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全国約二万人のファンの皆様ごきげんよう。
みんなのアイドル杉崎衛です。え、違う?
そんなわけが…まぁいいや。
今回は先日俺が行ってきた任務の話しをしようと思います。
なに?別に頼んでないのに勝手に語るなだって?
ええい、語るのは俺の勝手だろう!
とにかく語る、すぐ語る!聞きたくないならそれでよし!


この俺、杉崎衛は先日テストで重大なミスを犯してしまった
重大な上に、ものすごく単純で初歩的なミス。
解答欄に書いた答えが一問残らず全部ずれてた。
そりゃあもう全滅。完膚なきまでにボロッボロ。
当たり前のようにテストの点数は0点。のび太くんじゃあるまいし。

で、本来は補習を受けることになるわけだが、その前に先生に呼び出された。
どうやら補習の件での話ではないらしい。どういうこっちゃ。
兎に角、今はその先生の指定した場所へ向かっている最中だ。
ところで角の生えた兎ってなんか可愛くない気がする。
むしろ凶暴な感じがする。悪魔の使い的な感じ。
あえて名前をつけるならグレムリンがお似合いだ。
うん、そっちのほうがしっくりくる。いい名前だ。

そうこう言ってたら呼び出された教室についた。
ノックすると中から返事が聞こえてくる。女性の声だ。
扉を開いて中に入ると、窓際に女性が立っていた。
青色のジャージを着て、髪の毛を後ろで適当にまとめている。

「来たな杉崎。存外早かったじゃないか」

この人は何人かいる任務請負担当の先生のうちの一人だったはず。
名前は……なんて言ったかな。別に名前が72通りあるわけではないが。
あまり会ったことが無いから覚えていないだけだ。
確か……み、から始まったような…。ああそうだ、思い出した。

「御厨先生、でしたっけ」

「まぁな。立ち話もなんだ、そこのソファーにでも座るといい」

「失礼します」

御厨先生に一礼してからソファーに座った。
同じように向かい側のソファーに御厨先生が座った。
簡単な話であれば普通に立ったままで済ませるだろう。
互いに座った、ということはこの話が長時間に及ぶことを意味する。
おそらくこの話、補習よりも面倒なことになってしまいそうだ。

「今回、お前には補習の代わりにある任務を受けてもらうことになる」

ほらね。予想していた通りだ。やっぱりね。
どうやら困ったことに、俺は補習より面倒な任務をしなければいけないようだ。
まぁ、面倒かどうかは任務の内容にもよるけれども。

「わかりました。で、その任務の内容は?」

「その前に聞いておくことがある。お前、魔結晶という物質を知っているな?」

魔結晶。授業や本とかでで何度か聞いたことがある名前だ。
その名の通り、膨大な魔力を秘めた結晶のことだ。
人工的に作る方法は未だ解明されておらず、天然物しか存在しない。
しかも出来るのはかなりの高濃度の魔力溜まりのみ。
ゆえに超貴重品として高値で取引されると聞く。

「ええ勿論。任務の内容ってのは、それの入手ってことですかね」

「厳密に言えば、そうではない」

「え、違う?」

「今回の任務の内容は『魔結晶の破壊』となる」

「………はぁ?」

魔結晶の破壊?そんな馬鹿げた話があるものか。
どんな判断だ。金をドブに捨てる気か。
一個あるだけで何日豪遊できると思っているんだ。
先日、任務中に偶然魔結晶の欠片を見つけた先輩がいた。
まるで宝くじが当たったかのように喜んでいたのを覚えている。
勿論のこと、その先輩はその欠片を売って大金を手にしたらしい。
それほどまでに高価なものを破壊しろというか。

「そう思うのも無理はないだろう。だがちゃんとした理由がある」

「その理由、聞かせてもらえるんですよね?」

「無論だ。最近入った情報で、その魔結晶を狙う悪の組織があるらしい

悪の組織。今時そんなものがいるのか。
逆に会ってみたい気もするが。




「現状況下で分かっていることは、まあそれだけだ」

「随分とアバウトなことしか分かってないんですね」

「仕方ない。何せ情報がないんだ。せめて組織の名さえ分かればな…」

しかし魔結晶を狙う輩なんていくらでもいるだろうに。
それにどうせならこちらが先に奪えばいいことだ。
そうすればこちらにも利益があるし、あちらの手にも渡らない。
何故そうしないのだろうか。ちょっと聞いてみようか。

「もしお前達が魔結晶を手に入れたりなんかしたら、お前達に被害が及ぶだろう。それは避けたい」

おお、なんとも先生らしい模範的な返答だ。
生徒へのその寛大なる心遣い。痛み入ります。
というわけで、魔結晶を破壊するという理由がなんとなくはっきりした。
要するに危険は避けたいというわけだな。

「で、その魔結晶ってのはどこにあるんですか」

「それについてはこれを読んでおけ。地図も入っている」

御厨先生が差し出してきたのはやたらと分厚い封筒。
中身を取り出すとこれまた書類がわんさか出てきた。
一通り目を通してから先生に声をかける。

「先生、これ3分クッキングのレシピです」

「……失礼した」

俺が差し出したレシピを受け取ると、今度は薄い封筒を渡してきた。
そういえば妙に分厚いような気がしたんだよな、とつぶやく先生。気づけ。
とりあえず、改めて中身を取り出して一瞥する。
大体の場所は把握できた。あとは地図で確認すればいいか。

「それともうひとつ。今回の任務はツーマンセルで行うこととなっている」

「マジですか。じゃあ俺銀と組みたいです。B組の蘇芳銀、知ってますよね?」

「ああ、お前達がラブラブなのは知っているが、残念ながら相手はもう決まっている」

「え。それって誰ですか…?」

そう話していると廊下のほうからドタバタと廊下を誰かが走る音が聞こえてきた。
その音は徐々に大きくなっていき、どうやらこの部屋に近づいているようにも聞こえる。
案の定その足音はこの部屋の目の前で止まり、それと同時に扉が勢いよく開かれた。

「ったく、こんな部屋全然来ねェから迷っちまったじゃねェか!」

「随分遅かったじゃないか、岡山」

「前から言ってるだろォが!アンサーって呼べってよォ!」

「……うわぁ」

なんでよりによってこいつなんだ。
最悪、最低、もう嫌だ、死にたい。
こんなことなら丸一日補習のほうがよっぽどいい。



「……というわけで、杉崎と岡山――」

岡山という言葉にアンサーが御厨先生をにらみつけた。
教師相手にガンとばすなよお前アホか。そうだアホだった。
その視線に気づいた御厨先生が仕方なさそうに訂正した。

「――アンサーのペアで任務に臨んでもらう」

「「嫌です(だァ)」」

「……そこを了解してもらわねば、話が進まないんだがな」

「そんなもの、了承するくらいなら何日でも補習を受けます」

「つかなんでコイツとなんだよォ。ありえねェ」

俺とアンサーはソファーに限界まで離れて座っている。
端っこと端っこに、出来る限り離れて座る。心の壁を作る。
本当は一緒のソファーに座りたくも無い。拒否したい。
同じ任務に仲良しこよしで挑めなんざ吐き気がしてくる。
なんでよりによってこいつなんだ。…大体予想はつくが。

「御厨先生、もしかしてコイt…アンサーも0点だったんですか」

「察しが良いな。こいつもお前と同じ、仲良く0点だ」

「おいなんだ杉崎ィ、お前んな頭悪かったのかよォ」

「ちげーよ。解答欄全部ずれてたんだよ」

まぁ、解答欄全部ずれて書くというのも頭悪い行動には違いないが。
ずれてなければきっと良い点数だったはずだ。間違いない。
ここは先生にそれについて聞いてみるしかあるまい。

「先生、もし俺のテストの解答がずれてなかったら点数はどのくらいでしたか?」

「43点だ」

……微妙だ。正直悪い点数ではある。
でも赤点ってほどでもない。いや赤点取ったら流石にマズイが。
絶対に半分以上は取れていると思ったんだがなぁ。なんてことだ。
うん、まぁ0点じゃなかっただけありがたいと思うことにしよう。




ところで今、この状況下でひとつ気になることがある。
俺の記憶だと赤点者はまだ何人かいたような気がする。
アンサーのことについては再確認として聞いただけ。
一応は同じクラスだし、アイツは0点常習犯だし。
…と、いうことは他にも任務を受けている奴はいるんだろうか。

「先生。質問なんですが」

「なんだ」

「俺やコイツ以外にも、赤点で補習者はまだいたように思うんですが」

「そうだ。お前ら並の馬鹿はたくさんいるんでな。私たち教師は大変なんだよ」

「…申し訳ないです」

御厨先生は不服そうに。それでいて不機嫌そうに言った。
腕を組んで偉そうに。いや実際偉いんだけどさ。かなり。

「で、それがどうしたのか」

「ああいえ、他のやつらはまた別に任務受けてるのかなーと思いまして」

「いや。あいつらは普通に補習組だ」

誠に遺憾である。
なんでよりにもよって俺とアンサーがコンビ組んで任務なんだ。
誰でも良い、補習変わってくれ。お前のぶんもやってやるから。

「お前達が選ばれたのは他でもない。お前達が最適任だと思ったからだ」

心を読まれた。
いやそんなことはどうでもいい。

「俺達が適任って」

「どういうことだよォ」

「お前達二人はその補習者たちの中でも、ずば抜けて模擬戦の成績が良くてな」

確かに。模擬戦とか魔術関係には自分で言うのもなんだが自信がある。
かなり、とっても。クラスでトップというわけではないが相当上のほうではある。
アンサーも、まあ強いほうではあるかな。俺よりは弱いけど。
それでも同じ四天王のキャメロットやブライトを遥かに上回る実力を持っている。
前ちょっと油断したときにやられそうになったし。いやでも油断は必要でしょ。
慢心なくして何が王か、ってとある金ぴかも言ってるし。
さて話を戻そう。

「つまりは」

「どういうことだァ?」

「どうせなら『最強』の二人に任務を受けてもらったほうがいいと考えてな」

最強……いい響きだ。
たとえアホたちの中でだとしても最強はいい。
こんな馬鹿にも取り柄があるんだぞ!って感じで。
いや俺は馬鹿じゃないんだけれども。

「本当は『超強い』お前達に頼もうと思ったのだが、仕方ない。他の奴に…」

「いやァ、その必要はねェぜ」

「右に同じ、です」

「…ほう。どういう意味だ?」

「「その任務!やってやんよ!!!」」

俺とアンサーは高らかにそう宣言した。
なんだか御厨先生の口元がにやりと笑ったような気がしたが気のせいだろう。
ともかくこうして俺とアンサーは『魔結晶の破壊任務』を請け負うこととなった。



時刻は午前10時。現在位置は学園の校門前。
任務に行くための準備やら手続きやらを終えて、これから出発するところだ。
だが肝心のアンサーが来ない。集合時刻からもう20分も経つ。
畜生、コンビ組むのが絶対条件でなければ即刻置いていくのに。
なんでさっさと来ないんだあの野郎タヒね。
元々バスで空港まで行く予定だったのにそのバスも行っちゃったよ。
次が30分後というのが幸いか。流石にそれまでにはアイツも来るだろう。
とか言ってたら来た。遅いわ阿呆が。
第一声が謝罪の言葉じゃなかったらぶん殴ってやる。

「あァん?テメェ来るのムダに早ェな。マジメちゃんかァ?」


俺はアンサーの頬を力いっぱい殴った。


「痛ェじゃねェかコラァ!んだよテメェはァ!」

「何だよはこっちの台詞だこの野郎。何分遅れてると思ってやがる」

俺は携帯を取り出して時間のところを指し示した。
普通だったらここで謝罪の言葉が来るはずだ。
流石のアンサーもこれで申し訳ないと思うはずだ。
うんうん、もし謝らなかったらどうしてくれよう。
今度は蹴り飛ばしてやろうかな。

「だっせえ携帯だなァオイ」


俺はアンサーの向う脛を蹴り飛ばした。


「いってぇ!なにすんだテメェコラァ!」

「うるせーバカヤローコノヤロー」

「アァ?テメェブチ殺されたいのかァ?アァ?コラ」

「お前なんかが俺に勝てるとでも思ってるのかよ。焼き加減はウェルダンがお好みか?」

「テメェこそ電撃は何ボルトがお好みだコラァ。チュドーンするぞこらチュドーン」

「チュドーンってなんだよ具体的に言えよバカヤロウ」

「うっせーうっせー殴るぞコラ」

「やってみろよコラ」

このまま1時間ずっと言い合いになってしまった。
勿論のことまたバスは行ってしまった。
次のが来るのはどうやら2時間後らしい。
……何をやっているんだろう俺たちは。

「で、結局どォすんだよ。次のバスまでクソ時間あんぞ」

「どうするって、答えはひとつだろ。俺達は学生といえ魔術師だからな」

神経を集中させ、魔力を集中させる。
そしてなんかこう、こういう感じで、ああやって、そうする感じ。
…具体的に説明するのは難しい。ほとんど感覚でやってるようなものだし。
とにかくいい感じに魔方陣が浮かび上がってきた。
魔方陣からは機械的な黒と白のボードが出てくる。
これこそが俺が誇る移動特化の幻獣兵装、“夜光の爪翼《アーク》”。
すごいスピードで空を飛べるのだ。すごいだろう。

「お前も何か移動手段くらいあるだろ。ないわけがないよな?」

「あるに決まってるだろォが。サンダーバード!」

バチバチバチッと雷を纏った鳥が召喚された。
あーそういやいたな。何度か見たことあるわ。
召喚されるたびにやられてる、健気な鳥さんだ。
まぁとにかくこれで移動手段は確保できたわけだ。

「んじゃ出発するわけだが、異論はないな?」

「いろんってなんだムズい言葉使ってんじゃねェぞ」

「……とにかく、問題とかそういうのはないかって聞いてるんだよ」

「テメェ、場所分かってんのかァ?俺は知らねェ」

流石アンサー、もはや馬鹿ってレベルじゃない。
だが優しい俺はここで魔方陣から地図を取り出す。
地図のある地点には赤い丸がつけてある。
そして赤マジックで日本とその丸を繋げてある。
その赤線が目的地までの経路だ。

「大体このあたりだ。何処の国のなんていう地名かは説明しても分からないだろうから省く」

「あったりめェだろォ。お前俺を馬鹿にしてんのかァ」

こいつ自分で自分が馬鹿だと認めている発言しやがったよ。
どこまで馬鹿なのか底が知れないよ。
恐るべしアンサー。何故お前はC組にいるんだ。

「……まあいいや。お前は俺の後ろを付いてくればそれでいいんだよ」

「テメェが俺の先行くってのはムカツクが、仕方ねェな。後ろにせいぜい気をつけやがれ」

アークに飛び乗ると同時に、アンサーも雷鳥の上に飛び乗った。
あの程度の距離ならアークの速度で半日もあればつくだろう。
いよいよ学園を出発、任務開始だ。




学園を出発して数時間が経過した。
現在位置は海上、日本を過ぎて順調に移動中。
今のところは何も問題はない。
比較的順調に目的地までのルートを進んでいる。
…まあたまに後ろから電撃が飛んでくるけど、気のせいだろう。
とか言ってたらまた飛んできた。矢みたいな雷が迸る。
まあ殺気ビンビン感じるし、見なくても回避余裕だけど。

さっきからずっとこんな調子だ。
何度も挑戦しようという心掛けは評価するが不意打ちとは卑怯な。
アークピッドのレーザーで撃ち落してやろうかな。
とりあえず撃ってみよう。あ、避けられた。

「おいお前!危ねェだろォが!当たったらどォすんだァ!」

お前がそれを言うか。さっきから攻撃しまくってたくせに。
うるさい、ギャーギャー騒ぐなよ。本当に落としてやりたい。
御厨先生に「奴は任務中に死にました」って報告すればいいだろうし。
いつ頃決行しようかな。もうちょっと進んで大海原のど真ん中あたりで落とそう。
死体も海の生物たちに食われて発見されないだろうし。
なるほど、これが完全犯罪ってやつか。

「おい杉崎ィ、なんか鳴ってっぞ」

「お前の屁じゃねえの」

「ちげェよ。お前の携帯だろォ」

本当だ。携帯が鳴ってたのか。気づかなかった。
移動しながらだが電話に出ないわけにもいかない。
…知らない番号だな。まあいいや。

「もしもし?どちら様でしょうか」

『聞こえているか?御厨だ』

「これはこれは先生。どうしました」

『先日言っていた組織の名が分かった。一応参考までに伝えておく』

…すげぇなもう分かったのか。
あんなに分からない分からない言ってたのに。
それとも丁度分かったのか?まあいいや。

『その組織の名前は……ヴァルハラ師団…だ、そうだ』

「……はぁ…」

まあ名前はアレでも内容はそんなことないはずだ。
多分、きっと、おそらく、軍事組織とかそんなんだ。
もしくは瑠璃さんやインディゴ先生と同じ傭兵とか。

「で、そいつらはどんな組織なんですか?」

『世界征服を目論む魔術師の集団だ』

「小学生か!」

いや最近の小学生ですらこんなこと考えないぞ。
どんだけ酷い厨二病を患っているんだ。
なんというか会いたくない。すごく会いたくない。
なんか初対面で「俺に近づくな…貴様らに災いが降りかかるぞ…」
とか言い出しちゃいそう。「ぐっ、右腕が疼く…」とか。

「で、先生。そいつらは何故魔結晶を狙っているんですか」

『さぁな。馬鹿の考えることは分からん。大方力が欲しいとかその程度だろう』

「ああやっぱり…」

もはやどうしようもない組織だな。
そんな大人だけには絶対になりたくない。

「用件はそれだけでいいでしょうか先生?」

『そうだな。現在位置の報告を』

「あと2時間も移動すれば陸地が見えてくるかと」

『ほう、意外と早いじゃないか。期待しているぞ』

「ええ勿論」

通話を切って携帯電話をポケットにしまう。
その直後に後ろから声が聞こえてきた。
まあこの状況で声を掛けてくるやつなんて一人しかいないけど。

「オウ杉崎ィ、電話は誰からだったんだよォ」

「御厨先生だ。魔結晶を狙う組織の名前が分かったらしい」

「ヘッ、で?どんなふざけた名前なんだよォ」

「ヴァルハラ師団」

「………か……カッケェ…!」

……ああそうか。
ここにも厨二病患者が一名いたか。




予想していた通り、2時間と少しで陸地にたどり着いた。
目的地はもっと内陸にあるため、一度この辺りで休憩しておきたい。
よく考えれば何も食べないで移動していたから腹が減った。
ここはどうやら港町らしいし、海の幸が食べられそうだ。
いいねシーフード。俺好きだよ。

「というわけでアンサー、適当な店で飯にするぞ」

「あァん?なんでテメェと仲良しこよしで飯食わなきゃいけねェんだよ」

「お前なぁ…御厨先生との約束を忘れたのか?」

そう、俺達は任務するにあたって御厨先生からある約束をしている。
ひとつ、つねに二人で行動すること。
ふたつ、敵組織に魔結晶を絶対に渡さないこと。
みっつ、必ず生きて帰ってくること。
大体こんなところだったはず。

「俺もお前と一緒に飯なんて食いたくないよ?でも先生が言ってるんだからしょうがない。成績下げられるからな」

「チッ……わァったよ」

アンサーを無理矢理納得させ、近くの店に入った。
ほほう、この店はシーフードが美味いのか。
流石港町。新鮮な海の幸が揃っているようだ。
だが海鮮丼や寿司、刺身なんかはなさそうだ。
やっぱり海外だとあまりメジャーじゃないのか。
日本という国に生まれたことをありがたく思う。

「じゃあ…このシーフードナポリタンにするかな。アンサーお前どうするよ」

「ハンバーグ」

「……お前、折角なんだし魚介系食っとけよ」

「肉が食いてぇ」

「ああそうかい。まあそれ食いたいなら勝手にしてくれ」

店員を呼んで俺のとアンサーのをまとめて注文した。
30分ほどすると、まとめて料理が来た。
とりあえず一口、ナポリタンを口にする。
なるほど美味い。魚介の風味とトマトが絶妙にマッチしている。
あまりの美味しさに、5分たらずで完食してしまった。


食事を終えた俺とアンサーは、本来の目的地に向かっている。
先ほどの港町からさらに内陸へと進むと大きな森がある。
ちなみにその森には危険な生物とかはいないらしい。
安心したような、少し残念なような気もする。
で、この森が目的地なのかというと、厳密にはそうじゃない。
その森の「とある場所」が、本来の目的地らしい。

「で、まだ着かねェのかよ?」

「まだだ。森にすら着いてないじゃないか」

「いい加減移動ばっかりで飽きたんだけどよォ。さっさとバトりたいぜェ」

「お前なぁ、そもそも今回の任務はバトらない可能性だってあるんだぞ」

「マジかお前」

「マジだ」

実際嘘じゃない。本当にマジだ。
今回の任務は討伐とかじゃなくて破壊だから、できるだけ穏便に行きたい。
ヴァルハラ師団の強さも分からないし、戦闘は避けておきたいところだし。
早めに魔結晶へと向かい、破壊、エスケープ。
できるだけこの流れで任務を遂行したい。
迅速かつ大胆、いや穏便に。

そうこう言ってたら着いた。森の入り口に。
……なんだかやたらと鬱蒼と茂ってるんですけど。
富士の樹海に似たオーラを感じるんですけど。
ここ自殺の名所とかになってないよね?
森に入っていったら迷子になったりしないよね?
そのまま白骨死体で後日見つかったりしないよね?

「……よし、アンサーお前先行け」

「や、やだよテメェが行けよ」

「なんだお前び、びびってるのか?」

「そっそそそそそれはこっちの台詞だァ。お前こそびびってんだろォ?」

「ばっかお前俺を誰だと思ってやがんでぃ。よし分かったせーので行くぞ」

「了解だァ。せーのっ…………………テメェ来いやァ!!!!!」

この後30分間森に入ることが出来ないままギャーギャー騒いでいた。
結局俺がアンサーの背中を蹴り飛ばすことによってやっと森に入ることに成功した。
なんかぎゃふんっ!とか言ってたけど。




案の定森の中は暗く、というか既に日が暮れてるから外とか中とか関係ないんだけれども。
とにかく予想以上に暗かった。真夜中みたいだ。
ライトとかは持って来ていないため、魔術の炎をライト代わりにする。
正直明るいとは言えないが、ないよりはマシだろう。
光属性の魔術が使えれば楽なんだけどなぁ…。
アンサーの雷は微妙だし。明るいっつーかバチバチしてるだけ。
とても明かりの代わりにはならない。使えないな。

それにしても、本当にこの森には何の危険生物も棲んでいなさそうだ。
さっきから可愛いリスやらモモンガやらしか見かけない。
うさぎもいたな。鹿もいた。ライオンとかはいなかった。
正直拍子抜け、といった感じだ。
どうせならババーン!と何か出てきてもよかったのに。
アンサーみたいにバトりたいってわけじゃないが、これじゃワクワクしない。
凶暴な魔獣との戦いあってこその任務じゃないのか、とも思う。
対人戦だと相手を殺すわけにはいかないけど、魔獣とかなら話は別だ。
全身全霊でギッタンギッタンのボッコボコにできる。
別に種族での差別とかじゃない。基本的に人間より丈夫だからだ。
人間なら致命傷になるような攻撃でも、意外と死なない。
本気を出してカッコよく戦うには丁度いい相手といえる。

そうこう言ってたら着いた。目的地に。
…なんかこの流れ3回目くらいな気がする。
まあいいや、とにかく着いた。

「んだァ?どこだよここは」

「見て分かるだろ。ここは湖だ」

そう。目的地とはこの大きな湖のことだ。
学園の炒飯湖よりは少し小さくはあるが、そこそこ広い。
深さもそこそこありそうだ。水はお世辞にも綺麗とはいえない。
大分濁りがある。そのまま飲むようなことは出来なさそうだ。

「しっかし、完全に日が暮れたな。今夜はここで野宿だ」

「チッ…オイ、ここの何処になんとかって石があるってんだァ?」

「魔結晶だ。まあそれもこれから話す」

適当に木の枝やらを拾ってきて焚き火をする。
そしてアンサーに今後の予定などを出来る限り分かりやすく説明した。
俺の親切な説明のおかげで一回で理解できたようだ。
それから焚き火を消し、寝袋を用意して眠りにつく。
いよいよ明日からが任務本番だ。

そして朝、まぶしい太陽の日差しで目が覚めた。
やたらとさわやかに起きてしまった。
なんか鳥のさえずる声まで聞こえてくる始末。
おかしいな。家でもここまで気持ちよく起きたことないぞ。
日光の力恐るべし。

とりあえずまだ眠っているアンサーを蹴り起こす。
なんか抗議してきたが無視する。
とりあえず朝食にする。昨日買っておいた缶詰だけど。
なんかアンサーが俺の分がねェとか言ってきた。
黙れ、お前の分など誰が買うものか。
そこの湖にでも潜って魚でも獲ってこいよ。
うわマジで行ったぞあいつ馬鹿だ。

しばらくほうっておいたら突然湖面が光った。
水面には何匹もの魚が浮かび上がってくる。
ああ成る程。雷使って感電させたわけか。
獲った魚を雷で焼いて食べ始めた。
ああ美味いですか。そうですか。


「さて、任務開始するぞ。まずは入り口探しだ」

「チッ、面倒クセェ…」

朝食を食べ終わった俺達は任務を再開することにした。
御厨先生が渡してくれた資料によると、この湖の近辺に洞窟があるらしい。
その洞窟の奥深くに魔結晶があるんだとかないんだとか。

「アンサー、お前さっき湖に潜ったよな。怪しいものなんか無かったか」

「んなもんあったら即言ってるだろォが」

「それもそうだ」

どうやら湖の中にはないようだ。鉄板なのに。
仕方ないから俺達はこの周囲を適当に捜索することにした。
いろいろ探してれば怪しいものも見つかるだろ。
多分だけど。




捜索から3時間が経過した。未だに洞窟は見つからない。
なんかこんな番組年末とかによくやってるよね。
謎の生物だとか、太古の秘境探索だとかの特別番組。
ああいうのやってるスタッフとか芸能人はいつもこんな感じなのか。
あれだけ頑張って視聴率取れなかったら泣けてくるな。

俺達は捜索を一時中断し、休憩をとることにした。
休憩といっても情報を交換するための時間をとるという意味もあるが。
俺が森の中やらを探している間、アンサーは何度か湖に潜っていた。

「いちいち探すの面倒なんだよォ。俺は湖の中探してんぜ」

とか言ってやがった。まあ俺は泳げないからそれはそれで助かるんだが。
ちなみに怪しいものは見つからなかったそうだ。ダメだこりゃ。

「しかしよォ杉崎ィ。こんだけ探してねェんじゃあよォ。洞窟なんてねェんじゃねェのかよ」

「だな。流石の俺も怪しくなってきた」

「普通ゲームなら湖の中にあんだろォよ。王道じゃねェのかよ」

「王道なぁ……んっ?」

待てよ。ひょっとして俺は王道のパターンとして一番メジャーなものを忘れているんじゃないだろうか。
普通湖があれば洞窟への入り口は水中にあるのが王道だ。
しかし実際は湖の中に入り口なんて見当たらなかったらしい。
だがひとつだけ、もうひとつだけ忘れてはならないものがあった。

「滝だ」

「滝って同じクラスの滝沢かァ?」

「ちげぇよ川のほうの滝だ。漫画とかでよくあるだろ、滝の裏側に隠し通路がな」

「あァ、そういやあるなァ。つまりあの裏側にあるってことかァ?」

「確信はないけどな。試す価値はある。“炎華”!」

大量の水が流れ落ち続ける滝へと、炎弾を放った。
滝へと命中すると爆発し、流れ落ちる水を水蒸気へと変化させる。
威力はたいしたことないため、向こう側は一瞬しか見えなかったが。
だが、これで確信した。

「見えたな?アンサー」

「あァ、でっけェ穴がパックリ口あけてやがったなァ」

「なら行くぞ、滝に突っ込む。“黒翼”!」

黒い翼の生えたブーツを装備し、滝に一気に突っ込んだ。
それに続いてアンサーも雷鳥に乗り、滝に突っ込んできた。

「ふぅ…流石に濡れるか」

「チッ、気持ちわりィ…」

滝にそのまま突っ込んだ俺たちは案の定ずぶ濡れになっていた。
まあ防御壁も張らずに滝に突っ込めばそうなるわな。
予想はしてたけど、なんかノリでやっちゃった。
とにかく魔術で服を乾かす。3分もすればパリッパリに乾いた。

「さて、進む前に、だ。“探火”」

小さな人魂のような火が周囲をぐるぐる飛び回る。
この魔術は所謂熱源探知というやつで、周囲に生物がいないかなどを簡単に探れる。
ステルスなんかで姿を消していても見つけることができるので便利。
逆に言うなら、火山なんかの熱い場所だととても使えない。
周囲の温度が高すぎて人間の体温が紛れてしまう。
説明はこのくらいにして、探火を使って周囲の熱源を感知する。
普通であればこの場にいる俺とアンサーの熱源しか感知できないはずだ。
だが探火は洞窟を少し進んだ場所に「別の熱源」を感知した。

「アンサー、この先に熱源反応がある。反応はひとつだが、それなりにでかそうだ」

「へっ、関係ねェよんなことよォ。邪魔するなら消すだけだァ」

なんの迷いも無く、少しの躊躇いも無く、アンサーは洞窟の奥へと足を進めた。
いや、そもそもあいつは恐怖とかそんなこと少しも考えてないのかもしれない。
馬鹿だから、馬鹿正直に前に進もうとする。後先のことは考えない。
アンサーはそういうやつだ。

「……うっし、じゃあ行くとしますかね。待ちに待った決戦のバトルフィールドへ」

「あァ、さっさと行こォぜェ。殺したくて仕方がねェ」

洞窟の道が突然右へ折れ曲がっている。
その奥からは、おそらく大きな生物の唸り声が聞こえてくる。
どうやらこの先は広い空間になっているのだろう。
狭いよりはずっといい。戦いやすいし。

「先行くぜェ。倒しちまっても文句言うなよォ?」

「別に。それなら魔力温存できるから好都合だ」

「へっ、言いやがるじゃねェか」

そう言い残し、アンサーは洞窟の奥へと走っていった。
数秒間を空けて、俺も洞窟の奥へと突入する。




俺たちの目の前に、その怪物は姿を現した。
眼を光らせ、牙を剥き、荒々しく吼える。

『グオオォオオォオォォオォォォオォ!!!!!』

「……随分デカイのが出てきたな」

「んだよォありゃあ。つかあんなデカイもんなのかよォ」

「知らん。俺に聞くな」

そこにいたのは見上げるほどに大きなケルベロス。
犬の頭が1、2、3。ちゃんと三つある。間違いない。
これはワンコですか?いいえケルベロスです。

「知ってるかアンサー?ケルベロスってのは地獄の門番って呼ばれてるんだぜ」

「へっ、この先地獄ですよってかァ?悪い冗談だぜオイ」

「この先が天国なのか地獄なのかは分からないけどな。んじゃま、やるとしますか」

魔力を集中させ戦闘準備に入る。
先に攻撃するのもなんだし、あちらの様子を窺う。
あっちが攻撃してきたら反撃するとしよう。
所謂、正当防衛ってやつだ。『僕は悪くない。』

「オイィ来るぞォ!」

「むむっ」

三本の首のうちの向かって右側の首が炎を吐き出した。
かなり圧縮された高密度の炎のようだ。当たればただじゃあ済まないだろう。
だが、甘い。

「先手は貰うぜアンサー。“喰闇”」

眼の前にうねり渦巻く闇の盾が作り出される。
盾は炎を飲み込み、闇を纏わせて再度放つ。
いい感じに飛んで行ったものの、普通に避けられた。悔しい。

「次は俺が行くぜェオラァ!!」

間髪入れずにアンサーがケルベロスへと雷を放った。
すると今度は左の首がが水を吐いた。ゲロかよ気持ち悪い。
水は雷を吸収して、勢いを変えずにアンサーへと襲い掛かる。
アンサーは先ほどよりも高出力の雷を放ち、それを相殺した。

「チッ、地味にやるじゃねェかよ。あのワンコロ」

「真ん中の首からは何が出るんだろうな。雷か?」

「それ俺と被るじゃねェか。まァいっちょ吐かせてみっかァ!!“サンダーボール”!!」

「賛成だ。“飛焔鳥”!!」

アンサーが雷球体を放つと同時に炎の鳥を放った。
すると狙い通り、真ん中の首が攻撃をしてきた。
口元が光ったと思うと、強烈な閃光が俺たちの横を通り過ぎる。
雷球体も、炎の鳥も、一瞬で消し飛ばされた。
なんか後ろのほうでチュドーンって効果音が聞こえる始末。
オーケイオーケイ、まずは落ち着こう。

「……まさかのビームとは思わなんだ。チートだろあれ」

「左右とのギャップが酷すぎんだろォよ。普通吐くかァあんなもん」

「えっと何?炎と水とビーム?おかしいだろせめて風にでもしとけよ」

俺たちがグダグダ文句を言っていると、ケルベロスが襲い掛かってきた。
左右二手に分かれ、攻撃のチャンスを窺う。
左側に逃げた俺に向かって、左首が水を吐く。
右側に逃げたアンサーに向かって右首が炎を吐いた。

「ちっ、幻獣兵装“竜羽衣”!」

「面倒クセェ“ライジングスピア”!」

黒いコートを装備し、ひらりマントのように水を受け流した。
アンサーは雷を細く槍のように飛ばして炎を打ち消した。

「しかしラチがあかないな……そうだ、アンサーお前アイツの上まで跳べるか?」

「んな高ェとこまで跳べるか。無理言うんじゃねェよ」

「なら俺が飛ばす。そしたら俺が気を引くからアイツの上から攻撃を適当に叩きこんでやれ」

俺はちょっと格好つけてそう宣言してやった。




「飛ばすゥ?んなことどうやんだよォ」

「説明するよりやったほうが早い。とりあえずこっちこい!」

「無茶言うんじゃねェよ!ワンコロ邪魔で行けねェっつーの!」

「なんとかして来いよ、それともこっちに来ることすらできないの?馬鹿なの?死ぬの?」

「舐めんじゃねェぞコラァ!行ってやろうじゃねェか!!」

簡単に乗ってきたぞ、扱いやすいなこいつは。
半ば無理矢理ケルベロスの足元を潜り抜けてアンサーがこちらへ走ってきた。
あのスピードなら丁度いい。作戦を生かせそうだ。

「うっしアンサー、こっちに向かって思い切りジャンプしろ!俺にとび蹴り食らわせる勢いで!」

「任せやがれェ死ね杉崎ィ!!!」

アンサーが殺意をこめて俺にとび蹴りを放ってきた。
それを竜羽衣の一部を伸ばして包み込むように受け止める。

「今から思い切り投げるが、ヘマすんじゃねーぞ?」

「するかよォ。舐めんなクソが」

「なら、行って来いっ!!」

体を大きくひねり、上空へとアンサーを投げ飛ばした。
狙い通り、アンサーはそのままケルベロスの頭上へと陣取った。
幸いケルベロスは何が起こったのか理解できていないようで頭上のアンサーには気づいていない。
この絶好のチャンスを逃すわけには行かない。

「叩き込めアンサー!一撃で決めなかったらぶっ飛ばすからな!」

「いちいち言うんじゃねェ!“ボルティック・デストロイ”!!!」

両腕に高出力の雷を纏わせる。
重力によってアンサーはケルベロスの背中へと落ちていく。
着地すると同時に、雷を纏った両腕をケルベロスへと叩き付けた。
ケルベロスの全身に激しい電撃が迸る。
数十秒ほど流し続けると、ケルベロスが横倒しに倒れる。
2,3度痙攣したが、その後はぐったりと倒れたままになった。

「……やったか?」

「杉崎ィ、そりゃ相手生存フラグの台詞だァ。こういうときはな、こう言うんだよォ」

アンサーは適度にカッコつけてこう言った。

「チェックメイト」

アンサーよ、それはもう少し早めに言っておくべき台詞だ。
このタイミングでそのキメ台詞はイマイチしまらない。
タイミング間違えるとこういうことになるんだね。覚えておこう。

「ン?おい杉崎ィ、ワンコロどこいったんだァ?」

「はぁ?ケルベロスは今お前が…ってありゃ?」

なんと先程まで倒れていたはずのケルベロスの死骸が消えていたのだ。
見間違いかと思い、何度も目をこすって見直したが間違いなく消えている。
あれほどまでの大きさのケルベロスが一瞬で消えるなどありえない。
どういうことなんだ……

「――ま、いいか」

あんまり気にしないことにした。
とりあえず最初の障害をクリアした俺たちはさらに洞窟を奥へと進む。
それにしてもケルベロスが出てきて以来、なんの生物にも遭遇していない。
洞窟には付き物の蝙蝠すら見かけない。何もいない。
気味が悪いほどにひっそりとした洞窟を、俺とアンサーは進んでいる。

「何にもでてこねェなァ。つまんねェ」

「魔力の無駄使いをしないだけいいんじゃないか?」

「だろうけどよォ。もっと戦いながら奥へ進むとかしてェんだよォ」

「奥地には何がいるか分かんないんだよ。無駄な魔力消費できるか」

「チッ……ん?オイ杉崎ィ、ありゃあなんだァ?」

「ありゃあってどれだよ」

アンサーが指差す方向に目を向ける。
どうやらこの先、道が左右二手に分かれているようだ。

「さて、どちらか一方を選ぶか、それとも二手に分かれるか」

「分かれるに決まってんだろォが。俺は左に行くぜェ」

そう言うとさっさと歩いていってしまった。
まあ確かに俺もアンサーと一緒にいるのは嫌ではある。
だが先生との約束を破るわけにはいかないというのもある。
……ま、いっか。

「どっちかが行き止まりだったらまた戻って合流すればいい話だ。
せっかくだから俺はこの右の道を選ぶぜ」

右の道から洞窟のさらに奥へと足を進めていく。
数分ほど歩いた頃だろうか。洞窟の奥から足音が聞こえてきた。
探火を使用すると確かに熱源反応を感知できる。
どうやらこのまま進めば鉢合わせになりそうだ。
一応武装はしておこう。龍哭砲と火蜥蜴を装備する。
もうそろそろだ。遭遇まであと5秒、4、3、2、1……。

「ゼロッ!!動くな!」

先手必勝、すぐさま飛び出して両手の銃を向ける。
それに相手は驚き慌てた。

「うおわァァ!?だ、誰だテメェ………えェ?」

「………いや、なんでやねん」

声に驚き両手をあげてそこに立っていたのはアンサーだった。
どうやら先ほどの分かれ道、その先でまた合流する形になっていたようだ。
つまりはどちらに行っても同じ結果だったという……。
最終更新:2012年03月02日 01:24