~COLORS戦艦~
「戻ったぞ」「ただいま帰りました」
最後の戦いを終えてノーカラーとヴァイオレットが帰って来た。
他のメンバーは既に戦いを終えて休息をとっていた。
「やぁノーカラー、ヴァイオレット。お疲れさん」
生レバーをそのまんまで食べていたスカーレットが軽く手を挙げる。
あれから身体のほうに異変はないようで、いつも通りにしている。
ただ、たまーに口調がおかしくなったり、妙な行動をとったりしているらしい。
「やっと終わったのね。待ちくたびれちゃったわ」
瑠璃はというと、仕事が終わったからと早速発泡酒に手をつけていた。
あるもので適当に作ったつまみを食べながらちびちび飲んでいる。
ほろ酔いしているのか少しばかり顔が赤い。
「お帰りなさいマセ。お疲れデショウ?お食事の用意もさせておきマシタヨ」
ソファに座って本を読んでいたインディゴが声を掛けてくる。
本のタイトルは「ネクロマンサーに学ぶ効率的な食料の調達方法」
なんだかものすごく嫌な予感がしないでもない。
……ところで彼の元にも送られたであろう刺客はどうなったのだろうか?
「アア、来マシタネ。確か、エルヴェール=ラムスタン。マルクス・レ・オルクディムオン。
そう名乗ってイマシタ。大丈夫デス。お二人共々、魂を頂いておきマシタカラ」
「ふむ、そうか。奴等もまた、不幸だったというわけか……」
「? 何の話デス?」
「いやこっちの話だ。気にすることはない」
否定するようにノーカラーが首を振った。
くだらん影響を受けてしまったかな、と頭を抱えながら水を一口飲む。
冷えた水が体の中に染み渡り、頭を冷やして冷静にしてくれる。
おもむろにメンバーのほうを向くと堂々たる態度で話し始めた。
「皆ご苦労だった。これで今回の任務は無事終了となった。
まあ、厳密には依頼ではなくてただの罠だったわけだがな」
「報酬なしかー。酷い損失だぜこれは」
「そうだな。今回の件は我々COLORSにとって実に手痛い出来事だった」
「これからどうシマスカ?依頼をこなしマス?それとも人員補充ヲ?」
「まあ両方を少しずつだな。どちらかといえば人員補充を優先したいところだが……」
「そう簡単には集まらないわよね。おおっぴらに募集できるわけじゃないし」
COLORSに所属するメンバーは、大まかに二つの役割に分けることができる。
戦闘能力は持たないが、主に雑務や雑用、その他COLORSを運営するにあたって事務的役割を担う者。
そして瑠璃たち幹部を含む、依頼や任務を請け負い、実際に現地へ赴いて仕事(戦闘)をする者。
この二つの役割のどちらかを持ったメンバーが8:2くらいの割合で存在している。
今回の件で命を落としたのはこれの前者がほとんどを占めているのだ。
戦えなくても問題はないため、どんな人物だろうとこの仕事はできる。
だがしかし「バイト募集中!」みたいな軽いノリで雇えるってわけでもない。
これからやることが山積みな現状にノーカラーが深いため息をついた。
「……とにかく、皆ご苦労だった。本部に戻るまではゆっくり休んでくれ」
「あいよ」「りょーかい」「分かりました」「了解デス」
「ではCOLORS、これより本部へと帰還する」
こうして永きに渡る海上での決戦は幕を下ろした。
そしてそれから月日が経って、季節は夏真っ盛り。
人員補充も無事完了し、運営もだいぶ安定してきた。
瑠璃などの何名かのメンバーには夏休みをとった者もいる。
そんな中、ノーカラーはいつものように書類に目を通していた。
「西の国からレジスタンスの鎮圧要請か。何名か手配しておくとしよう。こちらは……ん?」
次の書類に目を通そうとしたとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
返事をして中に入るよう促す。入ってきたのはヴァイオレットだった。
彼女は今仕事中ではないため、窮屈な軍服ではなく、可愛らしい私服に身を包んでいる。
そしてその手にはバスケットが提げられていた。
「お前だったか。どうした、何か用でもあるのか?」
「いえ、その、用事ってほど大したものじゃないのですが。クッキーを焼いてきたので、どうかな、と」
「そうか。そういえばいい時間が経っているな。お言葉に甘えて、休憩させてもらうとするか」
「あ、はいっ。えっと、それじゃすぐ用意しますね」
嬉しそうに顔を綻ばせながら、てきぱきとバスケットの中からクッキーとティーセットを取り出す。
ノーカラーはソファに座り、その様子を眺めながら用意されるのを待っている。
やがてノーカラーの前にクッキーの乗った皿と紅茶の入ったカップが差し出された。
礼を言ってそれを受け取り、紅茶の香りを堪能しつつ一口飲んだ。
「ふむ、いい香りだ。味もいい。紅茶を淹れるのが随分と上達したな」
「ありがとうございます。喜んでいただけたようでボクも嬉しいです」
素直な褒め言葉に笑顔で答える。
紅茶とクッキーを口にしながら雑談をする。
そうして他愛の無い時間を過ごしていた。
「あの、ところでノーカラー先輩」
「スミレ」
「ひゃ、ひゃいっ!?ってあれ?なんで本名で……」
普段呼ばれなれていない本当の名前で呼ばれ、驚いてしまう。
変な声が出てしまった。
「今お前は休暇中。そして俺は休憩中だ。仕事をしていないのだからコードネームで呼ぶ必要はないだろう」
「そういえば、そうですね。えっと、それじゃ……カラレス父さん」
「ああ。どうした」
「ヴァルハラ師団との交戦があった日、何故フロイツェンにとどめをささなかったんですか?」
そう、あの時フロイツェンに刃が振り下ろされることはなかった。
ノーカラーは振り下ろす途中で剣を止め、その場から見逃したのだ。
それどころか一緒にいたヴァイオレットに回復までさせた。
そして彼はシアンや他のヴァルハラ師団を連れて戦場を去った。
ノーカラーはそれを追うことを一切しなかった
そのことがこの数ヶ月、頭にひっかかっていたようだ。
「……ほう。つまりあの場でフロイツェンは殺したほうがよかったと。そうお前は思うわけか」
「ああいえっ!そうじゃないですが、その、気になったので」
「そうだな……」
カップをテーブルにおいて腕を組んだ。
目を閉じて少し沈黙。何か考えているようだ。
「あいつらヴァルハラ師団とある契約を交わした。互いに利用しあうというな」
「契約、ですか?」
「そうだ。例えば情報の共有や依頼を共同で行うなどだな。無駄に人員を割く必要がなくなる」
「なるほど……」
あれほど容赦なく殺しあった相手と仕事の契約をしてくるとは。
よくもまあ相手から同意を得られたものだ。脅したのかもしれないが。
案の定シアンからは猛反発されたらしい。シアンはかなりCOLORSを嫌っているようだし。
それに瑠璃が副師団長であるジークリンデを殺した、というのも最後まで足を引っ張った。
しかし最終的にはフロイツェンから契約についての同意を貰うことが出来た。
この契約には仕事の上での意味だけでなく、COLORSを狙う敵を減らすという意味もある。
ある意味同盟を結んだとも言えるかもしれない。
「それでは、これからもヴァルハラ師団とはある程度の関係を持つ、ということですね」
「そういうことだ。平和的解決、一件落着、というわけだ」
平和的だったかは分からないが、これでふたつの組織での事件は解決したということになる。
互いに利用し合い、互いに仕事での関係を持つ。
これからCOLORSはそうして活動をしてくことになるだろう。
「そろそろ仕事に戻らんとな。美味かったぞスミレ」
「お粗末様です。父さん」
「ああ。さてと、これから忙しくなるな……」
今回の件でCOLORSはさらに発展をしていくことだろう。
依頼の数も増え、名も世に知られていくことになる。
COLORSの未来に期待をしつつ、ノーカラーは仕事を再開した。
最終更新:2012年03月02日 01:27