このおはなしは、七坂美緒(小学6年生)と
近所の友達(小学6年生)のおはなしです。
それなりに、長いです。
へやをあかるくして、がめんからはなれてみてね。
【プロローグ】
「おはようおじさん、総一郎いますかー?」
西園寺剣道道場。
洋風の人形屋の斜向かいに立つこの道場の敷地内、
西園寺家の玄関に七坂美緒は立っていた。
「ああ、おはよう美緒ちゃん。総一郎!美緒ちゃんが来たぞ!」
立派な髭を蓄えた厳格そうな顔立ちの男性が、
家の中に向かって叫ぶ。
この剣道道場の主、西園寺。
いつも「おじさん」と呼んでいるため、下の名前を美緒は覚えていなかった。
「はーい!」
階段をどたどたと駆け下りる音がしてほどなく、
明るい茶髪の少年が玄関に来る。
「おはよう、美緒!」
彼が件の西園寺総一郎。
七坂美緒の、幼なじみだった。
【1月6日 午後3時11分】
西園寺家、総一郎の部屋。
冬休みの暇をもてあまして遊びに来ていた美緒に向かって、
飲んでいたオレンジジュースを噴き出しそうな勢いで詰め寄る。
「そ、そんなにびっくりした?」
「当たり前だろ!僕はてっきりこの街の中学校に行くんだと・・・」
予想外も予想外だ。
魔術学校といえば、全寮制の学校じゃないか。
しかもここから電車で二時間はかかる。
つまりそれはこの街から離れるってことだ。
遊び友達が一人減るってことだ。
しかも一番親しい友達が。
深刻だ。
「あ、別に寮で暮らすようになっても、二度と会えない訳じゃないよ。
夏休みとかはこっちに帰ってくるし」
ぽかんとしていた僕をみかねたのか、
美緒がコップにジュースを注ぎながら話しかける。
「でも・・・今までみたく遊べなくなっちゃうんだろ?」
「どうせ中学校に行ったら部活とかで忙しくなるし、あんまり変わらないよー」
美緒は全然気にしてない風で、ジュースをちびちび飲みながら笑った。
「・・・・・・」
喉が上手く働いてくれない。
心臓の音がやけにうるさいような気がする。
確かに美緒はクラスで5番目くらいに魔術の適性が高かった。
魔術学校に進学するというのも、別に不思議な事じゃない。
だけど、冬休みになってから急に告げられたせいで頭が追いつかない。
毎日一緒に学校まで行って、毎日一緒に家まで帰ってきて、
いつも一緒に遊んでいた友達と離れる事になる。
僕の身体の機能の半分以上を麻痺させるのには、その事実だけで十分だった。
「・・・総一郎?」
美緒が不安そうな目で僕の顔を見る。
それと同時に、耳元で響いていた心臓の音はコンセントを抜いたように途切れた。
最初から気のせいだったような気もした。
「ごめん。なんか、すごいびっくりして」
そうして、眼球をわずかに泳がせた後、そう搾り出すのが精一杯だった。
【1月6日 午後4時58分】
よくよく考えれば、現代にはメールなるものが存在しているわけで、
電話も存在しているわけで、もっと言えば手紙もある。
完全に友人関係が途切れるわけじゃない。
TVゲームのコントローラーを握りながら、なんとなしにそんなことを考えていた。
「あ、そのトマト私が取ろうと思ったのに!」
「早い者勝ちー」
あまりに挙動不審な僕に、美緒がゲームをやろうと提案してくれたのだ。
実際、ゲームに熱中しているうちに気持ちも落ち着いてきて、
進学の事も明日明後日にはきっと納得できるんだろうな、と思った。
「うわー、やっぱり総一郎強いなぁ。なんでそんな強いの」
自分のコントローラーを投げ出し、日焼けしたカーペットに美緒が転がる。
「これ僕のソフトだし、こっちが美緒より弱い方が変だろ」
「じゃあ次ちょっとハンデつけようよ!もしくは私のチームにレベル9入れてみるとか」
「無駄無駄、それくらいじゃ僕には勝てないって」
冗談めかして得意げになってみる。
ふと見た時計の短針はすでに5を指していた。あ、と小さく声が漏れた。
「美緒、もう5時だけど」
「え、もうそんな時間?帰んなくっちゃ」
美緒ががばっと飛び起き、そこらへんに放っておいた上着をひっつかむ。
と、思ったら上着を離して思い出したように鞄にコントローラーをしまいだした。
忘れて帰りそうになったのか。
「明日も来ていい?」
帰り際、部屋の前で振り返って美緒はそう言った。
「うん」
そして玄関で美緒を見送ったあと、僕はご飯に呼ばれるまで部屋のベッドで寝転んでいた。
【1月7日 午後2時47分】
「じゃあ、どこか一緒に行こうか」
翌日、また遊びに来て一緒にゲームをしていた美緒にそう投げかけた。
ゲームをしながらもまた話題は進学のことで、
寂しくなるねだとか、部活はどうするのとか、他愛も無いことを話していた。
そこで僕は、「思い出作り」なるものを提案することにした。
「どこか?」
「思い出作りにさ、どっか出かけない?」
本当は昨日の夜からずっと考えていて、もう行く場所も決まっていたが、
今思いついたかのように振舞ってみた。
もうすっかり昨日のショックからは立ち直っていて、
美緒が遠くにいってしまうまえに
たくさん思い出を作っておこうと思ったのだ。
「いいよ。思い出作りって、青春っぽくていい」
「なんだそれ」
「ふふ。どこ行こうか」
苦笑しながら、はやる気持ちを抑える。
えーと、どこがいいかな・・・あ、
「水族館・・・とか」
しまった。セリフの前半を心の中で言ってしまった。
【1月10日 午後12時38分】
「ついたー」
「電車、人少なかったな」
僕らの町のよりも少し大きい駅から出て、周りを見渡す。
普段は滅多に来ない、隣町へ僕らは来ていた。
水族館は、さして遠くもない。歩いて20分かかるかかからないかだろう。
「なんか買ってく?」
マフラーを整えながら、傍にある自販機を指差す。
僕は暖かいお茶でも飲もうかな。
「ココア飲むー」
短めのブーツをはいた美緒が、鞄から小銭入れを出して自販機へ歩いていく。
僕も同じような小銭入れを取り出し、美緒の後ろについていった。
「あ、ココア品切れだ」
「ほんとだ。じゃあ美緒が選んでるうちに先に買うよ」
美緒は「売切」という赤い文字が示されたボタンを少し見た後、
品定めを始めた。「あったかい」に分類される飲み物は、大抵ココア、お茶、コーヒーくらいで、
さして選択肢もなかったけれど。
「じゃあ、私もこれにしよっと」
僕がお茶を取り出し口から取るのとほぼ同時に、お金を入れた美緒がお茶のボタンを押す。
こうして、僕らは同じ種類のお茶を飲みながら水族館へ歩いていく事になった。
【1月10日 1時16分】
曲がり角を途中で間違えたせいで、予定よりも少し遅い時間に水族館についた。
水族館と言ってもそんなに立派なものじゃないし、
冬場はアシカやイルカのショーなどの催し物もやっていないから
大した賑わいは見せていなかった。
「わ、きれい」
美緒はさっそく熱帯魚の泳いでいる水槽に駆け寄り、
魚の挙動を目で追っている。
僕はそちらをちらりと見て、本当だな、とだけ返して
もう少し先の方にある水槽に近寄っていった。
「美緒、こっちクラゲいるよクラゲ」
「おお、ほんとだ。可愛いね」
すこし小さめの水槽の中で、クラゲがふよふよと浮くように泳いでいる。
よく見ると、細い触手が波打つように動いていて、
昔読んだ絵本の絵よりもずっと複雑な身体のつくりをしていた。
「うわー、しゃけ大きいねー」
「え?あれしゃけなのか?」
美緒が視線を移した先、大きな魚が大きな水槽で優雅に泳いでいる。
僕の記憶の中の鮭は、あんな姿をしていなかったぞ。
・・・いや、切り身しか見たことないような嘆かわしい現代の子供って訳じゃなくて。
「うわ、あっちに変な魚居るよ。総一郎」
「あ」
鮭疑惑のかかった大きな魚を眺めていた僕の手を取り、また違う水槽の方へ駆け出す。
このペースだと、もう2時間もしないうちに
水族館の隅から隅までまわりきってしまいそうだった。
【1月10日 3時34分】
「楽しかったね!」
「そうだなー、こんなに楽しかったの久しぶり」
青いイルカのぬいぐるみが入った袋をかかえながら、満面の笑みで美緒がそう言った。
水族館の中にある売店で買ったものだ。
あのあと、なにやら不思議な海の生き物を触れるコーナーで思う存分遊んできた。
傍の水槽に居たウミウシが、妙に気持ち悪かったが。
「今度は、夏に来たいな。イルカのショー見たい」
「そうだね。来年の夏休み、一緒に行こうか?私もイルカ見たいし」
駅が見えた。
「・・・来れたら、いいなあ」
「来れるよ。絶対、夏休みと冬休みは帰ってくるから」
笑顔のまま、やや強い口調で美緒が言う。
僕はそれに、どんな顔で返そうか悩んで、結局は薄笑いに落ち着いた。
ちゃんと笑っているように見えただろうか。
「そいえば、総一郎は何買ったの?」
僕の持った、美緒のよりも小さい袋を見つめて問う。
美緒が手洗いに行っている間に買い物を済ませ、中身は秘密にすることにしたのだ。
「秘密」
「なんだそりゃー」
笑いあいながら、僕らは駅の改札をくぐった。
【1月10日午後4時26分】
駅から出た後、少しだけ余った時間をつぶしに
家の近くの公園に来ていた。
塗装のはげかけたベンチに腰掛け、
鞄の中に入っていたすっかり冷めてぬるくなったお茶を飲む。
「うえ、微妙においしくない」
美緒もお茶のペットボトルに口をつけ、すぐに離す。
だけどキャップをしめないところを見ると、飲むつもりではあるらしい。
「お菓子とか買ってくればよかったな」
「あ、私クッキー買ったよ。ちょっと食べる?」
袋の中から、魚やカニの形をしたクッキーを取り出して僕に差し出してきた。
多分家族へのお土産に買った物だと思うんだけど、いいのかな。
「ん・・・ありがとう」
そう悩んだのも2、3秒で、素直にお礼をいって受け取ることにした。
マンボウらしき形をしていた。
袋をやぶき、もくもくとクッキーを食べる。
甘くておいしい。ぬるくなったお茶も、お菓子と一緒ならそれなりにはおいしかった。
【1月10日午後4時56分】
あれからどれくらいぼーっとしていただろうか。
僕達はお互い言葉を発することもなく、
クッキーを食べ終えた後は暗くなっていく空を何も考えずに眺めていた。
元気にお喋りする気分にならなかったのは、体が疲れているからだろう。
「美緒、そろそろ帰ろうか」
空を眺めるのにもあきて腕時計を見てみると、もう5時になりそうだった。
5時までにはちゃんと帰ってきなさいと言われている。
ここから家までは近いし、今からでも余裕だろう。
「・・・美緒?」
返事がない。
「・・・・・・」
不思議に思って美緒の方を見ると、座ったまま目を閉じて寝ていた。
僕よりもずっと遊びつかれてしまっていたのか、ちょっとやそっとじゃ起きなさそうだ。
「・・・まったく」
苦笑いして軽くため息をつき、自分の鞄に美緒の鞄をひっかけて荷物を一つにまとめる。
それを肩にかけて・・・流石にちょっと重たい。主にぬいぐるみが。
少し鞄の肩紐を短くした。
そして、起こしてしまわないように細心の注意を払って美緒を背中に乗せた。
【1月10日午後5時2分】
困った。
七坂家のチャイムを鳴らす手が開いていない。
なんとか片手で美緒を支えながら押すか。
「よっと」
一度背負いなおし、片手を伸ばそうとした瞬間、ドアが突然開いた。
「お?」
少し驚いた顔で、こちらを見下ろす人がいた。
美緒のお兄さんだ。
「あ、お兄さん」
「よう、総一郎。・・・美緒、寝てるのか?」
僕の鞄に引っ掛けられた美緒の荷物を取り、傍の棚においた。
すこし肩が楽になったが、できれば美緒を早く下ろしたかった。
いつバランスを崩すかわかったものじゃないから。
「少し遊び疲れちゃったみたいで」
「ったく、小6にもなって・・・」
可笑しそうに笑いながら、お兄さんは美緒を抱きかかえて家の中へ入っていった。
リビングのソファーに美緒が寝かされたのが、玄関から少しだけ見えた。
【1月10日 午後5時6分】
「今日はありがとな」
お兄さんが、玄関まで戻ってきて僕にお礼を言う。
「こちらこそ、ありがとうございました。「楽しかった、ありがとう」って美緒に伝えておいてください」
「了解。んじゃ、お話はこのくらいにして早く帰った方がいいぜ。
あんまり遅れるとお前の父さん怖いだろ?」
お兄さんに言われて、厳しい父親の顔を思い浮かべた。
理由を言えば納得してくれるだろうか?
「そうですね。それじゃ、帰ります。さようなら!」
少し早足で、僕は七坂家を後にした。
・・・と、思ったら。
「総一郎!」
一度しめたドアを開けて、お兄さんが僕を追いかけてきた。
「俺コンビニ行こうと思ってたんだ。忘れてた。お前んちの前まで一緒に行こう」
「あ、はい。いいですよ」
いいですよとは言ったものの、
僕の家はすぐそこなので一分も一緒にいられないと思うのだが。
【1月10日 午後5時8分】
「・・・今日は、ありがとな」
さっき、玄関で聞いたのとまったく同じ言葉がお兄さんの口から出る。
「いえ、元々僕が誘ったんですから。お礼を言うのは僕の方です」
「そうじゃなくてさ。誘ってくれてありがとうっていうか」
家の前についた。
じゃあ家の門の前につきましたので、と言う気にはなれずに、
立ち止まって話すお兄さんに目を向ける。
「結構、気にしてたみたいなんだ。クラスメートとか、家族の俺達とか、
親しい友達・・・総一郎とも、離れるってこと」
表情こそ笑顔だったが、その横顔はどことなく寂しそうに見えた。
「だから、その・・・なんか、美緒に色々気使ってくれたっていうか・・・
いや、その言い方は間違ってるかもな。でもいい言葉がみっかんねーや。
・・・とにかく、これからも美緒の友達で居てやってくれよって事で」
頬を掻く姿が美緒と似ているな、と思った。
兄妹らしく、髪の色も目の色もそっくりだ。
お兄さん、今何歳だったかな。確か高校生だった気がするのだが。
【1月10日 午後5時9分】
「・・・じゃ、俺コンビニ行くから!」
「あ、おにいさ・・・」
僕が言葉を返す前に、お兄さんは走っていってしまった。
足速いなあ。
「・・・・・・」
色々思うことはあったが、とりあえず今は家に入ろう。
門限を10分ほど過ぎた言い訳の台本を考えながら、玄関の戸を開いた。
「総一郎」
「うわあ!」
重低音といって差し支えない険しい声が突如として僕の耳に届いた。
反射的に声をあげて一歩あとずさる。
「今何時だ?」
「違うんだ父さん!美緒の家に送ってたんだ寝てたから!
いや、公園のベンチで!あとお兄さんが!」
さっきまで考えていた言い訳の台本が、
父さんの険しい顔の皺を見た瞬間に全て吹きとんだ。
そして、僕がお説教から開放されて食卓につけた時間は
5時半をとっくに過ぎて6時近くになっていた。
僕の父親は、これでもかと言うほどに門限には厳しいのだ。
というか時間に厳しい。
さっき怒られている最中に「だけど10分くらい」と言ったら「く」の文字の辺りで睨まれた。
理由を聞いて一応納得してくれたのはよかったけれど。
【1月10日 午後9時29分】
お風呂から上がって歯をみがいて、
父さん母さんにおやすみを言ってから部屋に帰ってきた。
健全な小学生だ、と自画自賛しておいた。
「つかれ、たー・・・」
ぼふっとベッドに倒れこむ。
・・・このまま、今日はもう寝てしまおう。
だけど電気を消さずに寝られるわけもなく、一度ベッドから離れて電灯の紐を引く。
カチ、という音とともに部屋が暗くなる。
カーテンの隙間から、白にかすかな緑が混じったような電灯の光が差し込んだ。
今度は倒れこまずに、大人しく布団を被る。
シーツも毛布も少しひんやりとしていて気持ちよかった。
壁に背を向けて、丸まる。
目を閉じると、なんだか安心感があった。
毛布にくるまっていると、「ここは安全だ」という気がするのだ。
実際寝ている間ってのは無防備極まりない訳だけど、何故かそんな気がする。
布団は不思議だ。
【1月10日 午後9時51分】
さらさらとしたシーツの感触とか、枕と頭の間で擦れる髪の毛の感触が伝わってくる。
意外とすぐには寝付けないんだな。
だけど、語り部である僕の役目はそろそろ終わりみたいだから、
早いところ寝付いてしまいたい。
本来の主人公は僕じゃないみたいだし。
少なくとも僕の見ている世界では僕が主役中の主役なんだけど、
他の大多数から見た僕はただの脇役みたいだから。
僕は今日、僕の物語の主役を勤めるのと同時に
誰かの物語の脇役となったのかもしれない。
例えば、美緒の。もしくは、お兄さんもありうるかもしれない。
とかなんとか、自分を物語の主人公みたく例えているうちに
意識が虫食いっぽく黒くなっていく。
あ、そろそろ眠れそうだ。
それじゃあ寝よう。この機会を逃してしまわないうちに。
一瞬、頭の内側の方で金属線の焼け焦げるような感覚がした。
おやすみなさい。
【エピローグ 総一郎】
僕は普通に目が覚めた。
眠い目をこすって見た枕もとの時計は8時くらいを示していた。
その横に携帯が置いてある。
青いガラス球の連なった携帯ストラップが、窓から入る日の光を僅かに反射していた。
「・・・おはよう」
ストラップに挨拶する奇人変人のレッテルを貼られそうだが、
今僕にそんなものを貼り付けられる人は部屋に居ないので気にしないことにした。
いても困る。
しかし我ながら気持ち悪い事をした。
いつもはストラップに挨拶なんてしていないぞ。
「あ」
携帯の日付を見て気がついた。今日は1月10日か。
そういえば数日前に美緒が家に帰ってきてたな。
お土産にお菓子を持ってきてくれていた。まだ一個しか食べてない。
・・・そういや、まだちゃんとつけてくれてたんだな。あのストラップ。
よく4年も持っているものだ。
かくいう僕のストラップも、薄汚れつつも紐は丈夫に健在だが。
友情の証、というなんとも青臭い言葉に憧れているのは
今も昔も変わらないので、このストラップは一生持っている気概だ。
もし紐が切れてバラバラになったら、袋にでもいれて首からさげておくか。
そういうのって、銃弾とか矢とかの飛び道具から持ち主の命を守ってくれたりするんだろ?
さーて、今日の朝飯はなにかなっと。
西園寺総一郎16歳。今日も健康に生きています。
【エピローグ 美緒】
「ふわ・・・」
窓から入ってくる光で目が覚めた。今日はとても天気がいいようだ。
けど晴れている日は寒い。もうちょっと布団に潜っていようかな。
携帯で時間を確認する。
8時か。もう一時間いけそう。
ちゃり、と音を立ててストラップが棚に擦れる。
少し汚れてはいるが、青いガラス球の連なった綺麗なものだ。
「そいえば、今日だったような気がする・・・ような」
総一郎が、水族館でこのストラップを買っていたのは。
実際に貰ったのは私がこの街を離れる時、駅のホームでだけど。
一昨日、こっちに帰ってきたときに会いに行ったらまた背が伸びてた。
昔は私とたいして変わらなかったくせに。
またゲームしに遊びに行こうかな。
私のコントローラーは、多分棚の中で
埃を厚くかぶっているだろうから、たまには外に出してやろう。
そんな事を思いながら、私はベッドの上においてあるイルカのぬいぐるみを
抱き枕代わりにして二度寝を始めた。
今日も、それなりにいい日でありますように。
おしまい。
最終更新:2012年03月02日 01:28