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中庭~屋台付近

ユリ「あ!レイド先生とエース先生発見!」
エース「いらっしゃいませ~。」
ミルク「レイド先生。こんな所で屋台をしてたんですか?」
(焼き鳥屋台では、なんとレイド先生とエース先生が串を焼いていた。 )
ユリ「レイド先生お勧めの美味しいところ三人分ほどお願いしまーす!!
 あ、そうそう先生。この焼き鳥の味の秘密ってなにかありますか?
 それから、屋台のアピールポイントなんかも、あわせて聞かせてください!」
レイあいよ、お勧めね…軟骨が良いかな~?」
ユリ「軟骨!うわ~美味しそう…」
エース「焼き鳥のタレは僕がターナー先生から本を借りて調合しました。塩は……営業秘密です(はあと」
レイ「アピールポイントは…そうだな。交渉によっては結構安くなるよ。」
ユリ「ふむふむ。タレはターナー先生秘伝のタレで、塩は食べてのお楽しみ。
 交渉によっては安くなるので手持ちが少なくても安心…っと」
レイ「はいよ、鳥軟骨3人前お待ち。今回はサービスだ、持ってけ。」
ユリ「ほんと!?やったー!ありがとうレイド先生!!」
エー「レイド先生、次のお客様が来ますよ」
レイ「結構来るな~。」
ケオ「レイド先生、エース先生、こんにちは。」
レイ「お、ケオスか。いらっしゃい。」
エー「いらっしゃいませ。」
ケオ「すみません、ねぎまと軟骨、鳥皮につくねをお願いします。あぁ、ついでにレバーも」


ミル「さーて、それじゃあたしも聞かせてもらいましょうかアルナワーズ。
 あの自称砂漠の王のスクナって転入生と、あんたの間に何か関係あるの?
 手に持ってる怪しい扇子は何のマジックアイテム?
 今度は何を企んで暗躍してるのよ?」
アル「自称だなんて無礼だわぁん。
  企むも何も、アルナワーズは王の威光に触れて当然な行動をとっただけよぉん。
  おほほほほほ!」
(口元を団扇で隠しながら高笑いをするアルナワーズであった。)
アル「……は?あんたが?王の威光?」



(ユリが焼き鳥の乗った皿を持って帰ってきた。)
(それを見るや否や、アルナワーズは焼き鳥の串を三本指の間に挟みこみ高らかに掲げる)
ユリ「2人ともお待たせー!おすすめの鳥軟骨が、なんと!レイド先生のおごりだー!!」
ミル「おごり!?さっすがレイド先生、話が分かる!!」
アル「あらぁん、ご苦労さまぁん。
  やっぱり焼き鳥は塩よねぇん。
  肉の旨味を十分に引き立てる塩こそ焼き鳥の王道だわ!
  タレを持ってこなかっただなんて判っているわねぇん。褒めてあげる。
  軟骨のコリコリ具合も最高!」
豪勢に三本一挙取りした割には食べるほうは一切れずつハムハムと微妙にみみっちい食べ方をしながら喜んでいた。
ユリ「わーい!褒めてもらっちゃったー!
 そうだよね、塩は最高だよね!
 でもタレもターナー先生の秘伝ブレンドみたいだし、後で食べてみたいなー。
 とりあえず、いっただっきまーす!!」
ミル「わ、これは美味しい」
ミル「ん…?」
(ちらりとアルナワーズが持ってる団扇の裏側が見えた。
 それは表の目玉ではなく、何かの映像と文字…だったような?)
ミル「アルナワーズ、ちょっとその団扇の裏見せ……」
アル「いや~ん。何をするの?」
ユリ「あーーっ!この味は!!」
(声に驚いてアルナワーズは団扇を取り落とす。団扇の目が開かれる事は無かった)
アル「な、なんてことを・・・!」
ユリ「レイド先生、エース先生、ありがとうございます!
 またこの塩の味に出会えるなんて思ってなかったよ!」
エー「あ~、バレてしまいましたか。」
ミル「ちょっとユリ。いきなり何叫びだしてるのよ?塩がどうしたって?」
ユリ「これ!この塩!前にミルクにもらった死王の塩の味なんだってば!」
レイ「マジでか……。」
エー「まさかバレるとは思いませんでしたよ。凄いですね、彼女の舌。」
ミル「なんだそんな事か……って、ちょっと待てーっ!
 あたし思いっきり食べちゃったじゃないかーっ!!」


安全確認のためミルクが慌ててレイド先生の所に行くと、そこには見知った人がいた。
ケオ「あ、ミルクにアルナワーズ、とたしかムリ・オオヤマさん、だったかな。こんにちは」
ミル「ケオス!?こんにちはなんだけど、今は先に確認したいことがあるんでごめん!」
(ムリじゃなくてユリだよ!とか文句を言ってるユリの声を聞きながら、ミルクはレイド先生に詰め寄った)
ケオ「???」
ミル「レ、レイド先生!これは健康被害とか無い塩だよね!?ちゃんと安全確認してるよね!?」
レイ「あ、当たり前じゃないっすか~。なあ?」
エー「はいどうぞ、今回はサービスです。持って行って下さい。」
エース先生は知らん顔でケオスに焼き鳥を渡していた…。
ケオ「あ、ありがとうごさいます。」
レイ「…だ、大丈夫。今のところクレームは来てないから。」
ミル「そんな適当な!食の安全ってのは早めの対処がぐえっ!!」
ミル「いきなり首を絞めるな首を!危ないだろ!」
ユリ「大丈夫だってミルク。私前に死王の塩食べたことあるし!
 それに、レイド先生とエース先生が、考え無しに危険なもの出すわけ無いじゃん!」
ミル「…それもそうか。あはは、ごめんレイド先生。ちょっと取り乱しちゃった。
 お詫びにお金払うから、ももをタレ付きで一串ください」
ユリ「私は同じのを十串!」
レイ「オッケー、少々お待ち下さいませ~。」


アル「あなた、名前を間違えるとは失礼よぉん。
  彼女はムリ・オオヤマではなく、ノリ、オオシタよ~。
  ちゃんと訂正しておきなさい。」
(フンと息を撒き言い放つと、串をケオスが持つ皿の隅に置き踵を返す。
 まるで「捨てて置け」と言わんばかりに)
ケオ「あ、ああ……ごめん、アルナワーズ」 

屋台でレイドに詰め寄っているミルクを一瞥し、隣の焼き側屋台へと歩いていく。
なにやら騒いでいるのをみて、関わるより先に腹を満たそうと判断したのだ。

アル「ヤキソバ大盛り肉玉ミックス・・・って・・・。」
ヴ「あ、あやややややっ?!」
アル「・・・どういうことなのかしらぁ?」
ふつふつと浮かぶ怒りを押し殺したような声でヴァンエレンに問いかける。
と同時に、アルナワーズの手が屋台の中まで伸びてきてヴァンエレンの胸倉を掴む。
アル「ヤキソバを売っていながら芥子マヨネーズが無いとはどういうことぉん!
  これだけの麺と、ソース、そして青海苔など揃っていながら芥子マヨネーズが用意されていないだなんて!
  画龍点成・・・いいえ、これはもはやヤキソバへの冒涜じゃなくて!?」
ヴァ「(´・ω・`)知らんがな…ってか熱ぅ!下鉄板ですって!」
  信じられない事にアルナワーズの細腕はヴァンエレンを片手で持ち上げ、強引に屋台から引き摺り出そうとしていた。
アル「その羽根・・・あなタッ!!」

(ケオス、焼き鳥を持ってリチャードの元に戻る。)
ケオ「すみません、ごたついちゃっ――」
ロウ「これこれアルナワーズとやら、店主まで焼きそばの具にするおつもりか?」
ロウはおもむろにアルナワーズの後頭部にステッキで突いた。
(ヴァンエレンとアルナワーズ、顔と顔と面が凹凸を無視して激突する。
 その瞬間、一瞬だがアルナワーズの姿にノイズが走り、ぶれる)
ヴ「マ、マスク越しのヤックデカルチャー…」
ロウ「その辺にしておくが良かろう。
 時にお主、『か弱き乙女』のわりには随分と力持ちではないか。
 さてはドーピングでもしておるのか?」
(コンマ数秒二人の顔は平らになりくっつき、その後反動で離れていく。
離れていく顔と顔の間に虹のように鼻血の架け橋が広がっていった。)
ケオ「流石にいきなりは不味いですよ、リチャードさん」
(盛大に鼻血を噴出すアルナワーズを見ながらケオスがリチャードに焼き鳥を渡す。)
ロウ「おお、焼き鳥とはこういう食べ物なのか!」
アル「いきなり後ろから襲うとだなんてぇっ!!!」
(倒れそうになるところを何とか足を踏ん張り、反動を利用してそのまま振り返る。)
(当然その右手には屋台から引き出されたヴァンエレンを引きずっている。)
ロウ「はっはっは、すまんすまん、ついうっかり」
ヴ「この…血の匂いは……アル…ズでは…な、い」
(ヴァンエレンは気を失ってしまった。)


ミル「うわあれは痛い…」
ミル「ねえねえ今の!もしかしてキスしちゃった!?」
ミル「よく見えなかったけど、しててもマスク越しだから大丈夫だろ…」
ユリ「それに、アルナワーズを突いた来賓の人は中央から来た人だよね!?
 よーし、早速突撃インタビューを敢行だ!それ行けーっ!!」
ミル「あ、こらちょっと待…」

マオ「その通りだ!みっともないぞアルナワーズ!!」
屋台のまわりに響き渡る声、その主は……誰もが認める我らがエリート『マオ・ミゼット』である!!
しかもなんとどういうことか珍しく学校指定のブレザーにスカートという格好。
そして腕には「生徒会」という文字の入った輝く腕章をつけている。

ケオ「うぅーん、マオまで来たみたいだね。」
ミル「げ。また面倒なのがきたなぁもう…」
マオ「フフン、そう、もうお察しの通り今回僕は学園祭の秩序を守る生徒会委員の役割を任せられてね。」
マオ「さてアルナワーズ。学園祭中に喧嘩はご法度、それも勝手な言いがかりで一方的に店主に攻撃するなど言語道断」
マオ」「というわけでアルナワーズ、悪いがお前にはペナルティが下されなければならない。
 秩序を乱す奴にはそれなりの罰をというやつだ、いいかな?」

アル「フィジルの秩序を守る者!
 迅速な行動、本当に見事だわ。
 でもぉ、事実誤認があるようねぇん。」
マオ「なんだと……お前何を言って」
(そういいながら引き摺っていたヴァンエレンを軽々とマオへと投げつける。)
(ヴァンは軽々と宙に放り投げられ、咄嗟のことにマオは気絶している吸血鬼一匹の体重に潰されてしまった。)
マオ「うぎゅー!お、重い……!!」
アル「まずはヤキソバ屋台を出しながらからしマヨネーズを用意しなかった店主の怠慢と冒涜。
 そして後ろから襲うなどと言う卑怯な真似をしたあの男。
 秩序を持って裁きなさい~。
 事実誤認の謝罪はその後でよろしくてよぉん。」
マオ「い、いい加減にしろ!!お前の方こそ僕の公務を妨害するような真似をして!!
 しかも芥子マヨネーズ如きで喧嘩を売るなど……!
 だいたい!芥子マヨネーズなど邪道だ!!お前こそ冒涜してるじゃないか!」
ヴ「ぐぎゅうぅ…はっ、これは一体?
 どうしたのだマオ!?」
 あわわと状況を整理できずに慌てふためくヴァンはとりあえずマオを立ち上がらせる。
マオ「ヴァンエレン!?……まさか店主って…」
(皆ももう気がついているようなので、これ以上コソコソしていても無駄だとわかって変装を解いた。)
ヴ「今回の変装は自信があったのに…なぜバレたのだ?」

ミル「あーぁ、ここはユリに任せて、あたしもケオスみたいにカモを探しに行こうかな…」
そんなやり取りの最中、ミルクの脳裏に教頭の声が静かに流れる。
『実績に応じた報酬だからな。当然担当の客がトラブルを起こせばエスコーターの管理責任を問われて罰金だぞ?』
ミル「えぇっ!?ちょ…教頭!?」
(魔法で見張ってたのか!?でもトラブルを起こしてるあたしの客って誰だよ! )
(騒ぎの方に目をやれば、中心にはどう見てもトラブルを起こしてるアルナワーズの姿が)
(不可解な言動。衝撃でぶれる姿。最初ユリが見たスクナ。
これはもしかして… )
ミル「レイド先生、エース先生、焼き鳥美味しかったよ、ありがと。
 あたしは仕事が入ったからもう行くね」
エー「またのお越しをお待ちしておりま~す」


ユリはミルクの側を離れると、大急ぎでリチャードの所に行った。
ユリ「はじめましてリチャード・ロウさん!ようこそ魔法学園の学園祭へ!
 私、学園新聞でいりぃ・ふぃじるの記者、ユリ・オオヤマです!
 早速ですけど、リチャードさんは中央から来たんですよね!?
 中央と言えば、このフィジル島が昔栄えたムウ大陸の中央にあった山だって事が、一部で有名ですよね!
 リチャードさんが来た中央とは、やっぱりムウ大陸の事なんですか!?
 学園に来た目的は、年に一度、学園祭の時に開けると噂のムウ大陸への道と関係があるんですか!?
 もしかして、リチャードさんはムウ大陸人の生き残りとか子孫とか!?」
ロウ「はっはっは、ユリ殿はいきなり質問攻めじゃのう」
ロウ「わしがどこから来たかは、ご想像にお任せするぞ。
 まあそれはそれとして、ユリ殿は今ムウ大陸への道とおっしゃったかな?」
ユリ「そうなんです!私の今回の学園祭での目的はズバリ!
 ムウ大陸への道を発見すること!
 今まで何人もの先輩たちが叶えられなかった悲願を、今年こそ達成したいんです!
 もしかして、リチャードさんは何か手がかりを知ってるんですか!?」

レイ「ふぅ、疲れた。……何やら隣が騒がしいな…。」
エー「そういえば隣の焼きそばは、どこぞの吸血鬼がやっているみたいですよ。」
レイ「マジ?全然気付かなかっ……なんかカオスな状況に…。」
エー「うちの学園祭でカオスにならない年なんてありませんけどね。」
レイ「それもそうか…。さて、エース先生少し店を任せても良いか?」
エー「構いませんが、どこへ?」
レイ「ちょっと野暮用…」
エー「猫耳喫茶ですか?」
ぎくっ。何故分かったんだ。
レイ「い、行ってきまーす。」

マオ「さてと、話しを戻そう……」
マオ「ミルク、良いところにきた。まあ聞いてくれ。このアルナワーズが芥子マヨネーズを
 ヴァンが用意しなかっただけで冒涜だとか言っているんだ。どう考えても〝アレ〟な発言だとは思わないか?」
ミル「アルナワーズの言うとおりよマオ!
 あんたも生徒会の一員なら、喧嘩両成敗の原則を忘れたとは言わせないからね!
 とはいえ当事者の一人は来賓だし、罰則を適用するわけにもいかないでしょ。
 つまり、この場はお流れ!全員無罪!
 さ、アルナワーズ、口直しにあっちの屋台に行って何か食べよう。
 マオは恋人のヴァンエレンの屋台が、気になって仕方がないみたいだから」
アル「あの二人ってそういう仲なの?
 秩序を司る者が私情に流されるとはもっての外だわ~。」
マオ「こ、恋人じゃない!!!ってか勝手に行くなーっ!とまれ、おい止まれ金人間!!」

ケオ「すみませんが、少々気になる事があるのでこの場はお任せします。
焼き鳥でも食べつつ彼女を上手くあしらっておいてください。すぐに迎えに上がりますので」
リチ「おお、おお。気にせず行っておいで」
リチ「ムウ大陸か・・・・・・・ユリ殿は物知りだのう。
 おお、そういえばこの学園には、古い言い伝えか歌が伝わっていたのではないかな?
 あれは宝への道を示すものだと聞いたことがあるが」
ロウはそこで思わせぶりに目配せすると、焼き鳥の串を左右に振った。
ユリ「古い言い伝えか歌…。あれかな?それともあれかな…
 あっ!宝への道を示す歌ってもしかして、『かごめかごめ』!?」
(『かごめかごめ』は学園に古くから伝わる歌で、その古さのために作者も歌の意味も正確には伝わっていない。
誰かが死に行く呪いの歌か、宝の在処を示す歌かとの解釈が有力だが、謎を解明できた人がいないのだ。
そしてユリは、『かごめかごめ』は宝につながる歌だと堅く信じている。)
ロウ「ユリ殿は何か心当たりがあるようじゃの。ほっほっほ。ユリ殿のスクープ、楽しみにしておるぞ」
ユリ「はいっ!貴重な手掛かりをありがとうございます!
 よーし!絶対にムウ大陸への道を見つけてみせるぞーっ!!」

マオ「なんかお腹が減ったな……、焼きそば作ってくれないかヴァンエレン。そちらの客分にも出してあげろ」
(どこかお疲れのご様子のマオは焼きそばを注文し、やっと本業を思い出したヴァンが屋台へ戻っていく。
)
ロウ「おお、すまんのうマオ君。おお、マオさんも一休みして、わしらと焼き鳥をご一緒しませんかのぅ?」
(ヴァンエレンから焼きそばを受け取った後、客分への礼節をわきまえた受け答えをするマオ)
マオ「……ではお言葉に甘えまして。せっかくお越し頂いた客分の誘いを断る訳にもいきません」
ユリ「あ、焼き鳥も美味しかったけど、ヴァンエレンの焼きそばもおいひいよ。
 リヒャードはんもはべたほうがむぐむぐ」
マオ「口に何かもの入れて喋るんじゃない……」
ヴ「毎度あり~」
ユリ「うーんおいひー!あ、これやひほばのおだいだよ」 
(変わらず口をむぐむぐさせながら、ユリがヴァンエレンに焼きそば代を支払ったとき、上空を誰かが通過した。)

(ロウは上空に、そこには棒状のものにまたがり、空を飛ぶ二人分の人影を発見した。)
(乗っている人間の片方が知り合いだったのを見てユリはぶんぶん手を振る。)
ユリ「おーい!おーいってばー!」
ロウ「なんじゃあれは!あれではスカートの中が丸見えではないか!しかもあの格好・・・!!」
(ロウはユリとマオ、ヴァンエレンに向き直ると、飛び去っていった箒を指差した。)
ロウ「何と破廉恥な!!ユリ殿、アレは一体何なのじゃ?!」
ユリ「あぁ!リチャードさんはもしかして知らないのかな?
 私たちの魔法学園では、飛行魔法を使える生徒は、空を移動するのが普通なんだよ。
 ちなみに私はこのデッキブラ…」
ロウ「ユリ殿!!」
ロウはものすごい剣幕でユリに問い掛けた。
ロウ「学園新聞のジャーナリストならご存知だろうか?
 他でもない、先日リバースで行われたイベントの事だ。
 優勝者にはリ・・・とある女子生徒を好きにしていいという副賞があったと聞いたが、それは真実か?」
ユリ「うん、本当。さっき上を飛んでいったリリアーナって娘の事だよ。
 リチャードさん詳しいんだね」
ロウ「なんということだ・・・まことであったか・・・・・・」
ロウ「して、その結果は?」
ユリ「人気者のリリアーナを射止めようと、沢山の男子や女子が頑張ったんだよ!
 でもでも!ここにいるマオマオやヴァンエレンたち友達の活躍で、なんと優勝したのは本人のリリアーナ!
 リリアーナを狙う悪の陰謀は直前で粉砕されたんだ!」
ヴ「いやぁ、それほどでもないぞ」
(褒められたことに照れながら頭をポリポリとかいて「わはは」と笑い出して満面の笑顔になるヴァン。)
マオ「まあ、僕はエリートだからな。あのリリアーナを優勝させるぐらいの力はあるのさ」
ロウ「いやいや、実力があるのは当然だが、他人にあっさり栄誉を譲るなどそうそうできるものではない。
 こんな素晴らしい友人を持てて、リリアーナは幸せ者だな!
 いや、わしからもぜひ礼を言わせてくれ!」
ロウはマオの手を取り、ぶんぶんと上下に振った。
ロウ「いやその・・・・・・おお、この焼きそばという食べ物は実に素晴らしい。
 薦めてくれたマオ殿と、作ったヴァンエレン殿には礼を言いたい、と言う意味であってな」

(芝居っ気たっぷりに話していたユリだが、ここで名案を思いついたのかポンと手を打った。)
ユリ「そうだ!そのリリアーナは、今校舎の方で猫耳メイド喫茶を開いてるんだ!
 喫茶は男子に大人気だけどリリアーナには会えると思うから、直前話を聞きに行くのはどうかな!?」
ロウ「いや・・・それはその・・・」
(ロウは急にうろたえると、歯切れの悪い口調で何かごにょごにょ言っている)
ユリ「だーいじょうぶ!リリアーナは優しいから、忙しくてもちゃんと事情を説明してくれるって!」
ユリ「ミルクー!?リチャードさんが猫耳メイド喫茶に行きたいって…?
 あれ?ミルクとアルナワーズはどこに行っちゃったんだろ?」
ユリ「ま、いいか。マオとヴァンエレンも一緒に行ってくれるから、リチャードさんも行こうよ!」
マオ「よし、ヴァン!メイドなんちゃらに行くぞ!」
ヴ「うーむ、なんか嫌な予感がするのぉ~」
ヴ「まぁ、私は焼きそばを売るためにこの屋台から動くことはできないのだがな」

マオ「ん、分かった。じゃあここでお別れだなヴァンエレン。
 焼きそばなかなか美味しかった……まあ元気でな。」
ロウ「何を仰るヴァンエレン殿。美しい女性の誘いを断るなど紳士の風上にもおけんぞ!!」
ヴ「はい?」
がしっとロウはヴァンエレンの腕を掴むと、アルナワーズと同じ手口で屋台から引っ張り出した。
ユリ「そうだよ!マオマオをエスコートしないヴァンエレンなんてヴァンエレンじゃないよ!
 お店なんかあっちの店みたいに、使い魔に店番させておけばいいじゃない!」
(ちなみにユリの言うあっちの店では、二足歩行するウサギ達が団子を丸めては屋台に並べている。 )
ロウ「さあさあ、店のほうは優秀な使い魔達にお任せて、主殿はひと休みしようではないか。
 いい話を聞かせてくれたのと、美味しい焼きそばを作ってくれたお礼じゃよ、ほっほっほ」
ロウは有無を言わさず、ずるずるとヴァンエレンと引きずっていこうとする。
(いざ行かん冥界への門…使い魔のコウモリたちはいつの間にか準備したのか、せっせと器用に焼きそばを生産している)
ユリ「良かったねマオマオ!ヴァンエレンも一緒に行ってくれるってさ!
 せっかくヴァンエレンとつきあってるんだから学園祭は一緒に回らないとね!」
悪気無く思いを口に出しながらユリはマオの手を引っ張る。
マオ「ん?あ……ああ」
ロウ「はて?ユリ殿、マオ殿。喫茶店に向かわれるのでは無かったですかな?」
ユリ「もー、リチャードさん慌てすぎだよー!
 メイド喫茶はあっち!」
ロウ「はっはっは、いや、すまんすまん」
マオ「僕は一人でいいんだが……そのほうが都合もいい」
ロウ「そうかそうか。それはご希望に添えずすまなんだのう。
 いやはや、お若い人というのは本当に奥ゆかしいというか何と言うか――――おや」
(ユリがそう言って指さした窓ががしゃんと割れて、中から椅子が飛び出してきて下に落ちた。 )
マオ「これは……!?」
ロウ「はて・・・?フィジルの喫茶店ではたいそう変わった茶の入れ方をするのじゃのう」
ユリ「あれ?新手のアトラクションかな?」
ヴ「こ、これは、本当に大丈夫なのか?」
首をひねるユリの持っている魔法の手帳が、着信を示す音を立てた。
見れば、『でいりぃ・ふぃじる』全記者への通達が新しく書かれている。
通達【2階薬草学科猫耳メイド喫茶で、怪生物襲撃の情報あり。
   なお、生徒会役員にも召集がかけられた模様。
   最寄りの記者は直ちに状況を確認されたし】
(生徒会本部よりテレパシー
 校舎二階の喫茶店にて異変が発生
 近くにいる役員は、至急現場に急行してください)

ユリ「あ!リリアーナ達の猫耳メイド喫茶を謎の怪生物が襲ってるって!
 マオマオは生徒会から何か連絡入ってる!?」
ロウ「なんだと?!」
マオ「たった今連絡が入った、至急手の空いている生徒会員は喫茶店へ向かえとの……」
ヴ(きっと恐ろしいUMAに違いないと、一人謎の怪生物を想像してしまう。
全身真っ黒い鎧のような外皮に覆われて頭部には長く伸びる触角、さらに『愚カモノ共ガ』と周囲を跳ね飛ばす馬鹿力。)
ヴ「あわわ…えらいこっちゃ!」
ユリがマオに確認を取ったとき、爆発音に続いて校舎の窓から極太ビームが発射された。
ユリ「スクープだーっ!みんな!私先に行ってるから、後はよろしく!」
言いたいことだけ言い終えると、ユリはデッキブラシに飛び乗って一直線に猫耳メイド喫茶を目指した。
マオ「おい!!待て僕も!!……くそ、何か、何か足になるものはないのか!?」
ロウ「うぬうう、こうしてはおれん!!」
明後日の方向へ一目散に走り出そうとしたロウの足を止めたのは、マオの一言だった。

マオ「ヴァンエレン!使い魔のコウモリを召喚して、
 僕をあの二階の喫茶店まで運んでくれ!!
 礼なら後でするから頼む! 」
ロウ「事は一刻を争う、急いでくれ!!」
ヴ「しょうがない、どうか生きて再びここを通らんことを…」
(残った使い魔を呼び出して、自身もコウモリに身を変えてマオとリチャードを乗せて空飛ぶ絨毯のように空を舞いユリを追いかける。)
ロウ「ほう、これは便利だ!さあ急いでくれ」


(猫耳メイド喫茶内)
ユ
リ「でいりぃ・ふぃじる突撃報道部のユリ・オオヤマ参上!
 謎の怪生物がどうなったかと、どんな事があったのかを説明してください!」
メイド「え?えと、リリアーナが連れてきた尻尾が三本ある子犬が、魔法障壁の効かない光の矢で攻撃してきて。
  その小犬は、近くにいたピッコロさんやレイド先生が撃退したんだけど…」
マイクを向けられて説明を始める猫耳メイドだが、説明は長く続かない。

リリ「だめ!!膨張する圧力で隔絶空間がもたない!!皆、早くここから離れて!!」
メイト「キャー!キャー!助けてーっ!!」
ユリ「あ、ちょっと!まだ聞きたいことがあるんだってば!」
そんな制止でメイドが立ち止まるはずもなく、ユリもインタビューを断念せざるを得なかった。

(教室に隣接するようにして使い魔たちが滞空する。
ヴ「一体なにがあったのだろうか?」
マオ「さあな、とりあえず普通じゃないことは明らかだ」
ロウ「むっ、あのメイド姿は!!」
リチャードとマオの横にヴァン本体が半壊した教室を一望して唖然とした一言。
リリ「だめ!!膨張する圧力で隔絶空間がもたない!!皆、早くここから離れて!!」
リリアーナがなにやら叫んでいる…とその頭上に膨張しだす死体の姿があった。
ヴ「あー…これはなんともヤバイ雰囲気がするのだが?」
ロウ「こら使い魔達、もっと窓際に寄るのだ!!逃げ遅れた者たちを助けなければ・・・ええい不甲斐ない!!」
マオ「リチャードさん、危険です!それに多分大丈夫です。一応あいつらも僕には遥か劣るとはいえ魔法使いですからね」
そうしているうちに、リリアーナはケオス達と一緒に姿を消した。 
他の教師や生徒達も、それぞれうまく逃げ出せそうだ。
(ユリは後から追いついてきたマオたちの所に行き、聞いてきたことを説明する。)
ユリ「リリアーナが連れてきた犬又が、魔法障壁の効かない攻撃で暴れ出したんだって。
 それは退治できたんだけど、何か危なそうだから早く離れた方が良いみたいだよ!」

ロウは詰めていた息を吐くと、流れるような仕草でヴァンエレンの襟首を掴んだ。
ロウ「ヴァンエレン殿。漢の見せ所ですぞ」
ロウは満面の笑みを浮かべると、ヴァンエレンをマオとユリの真中あたりに放り出す。
ロウ「淑女達を守るのは紳士の本懐。それが美しい女性達なら尚更のこと。
 このリチャード、ヴァンエレン殿のお手並みとくと拝見といたしましょうぞ、ほっほっほ」
ユリ「かっ……感動だーっ!!ありがとうヴァンエレン!
 これで爆発を限界突破の距離でスクープできるーっ!」
ヴァンエレンの気持ちも知らず素直に感動したユリは、素早くヴァンエレンの後ろに回った。
迫り来る敵の騎馬軍団に、味方を守るため、槍を手にして1人で立ち向かう漢の意地を見たような心境なのだ。
豪快な爆発が不幸な吸血鬼に襲いかかる!
マオ「ヴァ……ヴァンエレーンッ!!」
そして大爆発!!なんということかヴァンエレンは
両手を広げて爆風をすべて受け切っている!!
ユリ「スゴー!!」
ユリはそんなヴァンエレンに感心しながら、爆発の被害を手帳に書き留めた。
ちょっとカッコイイがヴァンエレンがこんなこと望んでやっているわけない!
あいつはこんなことやれるようなやつじゃないんだ!




あぼ~ん


メイド喫茶内が巨大な爆風に飲まれていった。
ユリ、リチャード、マオはあるモノを盾にして無傷、そしてそのあるモノは…。
両手を広げて爆風をすべて受けきって尚、仁王立ちを崩さなかった。
太陽の光の下というハンデを負った男が背負ったものは意地か、友情か、愛情か…。
その代償は正面全体が黒コゲて所々で煙が立ち上っている。
マオ「お、おいヴァンエレン……だ、だいじょう……うわっあわわっ!」
すべてが終わっての一瞬の静寂の後に、とうとう力が尽きたヴァンの使い魔は消えうせて自身の飛行もままならないまま落下した。
ユリ「おおっとっと!」
急に足場となっていたヴァンエレンの使い魔が消え、ユリは慌ててデッキブラシをつかむ。
マオ「ヴァンエレン!しっかり足場作って無いとダメ……じゃ…」
地面に当たる瞬間、吸血鬼は伝承の通り灰になってあたりを舞う。
ユリ「あー!ヴァンちゃんが灰になっちゃったー!!」
驚いたユリは急いで地面に降り立つ。
ユリ「えーっと、灰になった吸血鬼って、どうやって復活するんだったかな…」
ユリは急いで手帳に何事か書き込み、飛び散ったヴァンエレンの灰を集め始めた。

ロウ「凌ぎきられた暁にはイージスの盾とお呼びしようと思っていたが・・・残念じゃのう」
マオ「お、お、お前!!なんてことしてくれるんだ!!」
客分だろうがなんだろうが関係ない!僕はリチャードに掴みかかる。
マオ「ヴァンエレンは紳士なんかじゃない、ただの臆病者だ!
 それなのに無理矢理………させるから…」
そこまできてリチャードの肩に使い魔の蝙蝠を見つける。
僕はゆっくりと優しくそのコウモリを手で包み込む。
マオ「ヴァンエレン……う……うぅ……うぇぇぇぇん!ヴァンエレーン!!」

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最終更新:2008年11月18日 17:00
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