太刀風とカミカゼ

(投稿者:マーク)


1944年7月20日、夏真っ盛り 

夏の強い日差しに楼蘭特有の湿気を帯びたうだるような暑さの中、一人の女性が人々でにぎわう大通りを歩いていた
黒い着物を着、その上から軍服の上着を着ているにも関わらず彼女の肌には汗ひとつ浮かんでいない
彼女はその背に長大な刀を斜めに背負っておりにもかかわらずそれを苦にしている様子は全くない、それは彼女が人外の存在、メードであることを意味し

その着物の女-藍羅-は先日EARTHからある部隊の隊長に任命され、そのことで本国から呼び出され5年ぶりに故郷の土を踏んだところだった

「……今日はにぎやかだな…」
祭りでもあるのか通りには様々な屋台が所狭しに並び
鉄板の上で焼かれる焼きとうもろこしのこうばしい香り、がりがりとカキ氷の氷を削る音
お面をかぶってチャンバラごっこをする子供のはしゃぐ声、そして仲むつまじくひとつのわたあめを分け合うカップル
そこは人々の笑顔に満ちていた

激戦区から戻った藍羅にとってこの平和な空間全てが別世界のようで思わずそうつぶやく、
これまで自分がみてきた町にも確かにこれと同じかそれ以上に活気にあふれる祭りを行うところもあった

だがそれにはGへの恐怖を打ち消そうとするかのような風潮があり、ここのように心から楽しんでいるような雰囲気はなかった

楼蘭は大陸から離れているおかげで直接Gの被害にあうことはまずない
時たま群れからはぐれて死にかけたフライ級のGが海岸に漂着したりすることがあるがそれもかなり珍しいことである
各戦線に派遣された楼蘭メードの約6割が発狂してしまうのもうなづける話だ

実際 藍羅が所属していた楼蘭メード小隊にも発狂して処分されたり、脱走して行方知れずになったものいる

そんな事を考えていると前のほうに人だかりができていた
興味がわき覗いてみると大の男三人が一人の少女と口論しており少女の後ろには5、6ぐらいの年の少年がいた





話は数分前にさかのぼる
祭りのさなか親とはぐれた子供が親を探して走っていた

道のかどを曲がったときちょうど出会いがしらに人にぶつかってしまったのだ
彼は必死に謝った、ふつうの大人なら笑って許してくれただろう

しかしぶつかった相手はいわゆるチンピラでありしかもちょうど鬱憤のたまっている時だった
正に運が悪かったとしか言いようがない
大の大人三人がその少年に詰め寄ったとき
刀のようにしなやかなアホ毛が特徴的な少女が猛然と来て男達と少年の間に割って入り

今に至る

「てめぇ!!女のくせにいい度胸じゃねぇか!!」
未だに男尊女卑が根強い楼蘭ではこのように言い放つ者も珍しくない
しかしそれに負けじと少女は言い放つ

「この子はちゃんと謝ってるじゃない!!それを大の男がよってたかって・・・恥ずかしくないんですか!?」
彼女の言っていることは確かに正論であるしかしそれは火に油をそそぐ結果となる

「うるせぇ!!まだ乳くせぇガキの分際でこの剛銀組に逆らいやがるとただじゃすまねえぞ!!」
そういって取り巻きの二人が小刀を取り出す
剛銀組はここら一帯を仕切る任侠一家だ、なによりも仁義を大切にし無駄な殺生を嫌う組のはずだが・・・・
恐らく下っ端中の下っ端なのだろう

それを見た野次馬はいっせいに蜘蛛の子を散らすようにいなくなってゆく

少女は手近にあった棒切れを拾い構え男達に言い放つ
「ごめんなさい!手加減はできません!」

男がそれに逆上し突進する
それを少女は目にもとまらぬ速さで二人を一瞬で昏倒させた


その動きは明らかに人間のものではない


そう彼女も藍羅と同じ人外の存在、メードであったのだ



「そこまでだ!!」
声のしたほうを見ればさきほど昏倒した二人に兄貴と呼ばれていた男がいつの間にか少年の頭に銃を押し付けていた

「こいつの命が惜しかったらそれをすてな」
顎で少女の持つぼうをさす
「卑怯者……!!」
少女がうめく

「おら捨てるかこのガキの頭に風穴開けられるかどっちにすんだ あぁ!?」
男が怒鳴る
少女は悔しそうに棒を遠くに放り投げた

いつの間にか昏倒させられた男も起き上がり先ほどのお礼とばかりに指をボキボキとならし殴りかかる、
おもわず目をつぶり衝撃にそなえる、

複数の殴打音と同時に骨の折れる音が聞こえた
だが少女にはいつまでたっても痛みと衝撃は来ない

「筋はいい、だがもっと周りをよく見るべきだな」
不意にそんな声が聞こえ目を開けると目の前に長大な刀を背負った女性が殴りかかってきた男の腕を片手でつかみひねりあげている

銃を突きつけていた男は鼻の骨が折れているのか顔を血まみれにして女の足元でのびておりその指は-恐らく拳銃を奪われた際によるものだろう-ありえない方向に曲がっている


唖然としている自分と少年を見てニッと笑う女性

これが藍羅とその少女-神楽-の出会いの経緯である



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最終更新:2009年01月02日 18:58
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