メイレンは、ほどなくミルクと猫耳喫茶店に入ってきた。
レン「ぎゃん!?」
リリ「だ、大丈夫ですか・・・・・・」
メイレンは入り口で頭をぶつけたが、猫耳メイドがすぐにおしぼりを持ってきてくれた。
レン「あら、ありがとう。ついでにサンドイッチでももらおうかしら?」
メイレンはぶつけたところにおしぼりをあてながら(あ~、痛いわ…)席に座った。
そのすぐ横に、どさっと袋詰めの誰かが置かれる。
ヴ「ひぃ!
動いた!?」
もぞもぞと動くのが見えた
ヴァンエレンは未知のものに対して恐怖心を抱いた。
レン「よくよく考えたらね~、別に私が中つ国に帰る必要なんかなかったわ~。
だって、学園長には私の夫が一緒なんですもの。
だから、私もあなた達の宝探しにつきあうことにするわ~。」
猫耳喫茶店に帰ってきて、サンドイッチを食べながら。
メイレンさんは怪しげな事を言い出した。
マオ「なんだって……」
レヘ「おい、リー。メイリンに何が起きたかババァに聞いてくれ。」
レベッカは小声で
リリアーナにそう頼んだ。
しかし、メイレンはリリアーナが聞くまでもなくその件について話しだした。
レン「さっき森の中を歩いてたらね~、リンちゃんがいきなり魔法使いに襲われたの。
私達が森に入った時から、ずっと後ろをつけてきたみたいだったわ~。
幸い、使われたのは睡眠呪文だったからリンちゃんは無事よ。
目をさましたら、メイファと一緒に中つ国へ帰るでしょう。それはいいわ。
でも、どうして私達がつけられていたのか…あなた達なら理由がわかるんじゃないかしら?」
メイレンはそう言いながら袋を蹴った。中で何かがうごめく。
ヴ「怒ってらっしゃるんですか!?
そしてその魔法使いをお食べになるのですか!?」
フリ「誰だかわからないけど無謀な事をする人がいるものですわね」
ミル「ホントにね」
リリ「メイリンに何かあったかを私達が知ることが出来たのは、この棒メイリンが知らせてくれたからです」
リリアーナはメイリンがくれた紙切れをメイレンに見せた。
リリ「メイレン様達が尾行されていた理由は、申し訳ありません、私にはわかりません。
私達はてっきり、一緒に部屋を出て行ったレオ先生が付き添ってくださっていたと思ったのですが・・・・・・」
クリ(・・・俺の知らない名前がたくさん出てくるな。
ここはしばらく成り行きを見守るか。)
レン「あら?なんということかしら!私としたことが、
まるで“この子”があなた達の仲間じゃないかって、疑っているみたいだったわね~。
ごめんなさいね~。こんなお行儀の悪い子が、あなた達のお友達のはずが無いわよね~。」
メイレンは、突如わざとらしく申し訳なさそうに謝った。
フリ「そうですわ!睡眠の呪文なんて便利そうな魔法、使える知り合いなんかいませんもの!」
ギ「眠りの雲って初歩の呪文のはずなんだよね確か・・・・でも誰も使えない不思議」
フリ「眠りの雲は遺失呪文ですわ!だから使えなくても仕方がありませんわ!」
ミル「睡眠魔法は知らないけど、理由もなく他人を攻撃する知り合いはいないよなー。
レベッカみたいに、何か理由があれば別だけど」
レン「あなた達のお友達じゃないなら…何をどうしようが私の 勝 手 よ ね ?」
ミル「…へ?」
ギ「うん・・・・むしろ死ねば良いと思うよ」
ルス「そうですわ~女の子の後をつけまわすなんて死に値しますわ~」
リリ「わー!皆容赦なさすぎ!!」
メイレンは袋を持ち上げると、そのまま窓際まで移動した。
アイ「勝手にすれば」
クリ「俺にはどうでもいいことだ。」
リリ「ちょっと待ってください、メイレン様!
事情を知ってる友達は全員ここに揃って――――あ、レオ先生とクロウさんはいませんけど・・・。
とにかく、私達は尾行なんかしてないです。するならこそこそなんかしないで堂々と一緒についていきますよ!
っていうか、相手の弁解聞かれました?いきなり食べちゃおうとかそれってどうなんですか・・・・ちょ、ここ二階ですよ!!」
レン「バイバイ、ケダモノ。」
ケオ「……すこs――」
ミル「ちょ、ちょっとま…」
マオ「や、やめろ!!そんなところから落としたら危ない!!」
一方のマオは袋を窓際に持って行こうとするメイレンの腕に向けて雷の矢を放ってしまっていた。
ぎゃーと叫び声をあげてマオの攻撃がメイレンに届く前に目を塞いだヴァンエレン。
その瞬間、アイシャは紅茶に伸ばしていた手で魔銃を握り、大きく振り回した後、構え、マオの放った雷の矢を打ち落とした。
ヴ「お?
おぉ…なんだか知らないが…。
助かったぞ!
ありがとう」
涙目になりながらアイシャに向かってグッジョブと親指を立てて感謝する。
アイ「ハイ!私の勝ち…てか、袋の中身も確認しないでそんなことしたら、おばさんの思う壺だと思うんだけど」
マオ「うっ…いや…でも………」
反論しようと口を開きかけるが、
確かに相手の思う壷だったかもしれないことに気付き後が続かない。
ヴ「ご主人は口より先に手が出るタイプですな。
もうちょっと落ち着くことを覚えてくだされ。
いや、まじで」
むしゃむしゃとお菓子を頬張りながら言う。
威厳ゼロです。
マオ「お、お前まで……言わなくてもいいじゃないか……」
僕の取った行動は軽率だったのかもしれない、
でもヴァンエレンは僕の味方だと思ったのに……
クリ「・・・本当にアイシャの言う通りだ。
こっちが攻撃したことで話し合いに持ち込めなくなってもいいのか?
リバースの時もそうだったが、ほとんど考えずに攻撃するのはよくない。
エリートなんだろ。優秀なんだからちょっとは考えろ。」
おかげで向こうが優勢になっちまったじゃねえか・・・
マオ「うぅ……す、すまない……」
最もなことを言っているのは分かってる。
でもクリスの僕を見るまるで呆れたような視線によって
僕のライフポイントは0になりそうだ。
ユリ「あんなに焦るなんてマオマオにしては珍しいね。
でも生徒会としては、ケガ人は出したくないよねー、わかるわかる」
ユリは1人で納得してうんうんうなずいている。
ヴ「さてさて、お菓子も堪能したし。
招き猫広場へいくんだっけ…。
ご主人は問題なく動けるかい?」
さきほどまでヴァンエレンにおぶさっていてまともに歩けなかったマオ。
ユリ「だいぶ顔色も良くなってるよ!大丈夫!がんばれがんばれ出来るって!」
現在は体調も良くなっているように見えるので大丈夫だろう。
マン「だ、め……」
マンダはメイレンさんに駆け寄ると袖を引っ張り止める
マン「かんたんに、いのち、うば、ちゃだめ…」
ケオ「マンダ…」
マン「いの、ち、たいせつなもの、すごく、たいせつなもの…
うば、うより、なかよく、する。こ、ちがいいほうほう。」
フリ「ちょっと止めなさいな!血で地面が汚れるじゃないの!」
ギ「駄目だよ!ごみの不法投棄はいけない事だよ!
生ゴミはちゃんと生ゴミの日に捨てなきゃ!」
メイレンは各々の言動から、それぞれの思惑を推理していた。
まず言える事は、マオの行動から察するに、マオと追跡者とは何か関係がありそうだ。
彼女は場合によっては予定よりも早く調理した方が良いかもしれない。
ただし、彼女に侍っている吸血鬼をどうするべきか…
アイ「ねぇおばさん、賭けしようよ…その袋の中の誰かが、ウチの生徒かどうかさ
もし、私が負けたら、そうだねぇ…私の命ごと好きにしちゃっていいよ
それにウェザーとの契約もつけちゃうし…」
アイ「負けるのが怖いなら、そのまま投げ捨てたら?オバサン」
分かりやすいマオに対して、アイシャの方は何を考えているかメイレンにもさっぱりだった。
たぶん、どんな時でも我が道を進むタイプなのだろう。
レン「私と賭け事がしたいなら、もっと価値のあるものを賭けることね~。
取ろうと思えばすぐに取れるものを賭けてもつまらないわ~。」
リリ「わーっ!アイシャったら何おっそろしい契約交わそうとしてるのよ!!」
リリアーナといえば、何かあるたんびにあたふたと右往左往していた。
レベッカはさっきから「早く国に帰れよババァ」とぶつぶつ言っているのだが、
リリアーナは、衆人環視の中で叫ぶことができないレベッカの代弁者にはなりえなかった。
慌てる様子を見ながらメイレンは、やはりリリアーナもマオと同様に怪しいのではないかと思っていた。
ただし、メイリンのピンチがわかった理由が棒メイリンであるという理屈に問題はない。
そこをどう判断するべきだろうか…
ロウ「そう子供達ばかりを責めるのは感心しませんなあ」
ずっと黙ってみていたロウは軽く自己紹介をしたあと、のんびりと続けた。
ロウ「メイレン殿は有名人でいらっしゃる。信奉者も多いがその逆もまたしかり。
そのあなたが、学園屋上にゲートを開いて派手な登場をなさった。
そしてこの学園は今、部外者が大勢出入りしている。そのあたりはどうお考えですかな?」
ケオ「まずは中身が何なのか、誰が入っているのか、確かめてからでも遅くないと思いますよ。
勿論、中身の人にはしかるべき処分は受けてもらいます。穏便な方向で」
ロウ「それに今拝見したかぎりでは、メイレン殿は来客用のリボンをつけておられないときた。
その襲われたというお連れ様はいかがだったのですかな?
そのことで、色々行き違いがあったということも考えられませんかな?
まあ、いきなり攻撃をしたのは確かに感心しませんが、その攻撃も命に関わるようなものではなかった。
わしが何を申し上げたいのか、おわかりになりますかな?
お美しい女性は柳眉を逆立てているよりも、微笑みかけてくださる方が眼福だということです」
ロウの理屈は確かにその通りかも知れないと頷ける部分もある。
しかし、だからといってこちらに非は無いのだから、納得できるかと言われれば首を横に振るしかない。
マン「う、ん、メイレ、ンさん、わら、てたほうが、きれい。」
しかし、マンダにこう言われると笑うしかないのは人間も妖怪も変わらないようだ。
レン「(お持ち帰り~しちゃおうかな~?)」
リリ「ユリさーん、さっきの「メイレンさんがどんな人なのか」って話だけど・・・・・・。
メイレンさんって、こんな感じの人なんだよ~」
ユリ「思ってたよりマイルドな人だねー」
メイレンについて教えてくれたリリアーナに、ユリも感想を囁き返す。
魔法使い大虐殺の話を聞いて、ネズミをひねり殺すような人物像を想像していたのだ。
一方、フリージアやギズモ、ヴァンエレン達の興味はすでに招き猫広場の方へ移ってしまっている。
フリ「後で地面を掃除してくれるならいくらでも投げ捨てていただいて結構ですわv
そんな事より早く招き猫広場に行きましょうよ」
フリージアもギズモも、身内(と猫)と友達以外はどうでも良いらしい
ギ「駄目だよ生ゴミはちゃんと焼却処分して地面に埋めなきゃ!」
変な風にエコロジストなギズモ
メイレンは、なんだかフリージアをただの人間にしておくにはもったいない気がしていた。
追跡者に無関心どころか、ゴミ扱いである。嗚呼、この子のような妖怪がもっといてくれたら…
ユリ「ねえねえフリージア、招き猫広場についたら、鏡みたいな氷の壁を2つ作ってよ。
これができたら、合わせ鏡用の鏡を調達せずに済んで完璧だよ」
招き猫広場と聞いて、早速フリージアに頼みごとをするユリ。
袋の中身がどうなってもいいのではなく、より関心度が高いのがムウ大陸探しなのだ。
フリ「そういえばメイリンさんは本当にメイリンさんとして襲われたの?」
レン「知らないわ。」
クリ(待て、話がつながらんぞ。
そのメイリンっていうのとレベッカがそっくりということなのか? )
ギ「レベッカさんストーキングされてたって言ってたよね」
レベッカが小声で答えた。
レヘ「そりゃちげーぞ。俺が昔付き合ってた男がストーカーなのは間違いないが、
俺をストーキングしてたとはかぎらねーだろ?
もっとも、ストーキングしてると気づかれたらストーカー失格だけどな。」
リリアーナが我が意を得たりと叫んだ。
リリ「そっか!だとしたらメイリンさんじゃなくレベッカさんが襲われた可能性もあるわけだ!
今日は学園祭だから学園関係者以外の訪問者も多いわけだし、レベッカさんは確か中つ国以外にもいたんだよね?
そのとき恨みを買ったとか、後をつけまわすような輩に心当たりは無いの?」
レヘ「心当たりがありすぎて逆にわからん。
でも、国をまたいでまで俺を追いかけてくるような熱狂的なファンがいるのか?」
リリ「レベッカさんには心当たりがありすぎて、逆にわからないんですって。
でも、国をまたいでまで追いかけてくるような熱狂的なファンがいるのかな、ですって」
フリ 「ありえん・・・ですわ」
レヘ「てんめーこのやろー(笑)」
リリアーナはメイレンに向かっていった。
リリ「もしその犯人が学園の生徒じゃなくて、なおかつ単独犯じゃないなら後々困りませんか?
まずは誰なのかだけでも確認しませんか?」
ルス「確認なんか必要ないですわ~。女性を狙う変質者には死を!ですわ~」
ルズの爪がきらーんと光った。
ルス「メイレン様の手を煩わせるまでも無いですわ~今こそ白百合乙女の怒りの鉄槌を!ですわ~」
なんか黒猫が袋に襲い掛かったが、
クリ「・・・あまり事を急ぐといつか偽りの言葉に飲まれるぞ。」
見知らぬ少年がその猫をどかしてくれた。
そしてルズにのみ聞こえるように小声で話しかける。
クリ「第一すぐに殺すのは甘くないか?
仲間がいるか取り調べながらピーーーとかピーーーーーーーーーーーをして長く苦しませながら殺ったほうがいいと思うぞ。」
※(あまりにもグロテスクな表現のため規制されました)
ルス「ふっ、そちもなかなかの悪よのう、ですわ~ん」
どうやらクリスの説得はうまくいったようだ。
西洋でも猫が普通に話せるとは知らなかった。(byメイレン)
クリスはルズを床の上に放した。
メイレンは、はぁ…とため息をついた。なんだか色々と考えるのに疲れてしまった。
レン「もう、いいわ~。とにかくこの子が誰なのかをはっきりさせてちょうだい。」
メイレンは袋を開け、中の衝撃者を出そうとした。しかしその時…
罪「ぶふぉ!?」
ビリッと袋が破れる音と同時に、中から出てきた追跡者の頭突きを
アゴにもろにくらってしまったメイレンはノックダウンされてしまった。
ルズが袋に穴を作っていたことが、この追跡者にとっての幸運だったのだ。
しかし、まさか袋を破って外に出た途端メイレンに頭をぶつけると予想していなかった追跡者は、
倒れている彼女を見て驚いたようだった。といっても、顔は見えない。
リリ「メ・・・マダム?ちょっと、しっかりなさってください!!」
ユリの目がキラリと光った。
メイレンの取材は出来ないが、それ以外は止められていない。
つまり、待ち望んだ取材のチャンスがついに訪れたのだ。
その体つきから察するに、16歳程度の少年のようだった。
彼は、頭に『罪』と書かれた袋だけを被っていた。
大切なことなのでもう一度言うが、彼は、頭に『罪』と書かれた袋“だけ”を被っていた。
メイド「キャー!!変態よー!!」
そういうわけだから、店内の猫耳メイド達が一斉に悲鳴をあげるのも無理からぬことであった。
ヴ「うわあぁあ!
見ちゃダメだご主人!」
咄嗟に自分の眼を両手で覆って目隠しをして眼前のありさまを見ないようにする。
マオ「いや、そういうなら自分の目を塞ぐより、見せちゃまずいものを見せないように
その主人の目を塞がないか普通……」
ちゃっかり自分の目だけ塞いでモノ申している不肖の使い魔に落胆する。
ケオ「またまた、これはど派手な登場で……おっと、マンダは教育上良くないからね。」
マン「ち?なん、で、め、かくすの?まえ、みえな、い。」
微笑が苦笑に変わりつつあるケオス。なぜ目隠しされたか分からず?マークを出すマンダ。
フリ「・・・・・・・ギズモちゃん、気絶しても良いかしら?」
乙女としてここは気絶しておくべきではないかと考えるフリージア
ギ「ジルベリアのお風呂はみんな混浴なんだから平気なはずでしょお母さん
それにおじいちゃんのに比べたらポークビッツじゃない」
ジルベリアの公衆浴場は大体は混浴であり
さらに父親に育てられ一緒にお風呂にも入ったフリージアは
男の裸を見る事には慣れっこであるはずなのだ
フリ「それでも好きでもない男の裸なんて見たくありませんわ!」
マオ「はあ……こんなだったらいっそ袋に雷の矢を撃ちこむんだった……」
こんなやつを助けようとしていた事実を知ってそれはもうドップリ落ち込んでいる。
罪袋は倒れたメイレンに語りかけた。
罪「ジル…どうしてだ!?僕は君を愛していたのに…君が大妖怪だったなんて!
裏切ったな…父さんと同じように、僕を裏切ったんだ!!」
クリ(ジルってまた知らない名前が・・・
知らないことばかりだからこの件に関わるのやめようかな・・・ )
リリ「え?じゃあ襲った(目的)はメイリンじゃなくてメイレンさんなの?・・・・・・っ!!」
ここにきてようやく罪袋の姿に気づいたリリアーナは、あまりに壮絶な格好に絶句してしまった。
一方のレベッカは、彼が何者であるかピンときたらしく、叫んだ。
レヘ「ちがう!そいつはジルではない!」
罪袋はその叫びに反応してくるりと振り向いた。
もしもこの罪袋が、槍や剣が当たり前のように話す国の出身でなければ、
リリアーナが叫んだようにしか見えないだろう。事実、彼はそのようだった。
罪袋がリリアーナに近づいた。
リリ「キャ――――っ!!服!何でも良いから何か羽織ってください!!」
罪「今叫んだのは君なのか?」
リリ「・・・・・・ふぇ?」
リリアーナは相手から声を掛けられ、恐る恐る顔を上げた。
だが罪袋と自分との間にはいつの間にかロウが割り込んでいたため、全裸同然の姿を直接見ないですんだ。
罪「落ち着け!僕は人間だ!」
リリ「えと、は、はい、そうです。この方はジルさんじゃありません」
きっと大事なことだと思ったので、リリアーナは二度同じことを言った。
リリ「今の声とさっきの声が違うのはその・・・かくし芸だからです」
リリアーナは声が違うという矛盾を隠すため、苦し紛れの言い訳をした。
罪「そんな馬鹿な!」
リリ「私はリリアーナと申します。そこの全裸の人、お名前は?
こちらのマダムは、お連れ様をあなたに襲われてたいそうご立腹です。なぜこんなことをなさったんですか?」
罪「悠長にそんな事を聞いている場合じゃないだろう!…はっ、しまった!」
罪袋は、この時初めて武器となるものを全て取り上げられている事に気づいた。
大妖怪を相手にして、武器が無いことにくらべたら服が無いことなど些細な問題である。
ミル「『今叫んだのは君なのか?』じゃないだろこのド変態!!」
挨拶代わりに、あたしは手近の椅子を持ち上げて、変態紙袋の後頭部に叩きつける。
罪「ぐあっ!」
リリ「わーミルク!なんて乱暴な!!」
罪袋は床に倒れた。
クリ(ミルク、クッジョブ)
レベッカがキレる。
レヘ「何すんだてめー!ぶっころすぞ!」
シーツを上からかけられた罪袋が、その声に反応して動いた。
罪「…やはり、ジルがいるのか?」
しかし、意識が朦朧としているらしく。まだ立ち上がる事はできない。
ミル「ジル?誰それ?」
罪「何故殴ったんだ!?君は自分が何をしているのかわかっているのか!?」
罪袋がミルクに怒った。罪袋も案外タフである。
ミル「自分が何してるかわかってないのはあんたでしょうが。
彼氏持ちの女の子に裸で迫ったら、殺されてもしかたがない所よ普通。
それが頭ぶん殴られるだけで済んだんだから、感謝のお金でも欲しいとこだっての」
ロウ「何!!まさか本当に彼氏が居るのか?!」
リリアーナはびっくりして目をぱちくりさせていたが、やがてうっすらと頬を染めると
フリ「そ。そんなのいま全然関係ないじゃないですか・・・・・・」
と小さい声で言った。
ミル「誰かロープとシーツ持ってきて。
この末期症状の変態が二度と暴れられないようにするから。
アイシャは死霊科に新しい献体が入ったって連絡。
変態は死ななきゃ治らないって言うから、死霊科に治療に回そう」
リリ「ダメよ、今死霊科に回してこの人改造されちゃったら、マダムの疑いを解けずじまいになっちゃう!」
ミル「そっか、じゃあ単独犯である事を白状させてから、死霊科へご招待しよう」
クリ「まだ単独犯って決まってないだろ・・・」
ただ、何かで縛り上げた方が良さそうなのは確かだ。
なんか使えそうなもの入ってないかな・・・
ユリ「はいはーい!シーツはお任せ!」
ユリはシーツを持ってきて罪袋の体にかけた。
これで罪袋のプライバシーはある程度守られるだろう。
リリ「あ、そうか。テーブルクロスね!」
とりあえず罪袋はユリに任せて、リリアーナはメイレンを介抱するべく彼女の顎をおしぼりで冷やした。
リリ「マダム、マダム、大丈夫ですか?」
レン「世界がまわってるわ~。」
立ち上がれないのはメイレンも同じようだ。
一方でリリアーナは、小声でレベッカにも話し掛けていた。
リリ「ジルって、レベッカさんのことよね?
何が一体どうなっているのか聞いてもいいかな?
それと、あの罪の袋を被った人と話したいのならちゃんと話して?
内緒話は小声で、何か言いたいことがあるなら普通に話せば大丈夫よ。
私、口パクで合わせるから」
レヘ「駄目だ。奴にごまかしは通じねぇ。俺は黙る。」
そう小声で言ったきり、レベッカはうんともすんとも話さなくなってしまった。
レベッカが罪袋に自分の声を聞かせたく無い理由があるのだが、リリアーナにはわからないだろう。
ユリは凄い勢いで罪袋にインタビューを始めている。
ユリ「でいりぃ・ふぃじる突撃報道班、ユリ・オオヤマです!
今回女性にストーカー行為をした上に、睡眠魔法を使用して眠らせたそうですね!
この件について何か一言コメントをお願いします!」
罪「だったら何だっていうんだ!早く逃げろ!大妖怪が目を覚まさないうちに!」
罪袋は、一刻も早く立ち上がってメイレンに止めを刺すべきだと思った。
しかし彼の足は、彼の意に反して彼を立ち上がらせようとしない。
罪「くそっ!動け!動け!動け!どうして動いてくれないんだ!
今動かないと、みんな死んでしまうんだ!もうそんなのは嫌なんだ!だから動けよ!」
それを見たユリは、不思議そうに罪袋とメイレンさんを見比べた後、ミルクの方を見る。
たぶん、『起きてるよね?』とでも言いたいんだろう。
起きてるよ。こいつの心配が【本性の覚醒】とかじゃないならな。
残念ながら、先に動けるようになったのはメイレンの方だった。
レン「サンドイッチをとってくれないかしら?」
メイレンはそうお願いした。
ミル「ちょっと落ち着け。メイレンさんなら、とっくに起きてるから」
代わりに罪袋にそう言ってやると、それが効いたのかなんなのか、罪袋はメイレンさんを見た。
罪「す…座ったまま、片手だけでサンドイッチを食べている…!あれが…大妖怪……!」
ユリ「それはそうだよ!そもそもサンドイッチとは、サンドイッチ伯爵が片手で食べられるように考えて…」
ミル「くだらん小ネタを差し込むな!」
トリビアを言い始めたユリの首根っこを引っ張って後ろに下げ、あたしは罪袋の前に立つ。
ミル「それで?落ち着いたんなら、そろそろ説明してもらいましょうか?
あんた誰?ジルって誰?『みんな死んでしまう』ってどういう事?」
罪「落ち着くだって!?どうかしてるよ!君の後ろでサンドイッチを食べているのは、
文化革命を起こした大妖怪なんだぞ!君は死にたいのか!?」
罪袋は、文化革命の再来を危惧しているようだ。
ミル「んなわけないだろ」
あちゃ~、とリリアーナは顔を押さえた。
言ってしまった。こんな大勢の前で。
ただ救いなのは、関係者以外で文化革命の真実を知るものがこの場にいない、という事だろうか。
まあ、事情を知ってるなら、パニクっても仕方がない状況か。
魔法使いを大虐殺したので有名な人喰い大妖怪が、お腹を空かせて、自分の近くに。
そりゃ先制防衛の一つや二つしたくなるよなあ。
むしろメイレンさんの事をよく知らないはずの、マリオさんやロウさんが落ち着いてるのが不思議だ。
見ると、ロウさんはリリアーナの事がよほど気になるのか、ケオスにつきあっているのかと問い詰めている。
マリオさんの方は何か言いたそうな動きたそうな顔を見せるけど、そのたびに深く椅子に座り直していた。
…なんにせよ、騒動が大きくならないのは喜ばしい。
罪袋の足がやっと自由に動くようになり、立ち上がった。
(動かしたかったのは足の事で、大妖怪にはできればずっと眠っていてほしかった。)
罪「ジルは…僕にとって、妹みたいな人だったんだ。
だけど、なんでよりによってジルが大妖怪とそっくりなんだ!?
僕だって、ジルが誰なのかわからなくなりそうだ!」
リリアーナは思わず手にもっていたトレイを罪男に投げつけた。
リリ「なによそれ。・・・・・・何よ、それ。
ジルの顔がマダムにそっくりだったら何だって言うのよ?
そのくらいで揺らぐなんて、あなたの言う愛って随分安っぽいのね!!」
ケオ「やれやれ。」
一言呟くケオス。
ケオ「なんだか雲行きやら何やらが怪しいね、マンダ?」
マン「むずか、しいこと、わからな、い。ケオス、いつも、むずか、しいこと、いう」
ケオ「ごめん、ごめん。なんて言うのかな?色恋は難しいって言えばいいかな?」
マン「とりあえず、め、かくさ、ないで?」
ケオ「まだだめ」
ケオスがマンダと話していると
ロウ「ケオス殿、君は彼女の彼氏なのか?では、そちらのマンダ殿とは?」
リリアーナの後姿を眺めつつ、ロウは何の脈絡もなくケオスに質問した。
おおかた、先ほどケオスが助力を申し出た時の雰囲気を見て誤解したのだろう。
シーツを身に巻きつけた途端、罪袋のことは完全に空気扱いのようだ。
ケオ「は?…ハハ、ハハハハ」
マン「ち!?そう、なの、そ、なの、ケオス!?」
慌てふためくマンダ。ケオスは突然のロウさんの質問に一瞬止まるが笑い出してしまう。
ケオ「フフ…すみません。そう思ってもらえるのは光栄ですが残念ながら僕ではありませんね。」
マン「そ、そう、け、ケオス、は、わ、わわ、わたし、の、むこ!!」
声を張り顔を真っ赤にしながらロウさんに言うマンダ。若干興奮しているのだろうか、うっすらと髪も青く光る。
ロウ「おお、これは大変失礼した」
マン「んっ……んんっ…」
ロウさんに頭を撫でられるマンダ。心地よいのか髪は元に戻り目を細めている。
ロウ「となると・・・・・・一体相手は誰なのだ?」
ケオ「とても、良い人ですよ……リリアーナの彼は。」
ケオ「明るくて活躍的で周りの人に笑顔をくれる、そして彼女の事を考えられる良い人物だと僕は思いますよ。」
ケオスの中では彼はそう言う人物と言う事になっているらしい。
メイレンは立ち上がったブルースを上から下まで見て、何かを考えた後つぶやいた。
レン「いい眺めね~。」
リリアーナは複雑そうな顔をした後、とりあえず黙ってメイレンに紅茶を淹れた。
メイレンは紅茶をすすりながら考えた。どうやらこの追跡者は、
ここにいるメンバーとは関係なさそうだな、と。
ブ「僕は、ブルース。タイペー島からの留学生だ。」
それを聞いたとたん、メイレンは紅茶を吹いた。
ブルースという名前を忘れるわけがない。
なにしろ、さっきメイファからその名前を聞いたのだから。
マオ「うん、よし、わかったブルースだな。とりあえず前隠せ」
ギ「確かブルースってレベッカさんの彼氏だったよね」
何で全裸?と思いつつつぶやくギズモ
リリ「でも、あれほど毎回強烈なアプローチを仕掛けるレベッカさんが妹みたいって・・・ちょっと変よねえ? 」
フリ「変態は変態に惹かれる・・・・・・のかしら?」
リリ「それともブルースさんにとっては、レベッカさんのあれも挨拶程度なのk」
ミル「単に相手にされてなかっただけじゃな…」
レン「えっ?え~!?えっ?え~!?」
リリ「だ、大丈夫ですか?」
重要なので、メイレンは二度びっくりした。
思わず、さっきメイファから借りた魔法の指輪を出して見たほとだ。
ミル「なんですかなんですか、急にどうした…って、げ!」
やっぱりそこに書いてある名前は、記憶にたがわずブルースの名前だ。
レン(メイファは何て言ってたっけ?たしか中つ国で魔法使いから"借りた”と… )
リリ「ど、どうしたんですかその指輪?!ブルースって書いてあるじゃないですか!
まさかまさか本当にメイレン様が彼の言う『ジル』ですか?!」
余談だが、実は魔法使いは、恋人同士の間で魔法使いの指輪を交換する慣わしがあるのだった。
リリ「・・・・・なわけないですよね。だってさっきレベッカさんがそう叫んでいたし。
だったらメイレン様、その指輪、どういった経緯で手に入れられたんですか?」
レン「実はね…(略)」
メイレンは、メイファが中つ国で魔法使いから指輪を“拝借”して学園に来た経緯を話した。
ブ「僕のせいで、大妖怪をこの学園に入らせてしまった。
だから、僕がなんとかしなくちゃいけないんだ!
スペルカードが無くたって、こっちには251本の骨とADフィールドがある!」
そう言って、ブルースは闇の魔術に対する障壁(ADフィールド)を展開した。
自分の責任を自分で後始末するというのは、大変すばらしい発想である。
でも。だからって。
ミル「なんでいちいち脱がなきゃ戦えないんだよ、この変態やろう!」
ADフィールドに押しのけられ、ユリがかけたシーツも、
ミルクがブルースを殴った椅子も飛んでいった。ブルースがかぶっていた罪袋も、
一緒に飛んで行った。(ずっとフリーズしていたアイシャは、展開されたADフィールドに跳ね飛ばされた。)
ここにきてやっと、ブルースの素顔が見れるようになったのである。
ケオ「ふぅ、同じ場所で二度も騒ぎを起こされると困るんだけどね…」
ロウ「ダメだ見るな!」
リリ「え?何を・・・・・・・」
横から伸びてきた手に視界を遮られ、リリアーナは何も見えなくなってしまった。
・・・・・・何となくそのにおいや雰囲気に覚えがある気がするのだが、考えすぎかもしれない。
リリ「ちょっと、離して下さいってば!!」
リリアーナはじたばたしたが、視界を塞ぐ手は全く外れそうにない。
ブ「指輪は返してもらうぞ!ファン・スイション!」
ロウ「レディ達の前で何て格好だこの痴れ者が!恥を知れ!」
レン「えっ?え~!?えっ?え~!?」
クリ(これがいつも通りなら強力な防御になり得ただろうな。
しかし、今のフィジル島では魔法障壁が無効になる場所があるはずだ。
それにこれだけの魔力の放出は長く持つはずがない。
けど俺にはどっちが勝っても関係なさそうだし、放っておくか・・・ )
最終更新:2009年05月16日 21:00