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※この童話はフィク★ションです

「緊急依頼だ。
 ザランダ城塞国家群国境付近で同国の飛行要塞に異常が発生した。
 システムのトラブルから防衛用無人機が制御不能に陥っている。
 半数は無効化に成功したようだが、一部は自動迎撃装置と共に稼働している。
 しかし内戦を抱えるザランダ城塞国家群はこれ以上の戦力を割けない。
 そこで我々の出番だ。要塞に突入し機能を完全に破壊する。
 突入時は全面的にサポートするので存分にやってくれ」




『シャドウフォックスよりハンマーヘッド。目標に事前情報との差異は認められない』

『ハンマーヘッドよりシャドウフォックス。了解、ハンマーヘッドより全機。ステルス迷彩解除』

飛行要塞の周囲に鋼の箒群が姿を現した。
例えば、細部は異なるが設計思想は同じと判るパーツ群によって構成された箒群。
例えば、細身の胴体に細身の翼、しかし異様なまでに巨大な砲身を下げた箒群。
それら以外にも様々に異なる外観を持つ鋼鉄の箒を駆る空の勇士達が、飛行要塞を各方位より取り囲む。
各々が連携を取り包囲網を形成するとほぼ同時、シャドウフォックスより警告が発せられた。

『シャドウフォックスより全機、目標より迎撃用浮遊砲台の出現を確認。総数100、200……まだ増える。1000を確認』

『ハンマーヘッドより全機、目標への威嚇射撃を開始せよ』

包囲網の一部、数機の箒が持つライフルに青い魔導光が集束する。
数秒後、閃光と共に放たれた魔導プラズマ弾が浮遊砲台の一部を消し飛ばし、反撃を誘発する論見は成功した。

『シャドウフォックスよりハンマーヘッド。相手は見事に釣られてくれたようだ』

『ハンマーヘッド、了解。ハンマーヘッドより全機、突入機を援護せよ』

飛行要塞の周囲を幾重にも取り囲む浮遊砲台。
その全てから全方位へとミサイルやレーザーが鋼の箒群へと放たれる。
防衛に特化した幾らかの箒が真っ向からそれらを受け止める。

『突入機の進路に存在する迎撃部隊を先に叩く。エンゲージ』

『要塞内部から半寄生体飛行砲艇の出現を確認。破壊する。エンゲージ』

各箒が交戦を開始すると、一斉に魔導ミサイルが絡み合いながら軌跡を描いて飛んでいく。
魔導グレネードの引き起こす爆圧と内から噴き出す炎が混ざり合い、浮遊砲台が木っ端微塵に砕け散る。
魔導レーザーにより胴体を焼き千切られた飛行砲艦は、溶けた生体装甲の残滓を赤く引きずりながらと墜落する。
しかし敵は無人故の無謀な数に任せた用兵により攻撃をものともせず突き進む。

『シャドウフォックスより全機、飛行砲艇より巨大な魔力反応を検出。戦略魔導兵器発射態勢!』

『バブリア、ゴルヘクス。射線に入っている。至急退避せよ。ドントレース、ディスクロウは――』

飛行砲艇の先端部に、巨大な立体魔法陣が浮かび上がる。
包囲網の一角を食い破らんと、膨大な魔力を纏わせる艦首を向ける。

『ハンマーヘッドよりフェイタルアロー、射線クリア』

『フェイタルアロー、了解。撃ちます』

しかし、その力が解放されることなかった。
彼方より放たれた極細のエネルギー砲が飛行砲艇も一機、また一機と貫く。
オレンジ色に縁取られた穴が空き、火花を噴きながら内側からひしゃげ、空に赤い色の花が咲いた。



無数の光と轟音が戦域を包み込む中、一つの影が進み出る。
飛行要塞破壊に於ける内部制圧の役割を与えられた切り札。
10m近い全高、重装甲を纏う陸鳥の様などこか有機的な全体像。
背面には可動翼型ブースターを、前面には蒼い眼球の様な巨大レンズを備える。
鋼鉄の箒とは明らかに異なる姿を持つ魔導兵器――MAC――を、一人の少女が駆る。

『こちらフロイデ、飛行要塞への突入を開始するねぇ。援護よろしく~』

『こちらブラスターレイ。突入機に同行、援護に就く』

『ブールドナス、支援する』

『グロリオーサ、同じく』

『フェイタルアローよりフロイデ及び支援各機へ。突入地点まで援護します』

包囲網から突出する突入部隊に迎撃が集中する。
他の箒も援護するが、それだけでは捌ききれない。
飛来する無数のミサイルを迎撃し炎と光が連鎖爆発。
すぐにそれを突き破りビームやレールガンが飛ぶ。
魔導シールドで防ぎつつ目標地点に突き進めば、戦略魔導兵器が発動。
至近で発生した広域破壊の嵐を掻い潜り、飛行要塞へと接近していく。

『ブラスターレイより各機へ。間も無く目標地点だ、突入経路の確保する』

3機の箒が加速。フロイデを追い抜き飛行要塞の外壁へと取り付く。
近接防御火器システムの死角に回り込み火力を完全解放、容赦なく外壁へと叩き込む。
吹き飛ばされた破片が四散し、凄まじい火花と衝撃が奔りが近接防御火器システムは沈黙した。

『ブラスターレイよりフロイデ、突入経路は確保した』

『フロイデより各機~。援護感謝だよ~!』

直後、遮る物の無くなった突入地点へとフロイデが突進。
侵入直前、高熱で大気を揺らめかしていた前面レンズ部から解放されたものがあった。
50メガワットを超過する高密度エネルギーの一点放射。
蒼々と燃える閃熱が亜光速で大気を叩き割り、重い振動を轟かる。
兇悪にして兇暴。全てを砕き引き裂き噛み破る、暴虐無慈悲な破滅の蒼。
膨大量の光と圧倒的な熱量が一瞬に満たない時間で内部の障害物を片っ端から飲み込み灼き尽くす。
自ら放った蒼の残滓を突き破り、毒々しく破滅で彩られた突入経路をフロイデは駆け抜けた。

『ハンマーヘッドより全機、フロイデの飛行要塞内部への突入を確認した』

これは、風と共に戦場を翔けた戦乙女の物語。

※この童話はフィク★ションです



青墨色の髪をサイドテールにした少女は困惑していた。
今回、悪魔超人が喜びそうな残虐描写はない。
しかしどこかの少佐が喜びそうなくらい鉄火臭かった。
これで序盤なのだから先が思いやられる。

「今回は男の子向けにあるレポートを参考にしてみました」

何故この友人はいつも努力の方向が斜め上を行くのだろうか。
そんな絵本が修正を加わえているとはいえ、売れる世も世だが。
恐ろしい事に重版がかかるほどの好評を表していた。2作目3作目もそれは変わらず。
斬新な内容とハートフルな絵柄のギャップで魅せる新進気鋭の絵本作家として、ちょっとした有名人になっていた。
……昨今の児童文学業界と子供たちの心理状態が非常に不安になる。

「意欲は伝わってきたけど――」

後の世で蒼の賢者と呼ばれる少女は、今日も泊まり込みでの修正作業が決定した。
最近は絵本が世に出回っているので門限で咎められることは無い。
彼女は半ばルニャ達の部屋が生活拠点になってる状況に、疑問を抱けなくなっていた……



「ところでザラン"タ"城塞国家群の飛行要塞にトラブルがあったってニュースが」

「この童話はフィクションです」

「え?」

「この童話はフィクションです」

「ニュ、ニュース……」

「この童話はフィクションです」

「えっと……」

「この童話はフィクションです」

「…………」

根負けし頷いた彼女にビーニャもまた、無表情なまま頷くのだった。

「この童話はフィクションです」
最終更新:2012年03月02日 01:19