロード・エンペラーだけである。
「...私にしか...できないこと.....」
彼はしばらく沈黙した後、何かを思いついたかのように立ち上がった。その顔は先ほどまでとは違い、覚悟を決めた表情であった。
乱闘の決戦
ボルシャックの力を覚醒したジークはE・C・Dが暴れる戦場に赴く。街を破壊しまくるボルメテウス達に、その力を放った。
全てを焼き尽くす炎の力は強大であり、たちまち奴らに大ダメージを負わせ、こちらに注意を向けることに成功した。
E・C・Dのクリーチャー達がいっせいにジークに攻撃をしかける。しかし彼はその攻撃を難なくかわし、すぐにカウンターの一撃をお見舞いしてやった。暴れるE・C・Dを次々と撃沈させていくジークだが、やはりボルメテウス・エンペラー・クルーガーは強敵であった。
叡智と暴炎の命令によって強化されたボルメテウスは、ボルシャックの力に覚醒したジークの攻撃を喰らってもピンピンしていた。
しかしそんなとき、地面の下の方から声が聞こえてきた。そして次の瞬間、E・C・Dのクリーチャー達が次々とやられていったのだ。
ジークはその姿を確認すると、そこには覚醒したピッピとコッコの姿があった。彼らはジークがボルシャックの力に目覚めたのと同時に、影響されるようにして同じくボルシャックの力に目覚め、《新英雄鳥 ボルシャック・ドライブ・ピッピ》と《新英雄鳥 ボルシャック・ドライブ・コッコ》という新たな姿へと変身したのだ。
「やっと復活したんだっピね!!」
「...ああ、すまない約束を破ってしまって」
「問題ないっピ。でも今は僕達が一緒に戦えることが何よりも嬉しいっピ!!」
「....ふっ、ああそうだな!!」
雄叫びを上げるE・C・Dのクリーチャー達に向かって3体の英雄は炎を纏って再び突撃していった。
立ち上がれ
ジーク達が戦っている中、サイバーロード・エンペラーはある場所にまだ向かっていた。
それは火文明クリーチャーの避難所である。
サイバーロード・エンペラーはE・C・D作成者であるが故に分かっていた。確かに強化され強くなったジーク達だが、たった3体ではあの大勢いるE・C・D軍に勝つのは厳しいということを。
勝てたとしても、彼らが負うダメージも決して軽くない。 だからこそ、彼は協力をあおぎにきたのだ。
避難所に到着すると、サイバーロード・エンペラーは真っ先に全員に土下座をしたのだ。
いきなりやってきたかと思ったら急に頭を地面につけだした彼を見て火文明のクリーチャー達はかなり驚いていた。
「火文明の住民の皆様。....私の作ったE・C・Dのクリーチャー達があなた方に大変迷惑をかけてしまいました。きっとトラウマを抱えてしまった者もいるかもしれません。
だけど、どうかお願いします!私と...彼らと共にあいつらに立ち向かってもらえないでしょうか! 彼らだけではあいつらに勝つのは厳しいかもしれない!だから、あなた達の力が必要なんです!」
「........」
しばらくの沈黙が続いた。サイバーロード・エンペラーにとってはかなり重苦しい時間だっただろう。
そんな中1体のクリーチャーが口を開いた。
「....気に入らねぇな」
「......」
「何が気に入らないって、俺達があの程度でトラウマを抱えると思われていたことだ」
「....え?」
するとそのクリーチャーは立ち上がった。するとそれにつられて、他のクリーチャー達も立ち上がったのだ。
「むしろ街を無茶苦茶にするあいつらをやっとぶっ倒せるチャンスが来たってことだろ?」
「さっきは小さなクリーチャー達もいたから逃げたが、俺らは本来戦いが大好きな荒っぽい性格なんでね」
「それよりいいのかい?アタイらがあんたの作ったものぶっ壊すことになっても」
なんとその場にいるクリーチャーのほとんどがサイバーロード・エンペラーの願いを聞き入れ立ち上がったのだ。
彼らの顔にはまだ闘志が残っていた。まるで機会を待っていたかのように彼らはこれから起こる戦いを受け入れたのだ。
「みんな....」
「...あんたは自分の作った兵器が暴走して負い目を感じているかもしれない。...が、俺達はあんたが火文明や水文明のために頑張っていたのを知ってるんだ。
そんなあんたの必死の頼みを断る奴なんてここにはいないぜ」
そしてついに、避難所にいた全てのクリーチャーが立ち上がった。
「いくぞお前ら!!火文明は俺達の手で守るんだ!!」
「おおおおおおおおおお!!!!!」
燃え盛る不屈と勝利の英雄達
ジーク達はE・C・Dと互角に渡り合っていた。
しかし数がかなり多くそれもかなり限界が近づいていた。ボルシャックの力に覚醒したとはいえ、その相手にできる数も限度がある。 何より未だにダメージを一つも負っていないボルメテウス・エンペラー・クルーガーがある以上、かなり厳しい戦いであるのは確かだった。 しかしそのとき
「うぉら!!ぶっつぶれろ!!」
「!!!」
「お前の相手は俺達だ!!」
突然知らない声が聞こえジークは振り返る。するとそこには逃げたはずの火文明のクリーチャー達がいたのだ。
彼らはサイバーロード・エンペラーの作り出した武器を装備し、E・C・D軍団に立ち向かっていた。その顔に恐怖はなかった。闘志が燃やされた希望の表情に満ちていた。
「安心しろ英雄龍!!俺達がついてる!!」
「絶対に負けはないわよ!!」
彼らの姿にジークはかつての仲間を思い浮かべた。そんな面影に一瞬、気を取られそうになったが、彼はこの状況、この場面にて...間違いなく勝ち目が見えていることを確信した。
「あぁ最高だなお前ら!ピッピ!コッコ!!俺達も負けてられねぇぞ!!」
「当たり前だっピ!!」
「絶対に勝ってやるッピよ!!」
一方、その様子を見ていたグロリアダークラギエルはイラついたような表情を見せていた。
恐怖のどん底に落としたと思っていた火文明の連中が再び舞い戻ってきたのだ。しかもいっさい気にしていないというそぶりに彼は苛立ちを隠しきれなかった。
「ふざけるな。この侵略の邪魔はさせない!!」
ダークラギエルは再び超魂Xを装備し、戦場に飛び込もうとした。
しかしそこに何者かが割って入ったのだ。 驚いたダークラギエルはその顔を見る。それはサイバーロード・エンペラー率いる他の火のクリーチャー達であった。
「お前の相手は私達だ。直接ぶっ倒してやる」
「...この兵器オタクがッ!!我らに勝てると奢ったな!!」
ついに英雄達と侵略者の最後の戦いが始まろうとしていた。
英雄軍VSE・C・D
ついに戦いは最終局面を迎える。先ほどまで多対3の構図だった戦いが、火文明のクリーチャー達の到着により逆転した。
勇気ある彼らのおかげにより、ジークはボルメテウス・エンペラー・クルーガーと再び一対一で戦うことができるようになった。
「今度は完璧に勝ってやる」
そう言うとジークは燃え盛る炎を拳に宿し、ボルメテウスに大きな一撃を与える。それでもやはり奴は簡単には倒れず、どっしりと構えていた。
「まだまだぁ!!」
それでもジークは諦めず、もう片方の拳もボルメテウスに突きつけた。彼は不思議と勇気の力が湧いているのを実感していた。
仲間がいることで1人じゃないという事実が彼をより強くしていた。 そしてそれはサイバーロード・エンペラーが注入したボルシャックのDNAにも深く影響しており、いつのまにかジークの力はどんどん強大に膨れ上がっていく。
最初はどっしりと構えていたボルメテウスも次第に押され始めて、攻撃を余儀なくされた。
ボルメテウスは再び砲台に力を溜めて《ボルメテウス・ロード・フレア》を放った。決闘の時以上に強大な火力。喰らえばひとたまりもないだろう。 しかしジークも同時に技を放つ。それも決闘の時とは全く違う技。ここにいるみんなの力が宿った絆の必殺技であった。
全ての力がこもった最強の必殺技をジークは放つ。そのビームは勢いが止まることを知らない。
ボルメテウスの放った炎すら自分の力へと変換し、より強大な力となりボルメテウスに向かって突き進む。
奴はそれをガードしようとしたがもはや手遅れ。全てを覆す炎の力によりついにボルメテウス・エンペラー・クルーガーを撃破したのだ。
因縁の決着
ジークがボルメテウスを撃破したのをきっかけに、次々とE・C・Dを倒していくクリーチャー達。
その様子をダークラギエルは冷めた目で見ていた。
「あの倒されよう...どっちにしろあれらで自然文明殲滅は最初から無理な話だったな。なぁ?叡智の王」
ダークラギエルとサイバーロード・エンペラーは同じく一対一の戦いをしていた。しかしもとよりサイバーロード・エンペラーは研究者よりのため、戦いはあまり得意ではなかった。対してダークラギエルは帝下兵竜の分隊長であり、戦いの経験も豊富であった。
何より超魂Xという能力が彼の力を底上げしており、何がどうやっても叶わないという状況であった。
「我々は一度この場を引くしかない。悔しいが陛下の怒りも免れないだろう。だが、お前達には関係のない話。再び来る時はもはやお前らではどうにでもならないほどの軍隊を率いてやってくる」
そう言うと奴はサイバーロード・エンペラーに近づく。そして持っていた剣を彼に突き立てた。
「しかし、貴様だけは殺しておこう。何より腹の虫が治らないのでな。お前を殺し、水文明侵略の際にその首を手土産にしてやる」
そう言ってその剣を振り下ろした。...そのときだった
「...私は、はなからお前に真正面から勝とうとなんて思っていない。お前と私の力の差は私が一番分かっているからだ」
その瞬間だった。突然彼から3つの力が放たれた。《叡智と暴炎の命令》、《英知と追撃の宝剣》、《魂と記憶の盾》を発動したのだ。
盾でダークラギエルの攻撃を防いだ後、自身を命令の力で強化し最高の威力となった宝剣を奴に叩きつけたのだ。
彼は最初から50%の力でしか戦っていなかった。とはいえ最初から100%の力で戦っても、向こうがそれを上回るに違いなかった。
だからこそ奴が完全に油断して近づいてきたタイミングで、自身の本気を見せたのだ。もはや殺される手前の虫に警戒する存在はいない。
彼は自分が虫としての立場にいることを存分に利用した作戦を実行した。
「ぐがっ!貴様ッ!!」
「油断したな。少し卑怯かもしれないが、これが私にしかできない戦い方だ。お前のその奢りと共に、ここに散れ!!」
そう言うと彼は再び宝剣を発動させた。完全に不意を突かれたダークラギエルにそれに対応できる力は残されてなかった。
そのままその攻撃を直に喰らったことで、奴は崩壊し、ついに打ち倒すことに成功した。 サイバーロード・エンペラーが故郷の仇討ちを成し遂げた瞬間である。 火の英雄龍と水の叡智の王
サイバーロード・エンペラーがダークラギエルを倒した時、他の火文明のクリーチャー達も帝下兵竜軍、そしてE・C・Dを撃破した。
そしてついに彼らは火文明を守り切ったのだ。
この夜メラバスチームでは熱狂的なパーティが行われた。ピッピやコッコも参加し、この日はかなり盛り上がっていただろう。
しかしこの夜のパーティに、ジークは参加していなかった。 理由は一つ、彼の戦いはまだ続いているからである。
ここから先、光文明の聖都市エレジェンドにてアークノア達と合流することになっているジークはすぐにでもここを出発しなくてはならなかった。
しかしもしピッピやコッコがいたなら、彼らもついていきたいと思うかもしれない。だがジークは彼らにはファイアー・バードの森を守っていてもらいたいという気持ちがあった。 そして何より、この先の戦いで彼らが死んでしまう可能性もないとは言えなかったのだ。
ここから先はジークの仲間の仇討ちと、帝国討伐という目標のために動くのだから。
皆がパーティで盛り上がっている中、1人身支度を整える。そんな中誰かが声をかけてきた。 それはサイバーロード・エンペラーであった。
「どうした?パーティに参加しないのか?仲間がお前のことを探してるぞ」
「まあな、急用ができたと言っておいてくれ」
そう言ってすぐにでも立ち去ろうとするジーク。それをサイバーロード・エンペラーは止めるわけでもなく、ただその背中を見つめながら言った。
「お前には色々と教えてもらった」
「........」
「私はまだ叡智の王と呼ばれるには不十分だったと思い知らされた」
「そうか、まあ...俺も英雄龍と呼ばれるたびに少し気恥ずかしさがあるから、同じなのかもな」
「まあ、私はしばらくこの火文明に滞在する。五老龍がいなくなった以上、誰かがここを統治しなくてはならないからな。その中で叡智の王ってのを探ってみるよ」
「あぁ、それがいい」
その後沈黙が続く。話は終わったと思ったのか、再び歩みを始めるジーク。しかし
「.....最後に一つ聞かせてくれ」
「...なんだ?ずいぶんと引き留めるじゃないか」
「...お前、この戦いが終わったあとどうするつもりだ?」
ジークの足が止まる。それは彼にある意味一番聞かれたくないことを聞かれたからだ。
「...今忙しいなら仕方がないが、彼らもみんなお前に感謝の言葉を伝えたがっている。もし戦いが終わったなら再びこの火文明に戻ってこい。そしたら、今度はお前を交えてもう一度パーティでもやろう」
「.......そりゃ楽しみに待ってるぜ」
「....そうか。.....ありがとう英雄龍」
そう言われた後、ジークはやっと火文明の門を通り過ぎた。もうサイバーロード・エンペラーも声をかけてはこなかった。
彼にはかつて大事な仲間がいた。そんな仲間のために、自分は一度アークノアと一つになることを断った。
しかしもうその仲間はいない。そして今ではその仇討ちが完了したら、彼と一つになることを承諾する考えもあった。 彼がなぜ英雄龍と呼ばれたかと言えば、その心にある。 強さだけでなく、自分より仲間を大切に思う心が、彼を英雄とたらしめていた。故に、彼は全てを救った後の自身のことを考えていない。 再びここに戻ってくることがあってもそれが最後となるかもしれなかった。
それが彼の覚悟であり、英雄龍としての生き様なのである。
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