「さて、どうしたものかな…」

某日、某時刻。
謹慎室、通称マイケル部屋には2つの影があった。
ひとつは大男の影。裸ネクタイにレスラーパンツのみという、何ともコメントし難い格好をしたマッチョマンはその手に抱えていた学ランの少年を、否、少女を目の前の床に横たえた。もう一つの影とは言うまでもなく、その少女のことである。
比喩でも何でもなく鳩のような顔をした男は、突然壁に張り付いたかと思うと、必死に何かを探しはじめた。文字通り鳥目だからであろう、この暗闇で視界がはっきりしていないらしい。

鳩マン(以下、鳩)「むむ…電気のスイッチはどこだ…!」

ふと。
手が探し物に触れるより先に部屋が光に包まれる。
鳩マンにとってはまったく予想外の出来事だった。

鳩「ぐ…ッ」

唐突に視界が明るくなって平常でいられるわけもなく、その場に倒れこむ。
倒れこむ。その違和感に気付くのにさして時間はかからなかった。―”そこにあるべきものがない”。つい先ほど、そこに横たえたはずのものがない。
しばらくして視界が回復すると同時に辺りを見回す。
してやられた。
が。

鳩「残念だが……もう事後だ」

その眼に、焦りの色などなかった




場所は変わり物理講義室。

カトー(以下、大)「…遅かったか」

そう、遅かった。
彼―といっても現在は「彼女」というのが正しい―が攫われたという事実を得てすぐ探せれば、もしかしたらということもあったかもしれない。
しかし、それはできなかった。
自分には漫研を援護する必要がある。そう、言われてしまった。
だからあの場では、漫研に加勢するほかなかった。
悔しいが、一杯食わされた事を認めることにする。
そうして、今はこの娘を救うことが大切だと判断する。となればまずは漫研に報告する必要がある。
彼女を助けられなかった彼の、せめてもの償いだった。




時は流れ、モッチー女体化より2日目。
結局モッチーは「自分は男である」と主張を続け、ぶかぶかの学ランを着て学校に来ていた。
クラス中の視線の的だったことには気づく由もなく、ついに放課後を迎えた。


モッチー(以下、モ)「で」

部室に入るなりモッチーは訝しむ様に先客を睨みつけた。

C君(以下、C)「ん?」

対するC君は惚けるように疑問符を浮かべる。

モ「『ん?』じゃなくて!なんでキムラがいるんだ!!」
C「まるでここにいちゃいけないみたいな言い方だな、ひどいぞモチ」
モ「いちゃいけないんだ!…もーいっぺん死ぬ?」

………
……

モ「はぁ、はぁ…なんで、死なないの…?(とかいいつつも実はちょっと楽しい)」

不満を露にした表情は、しかし疲れから上気しているせいか別の感情を抱いているともとれるような表情にも見える。

C「馬鹿めモチ!俺には再生能力が追加された!」

言うキムラはモッチーの足の下。何とも情けない姿である。
とそこに。

TAKA(以下、T)「うぃーっす」

WAWAWAとでも言わんばかりのタイミングでTAKA登場。

T「……」
モ「……」
C「……?」



ばふんっ

TAKAは見た。
モッチーの顔が一瞬にして夕陽の如く真っ赤に染まるのを。
そして謎の効果音とともに撃沈するのを。

解説/執筆者コメント

ようやく進行です。長い間書かれなかった分、力を入れて書いたつもりです。
えと、今回は結構話がごちゃごちゃしてます。そのうえ、登場人物がかなり少なくなってしまったため本当に「つなぎ」としての役割しかしてないと言えます。
タイトルを考えた当時の話のコンセプトは「決意」でしたが…全然関係ない内容になっちゃいました。
モッチーが「イヨちゃん」ではなく「モッチー」として生きる「決意」だということにでもしておいてください。
大佐が「誰に」漫研の援護を任されたのかは現状不明です。今後明らかにしていく予定ではありますが。
それでは次回をお楽しみに。

執筆者:かみ

最終更新:2009年10月16日 06:38