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「…なんという目覚めの悪さ。」
朝、起きた俺の第一声はそれだった。
実際、目の下にはくまが出来ていて、寝不足感も醸し出している。
寝れない日々が続いている…というわけでもないのに。
ここ、魔術学校に入学してもう1ヶ月もたつ。
俺は高等部からの入学なので小、中からエスカレーター式に高等部にいくわけではなく、入学試験を受けての入学だった。
そのときの試験でクラスが振り分けられたわけだが…
「Fクラス…なんだよなあ。」
実は、この学校に入学する気は最初はなかった。
魔術使えるのが当たり前の世の中だが、使える人間なんてここの学校の生徒、先生か卒業生ぐらいなんじゃないだろうか。
乗り気じゃなかった俺がこの学校に入学した理由。
幼馴染のかけられた"呪い"を解いてあげたい。
いつの日だったか、幼馴染がどこぞの魔術師に呪いをかけられたとき、俺は何もできなかった。
呪いは幼馴染の生気をドンドンと失わせていき…。
今では魔術関係の病院での入院生活を送っている。
目も覚まさない、会うこともできない。
だけど、救いたい。
この学校に入ればそのクソ魔術師に会えるかもしれない。
もしかしたら、呪いを解く魔術を教えてくれるかもしれない。
そんな気持ちで、俺は入学をした。

『F組ではそんな高度な魔術は扱わないぞ?』

…先生のその言葉を聞き、かなりのショックを受けた。
一番簡単に幼馴染を救うことのできる方法が一瞬で壊されたから。
F組の生徒がA組の習う魔術を習うことも不可能。
絶望した。

………そうやって、幼馴染を救えなかった自分の無力さを責めていると、いつの間にかクラスで俺は孤立していた。
クラスに馴染むことができず、暗い雰囲気…根暗的な存在…というのだろうか。
いや、勿論中学のときはそんなことはなかったよ?
いやさ…ただ…もう…俺は…。

うん、いつまでも悲しみを引きずってるのもよくないよな。
ポジティブにいこうぜ、ポジティブに。
まだチャンスはあるんだ。

そして、これからは暗い大野風真じゃない。
明るい大野風真として生きていくんだ…!!

明るく、かつ幼馴染を救う決心をしたから。
今日は風真記念日。

俺は魔術学校特有の制服に着替え、颯爽と部屋から飛び出し、勢いよく寮をでる。
校舎に入り、廊下を歩く。
その姿は…まさに…
なんだろうな?

クラスの前についた。
俺は一度深呼吸をし、また深呼吸をし…深呼吸…
やべ、吐きすぎた。
気を取り直し、クラスの戸に手をかけ、俺は戸を

開いた。



当たり前だが、教室には多くの生徒が多くいた。
俺は登校する時間帯はいつも遅いので、大抵の生徒は教室に入っている。
だから。
何をするって。
「おはよぉぉぉお!!大野風真、参上だぜ!!改めてよろしくな!!みんな!!!」

「!?」

今のクラスのみんなの表情を例えるなら…大仏を見にお寺に来たのに、
その大仏の顔が美少女フィギュアの顔部分を巨大化したものに差し変わっていたら…どう思う?
『こいつ大仏じゃねえだろ!?』
と思うだろ。
そのときの表情だ。
ごめん、意味わからんわ。
多分、『こいつ大野じゃねえだろ!?』
って思いながら唖然としている表情です。
「えぇ…と、だな…とりあえず、よろしくな!」
二回もよろしくという言葉を継げ、すぐさま自分の席につくが、やはりヒソヒソと俺に関して話をしているクラスメイトが見られる。
ふっ…存分に俺を罵倒するがよい。
いや、Mじゃないけど。
とりあえず、これで何とかクラスでの立ち位置を確立できたと思う。
勿論悪い意味で。

「(それってダメじゃん!!)」

明らかに気づくのが遅かった。
もっと効果的にクラスに馴染む方法があっただろ。
これ…逆効果だよな。
…あちゃー、これで俺の3年間の学校生活はジ・エンドされたわ。
そりゃあ、いきなり根暗だったキャラがテンションMAXでクラスに入ってきたら、奇妙がるだろうな。
てか、怖いわ。
うん、大野風真先生の次回作にご期待ください。

………

「…大野君って面白いね!」
…幻聴か、寂しい人間だな、俺は。
「ちょ…無視しないでよ!」
「え…あれ?ハイィィィ!?」
衝撃!今の声は幻聴じゃなかった。
確実に、誰かが俺に話しかけていた。
俺は応答に困り、少し声が裏返ったが…気にしないでおこう。
「私は、委員長の上永 紅理、今まで全く話をしてる姿がなかったから心配してたんだよ?委員長としてほっとけないよ!!」
黒の長髪の女子生徒はクラス全体に響きわたる声で俺にそう言いつけてきた。
黒の長髪…ふむ、なかなかの可愛いさ。
「うえ…なが、あかりさん…か、おう、よろしく。なんか心配かけてたみたいでごめんな。」
「大丈夫だよ、何かあったから黙り込んでて、クラスに馴染めなかったんでしょ?」
「まあ、そうだわな」
的確に俺の根暗事情を把握していた。
この委員長、いい人だ。
委員長の救いの声のおかげか、
「そうか…大野…あいつ…何か心配事とかあって…」
「大野君…今まで勘違いしてた…ごめんね。」
「よし!大野を更に元気づけるために、俺も一肌脱いでやるか!!」
え?あれれれえ?さっきと態度が全く違わない!?
しかもそれがクラス全体となると…な。
委員長…すげえ。

「何かあったら、私たちに相談してね?」
「…ああ、本当にありがたいよ。あと、やっとわかった…いいクラスだな。」
「みんな優しいからね!」
今まで1人で溜め込んできた感情が馬鹿みたいに思えてきた。
1人で悩まなくてもいい、みんなが俺についている。
だから、まだやっぱり幼馴染を救うチャンスがあるんだ。

あっさりとクラスには馴染めた。
あとは…。
幼馴染の呪いを解いてあげるため、頑張るしかねえな。



クラスに打ち解けてから、約一週間。
俺は、クラスの目立たないポジションかりクラスの中心ポジションに立っていた。
「大野くん!放課後に一緒に魔術史勉強しよ!!」
「風真!今日は放課後、カラオケにでも い か な い か?」
とか言われたりな。
だが。
「すまねえ!今日はちょっと用事…がな。」
俺はそんな応えを返した。
「わかったよ~大野くん!」
「おう、了解」
クラスメイト達もすぐにわかってくれたようで、よかった。
そして、その俺の用事…

放課後、俺と紅理は教室に残っていた。
「相談ですか?ふー君。」
俺は、さっそく紅理に相談を持ちかけた。
「…ふー君って、俺の幼馴染と一緒だな、呼び方。」
「ははっ、そうだった?で、相談って?…やっぱり男の子の相談って…その…?」
「いや、ちげえよ!それだったら委員長に相談しないよ!!」
「あ、違うんだ…しょんぼり」
「何故しょんぼり!?…えっと、相談入っていいか?」
「う…うん…なんだか2人きりって…ドキドキするね…」
どんどんと紅理の顔が紅潮していく。
どうした、熱でもあるのか…?

「あ、調子悪いなら無理に…」
「い、いや!大丈夫!!さ、さあ早く相談して!」
「お…おう。」
俺は紅理の態度の一変に少し驚きつつも、本題に入る。
「俺さ…この魔術学校に入った理由、幼馴染がかけられた呪いを解いてやりたいから…なんだ。」
俺はゆっくり話始める、紅理は黙って俺の話を聞いてくれている中、話を続ける。
「それでさ、その呪いをかけた魔術師の手掛かりも見つからないし、呪いを解く魔術もF組では習わないっていうし…。」
そして

「俺は…どうしたらいいんだ…」

…紅理にも応えにくい相談ってのは自分でもわかってる。
でも、このことは紅理に話をしておきたかった。
すまん…。

「今からでも遅くないよ、A組に入れるように頑張れば…いいんじゃないかな、ふー君。」
「あっ…。」
魔術学校のクラス編成は成績でA~Fに振り分けられる。
そこで、俺の1年時の最終成績がかなり良ければ…。
二年からはA組になって、呪いを解く魔術を習うことができる。
因みに、俺はA組のやつとは面識がない。
そいつに頼んで呪いを解いてもらう…とか無理だし…。
つまり、紅理の言うとおりだ。

…………

「紅理、ありがとう。その手段があったんだな。俺…頑張るよ、A組になるために。」
「うん!ふー君なら絶対やれるよ!頑張って!!」
そういい、紅理は俺に微笑んだ。
その微笑みは微笑んだ天使よりも上だった。



A組への道その1。
まずは魔術の勉強をしまくり、成績を上げること。
その2、実技も疎かにしないこと。
……よって、俺はこの二つを既に始めていた。
勉強もしまくり、成績は魔術学校の1年の中でも上位に入るぐらいになった。
偶に、紅理も勉強を教えてくれたりするので助かる。
そんなこんなで、トップクラスの成績を保ちつつ、季節は既に冬に入っていた。

「さ…さみぃ…」
朝、いつも通り俺は教室に入る。
みんなも俺に対しておはよう!とか言ってくれる。
なので俺も、おはよう!と返す。
だが、今日はいつもと違った。

「おい…大野…!さっきお前に…魔術での戦いを申し込んでるやつが来たぞ…」

入ってきてすぐのクラスメイト1人のいきなりの言葉に俺は
「は?」
としか返せなかった。
「中等部3年A組…の女子だとよ…もしかて、お前がトップの成績を保ってるの知ってて…」
「俺を倒して成績アップを狙うわけか。」
中等部の生徒が高等部の生徒を倒すのなら尚更のことだ。
何しろ、急な事態に俺はどうすればいいのか全くわからない。
戦うべきなのか…。
「訓練所に行けばいいんだよな…?」
「お…大野、…行くのか?」
「ったりめえだろ。」
「…ふー君…。」
今まで黙ってた紅理が突然口を開く。
そんな紅理は…
「ならさ…クラスのみんなでふー君の戦いを応援しに行こうよ!!」

『うおおお!!そうしよう!!!!!!』

クラスメイトみんなの声が重なる。
えっ?ちょっ、おまっ…。
「よし!ふー君が勝てるようにみんな全力で応援だよ!!!」
『おー!!』
あの…えっと…。
俺は言われるがままにクラスメイト達に押され、訓練所に連れて行かれる。
ええええ…大丈夫なのぉ!?

訓練所についた。
既に戦いを見ようと人が大きな輪になって集まっていたが、その中心に…。
黒髪ポニーテールの女子…そう、その例の中等部の女子。
俺への挑戦者がいた。
「遅い!何分待たせる気かしら!!!?」
俺達が訓練所につくなり、彼女はそう怒鳴り散らした。
「…いきなりすぎて準備できてなかっただがな!!」
とりあえず反論する。
「ふん、まあいいわ。あんたみたいな成績トップで調子に乗ってるやつ、速攻で倒させて貰うわ。」
「はぁ…?」
さすがに今の言葉は腹が立つんだが。
曲がりなりにも先輩への態度ってのがあると思うのです。

「さてと…私は、十海 極(じゅうかい きわめ)、…大野風真!あんたを倒す。」
そう名乗った彼女は、手から魔法陣を作り出し、銃を出す。

「まさか…魔術銃…!?」

なんてこった、こいつは驚いた。
魔術銃…魔術の籠もった弾丸を装填することで発動できる、魔術専用の銃。
これを使えるのって…かなり魔術に腕があるってことですぜ。
観客…ゲストはそれを見るなり、急に俺達二人から距離をとる。
巻き込まれたくないからか。

「魔術装填…対象を、凍結!」

彼女の魔術銃から弾丸が発射され、それが俺に向かって飛んでくる。
俺はとっさにしゃがみ、弾丸を防ぐ。
弾丸は俺の後ろを通過し、訓練所の壁にぶち当たるが、その壁は…
「凍り…」
壁には巨大な凍りの塊ができていた。
魔術銃は基本、どの属性の魔術でも装填することができる。
彼女は氷属性の魔術以外にも、他の属性の魔術をも使用できる。
魔術銃ってのはオールマイティーな物だな。
因みに俺は風属性の魔術しか使えない…。
なんとかたたみかけるか。

「魔術装填…対象を、破壊!!」
「ッ…風壁!!」
弾丸が発射されるが俺はとっさに風を操り、強風の空気でできた壁を作る。
その壁に弾丸があたり軌道がそれ、俺の足下の左の地面に直撃する。
その地面は一部粉砕された。

「なんつう破壊力なんだよ…!」

俺は砕けた地面から一つ小石を拾い、上に放り投げ…
強風を起こし、十海に向かってその小石を吹き飛ばす。
だが、再び破壊の弾丸が小石に直撃し、小石は空中で粉々に砕け散る。

「無駄よ!!魔術装填…対象を、炎上!!!」

炎に包まれた弾丸が発射される。
…これは俺でも対応できなかった。
やつの弾丸を発射する隙が全く無かった。

そして弾丸は、俺に直撃し、俺の周りは炎上した。



…辺り一面が炎のせいで真っ赤だ。
…ああ…負けたわ、俺。
そう思った。

「勝負ありね。」

だが、炎が消え去る頃、十海はそう言った。

「ふー君!!?」
「大野!!?」
クラスメイト達の叫び声が聞こえた。
でも…なんで…

"俺の体は無傷なんだ?"

完全に炎が消え去る、そこにはなんの傷も無い俺が立っている。

「………………………。」

十海は驚きのあまり、声も出せていなかった。
そりゃそうだ、勝ったと思ってたのに無傷で相手に生還されりゃあな。

因みに、この戦いはシュミレーション的なものなので俺は燃え尽きても死なないし、戦闘後は無傷なのだが。

戦闘中に攻撃直撃して無傷で済むなんて、有り得ない。
しかも俺はそのとき魔術を使っていなかった。
「(…どうなってる?)」
自分でもよくわからなかった。
だが、一つだけ、わかったことがある。

俺は今、炎の属性の魔術が使えるということ。

ギャラリーの中に二人の男子生徒がいた。
「おい…丹羽。」
「ああ、あいつ…自分の魔術の力に気付いてないようだな。」
丹羽と名乗る生徒はそう告げ、
「お前と同じような存在だな、ライ。」
「…魔術吸収、か。」
ライと呼ばれる生徒も、大きな歓声の中、そう呟いた。

「これで…いける…!!」
俺は炎と風の混じった魔術…
地味ながら、大量の火の粉を吹っ飛ばす魔術を使った。

「いやあああああ!!!」

十海は悲鳴を上げる。
その声により…戦闘は中断され、火の粉も消える。
…俺の勝ちだった。
「そんな…嘘よ、私が攻撃をくらうかもしれなかったなんて…」
よっぽど彼女は自分の魔術に自信があったのか、かなりショックを受けていた。
そんなとき俺は
「やったな大野!!」
「やったねふー君!!」
とか言われて胴上げされていた。
…しかし、魔術銃を使っていた彼女のことについて気になったいた。

「十海…だったな?」
丹羽と名乗る生徒は十海に近づく。
また、ライと名乗る生徒もだ。
「…誰。」
「まあ…そうだよな…」
丹羽は頭を掻きながら、ライに顎を向けて、話ように促す。

「スカウトだ、『組織』に入れ。」

ライはその言葉を残す。
十海は何の反論さえできず、しかも『組織』についてわからないまま…承諾した。

時は過ぎ。

春、クラス発表。
俺達、旧F組の面々は学校の玄関前に張り出されているクラス表を見ていた。
「ふー君の名前はどこかなー?」
楽しそうに紅理がクラス表で俺の名前を探している。
ちなみに探している過程で紅理はB組と判明した。
「ふー君とクラス一緒じゃない…。」とか言って悲しむ一面があった、どうしてだ?
「あああ!!あったよふー君!!」

A組
1.秋羽 翼
2.井上 敦
3.大野風真
  :
  :

確かにそこには俺の名前が書いてあった…!!

『うおおおお!!』

クラスメイトが絶叫し、十海戦同様、俺は胴上げされる。
「やったね!ふー君!!」
ああ…紅理の笑顔が眩しい。
ていうか…嬉しすぎる!!
念願のA組ですよ!!

「大野風真君はいますかー?」

胴上げ最中、1人の教師が俺の名前を呼ぶ。
「…はい!!!」
すごく張り切って返事をする。
が。

「諸事情により、大野君、君はC組へ変更されます。」

…………………

………

……

『はあああああああああああああああああああ!!!!!!!!?』

今年一番の大声が俺含めたクラスメイト達が発した。

学期末、一人の教師と話をした生徒がいた。
…名は現時点で2年A組、『組織』のライ・フォートレット。
「…大野風真はA君で魔術を習わせてはいけない…だと?」
教師はかなり驚いた顔をしていた。
「ああ、やつの能力だと…何が起こるかわからない…と丹羽玄のヤローが伝えとけと言っていた。」
「………校長に言ってみよう、丹羽君とライ君の言うことだから…聞き流すことができないからな。」
「ああ、頼む。」

魔術学校、『組織』、大野風真、各生徒
…そこではこれからも大きく、壮大な物語が始まろうとしていた。
最終更新:2012年03月02日 01:35