【七日目(土) HALF AFFECTION】
「あーあー、明日で美緒ちゃんともお別れかぁ」
ベッドに身を投げ、残念そうに花梨先輩が言った。
「時々電話してくれると嬉しいな」
唇を尖らせている花梨先輩とは違い、真澄先輩はいつもの静かな笑みだ。
なんだか、今日の山登りが随分と前の事のように思えた。
「もちろんです」
私も、二人と離れるのはやっぱり惜しい。
短い間でも、二人は私の面倒を見てくれて、よくしてくれて、こんなに仲良くなれたのだ。
きっと連絡だけじゃなくて、お互いにまた会う日もあるだろう。
「メールもしますし」
「あ、それなら写真付きだと嬉しいな。できれば美緒ちゃんの姿が見られると」
「僕はメールじゃなくて電話の方がいい」
「贅沢言うな。電話代とかメールに比べたら超高い」
花梨先輩が真澄先輩を睨んだ。
「写メだって普通のメールに比べればそこそこ取られるぞ?」
「うっさい変態、電話よりはマシだってーの」
思わず、くすくすと笑ってしまう。
明日の昼前には、私はここを去る。朝は準備や挨拶に追われるだろう。
だから、この夜を。
大切な友人と過ごすこの夜を、私は大事に噛み締めた。
【EPILOGUE】
「なーににやにやしてんだよ」
食堂の白いテーブルで、私の向かいに座った兄さんが怪訝な顔で呟いた。
ややだらしなくついた肘の先、私よりも大きくて、人形師らしい繊細な手には、銀色のスプーン。
半分ほど減ったチョコレートパフェの入れ物に、私の白い携帯電話が映った。
「先輩の話が面白くて」
「ああ、第三魔術学園に行った時の…」
携帯を一旦テーブルに置き、緩んだままの口元にオレンジジュースを運ぶ。
人工的な甘酸っぱい味は、舌に優しく沁みた。
「また会いたいな」
今度は私の友人も交えて、ゲームをしよう。
トランプを広げて。…なるべく健全な遊びを。
「双子ねえ」
「?」
食べずに取っておいた生チョコの飾りを口に入れ、兄さんが少し含みのある声で笑った。
「双子の魔術師ってのは、厄介なのばっかりだ」
突然そんなことを言い出して、兄さんはまたパフェをすくって口に運ぶ。
兄さんは甘党なのだ。私も好きだが、ここまでではない。
「厄介って?」
厄介。言葉だけ聞けば、意味はあまり良くない。
その真意を聞きたくて、私はグラスをテーブルに置いた。
「精神的に繋がってるからな」
精神的な繋がり。
魔術を行使する精神。
そこで繋がる二人は、果たして。
ふーん、と曖昧に返事をして、グラスの中を空にする。
「ところで美緒」
「ん?」
びっ、とスプーンで手元を指差された。
「食事中は携帯いじるなよ」
言葉に詰まった。
「わかった」
兄さんだって、行儀はそんなによくない癖に。
【NEXT: 】
TO BE CONTINUED?
最終更新:2012年03月02日 01:34