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これは、とある魔術学園の生徒が受けた任務の記録である。


ここは日本よりも遥か北に位置する、雪の国「スノウウィル」。
都市から数キロほど離れた森に一頭のドラゴンが降り立つ。
そのドラゴンの背から、二人の少年少女が飛び降りる。

「ふいーやっと着いたな」
「やっととは言っても3時間だけどね♪」
「いや、十分長いだろ…」
「そっかなー?」

眼鏡を掛けた少年の名は杉崎衛、魔術学園の一年生だ。
その隣の少女は蘇芳銀、同じく魔術学園の一年生。

「さてと、スノウウィルに着いたのはいいけど…随分寒いね」
「そうか?俺はあんまり寒くないけどな」
「衛は炎属性だから寒いのには強いのは当たり前でしょ。私には普通に寒いの!」
「あーなるほど」
「それよりも、これからどうするの?」
「まずはあそこの町にいって依頼人に会う。そんで依頼内容をくわしく聞かせてもらうわけだ」

杉崎が遠くの町を指差す。
既にだいぶ日も落ちて辺りも暗くなっているが、町だけが明るいためとても分かりやすい。

「なるほどね、了解したよ♪」
「それじゃ町まではバイクで行こうか」
「なんで?コキュートスでズバーン!って行けば速いじゃん」
「お前は馬鹿か。こんなので行けば目立つだろが」
「あ、そっかー。それじゃコキュートスは休んでてね、ご苦労様♪」

蘇芳が巨大なドラゴン、コキュートスを魔方陣に戻す。
それを確認した杉崎が魔方陣から飛翔式のバイクを取り出す。

「ほら、銀は後ろに乗れ。ちゃっちゃと行くぞ」
「はいはーい、そんじゃレッツゴー!」



「町に着いたー!」
「そだな。さ、バイクしまうから降りてくれ」
「りょーかいっ!」

バイクを魔方陣にしまうと、2人は町の中を歩き始める。
町にはまだ多くの人たちが行き交っている。

「へぇー田舎っぽい場所だと思ってたんだけど、案外大きな建物とかもあるんだな」
「衛、依頼人さんの居場所って分かるの?」
「それは大丈夫、ちゃんと地図も持ってるし」

しばらく町の中を歩くと、杉崎がある建物の前で足を止めた。
その建物には「ジュエリーハウス・ダイヤモンドダスト」と書かれている。
ショーウィンドウにはたくさんの宝石やアクセサリーが飾られている。

「お、ここだここだ。名前も間違いない」
「宝石店…?ここの人が依頼人さんなの?」
「多分そうらしいな。俺もくわしくは知らないけど」

そういいながら杉崎が扉を開けて中に入る。
その瞬間、様々な宝石が放つ光に包まれる。
宝石はどれも美しく輝いており、見るものの目を奪った。

「うわぁ、綺麗…」
「いらっしゃいませ、なにかお探しでしょうか?」
「え?い、いえ。私たちはその…」
「自分たちはある依頼を受けてきたものです。オーナーの方を呼んで頂けますか?」
「…かしこまりました。すぐに呼んでまいりますので少々お待ちください」
「ふぇー、結構衛もしっかりしてるんだね」
「なに言ってるんだよ、これくらい最低限だろうが」
「えへへー私知らない人と話すの苦手でー♪」
「あのなぁ…」
「おお、君たちがそうか!待っていたよ!」

奥の部屋からやたらと宝石をつけた、小太りの男性が現れる。
この人物がこの宝石店のオーナーであり、今回の依頼人のようだ。

「初めまして。今回の依頼を請け負います、杉崎衛と蘇芳銀です」
「そうか、よく来てくれたね。まぁ、こんなところで立ち話もなんだ。ささ、奥へ入ってくれ」

そういうと男性は、二人を奥の部屋へと案内した。



案内された部屋にはたくさんの宝石やアクセサリーが飾られていた。
男は二人をソファーに座らせ、自分もテーブルを挟んで向かい合って座った。

「さて、今回の依頼内容を簡単に説明しようか。君たち、『白銀の氷結晶』というものを知っているかい?」
「…いえ、知りません」
「はいはーい!私知ってます!プラチナみたいに輝く氷結晶のことですよね?」
「ほう、知っているのかね。その歳でたいしたものだ」
「鉱石とかなら任せといてください!えっへん!」
「はは、頼もしいな。依頼はその氷結晶の入手だ。やってくれるね?」
「入手が依頼?そんなに手に入れづらいものなのですか?」
「まあ、そうだな。そうそう出回るものではない」
「そうですか…まぁ、依頼されたからには手に入れて見せましょう」
「頼んだよ。これが氷結晶のある雪山までの地図。それから目的の洞窟までの地図だ」

二枚の大きな地図を取り出して見せる。
杉崎はそれを受け取り、一瞥してから魔方陣にしまう。
それを依頼主は物珍しそうに眺める。

「ほう…それが魔術か。便利なものだな」
「見たことは無かったのですか?」
「ああ、そんな機会はなくてね。いい物を見せてもらったよ」
「それはよかった。ところで、依頼内容は以上でよろしいでしょうか?」
「いやそんなことはない。君たちにはもう一つ頼みたいことがある」
「なんでしょうか。出来れば無茶な依頼は避けたいのですが…」
「はっはっは、なに簡単なことさ。最近この近隣に熊が現れるようになったんだ。それの退治をお願いしたい」
「熊の退治?そのくらいは魔術師でなくても武器があれば十分なのでは?」
「いや、奴に武器は通用しない。あの巨体に似合わない素早さ…常人に倒すのは無理だ」
「そこで自分たちについでに頼んだと…そういうことですか?」
「ついでとは随分じゃないかwこっちも重要な任務だよ、頼めるね?」
「…分かりました。今日はもう遅いので明日任務を開始します」
「ああ、よろしく頼む。宿泊所はこちらで手配させてもらった」
「ありがとうございます、それでは失礼させてもらいます。いくぞ銀」
「え?あ、うん…」

終始ほとんど会話に参加できずにボーっとしていた蘇芳を連れて部屋から出て行く。



翌日、宿泊所を後にした二人は近くの山に向かっていた。
その山の再奥部に白銀の氷結晶が在るといわれているらしい。
だが、その近くには猛吹雪が吹いており、常人ではたどり着けないらしい。
吹雪の影響を受けることなく、最奥部に行けるのは炎を使える魔術師だけだ。
しかし、この国には魔術師が数えるほどしかおらず、炎属性が使える人物は一人もいなかった。
ならば他国の魔術師に依頼すればよいのではないだろうか。そう考えた依頼人は今回の依頼をしてきたというのだ。

「さて、着いたぞ」
「うわーおっきい山だね!…はっ、これにシロップ掛けたら…」
「かき氷にはならないからやめろ」
「あ、それもそっかー。それじゃ行こっか!」
「おうよ。さっそく変身!仮面ライダードクロ・フレイムフォーム!これで寒さ対策はバッチリだ!」
「あーずるいずるいー!私は炎使えないんだよー?」
「そんじゃマンダでも肩に乗っけてろ」

そういうと杉崎はマンダを召喚する。
召喚されたマンダはするすると蘇芳の肩に登り、体に炎を纏う。

「おぉーあったかい!凄いねこの子!」
「当たり前だ、俺のファミリーを舐めるなよ」
「でもさ衛。この燃えてるのはどうにかなんないの?」
「我慢しろそのくらい。さっさと行くぞ」
「うんそだね。白銀の氷結晶を探しにLet's登山!」



山登りを始めて数時間、山の中腹に差し掛かった頃のことだった。

「…銀、気づいたか?」
「え、何に?あ、衛がいつのまにか変身解いてることかな?」
「…はぁ。まあいいや。そこの100メートルくらい先の岩の後ろ。さっさと…出てこいや!」
「…ちっ、まさかこんなに早くばれるとはな」
「もうちょっと近くまで来たら襲う予定だったんだけどな」

岩の後ろから男が十数人現れる。
それぞれが銃やナイフなどの武器を持っている。

「悪いことはいわないぜ、お前ら氷結晶は諦めて帰れ」
「そうだぜ、子供は帰って二人でイチャイチャしてな」
「生憎、こっちも仕事なんで帰るわけにはいかないんですよーこれが」
「衛…どうするの?」
「どうするって…まずは平和的解決を謀る。無理なら武力行使だ」
「はっ!なにをごちゃごちゃ言ってるんだよお前ら!」
「あんたらは何者だ?なんの目的でここにいる?」
「俺たちはお前らが依頼を受けた店のライバル店に依頼されたトレジャーハンターだ」
「なに、お前らが帰ってくれるなら俺たちも手は出さないぜ?」
「帰ってくれないならちょっと痛い目見ちゃうかもなぁ!ギャッハッハッハ!!」
「…銀、どうやら話し合いは通じないっぽいぞ」
「うん、そうっぽいね」

杉崎と蘇芳が戦闘態勢をとる。
全身から放たれる魔力と殺気には、魔術師であればすぐに気づいただろう。
しかし、ごく普通の人間である男たちでは、それに気づくことは無理なことだった。

「お、なんだやるのか?こっちは銃持ってるんだぜ?」
「ほらほら、怖いだろーコレで撃たれたら死んじゃうんだぜー?それでもやるってのかぁ?」
「帰ってくれないならこっちも本気だぜ、女の子をいじめるのは趣味じゃないけどな!」
「男は殺して女は売っちまおうぜ!結構可愛いしなぁ!」
「べーっだ!誰が売られるもんですか!」
「俺だって簡単には殺されねーよ。むしろあんたらが気をつけろよな」
「勝手にほざいてろガキが!」
「ぶっ殺してやるぜ!」



戦いはあっけないものだった。
決着がつくまでには10分も掛からなかった。
その場に立っていたのは、杉崎と蘇芳の2人だけだった。
あるものは体のあちこちに火傷を、またあるものは腕や足を骨折して雪の中に倒れていた。

「くそぉ…熱い、熱いよぉ…」
「いでぇ…骨が折れてやがる…」
「お前ら、魔術師だったのか…分かってれば手を出さなかったのによ…」
「あんたらならどうせ分かってても手を出しただろ。あんたらが分かってなかったのは実力の差だよ」
「ちっ、舐めた口聞きやがって…」
(せめて…どっちか一人だけは殺してやる……死ねぇ!)

倒れていた男が銃を蘇芳の死角から撃つ。
しかし銃弾は金属の盾によっていとも簡単に防がれてしまう。

「はい、残念でしたー♪」
「ち…くしょうが…」
「銀、銃とかの武器は没収しておこう。また撃たれたら面倒だからな」
「はいはーい、それじゃ没収ターイム!“グレイプニル”!」

地面から伸びるワイヤーが男たちの全身を拘束する。
身動きが取れなくなった男たちの手から杉崎が武器を奪い取る。

「武器はあっちの岩陰に置いておく。ワイヤーが外せたらちゃっちゃと逃げろよ」
「大丈夫、凍死はしないと思うから。多分ね」
「それじゃ行くぞ銀。早く仕事を終わらせないとな」
「りょーかいっ!それじゃねー♪」

地面に拘束された男たちを尻目に、杉崎と蘇芳は再び歩き出す。



「ふぅ、だいぶ来たな。これならあと三十分ってところか」
「衛ー私疲れちゃったよー食べ物かなにか無いのー?」
「はぁ、そういうと思ったよ。はいよ冷凍みかん」
「わーいありがとー…って寒いわ!」
「うひょう!ノリつっこみ頂きました!ま、冗談だけどな。はい肉」
「なんの肉!?っていうか生じゃ食べられないよ!」
「お前にも食べられないものがあったのか…」
「衛ー?いい加減殴るよ?」
「悪かった、すまん。肩のマンダの背中に乗せろ。焼けるから」
「えぇー本当?」
「本当本当。衛嘘つかない」
「さっきついてたじゃん!はぁ、無駄に疲れる…」
「いいんだよ、これで。雪山で無駄にテンション下げると凍死するってばっちゃが言ってた」
「魔術使ってるのに凍死するかぁー!!!」

ドゴオオオォォォォォォン!!!!

「え!?な、なになに!?なんなの!?」
「おい銀。さすがに声が大きすぎるだろ…」
「わ、私じゃないって!もっと爆発音みたいな感じだったよ!」
「それもそうだよな…」

…ドドドドドドドドドドド(ry

「おい、なんか嫌な予感がするんだけど」
「うん、私もしてたところ」

2人がゆっくりと山の上のほうに顔を向ける。
次第に音は大きくなり、2人にだんだん迫ってくる。

「な、ななななななな!!!!」
「雪崩だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



雪崩の規模は予想以上に大きかった。
雪崩は周囲の岩や枯れ木などを巻き込みながら、こっちに向かってくる。

「ままままま衛っ!あれなんとかなんないの!?」
「よ、よよよよーし任せとけ!“紫炎・黒焔鳥×3”!!」

闇の炎の鳥が雪崩に向かって飛んでいく。
鳥たちは雪崩に突っ込むものの、あっけなく飲み込まれてしまう。

「衛のクズ!馬鹿!下種!役立たず!死ね!」
「そこまで言うこたぁねえだろうよい!だったらお前やれよ!」
「言われなくてもっ!“メタルマイン&メタルフェンス”!!」

雪崩の少し手前に向かって地雷を投げ、さらに金属製の柵を作り出す。
地雷は爆発したものの、雪崩の勢いはまったく衰えない。
さらに雪崩は、金属の柵をまるで発泡スチロールのように破壊してしまう。

「お前も駄目じゃねえか!人のこと言えないだろっ!」
「私の魔術は対人戦には向いてるけど、あーゆーのふっ飛ばすのには向いてないの!」
「ちくしょー!なんとかならねーのかぁぁぁ!!!」
「ちょ、衛!前前!」
「うおぉぉぉ!!!“火焔×いっぱい”!!!」

杉崎が炎をぶつけるものの、やはり効果はまったく無い。
雪崩は無情にも2人に襲い掛かり、雪の中へと飲み込んでしまった。



――その頃、杉崎と蘇芳に叩きのめされたトレジャーハンターの男たち

「やっと抜けれたぜ…まったく、あのガキどもふざけやがって」
「おかげで俺たちの仕事はパーだ。何てことしやがるんだ」
「まぁいいじゃねえか、こっそり持っていた爆弾のスイッチには気づかれなかったんだからよ」
「ああまったくだ!もしものために仕掛けておいた爆弾が、まさかこうにも役に立つとはなぁ」
「いくら魔術師のガキといえど、雪崩を止めることはできねぇだろうよ」
「当たり前だ!そんな奴がいたら見てみたいぜ!ハッハッハ!」

男の一人が、腹を抱えて大笑いする。
ちなみに、なぜ山の上のほうにあらかじめ爆弾が仕掛けてあったのかは聞かないで頂きたい。
いろいろと都合上の問題ってやつです。

「さ、さっさとずらかるぜ。あいつらに復讐はできたんだしよぉ」
「そうだな。俺たちまで雪崩に巻き込まれちゃあ元も子もないからな」
「足を怪我してるやつは手伝ってもらえ。歩ける奴は山を降りる支度しろ」
「ちゃっちゃとかえってあったかいスープでも飲みたいぜ」
「俺、この山から帰ったら結婚するんだ…」
「おい、誰だ死亡フラグ立てた奴は。俺たちまで巻き込むんじゃねぇぞw」
「ヒャッハッハ!こりゃ傑作だなwさぁて、ちゃっちゃと帰…うぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
「な、なんだ!?おい、どうし…ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
「お、おい…なんだこいつはぁ!こんなの居るなんて聞いてねぇぞ!」
「おい!誰が武器持ってねぇのか!」
「もってねぇよ!全部奪われちまった!ぐおぉぉぉぉ!!!」
「や、やめろ…こっちに来るな……来るなぁぁぁぁぁぁ!!!!」

――辺りが静かになった頃、その場に残っていたのは骨と肉片と大量の血。
周囲にはむせ返るほどに嫌な死臭が漂っている。
真っ白な雪山がどす黒い血に染まっている光景は、まるで地獄のようだ。
しかしその惨劇の跡は、数分後に訪れた雪崩がすべて雪の下に隠してしまった…。



雪崩が過ぎ去り、普段の姿に戻った雪山。
その雪の中から突然ドリルのようなものが生えてくる。
ドリルは再び地面に潜っていき、大きな穴を残していく。
その穴の中から、雪崩に飲み込まれたはずの杉崎と蘇芳が這い出てくる。

「うぁー酷い目にあった…サンキューな銀」
「まったく、あそこで私が防御シェルター作ってなかったらどうなってたことか…」
「本当に助かった!ありがとう!」
「帰ったら晩御飯ガッツリ食べさせてね♪」
「…俺の財布と相談してからな」

2人はいつも通りの会話を交わす。
まるで雪崩など起きなかったかのように。

「さて、そろそろ行くとしますか。随分と時間食っちまった」
「私は時間なんかよりも、あったかいボルシチとか食べたいよ」
「誰が上手い事言えって言ったんだよ」
「えっへっへー♪」
「…でも、確かに昨日のホテルで食べたボルシチは美味かったな」
「うん!あのボルシチは私の心を震わせた…」
「ハラショー!」
「…やってる場合じゃないね」
「そだな、さっさと行くか。あまり時間も無いし」
「あーちょっと待って衛」
「ん?どしたよ、腹減ったとかは言うなよ?」
「さっきの雪崩さー飛んで避ければ良かったんじゃないの?」
「………あ」



「…と、まあ。なんだかんだあったけど」
「いよいよ到着…なの?」
「おうよ、この向こうに氷結晶があるはずだ」
「でも、これって…」

目の前には巨大な氷の壁があり、二人の行く先を阻んでいる。
透明な氷の向こうには、うっすらと洞窟の入り口のようなものが見える。

「つまりは、この氷を壊さないと先には進めないんだね?」
「ご名答。さ、思いっきりやるぞ」
「まぁまぁ、こんな氷は私がちょちょいのちょーい!で壊しちゃうよー!」
「お前に?出来るのかよ?」
「むむー!やってみなきゃわかんないよ!“アイアンソーサー”!!」

高速で回転する刃が氷の壁に接触する。
しかし氷はほとんど削れず、逆に刃を弾いてしまう。

「えぇ!?硬っ!!」
「むぅ、どうやら普通の氷じゃなさそうだな。こりゃますます信憑性が高まってきたな…」
「なんかわかんないこと言ってないで衛も手伝ってよ!」
「あぁ、分かってる。でかいのをブチあてる必要があるみたいだな。
同時に行くぞ。準備はいいか?」
「もっちろん♪さ、いっくよー!」
「おうよ!“紫炎・螺旋槍”!!」
「“アイアンバイト”!!」

闇の炎のドリルと、鋼鉄のドラゴンが氷の壁に同時に直撃する。
徐々にだが氷にひびが入り、やがて全体に広がる。

「とどめ行っとくぜ!“幻獣兵装・ファランクス”!!」
「それじゃ私も!“ヘカトンケイル”!!」

ライフルから放たれた炎の弾丸が、分厚い氷の壁を撃ち抜く。
それと同時に、氷の上に作り出された巨大な拳が落ちてきて、氷の壁を粉砕した。

「よっしゃあ!これで道は開けた、さぁ行くぞ!」
「行こ行こー!」

壁が破壊され、大きくその口を開いた洞窟へと足を進める。



杉崎と蘇芳の2人は、長く、暗い洞窟を進んでいる。
既に30分は経過しただろうか、未だに目的地へはたどり着かない。
周囲を炎で照らしてはいるものの、洞窟の闇はすべてを飲み込んでしまいそうなほど暗かった。

「ねぇ、衛。この洞窟長すぎない?いくらなんでもこれは…」
「うん、それは俺も思ってた。しかもここまで枝分かれが一つも無いのはおかしい」
「まさかこの洞窟って…」
「ああ、多分誰かが意図的に掘ったものだな。自然に出来たにしては壁や天井がしっかりしすぎてる」
「それじゃあ、入り口にあった氷の壁も、誰かが置いたものなのかな?」
「いや、それは無いと思う。あんなサイズの氷は人が運べるものじゃない。
おそらくあれは自然に出来たんだろ」
「そっかー、魔術師とかならもしかして、って思ったけど違うんだね♪」
「…ああ、そうだといいけどな」

話をしながら歩いていると、洞窟の奥に小さな光が見えた。
その光は近づくにつれてどんどん大きくなった。

「衛!あの光ってもしかして!」
「間違いない!あそこにあるはずだ!」
「よーし、そうと決まればダッシュダッシュ!」
「おい、もっと慎重に行動しろ!」

杉崎の忠告も聞かず、蘇芳は光に向かって走る。
それを急いで追うように杉崎も走り出す。
光はどんどん大きくなり、洞窟の幅もどんどん広くなっていく。
やがて洞窟の狭い道は途切れ、大きな部屋へとたどり着いた。



「な、何この部屋…」
「これは…想定外だったな…」

部屋の壁や天井はすべてが氷結晶で覆われており、光を乱反射させて輝いている。
この部屋が明るいのはこの氷結晶のせいだろう。
2人が部屋を見渡していると、部屋の中心に、一際輝く大きな氷結晶を見つけた。

「銀、あれがそうなのか…?」
「う、うん。私も小さな結晶は見たことあるけど、あんな大きいのは初めて見るよ…」
「とうとう見つけた、あれが白銀の氷結晶!」
「衛!早くとって帰ろ!」

蘇芳が白銀の氷結晶に近づく。
その時、杉崎の脳裏を嫌な予感がよぎる。

「っ!?待て銀!それには近づくな!」
「えっ?」

蘇芳が足を止めた瞬間、氷結晶の下から何かが出てくる。
それは氷結晶を背負った亀のような怪物だった。
怪物は2人を睨み、周囲の結晶が砕けるほどのすさまじい咆哮をあげる。

「こんな怪物が氷結晶を守ってたとはな…道理で俺らに頼むわけだ」
「う、うわ…きゃあっ!」

怪物に驚いた蘇芳が一歩下がると何かを踏んでしまう。
それは、白銀の氷結晶を求めてやってきたトレジャーハンターたちの成れの果てだった。
おそらくこの怪物にやられたのだろう、他にもたくさんの人骨が落ちている。

「ど、どうしよう衛…」
「どうしようって選択肢はひとつだろ?アイツをなんとかして氷結晶を持ち帰る!」
「…なんか衛カッコイイかも」
「惚れ直したか?」
「いや、元々惚れてもいないし」
「…ですよねー。ああ、もういいや!行くぞ銀!」
「わかったー!」



「いろいろと長引くと面倒だ!一気にやるぞ!“幻獣兵装・龍哭砲&火蜥蜴”!!」
「了解っ!“アイアンソード”!!」

杉崎が遠距離から、蘇芳が近距離から攻撃をする。
炎の銃弾も、鋼の剣も怪物に当たったが、ダメージはまったく感じられない。

「くそぅ…予想以上に硬いな…」
「衛、ここは一旦距離をとって戦おう!そんで何か作戦を考えて…」
「銀っ!防御しろ!すぐにっ!」
「えぇっ!?」

怪物の背中の氷結晶が怪しく光ったと思うと、氷結晶がまるで弾丸のように発射された。
それも一本などではない、何本も、何十本も発射されたのだ。
無数の氷結晶の弾丸は2人に雨のように降り注ぐ。

「なんちゅう攻撃だよ!“幻獣兵装・甲凱壁”!!」
「とりあえずおっきな盾っ!」

三枚の盾と鋼の盾が氷結晶の弾丸を防ぐ。
盾の後ろに隠れながら2人は作戦を練り始める。

「アイツを倒すのは無理だな。火力が足りん」
「じゃあどうするの?倒すか動けなくしないと白銀の氷結晶を持って帰れないよ?」
「うーむ…どうすっかぁ…亀は腹も硬いからなぁ…」
「うーん、亀さんの弱点かー。裏返しにしちゃう?なんちゃって」
「それだぁ!アイツをひっくり返せばなんとかなるかもしれん!」
「あ、あのー衛?あれをひっくり返すのはすっごく大変な気がするんだけど…」
「まぁ待てって。俺に考えがある。いいか?かくかくしかじか…」
「かくかくうまうま…なるほど!」
「じゃあその作戦でよろしく!」
「りょーかいっ!任せといてよ!」



杉崎と蘇芳が作戦会議をしている間も弾丸の雨は降り続いていた。
怪物は攻撃の手をまったく緩めようとしない。
ただ侵入者を排除するため、そのためだけに攻撃を続ける。

「よし、俺が囮になってあいつの攻撃をこっちに向ける。そしたら銀の出番だ。わかったな?」
「分かったけど…衛は大丈夫なの?」
「なぁに、死にはしないさ。それじゃ、作戦開始!」

杉崎が怪物の右側に向かって走り出す。
それに気をとられた怪物は、杉崎に攻撃を集中させる。

「よし、このまま気を引いて…!?ぐぅっ!!」
「衛っ!?」
「大丈夫だ、足に少し掠っただけだ!それより早く!」
「分かったよ!せーのっ“パイルガン”!!」

怪物の下から金属の杭が飛び出てくる。
杭は胴体の右よりに直撃する。
もちろん怪物にダメージは無いが、その攻撃で怪物の体が少し傾く。

「衛!今だよ!」
「おうよ!“幻獣兵装・ガントレット”!!」
「うおぉぉぉぉぉ!!!!!」

怪物まで一瞬で間合いを詰め、浮いた体に思い切りアッパーを喰らわせる。
そのまま怪物は半回転し、腹部を上に向けてひっくり返ってしまう。
普通の亀と同じように、起き上がろうと必死にもがくが、体は微動だにしない。

「銀!ついでだ、動けなくしとけ!」
「はいはーい!“グレイプニル”!!」

怪物の体が鋼鉄のワイヤーで拘束される。
すると、怪物がもがくことを止める。
とうとう起き上がることを諦めたようだ。

「よっしゃあ!なんとか勝ったぁ!」
「うわぁーい!!」



「…さてと、どうやって白銀の氷結晶を採取しよっか?怪物の背中からは取れなさそうだし…」
「何言ってるんだ。そんなことしなくてももっといい方法があるだろ」
「え?それってどういうこと?」
「あいつは、背中の白銀の氷結晶を飛ばして攻撃してきたんだろ?じゃあその飛ばしたのはどうなった?」
「あぁ、そっかぁ!わざわざ背中から毟り取らなくても、そこらへんのを持って帰ればいいんだね!」
「お前毟り取って持って帰る気だったのかよ!流石にかわいそうだろ!」
「えへへー。あ、ところで衛。足の怪我は大丈夫?」
「ん?ああ、大丈夫だよ。ヒールリングを使ってある程度は回復しといた」

確かに、杉崎の右足には血がついているが、傷は完全に塞がっているようだ。

「よし、そんじゃ適当なのを持って帰るか。どれも一緒だろ」
「待って!どうせならおっきいのもって帰ろうよ♪」
「お前、これから山を降りるんだぞ?どうやって持ってかえって…」
「魔方陣使ってよ。それとお腹空いた」
「…まったく、俺を移動倉庫扱いしやがって…ぶつぶつ…」

文句を言いつつも、一メートルほどの大きさの白銀の氷結晶を魔方陣に突っ込む。
その後、サンドイッチを五人前取り出して蘇芳に渡す。

「わーい、ありがとー♪むぐむぐ」
「まったく…緊張感の無い奴だよ…食ったらここを出るぞ」
「はーい♪もっきゅもっきゅ…」



「外にいぃぃぃ……出たぁぁぁぁぁぁ!!!」
「はい、黙れー。ちゃっちゃと行くぞ、これ伸ばすとスレを消費しすぎるからな」
「衛メタい。そゆこと言っちゃ駄目なんだよー」
「うるへー。別にいいだろー」

杉崎と蘇芳が洞窟から出てくる。
久しぶりの外の景色に、少しだけ安心する。

「ところで衛。あの怪物は退治しなくてよかったの?」
「バーロー。あの怪物が白銀の氷結晶を生み出してるんだろ?じゃあ退治したらマズイだろうが」
「あ、そっかー♪…でも、またあの怪物にやられる人がいると思うとちょっとね」
「それが自然なんだ。あいつは自分の住処に入ってきた侵入者を排除したにすぎないのさ」
「ふぅん…」
「よし銀、今から競争しないか?」
「競争?何の?」
「どっちが早くこの山のふもとにたどり着けるかだ。よーいドンッ!」

そういうと、蘇芳を置いて杉崎が走り出す。
それを見た蘇芳が急いで追いかける。

「ちょっと!衛フライング!」
「勝負に卑怯もクソもあるかよーはっはー!」
「…なーんてねっ。お先にー♪」
「ちょ、えぇ!?」

必死に走る杉崎の隣を、即席のスノーボードに乗った蘇芳が通り過ぎる。
蘇芳はどんどん加速していき、杉崎との距離を引き離す。

「お前、卑怯だぞっ!」
「卑怯なんて無いって言ったのは誰かなー?ふふーんだっ!」
「ちくしょー…こうなったらこうだ!“幻獣兵装・黒翼”!!」
「待ってよ!空飛ぶなんてズルイよ!走るか滑ってよ!」
「嫌だね!悔しかったら追いついてみろー!」
「待てぇー!衛ぅー!」

空を飛んで山を降りていく杉崎を蘇芳が滑って追いかける。
やがて蘇芳は杉崎に追いつき、並走して山を降りていく。



「さてと、もう一つの任務もちゃっちゃと済ませちまうかね」
「もう一つ?なんかあったっけ?」
「…熊の退治だよ。忘れんな」
「あーそだったね。えへへ」
「はぁ…なんかどっと疲れが…」
「衛!まだ終わってないんだから休んじゃだめぇ!」
「はいはい、分かってますよっと」
「で、その熊の特徴とかは?見た目とか…」
「はいはいよ。えっとだな…『右目に大きな傷』『雪のように真っ白な体毛』『めちゃめちゃ大きい』
『無駄に素早い』『何故か硬い』…とかだそうだ」
「なんかよく分からないけどそんなの本当にいるの?なんか胡散臭いなー」
「あぁ、まったくだ…のわぁ!?」
「ん?衛、どうし…うわぁ!?」

2人の目の前に、右目に大きな傷を負った、雪のように真っ白なめちゃめちゃでかい熊が現れた。
どこかに隠れてスタンバイでもしていたかのようなタイミングだ。
このタイミングのよさは、最近の駄目な若手芸人にも見習ってもらいたい。

「ってそんなこと言ってる場合じゃねえよナレーション!」
「衛!メタ発言そのくらいにしとこうよ!」
「それは分かっ…!?この熊、血の臭いがする…」
「え?くんくん…わかんないけど…」
「ほんの少しだけだからな、何か狩りでもした後だったんだろ」
「そっかーそーなのかー。って落ち着いちゃ駄目だって!」
「それもそうだよな!行くぜ銀、多分ラストバトルだ!長くなって面倒とか中の人も思ってるだろ!」
「分かったけど、またちょっとメタい!」



大きな白熊がワイヤーでぐるぐる巻きにされている。
なんとか抜け出そうともがくものの、ワイヤーが緩む様子はまったくない。

「なんとか勝った…今回はグレイプニル大活躍だな」
「…ねぇ、衛。また戦闘シーン端折ったね」
「ぶっちゃけると、戦闘表現書くのめっちゃ苦手らしいぞ。一番の見せ場っぽい、怪物との戦いもめっちゃ短かったし」
「あぁ、そう…」

連戦に続く連戦で、もはやメタ発言に突っ込む気も起きないらしい。
なれない雪の中での、強敵との戦闘。
少しずつ、しかし確実に二人の魔力と体力は奪われていたのだ。

「はぁ…私もう疲れちゃったよ。もう…ゴールしてもいいよね?」
「やめろー!雪山で寝ると死ぬぞー!」
「衛…死ぬ前にお腹いっぱい…ご飯食べたかったな…」
「死亡フラグを立てるなー!帰ってからいくらでも食わせてやるから起きろー!動けー!

その言葉を聞いた途端、ぐったりと疲れきっていた蘇芳が勢いよく起き上がる。
その勢いのまま立ち上がり、ぴょんぴょんと跳ねながら言う。

「ほらほら何してんの衛!おいしいご飯は待ってくれないよ!ダッシュダッシュ!」
「…お前ってホント便利な思考と体してるよな」
「それだけがとりえですから!」
「あっそう…」

さっきまでとは立場が逆転し、蘇芳は楽しそうに跳ねながら雪山を降りていく。
テンションが下がってぐったりとした杉崎がとぼとぼと歩いて、その後をついていく。



二人は無事に山を降りることが出来た。
町に到着するころには、日も落ちてだいぶ暗くなっていた。
町に到着すると、真っ先に例の宝石店を尋ねた。

「おぉ!白銀の氷結晶は無事にとってこれたか!?」
「…ええ、もちろん。どうぞ確認をお願いします」

そう言って、魔方陣の中から一メートルほどの大きさの氷結晶を取り出す。
取り出された氷結晶はまばゆいほどの輝きを放っている。

「こ、これがそうか…すばらしい輝きだ…!ご苦労だった、二人とも」
「ええ、ありがとうございます。それでは、さっそく報酬のほうを…」
「待て、まだ依頼は残っているはずだ。熊の退治はどうなった?」
「…ご心配なく。そちらもすでに完了しています。熊はきちんと捕らえてあります」
「…捕らえてあるだと?私は退治を依頼したはずだが?」
「ええ、知ってます。銀、例の書類を出してくれ」
「はいはーい、ジャジャジャーン♪」

蘇芳がどこからかたくさんの書類を取り出す。
書類はテーブルに置かれ、依頼人にも見えるようにされた。

「…この書類がどうかしたのかね?」
「ええ、この書類の情報によれば、この熊には賞金が掛けられてるって話じゃないですか。
おかしいですね、あなたはそんなこと一度も言ってなかったでしょう?」
「む…!そ、それは忘れていただけだよ」
「いいえ、忘れるはずはありません。だってこの情報は町中に流され、知らない人は一人もいないはずです。
しかもこの熊に掛けられた賞金はかなりの大金。そりゃ誰だって欲しいでしょう」
「……なにが言いたい?」
「あなたは、俺たちに熊を退治させて、その賞金を独り占めする気だったんじゃないですか?」
「…!?」



依頼人は驚いたような、焦っているような、そんな微妙な表情を浮かべている。
しかしそんなことはお構いなしに、杉崎は冷静に淡々と言葉を並べていく。

「どうやって賞金がもらえるのかとかはよく知りませんが、まぁ退治か捕獲すればもらえるのは確実でしょう。
俺たちに氷結晶を取りに行かせ、さらに熊の退治をさせて…大儲けじゃないですか」
「貴様…報酬金をもらえなくてもいいのか?」
「構いませんよ、それならこの熊を今すぐに役所に届けて賞金貰いますから。報酬よりも大金ですしねぇ。
それに氷結晶もまだ余ってますから、それを売っても十分すぎるほどです」
「…分かった、報酬金は渡そう。賞金も三割を…」
「五割」
「くそっ…いいだろう。賞金も五割渡す。それでいいな?」
「ありがとうございます。お支払いは、お早めに、お願いしますね?」
「お願いしますねー♪」
「分かった分かった!さっさと熊を役所に連れていってこい!」
「はい、それでは失礼しますね」
「ふん、貴様らみたいな奴等に二度と依頼するものか!」
「それだったら、俺たちもそうです。
俺たちの心配よりも先に、氷結晶の心配をするような依頼主、二度とごめんですよ」
「なっ…!?」
「それでは、さようなら」
「…まったく、食えない奴だ」

杉崎と蘇芳が部屋を出て行った後、依頼人がそんなことをつぶやいた。



―とあるレストラン―

「んー…なんとか依頼完了かー…」
「ふぉーふぁふぇ。ふぉっふぉふふぁふぇふぁふぇふぉふぁふぉふぃふぁっふぁふぇ」
(そーだね。ちょっと疲れたけど楽しかったね)
「口に食べ物入れながらしゃべるな。食うかしゃべるかのどっちかにしろ」
「むぐむぐ…んぐ…。飲み込みました!」
「よろしい、しゃべってよし」
「お腹が空いてるので、もっと食べていいでしょうか!」
「…もう好きにしてくれ」
「わーいっ!もぐもぐ…」
「はぁ…」

蘇芳がテーブルに置かれた大量の食事を、次から次へと食べていく。
そんな日常的な姿を眺めながら、砂糖とミルクをどばどば入れた甘ったるいコーヒーを飲む。

「ごちそーさまでしたっ!」
「はい、お粗末様。それじゃあ行くぞ」
「行くぞって…どこに?」
「学園に決まってるだろ学園に、ちゃっちゃと帰るぞ」
「あーそっか、そうだよね!帰らなきゃね!」
「お前なぁ…」

レストランを出て、町外れの森までやってくる。
森につくと、来るときにも使ったドラゴンを召喚し、その背に飛び乗る。

「やっと帰れるのか…あー体痛い…」
「じゃあ帰りはもっとスピード速くしよっか?音速くらいで飛べばかなり早く着くけど」
「いや、安全飛行でお願いします」
「まったく、衛は注文が多いよ!そんなんじゃ彼女できないよ!」
「いいよ、そうなったらファミリーと楽しく暮らすから」
「駄目だ…最後だっていうのにコイツ…」
「別にいいだろー。ちゃっちゃと帰ろうぜ。俺たちの学園に」
「うん、それもそうだね。帰ろう!レッツゴーコキュートス!」

ドラゴンが大きく翼を羽ばたかせ、空へと飛び立つ。
そのまま一気に加速し、ドラゴンの姿が空の彼方へと一瞬で消え去る。



―魔術学園―

「ヒャッハッハ!杉崎がいねぇと好き放題できるぜェ!なぁブライトォ!?」
「まったくだ、清々するな」
「彼がいないなら俺の美しさを思い切り発揮できるじゃないか!」
「ふふっwきょ、今日は僕もいるんだよww」
フェミニスト四天王!今日も学園の女生徒の平和を守るッ!』

「おっと、そんなこと言ってる間に女生徒発見だぜェ!おい、そこの女ァ!」
「む?ちょっと待てアンサー。なにか音が聞こえないか…?」
「うーん、そう言われれば。キーンって音が…」
「なんか耳が痛くなってくるよw」
「おい、そこのお前たち!上から来るぞ、気をつけろぉ!」
『え』

四天王が上をみた瞬間、四人の真上に何かが落下してくる。
いや、正確には落下ではなく着地だった。
空から降ってきたのは巨大なドラゴンだった。
そのドラゴンの背から、杉崎と蘇芳が現れる。

「いやー着いた着いた。学園よ!私は帰ってきた!」
「帰ってきたー♪」

「…おィ、杉崎テメェ…なにしてくれてんだァ…」
「今日という今日は許さないぞ…」
「僕の美しい顔に汚れがついちゃったじゃないか!」
「ぼ、僕はクリーンヒットして動けな…ガクリ」
「あー居たのかお前ら。悪い、気づかなかった」
「悪いじゃすまねぇんだよォ!二回死ねェ!」
「やべっ!逃げるぞ銀!」
「ちょ、ちょっと待ってよ衛!」
「逃がすな、追え追え!」
「やってしまえー!!」


四天王(一人気絶)に追われ、杉崎と蘇芳が逃げ出す。
魔術学園は、今日も平和です。





…多分。
最終更新:2012年03月02日 01:22