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リチャード捜索

ロウ「おかしい・・・・・・一体何がどうなっているのだ?」
ロウは息を切らし、林の中をぐるりと見渡した。
鏡があった場所から離れ、校舎も木々に遮られて良く見えない。
「ミルク殿達ともはぐれてしまった。しかも校舎も見えなくなってしまった。
 心なしか遠ざかって居るようにも思える・・・・・・なぜだ?」
ロウは顎に手をあてて考えていたが、何かに気づいたようにはっとした。
ロウ「さては!!これもメイファとやらの迷宮の罠の一部かっ?!なんと恐ろしい」
メイファが恐ろしいのは確かだが、これはとんだ濡れ衣である。

『迷宮』という名の中庭から抜け出そうとしているロウの耳に、ユリの呼ぶ声が聞こえてきた。
ロウ「ユリ殿!何処におられますかな?」
ロウはユリの声に応えるべく大声で呼び返した。
ユリ「おー!リチャードさん生きてたー!!
 しんがりを引き受けたって聞いてたけど、敵の追撃はなかった!?」
ロウの声を頼りに林の上を飛んでいたユリは、木の密集した場所にたどりついた。
だが茂る木の葉が邪魔になり、上からはロウの姿を見つけることが出来ない。

「わしはメイファの作る迷宮に巻き込まれてしまったようじゃ。出口が一向に見えんのです」
ユリ「あの尻尾がいっぱいの敵はメイファって言うんだね!?
 いよーし!今助けるからね、リチャードさん!」
ロウ「おお、頼みましたぞ!」
ロウはその場でじっとユリの助けを待っていた。

『迷いの森』の魔法はユリも知っている。
助けに入っても迷宮で迷う人間が1人から2人に増えるだけだ。
しかし、ユリは木の密集地帯に入らずに、ロウを助ける名案を思いついた。
まず下準備として迷宮化していないように見える場所に降り、戦いの構えをとる。
そして気合いとともにゲージを溜め始めた。

ゲージとは、ユリが大技を放つときに使用する魔力のようなものだ。
本来なら戦いの中で溜めるものなので、急いでいる時や非戦闘時にはまず溜める動作が必要になる。
ユリ「道を作るからちょっと危ないよリチャードさん!うまく避けてね!
 はあああああっ……!!覇王翔孔拳!!」
ユリの体が一瞬光を放ち、両手の間から身長サイズの気弾が撃ち出された。
ロウ「道を作るとは・・・・・・はっ?!」
バキバキと木々がへし折れるような音を響かせ、何か得体の知れないものが近づいてきた。
木々の間から見えるそれは、身長ほどもある巨大な気弾だった。
ロウ「うおおおおおおお?!」
ロウは覇王翔孔拳をまともに受け、天高く跳ね飛ばされた。
ユリ「リチャードさーんっ!?」
ロウが覇王翔孔拳に吹っ飛ばされたのを見て、ユリは仰天した。
ユリ「あわわわ、だーいじょうぶーっ!?」
慌ててロウの所に駆け寄ると、ロウは木の枝に逆さ吊りになっている。
それでも表情こそわからないが、ダメージはなさそうだった。

ユリ「ごめんねリチャードさーん、怪我してない?降りてこれるかな!?」
ロウ「・・・・・・・・・・・・・・ユリ殿は格闘術に秀でていらっしゃるのですなあ~。驚きましたぞ。
 こんな離れた場所まで気弾を飛ばされるとは、たいしたものですな」
木の枝に引っかかって逆さ吊りになっていたロウだったが、相変わらず口調はのんびりとしたものだ。
ロウはくるりと空中で一回転し、ユリの待つ地上へと無事着地した。
ロウ「ですがこれで無事合流できましたな、緑の迷宮から救い出してくださり感謝しますぞ。
 屋上に召喚された者は特に動きは無いようですが、ユリ殿は何かご存知ですかな?
 それと、同行されていたマリオ殿はどうなさったのですかな?」
ユリ「あ!リチャードさんも屋上の『気』に気づいたんだね!
 私が見るに、あれはかなりの強者だよ!
 マリオさんは、ムウ大陸発見を邪魔する危険人物って言ってたけど、だれなのかなあ?
 マリオさんは王様にムウ大陸の事を聞いてるはずだから、戻って合流しよう!」
ロウ「そうですな、参りましょう」
そう言ってリチャードと一緒に戻り始めたユリだが、すぐにマリオと合流する事ができた。
マリオはスクナとミルクが屋上に飛んでいったのを見て、急いでそれを伝えに来たのだ。

「オーウ!ロウさん、ユリさん、大変デース!
 スクナさんとミルクさんが屋上に行ってしまいマーシタ!」
ユリ「えええっ!?危ないからダメだって、ミルクに言っておいたのにー!!
 王様とミルク大丈夫かなあ…」
ユリがそう言って心配すると、マリオはゴーグルを触り始めた。
「今のところ2人とも無事なようデース。
 ですが、スクナさんやミルクさんが危険かもしれない事にかわりはありまセーン。
 2人を信頼して待つべきか、助けに向かうべきか、どちらが良いと思いマースか?」
ユリ「うーん、そう言われると、王様やミルクを信頼して待った方が良いような気がしてきた。
 そう言えばロウさん、猫耳メイド喫茶に行きたいって行ってたよね。
 喫茶店でお茶でも飲みながら、王様とミルクを待ってるのはどうかな?」
影響されやすい性格のユリは、王様とミルクを待つ気になったようだ。
薄情と見るか信頼の証と見るか、意見の分かれるところだろう。
ロウはふむ、と考える仕草を見せた。
ロウ「今のところ屋上で何か異変が起こったようには見えませんなあ。マリオ殿はどう思われますかな?」
「少し様子を見てみマース」
そう言ってマリオは、ピョンピョンと2回、木々の上に頭が出るほど高くジャンプした。
「今のところ屋上に変化があるようには見えないデース。
 危険な存在らしいのデースが、どうしてでショウか?
 なんにしても、スクナさんやミルクさんは無事なようで良かったデース」
マリオの返事を聞いたロウだが、やはりそれだけで確実に安全とは思えないのか考え込む。
ロウ「だが変化が無いといって、安心してしまうには少々早い気もしますぞ。
 のうユリ殿、ミルク殿達と何とか連絡を取れないものですかな?」
ユリ「あ、そうか!ミルクと連絡を取れば、無事かどうかすぐわかるね!
 リチャードさんあったまいい!!」
ユリは遠話の水晶球を取り出し、集中して魔力を込め始めた。
そして少しだけ何かを考えてから、小声でミルクに呼びかける。
ユリ「ミルクー。ミルクー。元気ですかどうぞー」

(ミ)「もしもーし、ユリ?なんでそんな小声なのよ。(中略)
  リチャードさんと合流できたの?」
ロウ「この分だと心配はいらないようですなあ。案外正式な正体客の一人だったかもしれませんし」
ロウはユリの遠話の邪魔にならないよう、小声でマリオに話し掛けた。
察しが良ければ屋上に異変はないことにすぐ気づくかもしれないが、ユリはそこまで賢くなかった。
その後現在の状況説明が続き、スクナと別行動中であることや、来客のメイレンについて伝えられる。
(リ)「じゃあ私行きます!メイレンさん、また後で!!」
ロウ「メイレン?メイレンだと?!・・・・・・・あのメイレンが来ているのか。これはまた・・・・・・何だと?」
最後に拾った声を聞き、ロウは僅かに狼狽したような様子を見せた。

ユリ「良かったー、王様もミルクも無事みたいだよ。
 これなら、猫耳メイド喫茶でゆっくりお茶できるね!
 屋上に来たのはメイレンって名前の人だけど、有名人なのかな?
 聞いたことあるようなないような……」
「知らない名前デース。
 危険な存在であると聞いたのですが…ロウさんはご存じデースか?」
ロウ「―――― ファン・メイレン・スイション。
 中つ国の大妖怪で、魔法使いを大量虐殺した第二次文化革命で有名ですな。
 一方で中つ国の帝国主義を打破した象徴的存在でもあります。
 そんな彼女が、何故今この魔法学園にいるのか・・・・・・」
ユリ「そんなに有名な人なんだ!?
 取材しに行きたーい!でも約束だから行けなーい!!」
「オーウ、それは大変な人物デースね。危険と言われるのも分かりマース」
ユリは有名の部分に反応したが、マリオは魔法使い大量虐殺の方を気にしたようだ。
しかし、ロウが心配しているのは過去のメイレンの行動だけではない。

ロウ「だがメイレンが客として招待されたとしたら、同じ客である我らが何かを言う権利はありませんな。
 ただ一つ心配なのは・・・・・・・メイレンの好物が『若い男』だということです」
ユリ「『若い男』が好物……。余計取材したくなってきたー!
 特ダネがスクープな予感がガンガンだよ!
 取材禁止令だなんてありえなーい!!」
ロウの心配は正しく、ユリには文字通りの意味は伝わらなかった。
興奮を静めるために近くの木に正拳突きを連打するユリとは違い、マリオはさらに心配を強くする。

「『好物』以外のものも食べる可能性がある、ということでショウか?
 それならば、危険性についてもっと注意を呼びかけるべきでショウか?」
ロウ「まあ客である以上、メイレンも多少は自重するでしょうが・・・・・・・やはり気になりますかな?
 とにかくここでじっとしても始まりませんし、一旦林の中から出ましょうぞ。ほっほっほ」
ユリ「そうだね!食べ物の話をしてたらお腹も空いてきたし、猫耳メイド喫茶で一休みしよー!
 あ!リチャードさん!メイド喫茶はそっちじゃないってば!」
勇んで歩き出したユリだが、道中なんどかロウの進む道を訂正する必要があったのは言うまでもない。


ユリ「ホットケーキと焼きそばとカツサンドとスパゲティとオレンジジュース大盛りで!
 ここは私がおごるから、ロウさんもマリオさんもガンガン食べてね!
 腹が減っては戦ができない!食事は戦いの基本だよ!」
「ではコーヒーをお願いしマース」
ロウ「ほっほっほ、では紅茶をご馳走になりますかな」
その後、猫耳メイド喫茶に到着したユリはさっそくオーダーを開始した。
店内はすでに爆発の痕跡もなく、猫耳メイドたちが忙しそうに働いている。
案内された席につき、注文の品が届いた所でマリオが口を開いた。
「それでは、これからムウ大陸探索の作戦会議をおこないまショウ。
 スクナさんによると、夜明けの時間帯に昼夜を逆転させる事で『夜明けの晩』を実現できるようデース。
 すると残った謎は『後ろの正面』デースが、これは場所を表しているのではないでショウか?
 後ろなのに正面となる場所に心当たりはありまセーンか?」
ユリ「王様がそんな手がかりを残してくれたんだ!
 うーん…後ろなのに正面正面正面正面うーんもぐもぐ…」
頭を使うことが苦手な上に食事に気を取られたユリは、今のところ謎を解くのに思いつく事は無いようだ。
ロウ「招き猫広場、ということは無いでしょうかな?
 確かあの招き猫の像は、夜な夜な動く、などという噂があった筈ですが。
 ユリ殿は何かご存知ありませんかな?」
ロウはそう言いながらも、誰かを探しているようなそぶりだ。
果たしてお目当ての人物はいたのだろうか?
ユリ「おお!招き猫の像はありそうだね!
 あの像って確か謎の物質で出来てたはずだし、もしかしてムウ大陸と関係あるのかも!
 あれかな?招き猫が動いて後ろ向いたりするのがポイントかな!?」
「招き猫デースか?夜中に動くとは不思議な像デース。
  それは『後ろの正面』と関係があるかもしれまセーン」
マリオがそう感想を述べた所で、ユリにミルクからの連絡が入った。
ユリ「あ。ひょっほ待っへ。ミルクはら連絡ら。
 はーいもひもひ。どったの?」
ユリ「もちろんそうだよ!見つけたら世紀の大発見!高く売れること間違いなし!
  もしかして、ミルクもムウ大陸発見に協力してくれるの!?」
ユリ「リリアーナの居た猫耳メイド喫茶だよ!それじゃ待ってるから!」

「…ロウさん、どうかしまシタか?
 誰かお知り合いの人でもいまシタか?」
ロウ「ああ、いや。残念ながら。
  喫茶店の改装前には居たはずなのですが・・・・・・はてさて、一体どこへ行ってしまったのか」

ユリ「お待たせー!ミルク達もムウ大陸探しを手伝ってくれるらしいよ!
 若返りの薬を欲しがってたけど、高く売りつけられる相手を見つけたのかな?」
「若返りの薬とは良い物に目を付けられマーシた。
 伝説によると、ムウ大陸には確かに若返りの薬が存在したようデース。
 もし見つけることができれば、世紀の大発見となるデショう」
ユリ「世紀の大発見!?スゴー!!これは特ダネ間違いなし!!」

しばらくユリと盛り上がった後、マリオはたずねたかった事を思い出した。
「そういえば、招き猫の像とはどんなものか聞いていませんデーシた。
 夜になると踊り出すとはどんな像でショウか?」
ユリ「マリオさんは来賓だから知らないよね。
 招き猫の像って、左手を上げた大きな猫の像の事だよ。
 ちょっと前にある事件があって、それ以降逃げ出さないように鎖でつながれてるんだ。
 ちなみに左手を上げてるのは、魔法学園に千客万来の意味を込めてるんじゃないかと言われて…あれ?」
説明になっていないような説明をしているうちに、ユリはある事に気づく。
ユリ「そういえばリチャードさんも来賓なのに、どうして招き猫の噂なんか知ってるの?」
ロウはティースプーンでカップの中をかき回した。
「ああその・・・・・・実はこの学園に知り合いがおりましてな、ほっほっほ。
 おや、なにやら巨大な人形が歩いておりますぞ?あれも何かのアトラクションですかな?」

(17で〆)

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最終更新:2009年04月14日 16:25
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