アットウィキロゴ
術式は理解した。
やり方も解っている。
魂が燃える。
熱を生む。
後はやるだけなのに。
何かが足りないのだ。
もどかしい。
どうすれば良いか、考える。
考える。
強く強く考える――!

突然、「それ」とのラインが繋がった。
遠い、遠いところから、ノイズのような小さな囁き。
その笑みは聖母の微笑みのようであり、悪魔の嘲笑のようでもあった。
子供の無垢な笑い声のようであり、淫婦が浮かべる媚笑のようでもあった。
笑うという行為が持つ要素の全てを含んでおきながらその全てから逸脱していた。

那由多の影から這い寄り暗き茫漠を彷徨う奇異なる陰鬱に満たされた煌々たる無貌の歯車。

あっさりと、本当にあっさりとヒトの魂など消し飛ばす絶対的超越存在。
死ぬ。
手を伸ばせば間違いなく。死ぬ。
脳のほとんどを占める思考。
だが、足りない何かを補う確信があった。
迷った時間はゼロだった。
このまま終わるか、「それ」に賭けるか。
選択肢ですらない。
自分の全てを、「それ」に叩き込む――!!

そっと、背中を押すように。
不思議な声が届いて。

――おめでとう、と言われたような気がした。


滲み出る。
脈動する。
荒れ狂う。
焔え盛る。
形を持たない「それ」と歯車が噛み合った。
不安定で、今にも壊れそうだったが、確かに噛み合った。
それに併せて魔力経路が火花を上げ回転する。
思考領域のすべてを演算処理に振る。
術式が発動する。展開する。
世界に干渉し破壊し再構築する。
今ならばわかる、この術式が持つ、本当の意味。
在りたいと思う、自らが選んだものへと、巡りつく為の力。
それは望みを形にする力――原初の魔法が一つ。
その名の通り、何でも思い通りにしてしまえる力であり、万能ともいえるだろう。
だが、それにはやはり何らかの代償が必要で。
だから制約をもって効率と燃費を上げる。
ひとつの目的に特化させる――ッ!

「おおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

炯々と目をギラつかせ、牙を剥き、吼えた。
雷鳴が轟き、地面が揺れ、空間が軋む。
ギシリ、と不気味な鳴動を響かせ始める。
凄まじい魔力の乱流に、世界が怯えている――

捻じ曲げられた世界がのたうち、叫びを上げながら引きずり出さてくれる!
世界が元の位置に戻ろうと身を捩る度に、少女は莫大な負荷に目の前を暗くする。
その表情には、隠しきれない苦痛の色が見てとれる。
頭が焼き尽くされそうになり、無理だ、保たないと、弱い自分が泣く。
だが大丈夫だと、心を奮わせ、歯を噛み締める。涙のように頬を伝う血すら、力へ変えて。

本当の自分を始めるために。

開いた口から蒸気の様な熱い息を吐き出しながら。
咆哮に合わせるように、最後の撃鉄を叩き下ろす――ッ!!

「あああ、は、は、はあああ! ああああああああああああああああああッ!!」

天が割れる。そう見えた。
天に刻まれた光が、放たれた光条が、天を割ったように見えただけだ。
虚空を駆ける光条は、上空で別の光条にぶつかって弾ける。
直進し、曲がり、重なり、また離れながら。
瞬く間に天を埋め尽くす幾何学模様となる。
それは、巨大な魔方陣だった。
三次元に刻まれた、途方もなく巨大な立体魔方陣が廻り。
何十倍にも、何千倍にも効果を増幅された力が浸透して。
天が知る。地が知る。星が知る。

この時、世界が少女の足元へと跪いた事を。


うつむき加減に伏せられた目を隠す長い睫。
瞼の下に隠された深い深い神秘の双眸は吸い込まれるような紅を宿す。
地に零れ穏やかに広がる長い長い髪は混じり気の無い無垢なる白。
白という概念をそのまま掬い取ったような、混じり気の無い純色。
その白は、しかして光を浴びる事なくて何よりも眩しく輝く。
形のよい小さな鼻。潤った唇。柔らかな輪郭から伸びる細い首。美しい線を描く鎖骨。
何よりその女性の色気を具現したかのように甘く艶やかで肉感的な素晴らしく祝福された肢体。

おお、見よ。感じよ。
ただ一つの夢を渇望し進んだ果てたに、少女が手にした――

「設定年齢16歳、身長170cm、上からB98・W53・H91……そう。これが本当のわたしだぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」

【ERROR――問題が発生したためssを強制終了します】

「え、ちょ、まっ」


あとがき

Q.ルニャが変身魔法を使ったらどうなるの?
A.千変万化な貌を持つかみさまが後押ししてくれてやっと成功します。
  しかし中の人の趣向に沿わないので打ち切り終了次回作もありません。
  なお地球に優しくないSAN値直葬な変身魔法はこのあと世界魔術協会のスタッフが頑張って封印指定しました。
最終更新:2012年03月02日 01:15