(屋上の一つ下の階)
アイシャは現場に着くとその状況に息を飲んだ
窓ガラスが割れた部屋を見ると、何者かが侵入した跡があり
その他にも、乱暴に開かれたドアや、壁の傷、点々と残っている足跡
ウェ【ここで何かがあったのは間違いないな…まだこの辺りに潜んでいるかもしれない
警戒を怠るなよ】
魔銃を構え直し、アイシャは何者かの追跡を始めた
追跡の最中、何者かがこちらに近づいてくるのを感じた。
もし、そいつがメイファならば、このまま遭遇と同時に…いや、流石に考えすぎたか
だが、その考えとは裏腹に銃を握る手に力が入る
ウェ【(しかし、対悪魔用の魔銃が中つ国の妖怪に効果があるかどうか悩んでるな
私としては、我々と同等の効果がほしいが…あまり期待も出来ないし、そっちのほうが都合がいいだろうな)】
ウェザーはそのことについてアイシャに触れることはなかった
(1階物置)
教室の窓ガラスが割れて数分後の事である。
レベッカが逃げ込んだ一階の物置から、何者かが扉を開けて出てきた。
レヘ「…やれやれだな。」
出てきたのはレベッカだった。見たところ外傷はどこにも見られない。
彼女は背中にメイファを背負っていた。メイファはレベッカの背中に頭を預け、
すやすやと寝息を立てている。さっきまでお尻から出ていた12本の尻尾は、
どういう原理かはわからないが、畳んでしまわれたようだった。
この状態では、レベッカが“普通の女の子”をおぶっているようにしか見えないだろう。
レヘ「ええっと…屋上に行けばいいんだよな。まったく、なんでこんな事を思いつくのやら。」
レベッカは屋上に向けて歩き始めた。
少しすれば、レベッカはアイシャと遭遇する事になるだろう。
リリ 「わっ、キャ――――!!」
途中の階に到着したところで、
リリアーナは出会い頭に何者かと衝突した。
レヘ「………」
ちょうど階段にさしかかろうとしていたレベッカは足を止めた。
レヘ『誰かいるみてーだ。』
レベッカは中つ国の言葉で小さくささやいた。
ファ『今事を構えるのはあまり懸命じゃないと思うわ。私を隠して。』
レベッカが背負っているメイファが、寝たふりをしながらレベッカに指示を出した。
レベッカは無人の教室に入り、ロッカーにメイファを入れた。
ファ『もしも誰かに会って、その誰かが私を探しているようなら、何も言わずに殺して。』
レベッカはロッカーを閉めた。
一方、リリアーナが必死になって1階を目指し階段を駆け下りていると――――
リリ「わっ、キャ――――!!」
途中の階に到着したところで、リリアーナは出会い頭に何者かと衝突した。
これは実はアイシャだったのだが、ぶつかった衝撃で足を滑らせ踊り場まで落ちたリリアーナはまだ知らない。
(もしアイシャが優秀な追跡者だったとしても、今の物音で全て台無しになったことだろう。)
視界の外から何者かがぶつかり、そのまま階段を転げ落ちてしまったのだ
アイ「イったー!マジ最悪」
頭をさすりながら立ち上がると謝罪する何者かに目を向ける
リリ「あいたたたた・・・・・・・・ご、ごめんらさひ、ちょっと急いれいて」
アイ「ほんっとバカなんじゃないの!ちゃんと前見てあるい……アッ」
リリ「ごめぇんアイシャ、本当にごめんね~」
リリアーナだと確認できた途端、アイシャは気まずくなり視線を逸らした
アイ「…でも、まぁ間違いは誰にでも有るわけだし…ごめんね…なんか思いっきり言っちゃって」
リリ「ううん、私が悪いの。急いでいて、前をよく見てなかったから。
ごめんねアイシャ。怪我はないかな?」
リリアーナは壁に手をつきながら立ち上がった。
マオ「アイシャ、その様子だとなにか掴んだか?」
謝ってるリリアーナは放っておいてアイシャに状況を聞いてみる。
アイ「外から誰か入ってきてる
ガラスが内側に割れてたし、間違い無いんじゃない
んで、誰かを追いかけてこの先までいって…」
状況を説明している間に大事なことを思い出し、顔が青くなる
アイ「そうだ!今ソイツっぽいのがこっちに近づいてんだって」
レヘ「そいつは俺の事か?」
レベッカがアイシャ、マオ、リリアーナ達の前に現れた。
リリ「レベッカさん!」
声に振り向くと、そこにはレベッカが立っていた。
メイリンの話と違って、彼女は一人だった。
マオ「居たのか……ということはガラスとかはお前がやったのか?」
レヘ「よぉ、リーにマオ。メイレンはどうだった?俺に似てただろ?あ?俺に近いものを感じただろ?
俺も妖怪なんじゃねーかって思ったんだろ?おい、はっきり言えよコラ。」
レベッカは自虐的な質問を二人に浴びせた。
ちなみに、アイシャとは初対面なので何も思うところは無いようだ。
クロ(で、追い着いたら何なんだこの状況は・・・
もしや妖怪には精神を操る力も備わっているのか?
とにかく様子見で近くの教室に身を隠すか。 )
リリアーナはあっけに取られていたが、やがて気を取り直すと。
リリ「レベッカさん、メイファに何か言われたの?」と言った。
レベッカは「おめーには関係ねー」と答えた。
リリアーナはちょっと考え込んでいたが、やがてうん、と頷き口を開いた。
リリ「確かにレベッカさんは、メイレンさんにとってもよく似てるよね。
でも私、中つ国の人に会うの初めてだから、あんまりよく分からない。
獣人さんとか異国の人って皆同じ顔に見えちゃうし。
それよりレベッカさん自身はどう思ってるの?似てる理由を皆に聞いて欲しいのかな?」
レヘ「そいつは逆だろ。おめーが知りてーのは、それを聞いて俺が怒るか怒らねーか、じゃねーか?」
リリアーナはうーん、と言いながら、髪をくしゃくしゃとかき回した。
実は、レベッカが妖怪なのは薄々気づいていた。多分、第一次文化革命を起こしたのは彼女だろう。
だがリリアーナは、それでもレベッカが自分から話す気になるまで待つ気だった。
リリ「私はあんまり難しい事は分からないけど・・・・・一つだけはっきりしてることがあるわ。
それはね・・・・・・・この学園は魔法を学びたいと望むもの全てに広く門戸を開いているってことよ。
生徒になることを許された以上、人間だろうが妖怪だろうが悪魔の血をひこうが、等しく『魔法使いの卵』よ」
リリアーナはそう言った後、そわそわと居心地悪そうな顔でマオ達の方を見た。
何か言ってくれということなのだろう。僕は一回コホンッと咳払いをして口を開く。
マオ「この学校は入学や編入する場合に置いても種族の規制はない。
おそらくお前は妖怪と知られたら居られなくなると思ったのかもしれないが。
生憎この学校にはそういう差別は表面上はない。無論。お前を妖怪と知って嫌う魔法使いも多いだろう。
それに耐えられないほど弱い心なら出て行って国に帰ったほうがお前にとって幸せだと思う。
だがお前が生徒でありたいと願う限り、この学校はお前を除籍することはない。」
レヘ「なんだよ、結局俺が妖怪であることを前提にして話をすすめてるじゃねーか。
ああ、確かにおめーらは“難しい事”が何にもわかってねえ。
俺がここにいる事が、どれだけ政治的な意味合いがあるかってことをよ。
視野が狭すぎるんだおめーらは。大局的に世界に目を向けてみろ。
一個人の感情レベルの問題だとでも本気で思ってんのか?」
リリ「確かに私は馬鹿よ。レベッカさんの言う難しい話なんてさっぱりわからない。
でもね、ただの侵入者ならいざ知らず、学園長の面接をすり抜けて妖怪が入学するのは至難の業なの。
スカーフェイスさんを友と呼んでいた学園長が、妖怪と普通の人間を見分けられないとは考えにくいわ。
となれば、少なくとも学園長は全てを納得した上であなたを留学生として認めたことになる。
学園が認めた相手を、私達が友として受け入れようとすることに何の不都合があるっていうの?」
論点が微妙にずれているのは、リリアーナのリリアーナたる所以だろう。
だがもしもここにテリーがいたら、
「もしかしたら、学園長だってメイビー、間違える事だってあるかもしれないぜ!」
と突っ込んだかもしれない。
リリ「あっ、そうだ!レベッカさん、メイファとメイリンに会わなかった?
実はメイリンが、妖怪の妖気探知か何かでメイファを発見するなり屋上から飛び降りちゃったの。
彼女、まだ来客用リボンもつけてないっていうのに」
ギズモに、メイリンを追って義手を返すよう頼んだのだが、無事彼女と合流は出来たのだろうか?
リリ「そう言えばメイリンは、レベッカさんはメイファと一緒だって教えてくれたんだけど・・・・・」
リリアーナはキョロキョロと周囲を見渡した。
リリ「居ないね。メイリンとばったり会って、二人で仲良く中つ国に帰った・・・・・・なんてあるわけ無いだろうし」
リリアーナがメイファの事について一通り話した後、レベッカは何も言わずに槍を突き出した。
リリ「え?」
札槍(ザーチャン)、中つ国における長家槍の基本中の基本であり、奥義である。
槍の先端がリリアーナの顔面を捉えようとした時、その先がわずかに振れて彼女の肩をわずかに斬った。
「いてーな、このヤロー。」
アイシャの弾丸がレベッカの足を捉えたからだ。長家槍に限らず、中つ国の武術は脚力を重視するため、
これは後々大きなタクティカルアドバンテージとなるだろう。
「・・・・っ!」
肩を押さえて蹲ったリリアーナをすぐさま立ち上がらせると、アイシャが手を引いて階段を駆け上がった。
マオ「……どういうつもりだ?」
しかし、マオがその言葉を投げかけた先はアイシャではなくレベッカだった。
マオ「なんでメイファとメイリンの事を聞いた一瞬、リリアーナを殺そうとした?」
その言葉を無視してリリアーナを追おうとするレベッカの前に立ちふさがり溜息をつく。
マオ「リリアーナはお前と本気で仲良くしたいと思っていた。
そういう莫迦だからな…あいつはそういう莫迦だ。
それなのにどうしてだ?お前は信じられる奴を、
自分で葬ろうとしているのかもしれないんだぞ?」
レヘ「うっせーな。こっちにも色々と事情があんだよ。」
リリアーナを殺そうとした理由を、レベッカは説明できないようだ。
レヘ「スペルカード発動、シエウー・ホンレン!」
レベッカは3枚の呪符を取り出した。
レヘ「お前もだ。マオ。」
レベッカが放った呪符は方向こそ異なれど、マオを追尾して飛んでいく。
呪符・血霧紅刃は、血の通うものを切断する効果を持つ呪符だ。
避けるのが難しければ、呪符自体を破壊して身を守る必要があるだろう。
リリ「リリッちのそういうとこ、好きだよ。なんの躊躇いもなく地雷ふんじゃうところとか」
リリ「地雷?・・・私、そんなに嫌なことを言っちゃったのかな・・・・・」
リリアーナは殺されかけたショックと痛みでぼうっとしながら、アイシャについていく。
リリ「レベッカさんが妖怪なのは薄々わかってたの。
だって彼女、普通の人では絶対に知りえないような事をたくさん知りすぎてたし。
自分から言ってくれるまで待つつもりだったけど・・・・・・私、間違ってたのかな?」
血の跡を転々と残しながら、リリアーナは気の抜けたような声でずれた事を言った。
最終更新:2009年03月06日 10:52