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―今からだいたい四年前。杉崎と蘇芳が小学校を卒業した頃…―

【杉崎家】


「なあ、母さん。衛はどこへ行ったかな?」

「衛ならさっき外に遊びに行ったみたい。また銀ちゃんのところかしらね」

「そうか…少し話をしておきたいことがあったんだが」

「…そう、久しぶりに帰ってきたと思ったら。そういうことだったのね」

「分かるか?察しがいいな、流石は俺の奏だ」

「ええ、あなたの妻ですから」

「ははは、敵わないな。…衛は元気に育っているみたいだな」

「そりゃもちろん、あなたと私の息子ですもの」

「そうだな。魔術のほうはどんなものかな?衛の属性はどれになるんだろうな
俺に似て闇が使えるようになるか、それとも母さんに似て炎か…」

「そうね…どちらにせよ、ちゃんと魔術を使えるようになるかしら…」

「大丈夫さ、俺と母さんの子だからな」

「ふふ、それなら心配ないわね」



【蘇芳家】


「紫苑よ。瑠璃と銀を呼んでまいれ」

「常盤様、銀はさっき杉崎家の衛君のところへ遊びに…」

「おお、そうであったか。なら瑠璃はどこへ行ったのだ?」

「瑠璃は真紅と一緒に町のほうへ買い物に行ったようです」

「ふむ、そうか。では先にこの話をしておくとしよう。
紫苑よ、瑠璃はたしか普通の中学校に通わせておったな?」

「はい、成績優秀で先生からも高い評価を得て、先日首席で卒業をしました」

「ほほう、それはよいことだ。蘇芳家に相応しい結果だ」

「その言葉、瑠璃に直接言ってあげてください。きっと喜ぶと思いますよ」

「そうじゃな、帰ってきたらわしのところへ来るように伝えておくのだ。さて、次は銀の話じゃな」

「銀のことでしたら問題ありません。既に瑠璃と同じ中学への入学手続きは…」

「いや、銀には別の場所に通ってもらう。あやつには才能がある」

「別の場所…まさか…! 常盤様、それはどういったお考えで…?」

「なに、先ほど言った通りだ。銀には偶然才能があった。それだけのことだ」

「…わかりました。そちらへの入学手続きを済ませておきましょう」

「うむ、蘇芳家の更なる発展のために、銀には頑張ってもらわねばな」



―その頃何も知らない当人たち―

【杉崎家の無駄に広い庭】


「ほらほら衛ー捕まえてごらんー♪」

「うあー待て待てー。へぶっ」

「…また転んだ」

「うるさいなーおれは銀みたいに運動神経よくないんだよー」

「それこないだも聞いたよ。ところで「うんどうしんけー」ってどこの「しんけー」なのかな?」

「うーん…おれよく分かんない」

「わたしも分かんないや。ところで「しんけー」ってなに?」

「それも分かんないのか…おれも分かんないけどな!」

「あっはっはー!なにそれ衛変なのー!」

「お前だって変だろー…ぷぷっ…わははは!」

「あはははは!」

「ははははは!」



【杉崎家と蘇芳家から少し離れた町】


「お買い物はこれで終わりね、早く帰って晩御飯をつくりましょう」

「母様、私もつくるの手伝うわね」

「あら、ありがとう瑠璃。助かるわ。銀はいっぱい食べるから、今日もたくさんつくらないとね」

「それなのに銀ったら料理はほとんど出来ないのよね。姉として心配だわ」

「ちゃんとお姉ちゃんしているのね、偉いわ瑠璃」

「偉い…か。……ねえ母様少し話があるのだけれど…」

「…なあに?」

「私ね、海外の学校に通って錬金術を学びたいの」

「…日本じゃダメなの?お爺様やお父様がいるじゃない。それに私も…」

「そうじゃないの。ダメってわけじゃないのよ。でもね、これからは私の力で、自分の力で錬金術を勉強したいの」

「…そっか。じゃあ帰ったらお爺様にお話してみましょう?」

「ええ、ありがとう母様」



―その日の夜―

【杉崎家】


「…なあ衛。お前はこれからどうしようと思ってるんだ?」

「え?うーん…よくわかんないや。普通の学校に普通に通うんじゃないかな。
でも魔術の勉強はしたいと思ってるよ」

「なるほどな。ところで衛はなにか魔術が使えるようになったか?」

「うん、簡単なのなら少しだけ」

「おお、自分で練習したのか?」

「ん、炎もちょびっと出せるし闇も少しなら使えるよ」

「二つの属性…?それはすごいじゃないか、父さん嬉しいぞ!」

「まっかせとけぃ!おれ頑張るよー!」

「頼もしいじゃないか、それなら心配ないな」

「ん?何の話?」

「衛、お前魔術学園に通わないか?幸い、あそこは中等部からだからな」

「…へ?」



―同時刻―

【蘇芳家】


「お爺様呼んだー?」

蘇芳瑠璃、参りました」

「おお、よく来たな。銀、瑠璃よ。まずは瑠璃、話があると言ったな」

「はい、お爺様。海外留学をしたいのです。海外に行き、錬金術の勉強をしたいのです」

「…ふむ、お前の実力ならそこまで心配することもなかろう。少し若すぎる気もするがな。
わかった、瑠璃よ。お前の海外留学を許可しよう」

「…あ…ありがとうございます!」

「ただし、条件がある。20歳になるまで戻ってくるな」

「…え?それはどういう…」

「言葉のままだ。どんなことがあろうと、成人するまでは日本に帰ってくるな。よいな?」

「う……」

「…まあよい。次は銀、お前には話がある」

「はーい♪なーに、お爺様?」

「お前には魔術の才能があったな?」

「え?うん、確か地属性だったかな…」

「そうか、それならばよい。お前はこれから魔術学園に通うのだ。よいな?」

「…え?」



『魔術学園に通うことになった』

「…え?銀も?」

「もしかして…衛も?」

「いや、おれはわかるけどさ。なんで銀も?お前ん家、錬金術師じゃなかったっけ」

「うん、そうだけどね。私の魔術適正だけ高いから、私は通わせるみたいだよ」

「そーいやそうだっけ。でも瑠璃さんは魔術ぜんぜん使えないよな」

「そうそうー。瑠璃姉ぜんぜんダメダメだからねー♪」

「あら?誰がダメダメなのかしら?」

「る、瑠璃姉!?…いつから居たの?」

「あ、瑠璃さん。こんにちは」

「こんにちは衛くん。抱きしめていい?」

「ダメです」

「あらそう、残念ね。さて銀、さっきは何の話を私の衛君としていたのかしら?」

「瑠璃姉超美人。マジクール。って話を…」

「嘘はいけないわね。脳天チョップ喰らいたいのかしら?」

「わーわー!ごめんなさい!」

(…相変わらずだなぁこの姉妹は。瑠璃さんも、銀も)



「…そっか、瑠璃姉は外国の学校行っちゃうんだ」

「応援してます、頑張ってください」

「ありがとう、衛くん。ご褒美のチュ―を…」

「あ、それはいいです。向こうでいい男でも見っけてください」

「ちぇっ、残念ね。」

「瑠璃姉も変なの。衛なんかを好きだなんて」

「いいじゃない。人の価値観なんて人それぞれよ。銀、あんたも頑張るのよ」

「うん、頑張るよ。錬金術も、魔術も」

「その意気よ。じゃあ私は父様と海外留学のための手続きをしてくるわ。しばらくお別れね」

「………うぅ…瑠璃姉……ぐずっ…」

「なに泣いてるのよ。蘇芳家の人間ならもっとしっかりしなさい」

「うぅ…わがっだ…ずびっ…うぅ…」

「まったく…衛くん、銀のことお願いね」

「はい、分かりました。向こうでもお元気で」

「さすが衛くん、銀よりも頼りになるわね。抱きしめていい?」

「いやです」

「…つれないのね」



―それから幾日が過ぎ、魔術学園へと行く日がやってきた―

【杉崎家】


「…オヤジはもう行っちゃったんだっけ」

「そうよ、まったく息子の旅立ちの日だっていうのに、自分は仕事仕事って…」

「いいよ、オヤジもお仕事で大変だってのは分かってるから」

「…ごめんね衛」

「カーチャンは気にしないでよ。それじゃ…」


【蘇芳家】

「うぇぇ…えぐえぐ……」

「ほらほら、そんなに泣かないの。銀の可愛い顔が台無しよ?」

「だ、だってぇ…おかーさんとおとーさん、お爺様と離れるの…えぐっ…さみしい…」

「銀、常盤様が決めたことなんだ。分かってくれ」

「うぅ…でもぉ…」

「ほれほれ、もう泣くでない。蘇芳家の人間たるもの、泣くことは許されんぞ。いいな?」

「ずびっ……はいっ!……それじゃ、おかーさん、おとーさん。お爺様…」




『行ってきます!』



―後日談というか魔術学園に入ってしばらくした頃―


「まーもるっ。お昼食べよっ♪」

「おー食べようぜー」

「よー杉崎ーお前蘇芳と仲いいじゃねーか。付き合ってるのかーww」

「ちげーだろwもう夫婦だろwwひゅーひゅーw」

「ち、違うわ!おれ銀となんか付き合ってねーし!」

「わたしだって衛なんか好きじゃないもん!」

「いえーい、ツンデレツンデレーww」

「もう付き合っちゃえよお前らw」

「だっ、誰がこいつと…」

「絶対に衛となんか…」


『付き合うもんかぁぁぁ!!!』



この一件から、杉崎と蘇芳は過度な接触を止め、
周囲から恋人のような関係に見えないように心がけるようにしたらしい。
しかし見ていれば分かるように、この作戦、上手くいってはいない様子。
最終更新:2012年03月02日 01:22