ジークフリートからの返信

(投稿者:怨是)




 おひさしぶりです。
 まさかお返事いただけるとは思っていなかったので、少しビックリしました。
 わざわざありがとうございます。

 謝罪なんていりませんよ。
 私は初めから怒ってなどいませんもの。
 確かに悩んだりはしましたけれども。

 あれから長い年月が経ち、冷静に考えました。
 そしたら、きっと教官も色々な理由があったんだな、と。
 恐怖で引きつった顔と、怒りで引きつった顔の区別がついてから、そう思えるようになったのです。

 あの時の教官は、私を恐れていらしたのですね。


 でも、良かった。
 妻子に囲まれ、幸せに暮らしていらっしゃるようですね。
 息子さんは今おいくつですか?
 いつかそちらにお邪魔したいですね。


 私は戦犯を逃れ、エントリヒ共和国・戦争記念館に保護されています。
 世論は私を“戦争に利用された哀れな犠牲者”としていますが、私はそうは思いたくありません。
 何故かと訊かれれば返答に窮するのですがね。
 きっと、自分に明確な意思があるという事を否定されたくないからでしょうね。

 こちらの生活は悪くありませんよ。
 外見上は歳をとらないので、若い子のお洋服も着こなせます。
 記念館の作業員や来客の方との他愛のない話もしたり、
 ショッピングやカフェを楽しんだりしています。
 昔と違って、どんな人も、私を普通の人間と同じように接してくれています。

 時おり、プロポーズも受けたりもしますね。
 MAIDだという事を伝えると、大抵どこかへ行ってしまわれますが。



 ……シュナイダー教官。
 時が来たら、ご自身を許してあげてください。
 これが、かつて貴方の傍に居た私からの、たった一つのお願いです。


 ――まだ自分自身を許せていない私が申し上げるのも、おこがましい話ですけどね。
 私を“最強”であることにするために誰かが陰謀を企てたと知ってから、自分の存在を許す事が出来なくなりました。
 今でもたまに思います。生まれて来なければ良かったと。
 さっさと歴史の表舞台から姿を消せば良かったと。
 そして、私も同じように、怖かったのです。
 教官だけではなく、私を取り巻く全ての人間が。
 そういった思いと「利用された」と考えたくないプライドとが、いまだにぶつかり合っているのです。
 昔ほどではありませんが。

 最後に暗い話になってしまってごめんなさい。
 それでは、また。


oct.31/1975
貴方のかつての部下 Siegfried より




 追伸:
 そういえばつい先日聞いたお話ですけども、あのクマのぬいぐるみは教官からの贈り物だったのですね。
 今でも大切に持っておりますよ。
 ありがとう。
 それでは、また。



最終更新:2008年12月07日 21:25
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