「ふう、ようやっと減ってきたな」
ルイはそう言ってスナイパーライフルを構えた。
その狙撃によってGの足を攻撃し、バランスを崩したところに
ジネットのマシンガンによる集中砲火、
それを繰り返すことで少しずつ、しかし確実にGを仕留めていた。
「ルイ、ジネット、もう弾薬が残り少ない、一旦下がるぞ」
「わかった、ジネット、退くぞ」
「了解です」
彼らは以前として仮設基地付近に居た。
しかしその近くに第38小隊の姿はない。
「しかし、自分がこんなひどい目にあうことになろうとはな」
カルロはおのれの不幸を呪ったがただ余計に疲れが増しただけだった。
何故、再び孤立無援の状態へ戻ってしまったのか。
それは毎度の事ながら少し前にさかのぼる。
第38小隊との合流により、彼らはようやっと装備と食料の補給を受ける事が出来た。
ジネットの腕はまたも応急処置ではあったが少しはマシな整備が出来た。
しかし、第38小隊には非常に問題が発生している。
「しかし、まさか通信機が故障して使えんとはな・・・・・・・」
そうカルロがぼやくとルイやジネットも同じようにぼやいた。
「原型が留まっていれば修理できたんだがな。トーマス中尉が叩き壊したらしいからな」
「この戦線に配属されてはや2ヶ月、わが軍がヘタレと無能と色情魔だけしかいないことは良くわかりました」
あまりにも間抜けな友軍にジネットも苛立ちを隠す気が失せた様である。
「おい、待てそれは俺も含んでるのか」
「色情魔だと?わが軍にはそんな輩がいるのか。早急に対処するよう上層部に通達すべきか?」
ルイは最初怒ろうとしていたがカルロのボケっぷりに呆れ、どうでもよくなった。
そして第38小隊との合流から二日目の夜、彼らは隊長のトーマス中尉に呼び出される。
「撤退、ですか」
ルイの言葉に第38小隊の隊長、トーマス・カウフマン中尉は静かに頷いた。
「通信機の故障により援軍も呼べず、食料も弾薬も残り僅か、そこで我々はこの仮設基地を放棄し、本部へ撤退することになったのさ、ムッフッフ」
通信に関してはあきらかに非があるのはトーマスだがそこは触れないようだ。
「そこでだねぇ、撤退に際して殿を置かねばならないんだけど、その任を君たち三人にやってもらいたいと思ってね、ムフフ」
「お断りだ!」「辞退します!」「いやです!」
三人の心が初めてひとつになった瞬間であった。
「拒否権は無いよ、上官命令だもの、ヌッフッフ」
三人はトーマスに殺意を覚えつつも無駄であると諦め、殿を引き受けた。
そしてことは冒頭の状況となったわけである。
「で、殿を任された訳だが、まずは状況を整理しよう」
ルイは二人とともに物陰に隠れている。
「私はマシンガンと弾が3000ほど、ナイフを六本持っています」
「自分は拳銃と弾140ほどと食料4日分だ」
「俺はマシンガンとその弾1200とスナイパーライフルと弾9発、それと水だけだな」
殿、それは非常に危険を伴う任務である。言い方を変えればおとり、時間稼ぎである。
彼らの装備では到底生き延びることは出来ないだろう。
「そこで一計を案じる」
「逃げるぞ」
「「了解した(です)!」」
三人ともとてもいい笑顔であった。
「考えてみれば単純な話だったんだよな、本来我々はここには居ないはずの人間だ。
だったら居なかったことにすればいいんだ。俺達はここに居なかったし、来なかった。
もし命令違反と言われようが問題はない、しらを切れ。いざとなったら俺の叔父に頼ればいい!悪くても営倉行きですむ」
はたから聞けば問題発言のオンパレードだが、実際そうしなければこの先生きのこれない。
「ああ、ガスパール少将か、お元気であられるか?」
「少将?それだけのコネが合ったというのに二等兵にまで落ちこぼれたんですか」
ジネットがそう尋ねるとルイは一気に沈んだ。そこにカルロがたいそう誇らしげに胸を張った。
「それはひとえに我々の非常に優秀な情報操作ゆえの賜物である。
少将にはフェリペが自ら二等兵への降格を望んだと伝えてあるのだよ」
「あれはてめぇのしわざかあぁ!!!!」
「大声を出さないでください、見つかるでしょう」
そうして彼らは(新たに色情魔を仲間に加えて)再び、孤立無援の砂漠の旅に出たのだった。
最終更新:2009年02月06日 20:15