ファイアー・バードの森
殲滅の魔王から逃げ延びたアークノア達はとある森まで来ていた。各々が自分達の力不足に嘆いていたところ、森の奥から大きな物音が轟いた。
何事かと思い、彼らはその場を動き音のする方へ向かうと、そこには村があった。
どうやらここはファイアー・バード達が住む村のようであった。
しかしその様子は自然に佇むのどかな村の様子ではない。
彼らファイアー・バード達は武器を持ち、大声で叫び、ピリピリとした空気が漂っていた。
この空気はまるで戦争でも始めるかのようなものであった。
古代兵装軍との戦い
この異質な空気感にただならぬ予感を巡らしていたちょうどその時、この村の中央に大きな爆弾が放り込まれた。
その瞬間、彼らのリーダーと思われるファイアー・バードが声を上げて、森の中を突き進んでいった。
アークノア達もその後ろを着いていくと、相対している敵はまるで古代の遺跡から蘇ったかのような異質ななクリーチャーであった。
しかしその拮抗はわずかにファイアー・バード軍が上回っていた。数の力で敵を押し続けるファイアー・バード軍はどんどん力を増していき、今にも逆転を狙えそうな状況にまでやってきていた。
このたった1体のクリーチャーの登場により戦況は覆り、一気に古代兵装軍が有利となってしまった。
出陣
アークノア達はその戦いを見ていたが、古代兵装のあることに気がついた。それが奴らのオーラはこの前戦った無沌世壊のクリーチャー達と似たようなものだったのである。
つまり彼らは無沌世壊と同じ“碧雷の帝王”の傘下のクリーチャーであることが伺えた。
普通なら戦争というのはどちらの味方もしないアークノアであったが、この前のエレジェンドでの平和を乱す戦争や、今回の邪悪な者による侵略には助太刀する心構えでいた。
古代兵装軍の目的が不明な以上、あのときと同じような取り返しのつかないことになってはならない。そう思ったアークノア達は陰から飛び出してファイアー・バード達の援軍として戦いだしたのだ。
両者ともにその突然の参入に驚くものの、ファイアー・バード軍は今が逆転のチャンスと言わんばかりに、流れに乗って古代兵装軍を攻めて行った。
古代兵装軍は戦略を変えて、アークノア達とファイアー・バードの両方を相手しようとしたが、彼らが桁違いな強さを持つことから、その戦略の変更が仇となり、一気に追い詰められてしまった。
そしてアークノアはエグゾリュートと対面し、激しい戦いを繰り広げた。
大地を枯らす黒き自然のオーラを放ったものの、それはアークノアの 《ヴレイン・アークストライク》によって相殺されてしまった。
そしてエグゾリュートは、ハイパーモードとなったジークに隙を見せてしまい、一瞬のうちにして一刀両断され、ついに撃破されてしまった。
解放されし力
アークノア達の登場により一気に前線を押し上げることに成功したファイアー・バード達。このまま敵を全て押し除ける....そうなるはずだった。
突然古代兵装軍の身体が光だし、先ほどまでとは桁違いのオーラを放つようになった。
まさにマナが溢れ、得体の知れない力を次々と発揮する不気味さと大地の力を感じるものであった。
恐ろしいことに古代兵装軍ほぼ全てがこの解放により力を増幅させたため、瞬く間に戦況は再び覆った。
アークノアやストライクジークは拮抗することはできたものの、厄介さはまるで比にならなくなり、押し寄せる敵の軍勢を食い止めることが難しくなった。
「え!?」
「この光は!?」
「マスティア!!」
突然放たれた光により、マスティアはこの森のどこか遠くに飛ばされてしまった。強制的に合体を解除されたオルタは、マスティアを追いかけようとしたものの、転移という形で分離させられた以上探すことは無理だと分かってしまった。
「...まずいことになった」
「あの軍勢と敵の数....。どうする?アークノア...オルタ」
力を増大させた古代兵装軍と全ての巨大なエネルギーを放つドラグハート・フォートレス。
アークノア達やファイアー・バードはこの絶望的な状況に戦慄していた。
新たな出会いと蒼き神剣
マスティアはどこか遠くに飛ばされた場所の木の枝に引っかかっていた。
鬱蒼した森林の中で身動きも取れず、たった1人になってしまった事実に不安を覚えていた彼女だったが、ちょうどその横を誰かが通り過ぎようとしていた。
「だ、だれかたすけて!!」
必死に助けを呼ぶと、その声を聞いて驚いた様子で急いでこちらに向かってきた。
助けに来たのは 《蒼勇龍覇 アカシア・シェレン》という少年と 《ドライブ・ピッピ》という小さな鳥であった。
木から彼女を解放してもらい、礼を言ったマスティアは自分のことを話したのだ。仲間のこと、ここに飛ばされた原因も。
その話を聞いたドライブ・ピッピはかなり絶望した表情を見せた。
「だったら、なおさらあの剣を早く見つけなくちゃね」
「あの剣って?」
今度はアカシア達が事情を話し始めた。彼は自分の国を救うためにとある剣を探しているようであった。その剣にはとあるドラゴンの魂が秘められており、そのドラゴンの力は敗北を勝利に変えるほどの強い力を持つと言われているようである。
そしてその道中でドライブ・ピッピと出会ったようであった。彼は侵略されかけている自分の村や囚われている自分の親友を救うために、助けを求めてた。
3人の思惑が一致したことでしばらくその剣探しに付き合うことにしたマスティア。
真っ暗な森の中を手探りに進み続ける。不気味なクリーチャーの声が響く中、マスティアやドライブ・ピッピは嫌な想像を頭の上で巡らせたりもしていた。
そんなとき、暗い森の中で一つの光が見えてきた。
まさかと思い3人はその光の方へ突き進むと、そこには蒼き剣が突き刺さっていた。
見た瞬間、マスティアはこれがただの剣でないことを察した。
かつて戦った敵と同じく、この剣はドラグハート・ウエポンだと気がついたのだ。
神剣からの言葉
「これが...蒼き神剣....?」
明らかに普通じゃない存在感を放つその剣を前に3人は息を呑んでいた。
マスティアは恐る恐るその剣に触れようとした。しかし
手に触れた瞬間、バチっと大きな音が鳴り、彼女を弾き返した。
一瞬驚いたものの、それがドラグハートによる拒絶だということは早々に理解した。
瞬間、一同の中で緊張した空気が広がる。もし誰もこの剣に受け入れてもらえなかったら、ここへきた意味がなくなってしまう。
ドライブ・ピッピもその剣に触れようとしたが、より大きな抵抗を感じて、弾かれてしまう。
残すはアカシアただ1人。彼も恐る恐るその剣に手を触れさせた。
瞬間、ビリビリと彼の身体中に電流が走る。彼も拒絶されたのだろうか?
一瞬そう感じたがどうやら様子が自分たちと違う。激しい電流を身に纏いながらも、その手は剣をずっと掴んだままである。
片手...そこからさらに両手で掴み、彼はその電流に身を任せるようにして、その剣を地面から抜き出そうとした。
数秒...数十秒....その瞬間、激しい雷が彼の元に落ち、その剣が地面から抜けたのだ。
「ついに....!!」
「剣が解放された!!」
瞬間、彼らの脳内にあるものが巡った。
それはどこかの王国、謎の敵、押し寄せる敵の軍勢、碧色の雷....。
そして最後に今自分達のいるこの景色....。
全てこの剣に封じられているドラゴンが見ていた景色であった。
(私をこの剣から解放することができますか?)
もしかしたらこの剣のドラゴンからそういう言葉を受け取ったのかもしれない。
アカシアは改めてその剣を握り、その重さを重圧を....全て感じ取った。
「2人ともありがとう。行こう、ドライブ・ピッピ。まずはみんなを助ける方が優先だ」
友の最悪の姿
ファイアー・バード軍&アークノア達VS古代兵装軍の戦いは熾烈を極めていた。
アークノア達はこれ以上攻め込まれないように必死で対抗し続けるが、先にファイアー・バード達の体力が無くなるのが先であり、どんどん追い詰められていた。
しかしそのとき、蒼き光が古代兵装軍へと降り注いだ。
後ろを振り返ると、そこにはマスティア達と 蒼き神剣を持ったアカシアとドライブ・ピッピがいた。
「マスティア!!無事だったのデスネ!」
「まさかその剣は!!」
アークノアは彼の持つその剣を見て、目を丸くして驚いた。その剣にはアークノアの水の魂を持つ龍が封印されていると確信したからだ。
とはいえそれはそれとして、確かな強力なパワーを持つ存在が加勢してきたことで、ファイアー・バード達は勝機を見出した。
戻ってきたマスティアと、どこかに行っていたドライブ・ピッピ、そして謎の少年アカシアを加えて、古代兵装軍へと突撃していった。
だがその流れを危険なものと判断した古代兵装軍は謎の踊りと唄を奏でた。
その瞬間、スカモル・ズューナから巨大な陰が現れ、アークノア達の前に立ちはだかった。
その存在が目の前に来たとき、アークノアやジーク、そしてマスティア達はただの脅威だと感じ、武器を構えていた。
しかしファイアー・バード達は少し違った。明確にはあり得ないという表情と怒りの表情を見せていたのだ。
そして一番絶望していたのはドライブ・ピッピ。今現れた存在の正体に真っ先に気がついたのだ。
「そんな....ドライブ・コッコ!!」
龍覇の戦い
ドライブ・コッコと巨大要塞という強大な敵を前にするアークノア達。しかしその闘志は決して潰えてはいなかった。
「ジーク、マスティア、オルタ。お前達はファイアー・バード達とあのドライブ・コッコとその手下を頼む。私とあの少年はこのドラグハート・フォートレスを相手にする」
「...わかった。今度は絶対に負けない」
そう言うと彼らはいっせいにそれぞれの敵に向かって攻撃を始めた。力を解放したガムドルヴァは眷属達を大量に蘇らせて、アークノアとアカシアを襲った。
しかしアークノアの龍拳とアカシアの剣術により、そのクリーチャー達は次々と倒されていった。
だが奴はいっさい怯まず、攻撃を続ける。何を目的に動いているのかは不明だが、先ほどからその意思は一貫しているようであった。
しかしその拮抗した戦いについに動きが生じる。
ガムドルヴァはその手を天にかざし、強大なオーラを発動させた。そのオーラは遺跡を纏い、遺跡には夥しいまでの負のオーラが蓄積されていった。
するとその遺跡は突然、崩れ始め、その全貌を明らかにした。
「間違いない。奴は帝下暗黒四天王の1人だ」
「帝下暗黒四天王だって!?」
「気をつけろ少年!ここからの戦い、ただでは終わらないぞ!」
ヴィナズューラは龍解した途端、地面から巨大なクリーチャーを次々と召喚し、アークノア達を襲わせた。
アークノアとアカシアはそれぞれ敵に対応するも、奴の能力であるマナ封印により力をうまく出しきれていなかった。
そんなときアークノアが彼に言葉をかけた。
「剣術と魔術の組み合わせだ」
「え?」
「お前の持つその剣に封じられた水の龍は、元々私の魂の一つなんだ」
「そ、そうなんですか!?」
「あぁ、だからこそ分かる。彼女の力を解放するには剣術と魔術の両方をうまく使いこなせなければ意味がない。その剣の龍解は君の手にかかっている!」
剣術と魔術の組み合わせ。彼は剣術は得意であったが、魔術に関してはこれっぽっちであった。
そんな自分にうまく魔術を扱えるのかどうか....彼の前に思わぬ壁が立ち塞がった。
龍覇の覚醒、勇者の覚醒
マスティア、オルタ、ストライクジーク、そしてファイアー・バード軍は帝下暗黒四天王以外の古代兵装軍と戦っていた。
無数に現れる古代兵装軍に苦しい戦いを続けていたが、決して不利な状況ではなかった。
ストライクジークが敵の半分を担い、超天の力を駆使して互角の戦いを繰り広げていたからだ。
とはいえ奴らの解放の力は甘くなく、ひとりひとりの質としては奴らが圧倒的に上回っており、油断すれば負けかねない状況であった。
「マスティア!」
「分かってる!!」
マスティアは剣と化したオルタを装備し、次々と敵を倒していった。それは今まで変身して戦っていたマスティアの初めての、自身の覚醒と言っても過言ではなかった。
マスティアの覚醒により、状況を有利に運んだが、未だなおドライブ・コッコの脅威は健在だった。そして何より、親友を前にして本気の力を出せていないドライブ・ピッピがいた。
彼は臆病な性格であり、いつも虐められていた。そんな彼にとっての唯一の親友がドライブ・コッコであり、彼にとってはかけがえのない存在であった。
しかし今こうして敵対することとなり、彼を傷つけ、下手したら殺さなくてはならない状況となっていた。
そんな状況に彼は怖気付いていたのだ。
しかしそんなドライブ・コッコに声をかけたのはストライクジークであった。
「お前にとってあいつは大事な親友なんだろ?だったらなおさら今戦わなくてどうする!!」
「で、でも、そうしたらコッコは死んじゃうっピ!」
「ああ、確かにな。だがそれはあの装甲を剥がせば問題ない」
「え!?」
「奴らの解放の力を纏っているあの鎧が、ドライブ・コッコを暴走...そして洗脳している原因だ」
「そ、そうなんピか!!だったらアレを壊せばいいんだッピか!」
「ああ間違いない。...だがここで聞く。その装甲は俺が剥がすか?それとも....お前の手で剥がすか?」
思わぬ質問に動揺するドライブ・ピッピ。
「俺は英雄龍と呼ばれている。色んなものを救ってきた、色んなひとたちを見てきた。その中で失った仲間も多くいる。
それでも俺は、残った仲間とこの世界を守るために戦い続けなくちゃならない。それが俺の決意....残された俺が死んだ仲間達に報いるための使命だ」
「ストライクジークさん....」
「お前が本気であいつを救いたいなら、お前自身がやると決意するしかない!臆病な自分を克服して、あいつに...皆に誇れる“勇者”になるんだ!!じゃなきゃお前自身があいつに合わせる顔がないだろ!」
その言葉に感化されたドライブ・ピッピは自分を振り返り、覚悟を決めた。
弱い自分を克服し、一歩前へ進むと。
たとえその一歩が小さな一歩でも、確実に前へ、前へ進もうと決意した。
「ボクが.....ボクがコッコを救うッピ!!」
決意を固めたドライブ・ピッピが炎に包まれる。
それは可能性と勇気の炎であった。
その炎を纏ったドライブ・ピッピはついに 《勇者ドライブ・ピッピ》へと覚醒したのだ。
奪還!ドライブ・コッコ
覚醒したマスティアとドライブ・ピッピを前に、ファイアー・バード達はかなり驚いていた。
何よりあの臆病な彼が勇者に目覚めたのだから。
「今が転機だ!お前ら、ここで勝ちに行くぞ!!」
ストライクジークの一声により、ファイアー・バード達は覚悟を決めた。
己の持つ全ての力を礎に、 《不死鳥の舞》を踊り出したのだ。
それによりファイアー・バード軍の力は大幅に上がり、今までとは違う尋常じゃない力に目覚めたのだ。
だがこれは一定時間のみ使えるものであり、それを過ぎればファイアー・バード達はもう戦えない。つまりここから数分に全てをかけたのだ。
互いに譲らない戦いが始まり、その激突はこれまで以上に激しくなった。そんな時最初に変化があったのはマスティア達であった。
「マスティア、どうやら私はこの形態でも変身が使えるようデス!」
「え!?」
「龍解で新たな力に目覚めましょう!!」
オルタのその言葉により、マスティアはオルタの剣に秘められた全てのエネルギーを解放した。その瞬間、黒き鎧がマスティアを覆い、最高の剣士 《機構戦士 Alterアテナ》へと変身した。
ドラグハートの力を覚醒したAlterアテナにより、古代兵装軍は一気に追い詰められた。
だがそれでも敵は足掻き続けた。ドライブ・コッコに命令し、自身の全てを犠牲にここら一帯を焦土に変える破滅の一撃を放たせようとした。
しかしそれはストライクジークによって止められた。
「残念だったな。お前達はもう誰も殺せない。ここから先はお前らの攻撃は全て俺が引き受ける!!」
そう言うと彼は 《不滅と不屈のストライクマイハート》を使い、古代兵装軍の全ての攻撃を受け止め、自分の力を全ての仲間達に分け与えたのだ。
これにより大きな逆転のチャンスが生まれた。
Alterアテナとドライブ・ピッピは、ドライブ・コッコの身体にまとわりつく鎧を全て剥がすことを開始した。
そして最後の一枚、それを剥がそうとした瞬間、ドライブ・コッコは自爆の波動を使って返り討ちにしようとしたのだ。
しかしドライブ・ピッピはそれを許さない。大切な親友の命は自分が守ると誓ったのだから。 《緊縛されし炎鎖の楔》を用いてドライブ・コッコの動きを封じ、ついに最後の一枚を剥がしたのだ。
その瞬間、先ほどまで感じられていた凶悪なオーラはなくなり、ドライブ・コッコはついに解放されたのだ。
「やった!!」
「よかった....よかったッピ」
臆病な彼はついに自分の弱さを克服し、大切な親友を救うことに成功した。
不滅の不死鳥
ヴィナズューラとの戦いはこちらもまた拮抗を極めていた。互いに譲らない戦いであり、アークノアとアカシアは共に敵と互角に渡り合っていたのだ。
そのため彼が剣を龍解させれば形勢は逆転するのだが、彼は未だに剣術と魔術をバランスよく扱う方法を見つけられずにいた。
しかしそこにドライブ・コッコを助けたストライクジーク達が合流した。
「あれが...オイラが蘇らせてしまった遺跡のクリーチャー...?」
意識を取り戻したドライブ・コッコはその敵の大将の様子を見て、罪悪感に苛まれていた。
しかしそんな彼を救ったのはドライブ・ピッピだった。
「でもあいつを倒せば、問題ないッピ!」
「ああ、どっちにしろ奴は碧雷の帝王の最強の部下、帝下暗黒四天王の1体。君が触れていなくても、いつかは蘇っていただろう。
....いや、今蘇ったのは逆に必然なのか?」
連続して対面した四天王の存在に、アークノアは疑念を抱いていた。
しかしそんなことを今考えていても仕方がない。
アークノアの指示のもと、全員がいっせいにヴィナズューラに攻撃を始めた。
手下をほとんど倒したことで、ヴィナズューラ相手に有利な戦い方を見せることができ、この戦いは大きく勝利が見えてきた。
「コッコ!君も一緒に勇者になるッピ!」
「わかったッピ!オイラも勇者になって、こいつを倒してやるッピ!」
今度は2人が 《超勇者鳥 ドライバー・コッコピッピ》として共に勇者に覚醒したそのときだった。
その2人の炎は彼ら自身を包み込み、より巨大なオーラを巻き起こした。
それはまるで不死鳥のように輝き、彼らをさらに先の段階へと進化させた。
「あれはまさか!!」
「伝説のファイアー・バード!!」
彼ら2人の勇気はさらなる力を巻き起こし、伝説のクリーチャー 《永遠の不死炎鳥 ドレイドリー・サクラカグヤ》へと進化を遂げたのだ。
不死鳥となった2人は敵のあらゆる攻撃を耐えきり、いや逆にその攻撃を打ち返しながら、ヴィナズューラめがけて突き進んでいった。
そしてついに、そのハヤテの槍のような一撃がヴィナズューラへと叩き込まれ、ついに奴を撃破したのだ。
復活し龍魂
ついにヴィナズューラを撃破したファイアー・バード軍。しかし奴は真の意味では消えていなかった。
それは奴には龍回避と呼ばれる能力があるからだ。それによりクリーチャー形態からフォートレス形態へと移行することで、死を回避していた。
無論この状態は再び龍解することでクリーチャーに戻ることができる。アークノアやストライクジークは一瞬、 アナザーバイオレンスのことを思い出し、背筋の凍るような感覚を思い出した。
つまり奴はあいつと同じくほぼ不死身の力を持っている。今あのフォートレスを破壊しなくては、奴は再び復活し、いづれ古代兵装軍にやられてしまうのも時間の問題であった。
しかしその要塞は次々と古代兵装軍を蘇らせていった。先ほど倒したクリーチャー達まで蘇り、戦況は最初の段階に戻りつつあったのだ。
龍解させないためにファイアー・バード軍は敵を倒し続けたが、時すでに遅し。2度目の地響きがこの森に響き渡り、要塞は再び龍解を遂げたのだ。
「そん....な....」
「こんなことって.....」
さっきまで、ほんのちょっと前までは自分達が勝っていたはずなのに、ヴィナズューラの復活により最後の最後でまた逆転してしまった。しかも奴はほぼ不死身...どうしようもない絶望感が彼らを襲った。
そんな中でも1人また違うことでも絶望していた者がいた。それがアカシアであった。
彼は未だに剣魔の太刀を掴めずにいる。自分だけが役に立てていないことに焦りを感じていた。
このドラグハートを龍解させれば、逆転は見える。アークノアはそう言っていたが、結局龍解できなければ話は違う。
誰もが諦めていた。マスティアも、ファイアー・バード達もアカシアも....だがたった3人だけこの状況でも立ち上がる者がいた。
それがアークノア、ストライクジーク、そして勇者となり合体したサクラカグヤであった。
アカシアはそんな彼らの背中をずっと見つめていたのだ。そして、アークノアは彼に一言声をかけた。
「アカシア、焦るな。剣魔の太刀の基本は水のように静かで、自然のように力強くだ」
「俺達が絶対にお前達を傷つけない。だからお前は、その太刀を会得するのに集中しろ」
「ここから先には絶対に行かせないッピ!」
そう言うと3人は大勢いる古代兵装軍相手に突っ込んでいった。
その姿を見たファイアー・バード達とマスティアは再び戦う決意を胸にし、共にアカシアのための時間稼ぎを開始した。
アカシアはそんな彼らの戦う姿を目にし、自分も必ず目的を成し遂げると決意したのだ。
故郷を救うため、自分自身が強くなるために。
水のように静かで、自然のように力強く。
冷静な心と、うちに秘めた確固たる決意の力。
その両方の心情が剣術と魔術の両立に必要だった。
そのとき彼が思い出したのは自身の故郷....ブリトア王国の最後に見た光景であった。
彼が...ここに来なくてはならなかった理由である。
その瞬間、目覚めの時は来た。
「...ありがとうみんな。僕はついに全てを理解した!」
そう言うと彼はその剣を掲げた。
すると、その剣には蒼き光と碧の光が集まり、この森全てを輝かせたのだ。
(ついにやりましたねアカシア。君はまた、一つ成長しました。...そして君のその心に誓い、私は必ずこの森を救ってみせます)
最終決着
アカシアの剣魔の太刀が目覚めたことで、ついにシャイニングカリバーンも龍解により復活した。
水の魂にふさわしく、彼女はアークノアと同じくらいの強いパワーが感じられた。
復活したシャイニングカリバーンはすぐさま剣を取り出し、古代兵装軍を薙ぎ倒していった。古代兵装軍はそれに対抗しようとするものの、彼女は今度は呪文を使うことでテクニカルな戦い方も見せたのだ。 《フルール・ストーム》を放ったことで、古代兵装軍は一撃で流されてしまった。
ヴィナズューラはそれに怒りを覚えたのか、聞き取れない謎の呪文を唱えて、カリバーンを再び封印しようとした。しかしそれをアカシアが許さなかった。
新しく覚えた魔術の力で彼女を敵の呪術から守ったのだ。
「ナイスですアカシア。その様子からするとどうやら本当に扱えるようになったようですね」
「そのようだな」
「だったら...もう怖いものはないな!」
アークノア、ジーク、カリバーンがヴィナズューラを前に立ち塞がる。
するとアークノアが突然叫びを上げた。
「マスティア!オルタ!奴の動きを一時的に封じることはできるか!!」
「うん!やってみるよ!!」
「ピッピ!コッコ!お前達は奴の復活するクリーチャーを倒せるか!」
「その必要はないっピ!最初から出さないでやるッピ!」
そう言うとマスティアもといAlterアテナは 《龍閃光 ドラグーン・クロック》を使用し、ヴィナズューラの動きを封じた。
サクラカグヤは相手のマナの動きを封じ、クリーチャーの復活を一時的にだが抑えることができた。
「もって8秒ってとこか?アークノア!」
「その様子だと、何か策があるのですね?」
それに黙って頷いたアークノアは2人の後ろに行き、自身の力を2人に分け与えた。
アークノアは2体の自分の分身が現れたことで、自分の新たな力の目覚めを実感した。
それは魂2つを混ぜ合わせた必殺技アークブラストである。
ジークとカリバーンはその意図を察したのかすぐさま剣をヴィナズューラ相手にかざし、その力を貯めた。
そして数秒経ったその瞬間、3人の合体技 《アークブラスト・水炎の剣舞》が炸裂した。
ヴィナズューラはそれに対抗しようとしたが、最後に再び現れたアカシアの剣魔の太刀によってそれすら封じられてしまった。
そのまま無防備になった奴を彼らの技がついに貫いたのだ。
そして再びヴィナズューラは要塞へと戻る。
だが当然やつは再び龍解の準備をし始めたのだ。しかし
「カリバーン!」
「ええ、分かってますよ。龍解なんてさせはしない!」
するとカリバーンは《龍脈術 落城の計》を使った。それによって発生した大きな渦は要塞を全て呑み込み、渦の中へと引き摺り込んだ。
要塞から叫びのようなものが聞こえてきた気がする。
しかし彼女のその術により、ドラグハート・フォートレスの龍解を阻止し、奴を撃破したことでついに古代兵装軍に打ち勝ったのだ。
完全なる勝利、そして...
ついに古代兵装軍を倒すことに成功したファイアー・バード達は最高に喜んでいた。
自分達の故郷を守ることに成功し、侵略を防いだのだ。
そしてドライブ・ピッピも見直され、前のように臆病な存在とバカにされることは無くなった。
ファイアー・バード達は部外者ながらも自分達を助けてくれたアークノア達に感謝を告げて、宴会を開くことになった。 《スターライト・ファイアーアリーナ》で行われたショーは、まさしく彼らにとっても一番の輝きであっただろう。
「今回は...なんとかなってよかったな」
「....あぁ」
まだ殲滅の魔王との戦いによる敗北は響いている。だがそれでも諦めずに目の前の新たな壁に立ち向かうことができた。それだけでも彼らにとって大きな成長とも言えた。
未だ存在が謎である碧雷の帝王のこともあるが、とりあえず彼らは今この瞬間を楽しんだ。
ショーが終わった後、アークノアはカリバーンに会いに行き、彼女が自分の水の魂であること、そして自分の目的が全ての魂を取り戻すことであることを伝えた。
それに対してカリバーンは少し黙った後こう話した。
「....まだ了承することはできない。何やら気掛かりなことが一つ増えたようだ」
「気掛かりなこと?」
「あぁ、そのことについては彼から聞いてくれ」
そう言うと彼女はアカシアを連れてきた。先ほどから何やら言いたいことがあるらしく、カリバーンはそれを見計らって連れてきたのだ。
前に出たアカシアは何か言う前にひとつ、頭を下げてあることを懇願した。
「お願いします!どうか....僕の故郷であるブリトア王国を救ってください!!」
それは新たな助けの声だった。そしてその言葉に誰よりも驚いていたのは、カリバーンだったのだ。
アカシアは半分震えた声で話を続けた。
そしてその事実を聞いた時、マスティアやカリバーンだけではない。アークノアやジークですら彼の話に言葉が出なくなるほどの衝撃を受けていた。
碧雷の帝王の侵略作戦はすでに始まっていた。
奴は殲滅の魔王が復活したことをきっかけに、各文明に戦争を仕掛けたそうだ。
それはアナザーバイオレンスが野放しになっている闇文明と自身のいる自然文明を除く全ての文明に対して行われていた。
今回火文明の土地であるここは彼らの助けによって救われたが、光文明を実質統治しているあの聖都市エレジェンドは現在四天王のうちの一体と戦争中。そして水文明を実質統治しているブリトア王国は、カリバーンがいない間に四天王の1人によって完全に侵略が完了してしまっていたようだ。
救われたと言っても火文明も決して安全とは言い切れない。
再び奴らの侵略軍がここへきてもおかしくなかった。
「まさか....その碧雷の帝王は...!」
それは新たな大戦の始まりを彼らに知らせるものであった。
もはや悠長に旅を続けることはできなくなった。
伝説の大戦と呼ばれる超獣世界最大戦争はもう始まっていたのだ。
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