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「立ちなさい。私の知ってる衛くんはそんな軟な男じゃないわ」

声の主は徐々にこちらへと歩いてくる。
その足取りはしっかりしていて、迷いなど一切無い。

「前を見なさい。私の認める衛くんはそんな奴に屈する人じゃないわ」

声の主は俺とアンサーの横を通り過ぎ、俺たちの前に立った。
その後姿が今はとても大きく見える。

「心をしっかり保ちなさい。私の好きな衛くんはそんな簡単に諦めたりしないわ」

声の主はゆっくりと後ろを、こちらを向いた。
その顔は間違えようも無い。間違いない。

「瑠璃さん!?」

「やっほ衛くん。お久しブリリアント」

「なんですかその挨拶」

ああこのなんともいえない掴みにくい感じ。瑠璃さんだ。
というか今メイルドラグーン装備してるのに、なんで俺と分かったんだろうか。

「馬鹿ねえ衛くん。女の姦、っと間違えた勘よ」

「酷い誤変換を見た!」

「まあ気にしちゃだめよそういうことは。てゆーか脱いでよそれ、顔見えないじゃない」

「え、ああはい」

とりあえずメイルドラグーンを解除する。
元の普段どおりの姿に戻った俺を見て瑠璃さんは満足そうな顔をする。
ちょっとそんな見ないで恥ずかしい。

「はぁ……やっぱりいいわぁ…。ああそうそう衛くん」

「なんでしょうか」

「私の姿見て、何か気づくことがあるんじゃないかしら?」

「え?えーっと……あ、そういえば服変わってますね」

そう、今の瑠璃さんの服装は以前見たものとは違っていた。
軍服っぽい真っ黒なスーツなのは以前と同じ。
だが穿いているものが違う。スカートだ。
以前穿いていたズボンではなく、スカートを穿いている。
ひらひらしてるやつじゃなくて、リクルートスーツとかのやつ。
タイトスカートとか言ったっけ?まあとにかくそれだ。

「ぴんぽーん、大正解。私のスカート姿見るのは久しぶりよね」

「瑠璃さんが中学で、俺が小学生だった頃以来ですかね」

「大体そんなところかしら」

ところで以前の格好では分からなかったが、瑠璃さんかなりの美脚だ。
すらっとしていて無駄な贅肉は一切ついていないように見える。
しっかり引き締まっているが、筋肉質というわけではない。
誰もが認める、理想的な美脚だ。

「で、どうどう?これ似合ってるかしら」

「ええ。似合っていますよ、とても」

「そ、そう……ありがと……」

あれ、どうしたんだろう。瑠璃さん顔が真っ赤だ。
熱でもあるんだろうか。風邪でもひいてるんだろうか。
……って俺は鈍感なラブコメの主人公か!普通気づくわ!
どうみても「嬉しいけどちょっと気恥ずかしい」って反応じゃねーか!
それにしても、なんか瑠璃さんのああいう顔って新鮮だ。
というか超可愛い。これがギャップ萌えというやつか。

「ところで、何故突然スカートなんですか?」

「え?ああこれ?えっと、その。衛くんってこういうほうが好きなのかと思って。
 ってごめんなさい。勝手に決め付けたりなんかして。…嫌、だったかしら?」

「いえいえとんでもない。むしろこっちの方が素敵ですよ」

「そうなの?それじゃあ、これからもこうしようかしら…」

しばしの沈黙。なんだこの空気。
というかさっきから瑠璃さんが乙女してるんだけれども。
いつものクールビューティーな瑠璃さんはどこへ行ってしまったんだ。
待ってくれ。それ以上乙女されたら惚れてしまうかもしれない。
悪い、銀。俺お前の姉に惚れてしまいそうだ。
ああでもそうするとお前が妹か。それもまた魅力的…



「おい。お前ら。俺を忘れるな」

「「あ、忘れてた」」




すっかり放置されていたノーカラーがあの空気に耐えかねたのか口を開いた。
正直助かった。俺もどうしていいか困っていたところだったし。
ノーカラーが口を挟んだことで瑠璃さんもいつもの感じに戻ったし。
しかし当の瑠璃さんは不服そうな顔をしている。
やはり口を挟まれて邪魔されたのは相当に嫌だったらしい。
けれどそんなことはお構いなしにノーカラーは話を続ける。

「ラピス。お前随分楽しそうだな」

「まあね。任務やってるときよりはかなり楽しいわよ」

「あの、瑠璃さん」

「んー?何かしら衛くん」

「あいつと、知り合いなんですか?」

あの話し方。どう考えても初対面の話し方じゃない。
だけれど親しい仲のような会話でもない。
あくまで知り合い。あくまで他人。
そんな話し方だ。

「まあね。仕事関係でちょっと、ね」

「おいラピス」

「……何よ」

「お前、今まで何をしていた?ここに到着するのが遅すぎるだろう」

「別にー。なんでもないわよ」

瑠璃さんはノーカラーから視線を逸らした。
聞かれたくない理由があるのだろうか。
あいや違うわこれは。絶対サボってただけだこの人。
面倒くさがってどっかうろうろしてただけだなうん。

「そんなことはどうでもいいのよ。ノーカラー」

「俺としてはどうでもよくないんだが」

「あんた、ここで何してたのよ」

「決まっているだろう。魔結晶を入手するために…」

「そうじゃないわよボケナス」

瑠璃さんが突然地面を思い切り踏みつけた。
ダァン!という激しい音が洞窟内に響き渡る。
踏みつけた衝撃で地面がひび割れる。

「それ以外にしてたことがあるでしょうが。それを言いなさいよ」

「ああ。なに、少しばかり暇つぶしをしていたまでだ。存外拍子抜けだったがな」

「拍子抜け、ですって?」

「ああ。そこいらに落ちている塵芥と何も変わらない。ただの―――」

そこまで言った刹那、瑠璃さんの脚がノーカラーの顔面にめり込んだ。
たった今。一瞬で距離を詰め、ノーカラーに蹴りかかったのだ。
地面を蹴って跳躍し、空中で体を捻りつつ蹴りを叩き込む。
その一撃でノーカラーは柱を数本ぶった押しながら吹っ飛んでいった。
というか一撃当てた?あいつに?不意打ちとはいえマジか。

「おっとごめんなさい。足がすべらなかったわ、わざとよ」

「……くく。ラピス、お前一体全体なんの真似だ?」

「余計な真似よ」

「ふん、そんな男を庇ってどうするというんだ貴様?」

瓦礫の中からノーカラーが立ち上がる。
体の何箇所に傷を負っており、血を流している。
だがその姿に焦りは感じられない。まだまだ余裕という感じだ。

「衛くんを庇う気なんてないわ。女の子に守られる男の子なんてヘタレじゃない。そんなの私の趣味じゃないわ」

「それならば俺を蹴り飛ばした理由でも聞かせてもらおうか」

「まあ理由は星の数ほどあるけれど、一番の理由はやっぱりこれかしらね」

瑠璃さんが太腿のホルスターからナイフを抜いた。
具合を確かめるようにその場で数回振り、構える。
ノーカラーを獲物を狙う鷹のように鋭い目で睨みつける。

「私の衛くんに手を出したあんたを、ボッコボコにぶちのめしてやりたいのよ」




「というわけで。ぶん殴られて反省しなさい」

「ほう。体裁が悪いから制裁してやろうというわけか。面白い」

ノーカラーが左右の腕を横に広げるように持ち上げた。
その手にはガラス製のククリナイフが二本ずつ握られている。
またガラス製か。どんだけ好きなんだよ。しかも四本て。

「衛くん」

「あ、はい」

さっきからいい感じに空気化してきた俺に瑠璃さんが声を掛けてきた。
よかった。俺このまま放置されるのかと思ってたよ。

「そこに倒れてるの拾って、かなり下がってなさい」

「え?了解しましたけど…」

瑠璃さんの言うとおり、そこらに倒れてたアンサーを担ぎ上げる。
そして瑠璃さんたちが見える範囲で、出来るだけ遠くの柱の後ろに隠れた。

「ん。それじゃ、ちょっと頑張っちゃおうかしらね」

言葉と同時に瑠璃さんが走り出した。
懐から拳銃を取り出し、ノーカラーに向けて数発撃つ。
ノーカラーはそれをククリナイフで弾きつつ、走っている瑠璃さんへと一本投げた。
しかし飛んでくるナイフに動じることなく、持っていたナイフで弾き落とした。
そして瑠璃さんがとうとうノーカラーの目の前へとたどり着いた。

「まずは一撃、貰ってもらうわよ。“剄風”」

ノーカラーの腹部へと、両手で掌底を打ち込む。
だがそれはノーカラーの体へ当たろうとしたとき、体をすり抜けてしまった。
攻撃直後のため、瑠璃さんに僅かだが隙が出来る。
その隙を逃さずククリナイフが振り下ろされた。

「悪いが貰ったのはこっちだったな」

「そうはいかんざき」

体を捻り、振り下ろされたククリナイフをすんでのところで避ける。
それと同時に右手で掌底を放ち、ノーカラーの手からククリナイフを弾き飛ばす。
さらにもう一方の足でノーカラーの腹を蹴り飛ばして追撃する。
今度は確かにノーカラーの肉体を捉えた。腹に足がめり込む。

「があっ…!」

「はーいビンゴ。こんなみえみえの隙に引っ掛かっちゃだめじゃないの」

「ふっ…相変わらず化物じみた強さだな…それでも人間かお前は」

「人間よ。超能力者でも魔術師でもない、普通の真人間よ」

「ははっ。真人間というよりも、魔人間だなお前は」

そう吐き捨てるように言うと、ククリナイフを二本振りかぶった。
両腕を十字にクロスさせるように構え、大きく踏み込む。
だがノーカラーがナイフを振るか早いか、瑠璃さんが地面を蹴った。
出来るだけ体制を低くし、斬撃の軌道を潜り抜けるように駆ける。
ノーカラーがナイフを振り切った頃には、既に瑠璃さんは懐飛び込んでいた。

「歯ぁ食いしばんなさいっ!」

拳を振りかぶり、ノーカラーの顔を思い切り殴った。
凄まじい勢いで派手に吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
衝撃で壁がクレーターのように大きくへこんだ。

「がっ…はぁっ……」

血反吐を吐き、ノーカラーが地面に膝をついた。
息も荒くなり、相当なダメージを負っているようだ。
先程まで俺たちを余裕でいたぶっていた奴の姿とはとても思えない。
改めて瑠璃さんの異常な強さを思い知らされる。

「す、すげえ…瑠璃さんどんだけ強いんだ……」

「オゥ杉崎ィ…なんだァ?ありゃあ」

「うおっ起きた。そのまま息絶えればよかったのに」

「んだとコラ」

先程まで気絶していたアンサーが目を覚ました。
まああれだけドンパチやっていれば普通は気づくだろ。
少しふらふらしてはいるが、なんとか立ち上がった。

「でェ、あのガラスヤローと戦ってる女は誰だってんだよォ」

「あれか。あの人は蘇芳瑠璃さん。銀の姉さんだよ」

「あの大食い女のかァ?」

「ああ。それともうひとつ。 俺の知る限りの女性の中で―――」




「最強の女性だよ」




「……くくく。くはは…はは!ははははは!ははははは!!!」

突然ノーカラーが笑い声を上げる。
不気味な声で、不敵な笑みを浮かべながら。

「いきなり何よ、気持ち悪いわね。変なところでも打ったのかしら?」

「いや、楽しいのさ。やはり戦いというのは、こうではなくてはな」

ノーカラーが立ち上がり、右腕を高く掲げる。
頭上の空間が割れて、次元の裂け目が現れる。
そこから何本もの刀剣が現れ、ノーカラーの周囲の地面に突き刺さった。
あらゆる種類の剣はすべてガラスで出来ており、その総数およそ100といったところか。
そのうちの一本、フランベルジェを掴み、構えた。

「行くぞ。覚悟はいいな?悪くても問答無用だが」

「おいでなさいな。肉を裂いて、骨を砕いて、内蔵を抉って、再起不能になるまで叩き潰してあげるから」

今度は二人同時に動いた。一瞬で距離が縮められる。
互いに拳を交わし。互いに刃を交わし。互いに視線を交わす。
一歩も譲らない、全身全霊全力全開の戦いが続く。

「はははは!お前と戦うのは楽しいなぁラピス!もっとだ!もっと戦おう!」

「ウザイわね。しつこい男は嫌われるわよ?まあ元々私はあんたが大嫌いだけどね」

「心配するな、俺もお前が大嫌いだ!」

振り下ろされるフランベルジェを瑠璃さんが両手で受け止める。
腕をそのまま捻るようにし、剣をへし折った。
折った刃を投げ捨て、懐からショットガンを取り出して撃つ。
だが弾丸はノーカラーの体をすり抜け、背後の壁や柱に当たった。

「あーもうっ。避けるなんてセコいことしないで素直に当たりなさいよ」

「生憎、単純な戦闘じゃお前に勝てる気がしないんでな。それに俺は魔術師だ。魔術を使って何が悪い」

「ノリが悪いわね」

「上手い事でも言ったつもりか!“次元斬・黄刻”!」

新たな剣、今度は中国刀を地面から引き抜いた。
それを振りかぶり、振り下ろし、次元の裂け目を飛ばした。
地面を大きく削りながら、斬撃は瑠璃さんへと飛んでいく。
瑠璃さんはそれを最小限の動きで横に跳んで回避した。

「お前も素直に当たれよラピス。そんなにひょいひょい避けてくれるなよ」

「お生憎様。痛いの嫌いなのよね私」

瑠璃さんは懐から缶状の手榴弾を取り出し、ノーカラーへと投げつけた。
それは空中で破裂し、中から大量の煙幕を撒き散らした。
ノーカラーの周囲が完全に煙で覆われ、何も見えなくなった。
それを確認した瑠璃さんが後ろを向き、こちらへ走ってきた。

「衛くん、あとそっちの雷小僧」

「雷小僧!?」

「今から私が全力であいつの気を引くから、全力で逃げなさい」

「え!?に、逃げろって言われても、まだあいつと決着が!」

「ああそうだ!んなこと頼まれたってお断りだァ!」

「違うわよ」

突然瑠璃さんがギャーギャー騒ぐアンサーの首の後ろを軽く叩いた。
アンサーはその一撃でまた気絶し、地面に倒れこんだ。

「これは頼みごとでもお願いでもなく、命令よ。即刻ここから立ち去りなさい」

「で、でも瑠璃さん!」

「まだ分からないのかしら?貴方達と、あいつとの力量差が。勿論私ともね」

「そ、それは…」

反論できるはずも無かった。
俺たちはノーカラーに一撃も、ほんの少しのダメージも与えられなかった。
ところが瑠璃さんは先程から何度もあいつに攻撃を叩き込んでいる。
しかも魔術を一切使用せずに、自分の力だけで。
俺たちが今更どうしようと、無駄なのだ。

「……分かりました。すぐにここから逃げます」

「さすが私の衛君。物分りが良くて助かるわ」

倒れているアンサーの首根っこを引っつかみ、逃げる準備を始める。
その間に瑠璃さんはマシンガンとグレネードを懐から取り出した。
先程から気になっていたが、懐から武器取り出しすぎだろう。
えっと、なに?四次元懐とでもいうのそれ?パネェ。
そんなことを考えていたらまた瑠璃さんが声を掛けてきた。

「衛君」

「なんですか?瑠璃さん」

「また近いうちに会いましょう。それじゃね ノシ」

「…ええ。それでは、また」

気絶したままのアンサーを掴んだまま、“アーク”を装備して飛び乗った。
この部屋の出口へと最高速で向かう。
部屋から出ようとしたとき、後ろから激しい爆発音が聞こえた。
おそらく瑠璃さんがグレネードを投げたんだろう。
だが振り返る余裕などない。
とにかく急いで、俺たちはこの部屋を後にした。




部屋を出てからも俺は洞窟の中をずっと飛んでいた。
どのくらい移動したのか、しばらく飛んでいると洞窟の入り口が見えてきた。
俺たちはしばらくぶりに洞窟の外の空気を味わった。
辺りはすっかり暗くなっており、洞窟に突入してから10時間以上は経っていたらしい。
とりあえず湖に気絶したままのアンサーを投げ込んで目覚めさせた。
いろいろと抗議はされたが、まあ無視した。

町に戻り、かなり遅めの昼食兼夕食をとりながら、アンサーに事の詳細を伝えた。
といっても、瑠璃さんが一人で残ってノーカラーの足止めをしたことについてだけだが。
思っていた通り、アンサーはかなり悔しそうな顔をしていた。
基本普段から負けず嫌いだからなこいつは。

ただそんなことよりも、もっと重要な問題が残っている。
この話題をするのは何レスぶりくらいになるだろうか。
今回の任務の目的でもある、魔結晶のことだ。
結果として俺たちはヴァルハラ師団に魔結晶を渡さないことには成功した。
だが破壊には失敗した。ノーカラーとの接触によって。確実に持っていかれた。
これは任務としては成功になるのだろうか。それとも失敗になるのだろうか。
個人な意見としては頑張りを評価して成功にしてほしい。
いや任務にそんな私的な評価はいかんと思うけれども。

そういえば瑠璃さんはどうなったんだろうか。
負けたのだろうか。勝ったのだろうか。
あれ?そもそも瑠璃さんはなんであんなところにいたんだろう。
やっぱり魔結晶を狙ってたんだろうか。目的はそれ以外ないだろうし。
まさかあんな洞窟に観光というわけもあるまい。
というかノーカラーに「遅かったじゃないか…」とか言われてたがアレはなんだ?
仕事関係でちょっととか言っていたが、関係性が気になる。
とにかく心配だ。安否だけでも確認しておきたいけど…。
瑠璃さんの携帯に電話かけても一切通じないんだよな。
通じないのなら仕方ない。後回しにするしかないか。


その日、俺たちは適当な宿に泊まり、その翌日学園へと帰還した。
俺たちは真っ先に御厨先生のところへ向かい、事の詳細を報告した。
訂正。たちじゃない。アンサーは「面倒だァ」とか言って逃げやがった。
まあ報告だけなら俺一人でも十分だし。いいか。

「そうか、魔結晶の破壊には失敗したか…」

「どうでしょうか?任務失敗ですか…?」

「グレーゾーンといったところか。結果的にヴァルハラ師団に渡してはいないのだからな」

「そうですか…」

御厨先生は自分でも判断がし辛いのか、かなり悩んでいる様子だ。
確かにかなり微妙なラインかもなこれ。
クリアしてんだかしてないんだか。

「でも、おそらくあの男に魔結晶は奪われてしまったかと…」

「あの男?誰だそれは」

「ああ、えっと。ノーカラーという人物です。異形の刃《イレギュラーブレイド》とかとも名乗っていました」

「ノーカラー…?その名どこかで……ああそうか思い出したぞ。なら別に構わんかな。
 安心しろ杉崎、その男になら別に奪われてもたいした問題ではない。おそらくな」

「は?え、ちょっと大丈夫ってどういうことですか」

「そのノーカラーという人物。インディゴ臨時講師の同僚だ」

「…マジすか」

インディゴ先生の同僚さんでしたか。それならあの強さも納得。
…あれ?ちょい待ち。確か瑠璃さんもインディゴ先生と同じ職場だったよな。
ということは瑠璃さんとノーカラーも同じ職場だという式が完成するわけだが。
うわーおびっくりした。まさかのまさかどんでん返しってやつ?
そういえば瑠璃さん仕事関係でちょっとねとか言ってたな。
なんてこったい/( ^o^ )\

「まぁ、というわけで今回の任務は成功だ。ご苦労だった杉崎。岡山にもそう伝えておけ」

「わかりました。それでは失礼します」

そういい残して俺は部屋を後にし、自分の部屋へと帰った。
こうして「魔結晶破壊任務」は、なんだか後味の悪い結果で終わったのであった。
なんだかなぁ……。




時間は遡り、杉崎たちがあの洞窟から脱出した頃…。

「いやあ、なかなかの名演技だったぞ?ラピス。お前この手のことは慣れているのか?」

「まさか。半分以上本気だったに決まっているじゃないの」

「はっ、だろうな。お前のような不器用な女が演技などできるはずもないか」

「演技くらいできるわよ。感じて喘いでる演技とか」

「そんな演技力はいらん」

先程まで全力で戦い、殺しあっていたはずの瑠璃とノーカラーが歓談している。
楽しそうに、というと嘘にはなるが、殺伐とした雰囲気は一切ない。
いたって普通に会話をしている。

「さて。これでいよいよ魔結晶にありつけたわけだな」

「あの変な双子は誤算だったわね。ヴァルなんとか師団ってやつら」

「あいつらは取り逃がしてしまったんだが、そっちに逃げなかったか?」

「なんかギャーギャー騒いでたからぶん殴ったわ。ピーピー泣いて逃げたわよ」

「……外見だけでなく、中身も子どもだったか。まあいい、それよりも今はこちらだな」

くるりと体の向きを変え、祭壇へと歩き出す。
もはや邪魔する者など誰もいない。
ゆっくりと、確実に、魔結晶へと近づいていく。

「ふむ、素晴らしいな。これだけの魔力保有量を誇る魔結晶はそうそうないだろう」

「魔力とか私には全然分からないのよね。普通の光ってる結晶にしか見えないわよ」

「なに、もうすぐお前にも分かるさ。今までとは世界が360度違って見えることだろう」

「ふーん。まあいいわ、持って帰りましょ」

瑠璃が魔結晶へと触れようとする。そのときだった。
指先が何かに弾かれ、激しい電撃のようなものが走った。

「っ!? ちょっと、何よこれ。触れないじゃないの」

「結界魔術だな。それも上級、いや特級といったところか……並大抵の魔術では破れんぞ」

「じゃあどうするのよ。ここまで持って帰れないって言うんじゃないでしょうね」

「案ずるな。並大抵の魔術では破れんが、この俺の次元魔術は『並大抵の魔術ではない』からな」

ノーカラーがゆっくりと右腕を持ち上げる。
そこにはいつの間にかあの真っ白な無機質な板のような剣が握られている。
―――次元剣ネームレス。異次元に存在する異形の剣である。

「少し離れていろ。巻き込まれればお前の存在ごと消し飛ぶぞ」

「はいはーい。300メートルくらい離れてるわよ」

瑠璃が祭壇から降りて距離を取る。
それを確認すると、ネームレスを振り上げた。
無数に入ったヒビが光を放ち、膨大な魔力があふれ出す。

「切り裂けネームレス、忌まわしき結界を次元の彼方へと消し去るがいい!!」

刹那、ネームレスが振り下ろされる。
強固な結界をその恐るべき力であっさりと切り捨てた。
破られた結界は消え去り、魔結晶を守るものは何もなくなった。
ノーカラーがネームレスをしまい、魔結晶へと手を伸ばす。

「ふふ…とうとう手に入れたぞ…持っているだけで体に魔力が満ち溢れてくるかのようだ…」

「ちょっと私にも触らせなさいよ。見てるだけじゃ何も分からないじゃない」

「別に構わんが。どちらにせよ魔術師でないお前が触れても何も分からぬかもしれんぞ?」

無造作に瑠璃へと魔結晶を投げ渡した。
それを受け取ると触ってみたり、眺めてみたり、叩いてみたりする。

「何よ、ただの結晶じゃないの。つまらない」

「だからまだ分からんと言っただろう。人の話はちゃんと聞け」

「はいはい。もーいいわこれ返す」

瑠璃がノーカラーへと魔結晶を投げ返した。
これまた無造作に。ゴミでも捨てるかのように。
慌ててノーカラーが魔結晶を掴み取る。

「まったく…お前はこの価値が分かっていないようだな」

「わっかんないわよ。そんな石ころの価値なんて」

「まあいい。インディゴ、迎えに来い」

「ハイ、承知シマシタ」

ノーカラーが呟いたと同時に、その後ろにインディゴが現れる。
どこかで待機していたのか、何らかの方法で呼んだのか、それはわからないが。
インディゴが指を鳴らすと地面に大きな魔方陣が浮かび上がる。

「サァ、お乗りクダサイ。本部までお送りいたしマス」

「やっとこのジメジメした洞窟からおさらばできるのね」

「頼んだぞインディゴ。魔結晶は手に入れたからな」

「それでは参りマショウ」

三人が魔方陣の上へ乗ると魔方陣が光を放ち始めた。
光はだんだん輝きを増していき、三人を包む。
やがてそれが消えると、三人の姿も消えていた。




それから数日後、ノーカラーたちがCOLORSの本部に戻ってきてからのことだった。
魔術研究室に篭っていたノーカラーが瑠璃を呼びつけた。
面倒くさがりながらも、渋々魔術研究室へと向かう。
研究室で待っていたのはノーカラー一人だけだった。

「この間は研究員とかいたじゃないの。どこいったのよ」

「一通り準備は終わったのでな、別の任に就いてもらっている」

「あらそう。ということは準備は万全ってわけね」

「あらゆる問題はクリアした。あとはお前次第だ。というわけで、まずはそこの台に座れ」

真っ白なシーツの敷かれた、ベッドのような台を指し示す。
瑠璃は適当に頷き、台に腰掛けた。

「で、どうやってやるのよ?私を魔じゅ…」

「まあ聞け。まずは俺の話を聞いてからにしろ。とりあえず脱げ」


ゴスッ!!


「殴るわよ」

「既に殴られているわけなんだが」

瑠璃の拳がノーカラーの頬にクリーンヒットしている。
見ているだけでも痛そうだが、本人はそんなことはまったく気にしていないようだ。
殴られたままの状態にも関わらず、話を続ける。

「安心しろ。やましい気持ちなど微塵もない。そもそもお前の平坦な胸に欲情する男などいるものか」


バキッ!!


「蹴るわよ」

「既に蹴られているわけなんだが」

もはや説明するまでもないが、瑠璃の脚がノーカラーの腹に(ry
しかし相変わらず痛そうな素振りはまったく見せない。

「ああもういい。とにかく話をするからおとなしくしていろ。リアクションはいらん」

「あんたが変なこと言うからでしょうが。殺すわよ」

「まず、ここにある魔結晶は既に加工済みなんだが」

「おい、聞きなさいよ。聞いてんの。ちょっと」

「これをお前の体に埋め込む」

「話を聞きなさ……ちょっと今なんて言ったの」

ノーカラーの言葉に驚いたようで、表情に少しだけ驚きの感情が混ざっている。
聞き逃したわけではない。再確認のつもりでノーカラーに再度言うように促す。

「何度も言わせるな、俺は面倒が嫌いなんだ。この加工された魔結晶を、お前の体内に埋め込むと言ったんだ」

丸い球状に加工された魔結晶を手のひらに乗せて見せる。
大きさは大体テニスボールほどになっている。
加工された今でも魔結晶は溢れんばかりの魔力を放っている。

「この膨大な魔力を保有している魔結晶をお前の体内に埋め込む。
 その上で人工的に魔術回路を構築し、強制的にお前を魔術師へと変える、というわけだ」

「せんせー。もっと詳しい説明をお願いしまーす」

「これ以上の丁寧な説明など存在しないのだが」

半ば呆れ顔で額を押さえるノーカラー。
もはや付き合っていられん、といった顔だ。




「で、その魔結晶を何処にブチ込むってのよ。下の口かしら?」

「お前女なのだからそういうことを言うのはやめろよ。
 魔結晶を埋め込むのは人体の中心部、まあ要するに心臓だな」

「心臓って…そんなところに埋め込んで私死なないわよね?」

「それはお前次第だ。上半身だけでいい、さっさと脱いでそこに寝ろ」

「はいはい。はぁ、私の柔肌を初めて見せるのは衛くんって決めてたのにぃ…」

渋々スーツを脱ぎ、ワイシャツのボタンを外して脱ぐ。
下着を外し、いよいよ上半身は何もつけていない状態になった。
早く終わらせなさいよ、といった表情で台の上へ寝転がった。

「それでは、始めるとするか。少し痛むだろうが、我慢しろよ」

ノーカラーが懐からやたらと装飾の施された、儀礼用と思われるナイフを取り出した。
例の如く、これも刃がガラスで出来ている。
そのナイフを使い、瑠璃の胸元に傷をつけた。
瑠璃の美しく白い肌を染めるように赤い血がつたっていく。

「痛っ…もうちょっと優しくしなさいよ…」

「我慢しろ。この程度で痛がっていたらこの後はもっと酷いぞ」

淡々とノーカラーが作業を進めていく。
指先で傷口に触れ、血液をたっぷりと付着させる。
その血液で胸元をなぞっていき、何かを書き始めた。
完成したそれは不可解な術式の組み込まれた魔方陣だった。

「いいか、これから全身を激しい痛みが襲うだろうが、まあなんとか抑えろ。
 魔結晶を埋め込む最中に気絶してもだめだ。お前の意識が途絶えれば失敗になる」

「要するに全力で痛みに耐えつつ、意識を保ってなさいってことね。無茶言うわ」

「いくぞ、準備はいいな」

瑠璃の胸元、心臓のある位置に描かれた魔方陣へと魔結晶を置いた。
ブツブツと何かを唱えつつ、ノーカラーが念じると魔方陣が光り輝き始めた。
その途端、ズルリと瑠璃の体内へと魔結晶が沈み込んだ。

「――――――――っ!?ああああああああっ!!!!!」

瑠璃の体を、形容することができないほどの激しい激痛が襲う。
痛みに瑠璃の体がビクンと大きく跳ねる。
呼吸が荒くなり、全身からは汗が吹き出る。

「苦しいだろうが耐えろよ。この状態が少なくとも、あと3時間は続くだろうからな」

それだけ言い残してノーカラーは瑠璃から離れる。
痛みに耐える瑠璃を残し、研究室を出た。



どれほどの時間が経っただろうか。瑠璃はこんなことを思い始めていた。
「自分は何故こんなことをしているのだろう。何故痛みに耐えているのだろう」と。
正直自分は現状に満足している。魔術師になどなる必要はない。
ならば何故今の自分はこんな状況になっているのだろう?
最初にこの話を持ちかけてきたのはノーカラーだったが、受け入れたのは自分だ。
何故自分は魔術師になりたいと、そう思ったのだろうか。
そうだ。自分は、強さを求めていたんだ。圧倒的な力を。
力を手に入れ、やらなければいけないことが、果たすべき目的がある。
そのために力が必要だ。そのためならば何でもしよう。
力を得るためならば、この程度の痛みにでも耐えてみせる。
どんな地獄だろうと、乗り越えてみせる。
全ては、目的のために―――



3時間が経過してから、ノーカラーが研究室へと入ってきた。
最初に目に入ったのはぐったりと力なく倒れている瑠璃の姿だった。
ピクリとも動かず、うんともすんとも言わない。何の反応もない。
ゆっくりと瑠璃の元へと歩き、一言声を掛けた。

「おはようラピス。魔術師になってみた気分はどうだ?」

「…そうね……最悪の気分よ」

「そうか」

「でも……悪くないわ」

台に倒れたまま、小さくそう呟いた。
顔色は悪く、体調は明らかに良好ではなさそうだ。
だがそんな瑠璃の顔は、どこか嬉しそうな表情をしていた。




術式を行使してから数日が経過した。
現在会議室には瑠璃、ノーカラー、ヴァイオレットの三人がいる。
全員席に座り、いろいろと話をしているようだ。

「ではまず始めにラピスの魔術についてだが…」

「その前にちょっといいですか?ノーカラー先輩」

「どうしたヴァイオレット。手短に簡潔に話せよ」

早速話始めようと思ったところを遮られ、少し不機嫌そうになる。
手に持っていたマジックの蓋を開けたり閉めたりしている。

「えっと、なんでボクだけがここにいるんでしょうか……インディゴ先輩やスカーレット先輩は?」

「インディゴは魔術学園で仕事、スカーレットは魔術は専門外。というわけだ」

「あぁ成る程、わかりました」

「というわけで、今日一日付き合ってもらうわよ」

意地悪そうな笑みを浮かべながら瑠璃が言った。
あれから魔結晶は順調に体に馴染み、魔術回路も構築された。
今の瑠璃は人工的な後天的なものとはいえ、立派な魔術師だ。
ただ、まだ問題は残っているのだが――

「魔術なんにも使えないんだけど、どうなってるのよ」

「魔結晶を埋め込んだだけでは何の意味もない。ただの白紙の状態だ。フォーマット状態だ。
 これからそこに魔術のデータをインストールするというわけだ」

「んじゃさっさとやりなさいよ。早く魔術使いたいんだけど」

「だから、どんな魔術をインストールするかを話し合っているんだろうが」

「何でもいいわよ全部入れなさいよいろいろ使いたいのよ」

「無理だ。欲張るな。不可能だ。一種類だけで我慢しろ」

「無理を通して道理を蹴っ飛ばす、それが魔術師ってもんじゃないのかしら?」

「あ、あの、えっと、あんまり喧嘩するのは……」

先程からずっとこんな調子で全然話が進まない。
二人のやり取りにヴァイオレットはとことんあきれ果てていた。
とりあえず流れを変えようと思い、話を振る。

「ラピス先輩は魔術で何かやってみたいこととかないんですか?」

「おっぱい大きくしたいわ。たゆんたゆんに」

「そんな都合のいい魔術ないですよ」

「世の中は非情だわっ!」

瑠璃が机に突っ伏した。そしてシクシク泣き始める。
正直もう帰りたい。ヴァイオレットはそんなことを思い始めていた。

「そ、それじゃあラピス先輩の特徴を生かせばいいんじゃないですか?」

「成る程な。その嫉妬深い性格を生かした魔術なんて面白そうじゃないか」

「殴り殺すわよノーカラー。でも私の特徴ねぇ…この美貌くらいしか思いつかないのだけれど」

「眼があるじゃないですか、眼が。何でもすぐに会得しちゃう眼が。それ使えばいいんじゃないですか?」

「随分簡単に言ってくれるじゃないの…そんなの無理に決まって」

「よし、それにするか」

真顔で、真面目に、そう言ってのけた。
その場にいた二人はぽかーんとしている。

「は?えちょ、マジで言ってるのノーカラー?」

「ボクも半分冗談で言ったんですけど…相当難解な術式になると思いますよ?」

「俺に不可能など、あんまりない。早速実行に移そう。ラピス、ヴァイオレット。研究室に来い」

席を立ち、さっさと会議室から出て行ってしまった。
ノーカラーの突然の発言に驚きながらも、急いで後を追いかける。




ノーカラーの発言は本当だった。
僅か30分程度で超難解な術式をあっさりと完成させてしまった。
さらにはその術式を瑠璃の体に、正確には魔結晶に組み込むことまでやってのけた。
こうして瑠璃は晴れて魔術の使える魔術師となった。
そして現在、三人は大型屋内訓練場にいた。
東京ドーム大体3個分の広さはあるらしい。
中の人は東京ドームの大きさを知らないのだが。

「言葉で説明するより、体で覚えたほうが早いと思ってな。そいつらと戦ってもらおう」

「そう、でも普通にあんたたちが相手でもよかったんじゃない?」

「俺も最初はそのつもりだったんだがな、そいつらが志願してきたんだ」

ノーカラーが指差した先には二人の男が立っていた。
スキンヘッドで顔の右半分にタトゥーの入った男。
サングラスを掛けた金髪ロンゲの男。
そして二人とも「ラピス様ファンクラブ」と書かれた腕章をしている。

「自分はラピス様ファンクラブ会員No.002のシアンであります!」

「同じく!会員No.003のマゼンタであります!」

「そんなものがあったのか…知らんぞ俺は」

「ボクもです…」「私もよ」

傭兵部隊にファンクラブなんてあっていいんだろうか。
この事実に三人は呆れ果ててしまう。
ところでNo.001は誰なんだろうと、どうでもいいことまで考えてしまった。

「まあどうでもいいわ……手伝ってくれるなら誰でもいいわよ」

「ラピス様のためならば!全身全霊でお手伝いさせて頂きます!」

「お任せくださいませラピス様!命を掛けてでも!」

元気よく、とても嬉しそうに、その二人は答える。
なんだか微妙な空気の中、戦いは始まった。
――そして数分後、戦いは終わった。

「そこまで。模擬戦終了だ」

「乙ー。なかなか楽しかったわよ」

「恐縮ですラピス様!」

「ラピス様のお力になれたのであれば本望です!」

戦いは圧倒的で一方的なものだった。
新たな力、魔術を手に入れた瑠璃の強さは尋常ではなかった。
シアンマゼンタの二人も実力としては相当な力を持っている。
だが、今の瑠璃には遠く及ばなかった。

「シアンとマゼンタだったかしら?ありがとね、後で一緒にお茶でもしましょ」

「っ!? ラ、ラピス様とおおおおお茶!?なんと恐れ多い…!」

「感謝の極み!ありがたくお伺いさせていただきます!」

「ん、それじゃね」

全身に傷を負いながらも、嬉しそうに去っていく二人を手を振って見送る。
後日、本部の食堂でタキシードを着てやたらとウキウキしている二人の姿を見た人がいたとか。
そしてその二人は真夜中まで待った後、トボトボと帰っていったという…。

「お疲れ様でしたラピス先輩。いかがでした?魔術を使ってみてのご感想は?」

「いい感じよ。悪くはないわね」

「どうやらお前と“眼写し《アナザーゲイザー》の相性は問題ないようだな」

「そりゃもう。歯車がカッチリあったかのごとくよ」

眼帯を外したままで瑠璃が楽しそうに話す。
左目には瑠璃色の炎が灯っており、怪しげな雰囲気を漂わせている。

「それはよかったです。それで、これからどうするんですか?」

「そうねぇ、できればたくさんの魔術を見ておきたいわね…どこかいい場所ないかしら」

「それならば打ってつけの場所を知っているぞラピス。魔術師がたくさんいる場所をな」

「どこよそれ。そんな場所あったかしら…」

「お前も、そしてインディゴもよく知る場所だ。もう分かるな?」

「あーなるーほど、そういうことね。名案だわ」

ポンと手を打って納得したようにうなずいた。
そして後日、COLORS本部から瑠璃の姿が消えたという。
話によれば「ある場所」へと向かったらしいが……。


~おわり~
最終更新:2012年03月02日 01:24