オレスティア

(投稿者:Kreiv.)

Ave Maris Stella.



「Ave, Maris stella…」

暗い、何も無い世界
黒く、動く地面
黒く、にごった空気

「Dei mater alma…」

黒い世界で、彼女は歌う
静に、綺麗に

白い、黒の帯を引く、六つの翼を持つ彼女は、無の世界を優雅に舞う天使のようだった

しかし、その後ろには沢山の魔物が憑いていた

次第に増えていくそれは、巨大な怪物のようだった

「Atque semper Virgo…」

歌を拒むように、魔物達の羽音は大きくなる
それを気にするでもなく、天使は優雅に飛ぶ

だが、天使は汚れてゆく
彼女すらも黒に染まってゆく
黒に侵されてゆく

それでも、優雅に、美しく舞う。歌う

「Felix caeli porta…」

追いつけず、憑いていた魔物達は剥がれ、離されてゆく

魔物達が怪物にはっきりと見えるぐらいに離れたとき
天使は羽ばたきを緩め、止まる

「Sumens illid Ave…」

翼の一枚、に見えていた腕を、怪物へ向け、伸ばす
細く、長い白い腕

「Gabrielis ore…」

すると、天使の白さは戻ってゆく
その腕に流れるように、腕は黒く、濃く、染まってゆく

彼女の周囲から、黒が消えてゆく
天使が、吸ってゆく

怪物は近づいてくる
黒の帯がはっきりとしてくる

「Funda nos in pace…」


黒が揺れる

世界も揺れる



一瞬で



天使の腕から、一本の矢が放たれた
白い光を帯びた、矢


その光を大きくしてゆく



・・・そして、見えなくなった



消えた

白も

黒も

彼女も

全て。



唯一、かすれたように響く



「…Mutans Evae nomen.」
































最終更新:2009年06月04日 00:07
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