(D組・・・まあ妥当だよなあ。上位のクラスで最下位とか嫌だし・・・)
掲示板に張り出されている組分け表を見てこんなことを思った紅川璃斗。
今年度の魔術学園新入生である。
水晶・宝石がついている服。水晶・宝石がついているカバン。
周りの人が物珍しそうに見る。
(ああ・・・この服装はマズかったかなあ・・・でもこれが取り柄だし・・・。)
(他にもこういう派手な人いるよね?・・・ね?)
璃斗はD組教室を目指して道を歩いた。
新入生らしき男の人が璃斗に話しかけてきた。ああ、やっぱり目立ちすぎだ・・・。
男の人は身につけている物のことを聞いてくる。
璃斗はぎこちなく答える。
「え、えっと・・・これがローズクォーツで、こっちが・・・エメラルドで・・・。...」
男の人は「じゃ、またな。」と言ってその場を去る。
初対面の人相手はやっぱり慣れない。
今度は女の人が話しかけてきた。璃斗は後悔した。
また新入生だろう。
やっぱり宝石のことを聞いてくる。
「あ、えっと・・・その・・・これが・・・あー、ヒスイで・・・え、あ・・・これ・・・ですか?
えっと、あの・・・ラピス・・・ラズリ・・・です・・・。...」
しばらくテンポの悪い会話のあと、女の人が急に、「入学式の後にお茶でもいかが?」と聞いてきた。
十中八九、金目当てなのだろうが、璃斗にはそんなことを考える暇がなかった。
「◎△$♪×¥●&%#?!」
璃斗は慌てふためいた。女の人は訝しげな顔をする。
少しだけ落ち着いて、璃斗は言う。
「あ・・・その、えっとあのその・・・その、あの、ご・・・ごめんなさいっ!」
璃斗は逃げ出した。
女の人は舌打ちをしてその場を去った。
(ああ・・・もうダメ・・・こんな格好しなければよかった・・・)
(他にもっと派手な格好してる人いないの・・・?服の指定もなかったし・・・)
自分が一等級の派手な格好をしているということに気付かずに璃斗は目的のD組教室へ向かった。
新入生のD組全員がそれぞれの席に座る。
璃斗の席は一番左端の列の後ろ側の席。
教室の一部の生徒が落ち着きなさそうに周りをキョロキョロ見ている。
璃斗が周りを見渡すとさっき話しかけてきた男の人がいた。
その男の人と目が合うと男の人は小さく手を振った。璃斗は手を振り返した。
担任の先生が淡々と出席を取る。
話しかけてきたあの男の人は山田ということを知った。
担任の先生が淡々と入学式の内容・明日以降の説明をする。
説明が終わり、式場へ移動する。
式場に新入生が集まる。
璃斗は周りを見渡す。
さっきの女の人がいた。
その女の人と目が合うと女の人は違う方向を向いた。
学園長の話などの面倒くさい時が流れ、閉式の言葉が終わると新入生は退場。解散となった。
帰宅しようとすると山田と会った。
どうやら帰る方向が一緒らしい。二人は会話をしながら帰り道を歩いた。
二人の行く道が分かれるときに、山田は「これからよろしくな。」と言った。
璃斗は、
「さよなら、僕を飾り上げるためのモブキャラ。」
と、笑顔で言った。璃斗は素直である。
二人はそれぞれの道を歩いていった。
家に着いた。
まだ両親は帰って来ていなかった。
璃斗は自分で昼食を作り、キラキラ輝く自室に持っていって食べた。
食べ終わると、少し疲れたのかベッドに横になった。
横になりながらふと床を見ると黒いアレがカサコソトアルイテイタ。
璃斗は声にならない叫び声を上げてベッドの上で飛び上がった。
しばらく泣き叫んだ後、今だ死界の中にいる黒いアレ退治スプレーをソレに噴きかけた。
動かなくなるまで噴きかけた。
コレはどうしようかと迷った挙句、なるべく身体から遠ざけながらガスコンロで焼却し、封をして処分した。
戦場を生き抜いた璃斗は、帰ってきた両親に黒いアレ退治専門の業者を呼ぶように言った。
親は「検討する。」と璃斗に言って、家事に取り掛かった。
璃斗は家事の手伝いをした。
普段より一生懸命手伝った。
親が「男なのにそんなどうして虫なんかが怖いの・・・。」と言った。
璃斗は
「・・・怖いものは怖いもん。」
と言った。拗ねた。
一通り家事が終わったところで、親に「手伝いはもういい、ありがと。」と言われ、璃斗は自室に戻った。
自室で璃斗は筋トレをした。
別にハマっているというわけではないが、今まで運動をしてきた璃斗はコレをしないと落ち着かないのだ。
腕立て、腹筋、背筋、スクワットを適度にした。
親が夕食の準備が出来たことを告げたところで、璃斗はテーブルに着いた。
夕食を食べ終え、風呂に入り、歯を磨いてベッドに寝転んだ。
璃斗は今後の学園生活を夢見ながら眠りについた。
魔術学園新入生、紅川璃斗の学園生活の幕開けである。
最終更新:2012年03月02日 01:37