(投稿者:マーク)
1944/7/16 マハーラ大陸密林地帯 奥地
「・・・くっ・・・・・」
マハーラ大陸特有の激しいスコールの中、
ディートリヒは歩いていた
わき腹から盛大に血を噴出し左手でそれを抑えながらもう片方の手には自身の身体の倍以上の大きさの鉄塊のような剣-エッケザックス-を担いでいた
「ハァハァハァ・・・・・クソ・・・」
ディートリヒは崩れ落ちるように膝をつく。その弾みでエッケザックスを地面に落とした、その音さえこの激しいスコールの雨音に打ち消される
「俺は・・・絶対に・・・死ねねえんだ・・・・あいつらを・・・”誇り”をあざ笑った奴らを・・・この手で・・!!」
ディートリヒは歯を食いしばって立ち上がるとエッケザックスを拾い、再び歩き出す
今の彼を支えているのはこれまでの4年間に培った並外れた根性、それに加え激しい怒りや悔しさといった様々な負の感情であった
今から二週間前、彼は”家族”とも呼べる者たちを失った
孤児院とは名ばかりの場から二人の亜人を救い出す、ただそれだけだったのに
協力要請を申し出たシュバルツ・フォン・ディートリッヒは救い出した亜人をMAIDとして使う気なのだと参謀本部から聞かされたとき彼の中では激しい怒りがこみ上げた
元々性格が気に入らなかったというのもあるが、参謀本部から暗殺計画の協力要請を受けたときは思わずざまあみろと思ったものだ
罠にはめられたのは自分たちだということも知らず
結果狙撃部隊の凶弾にダリウスは倒れ、親友であり先輩メールであったグリム、ハイメ、そして今まで共に笑い、泣き、信頼しあった家族を失った
孤児院に集まり遺体を貪り食おうとしたワモンたちを殲滅し、遺体は全て彼なりに供養して埋め孤児院の瓦礫で墓標をたて、ディートリヒはザハーラへと向かった
その道中に彼はエントリヒ・メード三人からなる追撃部隊に襲われたのだ、
同志を殺したくなかったディートリヒはどうにか彼女らを撃退したが深手を負い、元々地理にも詳しくないディートリヒは砂漠の真ん中でケガを抱えて放浪する羽目となった
それでもコアブーストを用いてなんとか砂漠を抜け密林地帯に入ったとたんにこのスコールの洗礼を受ける羽目になった
ようやくふさがりつつあった傷はこの雨で再び開いてしまった
「ハァハァハァ・・・・・」
彼は歩く、一歩一歩確実に歩んだ
ただ己の信念を支えにして・・・・・
だが
「グッ・・・・ガ・・・・・・」
血を流しすぎたのだろう、不意に力が抜けディートリヒは地面に崩れ落ちる
皮肉にもそれと同時にスコールもやむ、だがディートリヒにはもう立ち上がる力は残されていなかった
ふとディートリヒの霞みはじめた視界になにかが写った
それがなにかわかる前に彼の意識は闇に包まれた
To be continued・・・
最終更新:2009年02月15日 23:01