9-1

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#center(){[[<前88-5へ>8-5]]|[[次9-2へ>>9-2]]} ---- **魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」9-1 ---- ****105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:01:11.20 ID:o0eNIb.P ――湖の国、首都、『同盟』作戦本部 同盟職員「早馬の知らせですっ!  南部で、南部の諸国と中央の聖鍵遠征軍のあいだに  軍事衝突が発生したと!」 同盟職員娘「っ!」 留守部長「……出遅れたな」 同盟職員「はい」 同盟職員娘「間に合わなかったんですね……」 留守部長「鉄を抑える速度が遅かった。  静粛性を優先した結果でもあるし、  おそらく以前から備蓄をしていたんだろう……。  そうでなければ鉄の値段が揺れても、  反応が無いのがおかしすぎる」 同盟職員「これでは武器製造への圧力として機能していません」 同盟職員娘「このままでは、資金的な傷口が広がります。  撤退時期を探るべきでは?」 留守部長「……」 同盟職員「すみません。もうちょっと実態把握さえ早ければ」 留守部長「いや。これは開始時期の見切りの問題だった。  やはり商圏の拡大と共に目が行き届いていない部分が  広がりつつあるんだな」 がちゃり 青年商人「……いあいや。まだこれから、といきましょう」 ****107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:02:47.48 ID:o0eNIb.P 同盟職員「委員っ!」 留守部長「いつお戻りに?」 青年商人「たった今です。開門都市は任せてきました」 女魔法使い「……」ぽやー 同盟職員「えっと、その方は?」 青年商人「ああ。ここまで運んでくれたんです。  とびきりの食事と甘い物を用意してください」 女魔法使い「……」こくこく 青年商人「さて。……状況報告を」 同盟職員「たった今はいった情報ですが、  南部諸国と中央の遠征軍のあいだに  軍事衝突が発生した模様です。  ……中央の新型武器が使用されたとのこと」 青年商人「それがマスケットですか?」 女魔法使い「……そう」 青年商人「より詳しい状況をお願いしていいですかね?」 女魔法使い「……当初、南部諸王国は  白夜国を制圧した蒼魔族との戦闘を想定していた。  女騎士は司令官として鉄の国と白夜国の国境付近、  蔓穂ヶ原に約1万数千人をもって布陣。  蒼魔族約2万を迎撃、丸一日にわたる戦闘を耐えきる。  しかし、ここに後背から約4万の聖鍵遠征軍が強襲」 ****108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:04:57.52 ID:o0eNIb.P 女魔法使い「……聖鍵遠征軍は蒼魔族を中心としながらも、  ほぼ無差別に南部諸王国をも攻撃。  その攻撃の中心となったのが、聖鍵遠征軍の新兵装。  マスケット銃と、その部隊。   女騎士率いる南部諸王国軍は、当初蒼魔族に使用する  予定だった火炎の罠を持って蔓穂ヶ原を退却。  聖鍵遠征軍も約5時間の激突を充分と見たのか、  兵を引き上げ、蒼魔族から奪還した白夜王国を  本拠と定め、掃討の後、駐留。  ……現在は軍事的な緊張はあるものの、  一時的な平穏状態にある。   なお、この戦闘において、蒼魔族約2万はほぼ完全に壊滅。  南部諸王国軍は兵3500あまりを、  聖鍵遠征軍は6000名程度を失う。   ただし、これらを損耗率の観点から見ると、  南部諸王国軍は参加した兵の30%、全軍の12%。  聖鍵遠征軍においては会戦参加兵員の15%、  3%程度に過ぎないと推測される」 青年商人「では聖鍵遠征軍の現在規模は……」 女魔法使い「訓練度を度外視するならば20数万に達する」 青年商人「南部諸王国は、滅亡寸前ですか……」 ****109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:07:18.28 ID:o0eNIb.P 女魔法使い「そうとも言い切れない。理由は二つある。  まず、ひとつ目は聖鍵遠征軍は南部諸王国攻略よりも  魔界侵攻を優先事項として決定したようだから」 青年商人「ふむ。……たしかに教会が大きな発言権を持つ  聖鍵遠征軍ですから、その決定は理解できなくもないですが  南部諸王国軍を放置するというのも解せませんね」 女魔法使い「……これは推測だが、おそらく聖鍵遠征軍は  その強大な軍事力の1/3程度でも動員すれば南部の王国を  殲滅できる。つまり、挟撃などといった策略を恐れないで  済むという事情によるものと思われる」 同盟職員「20万の軍勢があればそれも可能なのか……」 青年商人「もう一点は?」 女魔法使い「開戦直後、南部三ヶ国通商同盟はその名称を破棄。  あらたに湖の国、梢の国、葦風の国、赤馬の国および  自由通商の独立都市七つを加え  『南部連合』の樹立を宣言した」 留守部長「とうとう、ですね」 青年商人「ここ以外にはないというタイミングです。  そう言うことでしたか。  20万の兵力動員は、確かに素晴らしい攻撃力を  教会勢力にもたらしましたが、その分、貴族や領主、  多くの国の地元は防御力の殆どを失っているはずだ。   もちろん、それらの国々全ては、聖光教会の指導下にあり  一斉に攻撃能力も防御能力も失う。そう言う前提で軍が  国元を離れたわけですが、『南部連合』の樹立は  その前提条件を大きく揺るがした」 ****110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:08:58.04 ID:o0eNIb.P 同盟職員娘「いま、聖鍵遠征軍が南部連合を攻撃した場合、  より自分たちの内側に近い国――たとえば、湖の国や  梢の国が、防衛軍不在の中央国家群を蹂躙するかも知れない。  農民を中心に編成された聖鍵遠征軍であっても、  支援物資や指揮系統は、やはり貴族の力が欠かせない。  政治的な均衡状態が訪れているのですね」 留守部長「どちら側も、相手を人質に取った形か……」 同盟職員「そうですね。聖鍵遠征軍は、  その強大な武力で南部連合の中枢部を人質に取っている。  南部連合は、その新しく広がった友邦で、無防備となった  中央諸国を人質に取っている」 青年商人「それだけじゃありませんけどね。  ……これは相当に複雑になってきました」くすっ 同盟職員娘「?」 青年商人「何から何まで相似形になってきましたね。  民衆に自由という武器を与えたゆえ、  民衆の支持を失うような政策をとれない南部連合。  民衆にマスケットという武器を与えたゆえに  民衆の怒りが自分に向いたら破滅する中央国家群……。   どちらも難しい舵取りになってきたようです。  我が『同盟』、『魔族会議』、『魔界』……」 同盟職員「勝てますか?」 青年商人「保養は出来ませんけれどね。  ですが、ただの力勝負では知恵を働かせる隙がない。  ある程度状況が複雑でないと、商人は勝機を見いだせません。  その意味ではまだチャンスは去っていない。  プレイヤーが多数参加した乱戦こそが商人の  活躍できる戦場です」 ****111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:14:21.64 ID:o0eNIb.P 同盟職員「しかし、現に軍事衝突は……」 青年商人「ええ、起きてしまっています。  だが、まだ手遅れと決まったわけではない。  向こうに専門のスタッフがいなければチャンスは広がる」 同盟職員「専門……?」 青年商人「物資調達の、ですよ。  ……中央の秘密製鉄工房の所在地は突き止めましたか?」 同盟職員「はい、それは。銅の国です。合計三カ所」 青年商人「良いでしょう。本部長、三カ所に出店の準備を」 留守部長「出店?」 青年商人「酒場と娼館ですよ。……耳目を忍び込ませないとね」 留守部長「了解です」にやっ 青年商人「聖鍵遠征軍に配置されているマスケットの量を  算定してください。  いくら何でも20万の兵に20万の  マスケットが配置されているとは思えない。  それにマスケットは機械です。  呼称もすれば、予備部品も必要のはず。  そして弾薬がいるんですよね?」 女魔法使い「……そう。運用中の補給が常に必要」 同盟職員「とはいえ、鉄鉱石は相当量の備蓄が  聖王国にあると推測されるんです……。  すでに一定数のマスケットが配備されている以上、  これ以上圧力を加えても意味がないのでは?」 ****113 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:16:36.08 ID:o0eNIb.P 青年商人「いいえ。意味はあります。相手は中央国家群。  その巨大さは武器ですが、弱点でもある。  末端の壊死が中央に認識されるまでのタイムラグがね」 同盟職員「え?」 青年商人「鉄製品の最終的な製造原価の内訳を  考えてください。そこから今回は攻めます」 同盟職員「……加工費?  しかし、加工費はすなわち人件費です。  今回の集約工場では、多くの職人を丸ごと抱えて、  殆ど監禁のような状況で生産のピッチを上げているはず」 青年商人「加工費はそれだけに留まりませんよ」 留守部長「そうかっ!」ぱしんっ 青年商人「ええ。木炭です。  製鉄を行なうためには鉄鉱石の二倍から三倍の量の  木炭を必要とする。石炭の採鉱権は?」 留守部長「そちらはぬかりなく押さえています」 青年商人「で、あれば風向きは良い。  聖王国周辺でもっとも木炭を多く算出する  梢の国は、南部連合に参入したとのこと。  であれば、木炭の量をコントロールしていくのは、  さほど困難な話ではない」 同盟職員娘「資金はどうします?」 青年商人「その中央諸国からいただくとしましょう。  白夜王国へと移動した20万人、  それを丸ごと食べさせるには大量の食料が必要です。  この食料を、海上輸送。自由貿易都市の港から、  白夜王国の港へと運び、その差益を得ます」 同盟職員「了解っ! 手配を行ないますっ」 ****114 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:17:51.58 ID:o0eNIb.P 青年商人「取りかかってください」 同盟職員娘「はいっ」 留守部長「承知っ」 たったったっ 青年商人「ふぅ。……間に合いますかね」 女魔法使い「……終わった?」 青年商人「ええ、なんとか」 女魔法使い「……」 青年商人「食い物ですか?」 女魔法使い こくり 青年商人「判りました、用意させましょう。  貴女の助けがなければ、手遅れになったかも知れない。  伝説の魔法使いに感謝しますよ」 女魔法使い「……こっちの都合」 青年商人「しかし転移魔法ですか……。  もうちょっと敷居が低ければ普及間違いないんですけどね」 女魔法使い「……もどる?」 青年商人「いえ、しばらくここで指揮を執るべきでしょう」 女魔法使い「……」じぃ 青年商人「開門都市ですか?  あっちには公女がいます。あれで聡い人ですから。  騙されて言いようにされるって事はないでしょう。  会計さんもいますしね」 女魔法使い「……相方?」 青年商人「よしてください。  ……そんなものじゃありませんよ。  取引相手ってのは、もっと神聖なものです」 ****123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:38:00.61 ID:o0eNIb.P ――冬越し村、魔王の屋敷、食堂 もそもそ 魔王「……」 勇者「……魔王、塩とって」 魔王「判った」とん ぱらぱら、もそもそ 勇者「……もぐもぐ」 魔王「なぁ、勇者」 勇者「ん?」 もそもそ 魔王「昨日の夜って何を食べただろう」 勇者「茹でた馬鈴薯に塩振ったのだろう?」 魔王「一昨日は?」 勇者「茹でた馬鈴薯に塩振ったの」 もそもそ 魔王「……」 勇者「……」 魔王「何でこんな事になっているのだっ!」うがぁ ****124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:39:13.51 ID:o0eNIb.P 勇者「だって仕方ないじゃん!  メイド長は魔王城の手入れをするために突発出張中だし、  メイド妹は冬の国へと料理修行中だしっ」 魔王「それにしたって三食茹で馬鈴薯はないと思う」 勇者「だってこれは魔王が作ったんだろう?」 魔王「それくらいしかまともに作れる気がしなかったのだ」 勇者「じゃぁ、納得して食うべきだ」 魔王「勇者が作った昼食だって同じだったではないか」 勇者「それしか作れないんだ仕方ないだろうっ」 もそもそ 魔王「……負ける」 勇者「は?」 魔王「このままでは負ける。確実に。魔界は滅びる」 勇者「何言ってるんだ?」 魔王「そんな予感がする」 勇者「……うわっ。暗いぞ、表情が」 ****128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 21:42:54.49 ID:o0eNIb.P もそもそ 魔王「そうだ」 勇者「どうした? もっぎゅもっぎゅ」 魔王「ジャムくらいならあるであろう?  あれを馬鈴薯に落とせばきっと甘くて美味しいはずだ!」 勇者「おい、早まるなっ」 ぽとっ。ぬりぬり。もしゃもしゃ 魔王「……負けた。魔界は滅びた。  勇者、私はもうダメだ。そして三千年の時が流れた」 勇者「早いよ、いくら何でもっ」 がたり 魔王「書を捨て街に出よう」 勇者「はぁ?」 魔王「私の職業は魔王なのだ」 勇者「どうしたの?」 魔王「正直煮詰まっているのだ」どよーん 勇者「判らないじゃないけれど」 魔王「どうにかしてくれないか、勇者」 勇者「どうにかしたいのは山々だけどさぁ。  ……はぁ。仕方ないなぁ」 ****149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:04:50.33 ID:o0eNIb.P ――冬の国、王宮、予算編成室 商人子弟「んぅ~。こいつぁ……」 従僕「商人さまぁ!」ぱたぱたっ 商人子弟「なかなかどうして、侮れないなぁ」 従僕「商人さまっ!!」 商人子弟「おう。どうしたわんこ」 従僕「わんこじゃありません!」 商人子弟「しっぽ揺れてるぞ?」 従僕「えっ? ――生えてるわけ無いじゃないですかっ」 商人子弟「で、どうしたんだ?」 従僕「そうでしたっ」えへん 商人子弟「?」 従僕「課題が出来ましたっ!」 商人子弟「課題?」 従僕「チーズですっ!」 商人子弟「なんだっけそれ?」 従僕「えーっと、チーズを安定して低価格に市場に  供給するために考えてきました!」 ****151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:06:30.55 ID:o0eNIb.P 商人子弟「おお。そう言えばそんな課題も  出してたな。よーし、わんこ。聞かせてくれ」 従僕「まず、チーズの作り方を勉強しましたっ」 商人子弟「ふむ、基本は大事だな」 従僕「簡単に云うと、チーズは乳製品です。  乳を暖めて、かき回し、これに触媒を加えます。  触媒って言うのは薊の花から作るんですって。  こうすると、固まり初めて水分が出てきます。  加熱しながら水分を飛ばして、  型に入れたら生チーズの完成です。  でも、ちゃんとしたチーズはこれからが本番で  この生チーズを塩水につけて、味を調えてから  冷暗所に数ヶ月から数年のあいだ保存して、  熟成って云うのをさせないと、完成しません……。  時間がかかるんですね。で、出来上がりです」 商人子弟「なかなか手間がかかるんだな」 従僕「ですです! でも美味しいですよね。  ぼく勉強ついでに一杯味見しました」にへらぁ 商人子弟「これ。ほっぺた緩んでるぞ!」 従僕「わわわっ」 商人子弟「で、基礎知識はそれでいいとして、  そこから何をどう考えたんだ?」 従僕「えっと、最初に考えたのは。  ミルクからチーズを作ると量が減っちゃうので  寂しいということです」 商人子弟「ふむ」 ****153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:08:43.16 ID:o0eNIb.P 商人子弟「でも、それは減って当たり前だろう?  説明に出てきたとおり、水分が抜けるんだから」 従僕「ええ、そうなんですけれど、  どれくらい減るかですよね。  いろいろ聞いてみたんですけれど、  ミルクを鍋に10杯用意すれば、  1杯分のチーズが出来るみたいです」 商人子弟「1/10か」 従僕「でも、市価で言うと、  チーズは同じ重さのミルクの30倍くらいの  値段で売れているんです。  1/10なら、値段は10倍で良いはずでしょう?」 商人子弟「ふぅむ、つまりその余剰部分は、  人件費とか、他の材料費とか何だろうな。運送費とか」 従僕「えーっと、それもあるんですけれど、  大きいのは熟成にかかる費用なんです」 商人子弟「熟成……」 従僕「つまり、チーズは冷暗所で熟成させなければ  ならないでしょう?  農家の人から見るとミルクを仕入れてチーズを作っても、  すぐにはお金にはならないんです。  お金になるのは、半年から二年ほどたったあと。  しかも、そのころまでチーズが無事かどうかは  判らないし、チーズの値段が上がっているか  下がっているかも判らないんです」 商人子弟「ふむ」 ****155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:11:46.49 ID:o0eNIb.P 従僕「ぼくの調べたところ、チーズを作るって言うのは、  ずいぶん、なんていえばいいのか……。  宝くじを買うようなものみたいなんです。  だから大きくいっぱい作るわけには、行かないみたいな」 商人子弟「ふむ。で?」 従僕「で、考えたのはこれです」 ごそごそ 商人子弟「ふむふむ」 従僕「この紙に書いたんですけれど……」 商人子弟「これは、保管所だな?」 従僕「です。……えっと、えっと。  塩水につけてあとは塾生を待つだけのチーズを、  “販売後の価格の6割”を基準に買い取るんです。  そうすれば、チーズを作った人はチーズを作った  次の週には現金を受け取ることが出来ますよね?」 商人子弟「そうなるな」 従僕「で、この保管所の人は、一定期間、チーズを  裏返したりして管理して、出荷時期が来たら販売するんです。  この保管所のお店にはいつでもチーズが並ぶことになるし、  材料調達や製造のための人手や道具、技術は必要ないです。  どちらかというと、管理業務に近いです」 ****158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:18:03.27 ID:o0eNIb.P 商人子弟「でも、管理の途中で虫食いが発生したりして  トラブルが起きたら、チーズはダメになっちゃうだろう?」 従僕「ですです。だから6割で買い取りなんです。  4割は、利益率と考えるのがおかしくて、  これは、危機とか、保険とか……」 商人子弟「リスク?」 従僕「です。そのりすくの、費用です。  ポイントは、数です。   つまり、何ヵ所かの保管所を作ってチーズを熟成のあいだ  保存することによって、そのりすくを低下させるんです。  一個一個のチーズはダメかも知れないし、  無事出来るかも知れないし、美味しくできるかも  知れないでしょ?   小さな農家のおじさんは、チーズが四つ続けて失敗したら  次にミルクを買うお金もなくなっちゃうんです。   でも、一杯チーズを扱っていれば、全体の1/10が  失敗しても、それは他の成功部分で吸収できますよね。  だから、ここではチーズを中間の価格で買い取って  売れた儲けで、平均化しようって言う考えなんです。   ……あの、変なこと言ってますか?」 商人子弟「いいや、いいぞ。続けて」 ****159 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:19:03.93 ID:o0eNIb.P 従僕「この買い取り価格は、いまとりあえずで6割って  決めてありますけれど、  これはこの数式にいままでの市場価格を代入した  だいたいの数字です。もし、チーズが沢山ダメになるなら  この買い取り価格の割合を下げればいいし、  成功率が高いのなら上げればいいですよね?  えと、これはですね……んっと」   商人子弟「代替え的な意味で、金利なんだな」 従僕「はいです! で、もっとあるんです。  今後はこの価格を元に、納入してくれる農家さんの  チーズのおいしさとか、売れ具合とか、  その年のチーズの多さとか少なさを入れて  細かく買い取り価格を分けてゆくと良いと思うんです」 商人子弟「ふむ、そのこころは?」にこり 従僕「だって、美味しいって褒めてもらえたら  それで“チーズ一等賞まーく”とかもらえたら  頑張ってもっと美味しいチーズを作るでしょう?」 商人子弟「よーし。良くできたぞ」くしゃくしゃ 従僕「ふふふーん」にこにこ 商人子弟「なかなか優秀になったじゃないか!」 従僕「ですか? ですか? ご褒美ですか♪」 商人子弟「ご褒美は次の課題だ」 従僕「……」ピシッ 商人子弟「次も難問。……そう。長靴だな」 ****175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:51:14.88 ID:o0eNIb.P ――開門都市、改築された酒場 ちりんちりーん♪ 勇者「おぃーっす」 魔王「おい。いいのか?」 勇者「いいんだ、気安い店なんだ」 有角娘「いらっしゃいませー♪」 酒場の主人「おー。これはこれは、黒騎士の旦那じゃ  ありやせんか。さぁさぁ、こっちへどうぞ!」 勇者「な? 顔なじみなんだよ」 有角娘「何を飲みますかー?」 魔王「あー」 勇者「冷たいエール二杯ね」  がやがやがや   魔王「わたし決めていないぞ」 勇者「これがお約束なの」 魔王「そうなのか。……わたしは、その。  この種の酒場には初めて入ったぞ」 勇者「そうなの?」 魔王「必要がなかったからな」 有角娘「おまちどうさまー!」 ドドンッ! ****176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:52:57.95 ID:o0eNIb.P 魔王「あ、ありがとう」 勇者「さぁ飲むかっ! 今日は飲みまくるぞ」 魔王「う、うん。代金は良いのか?」 勇者「あとでまとめて払うんだよ。  ……メイド長いないと、ほんっとに常識的なことは  判らないんだなぁ、魔王は」 魔王「すまん」 勇者「しょげるなよ。せっかく旨い物くいにきたんだし」 魔王「そうだな」 勇者「かんぱーい!」 魔王「かんぱい」  がやがやがや    人間商人「おーい! こっちに葡萄酒くれ! ビンで!」    魔族商人「それから羊の焼き串を二本だ!」 勇者「何食おうか?」魔王「わたしは何を食べればいいのだ?」きょときょと 勇者「おっちゃーん、何があるの?」 酒場の主人「なんでもあるが、今日はパンを焼いたぞ。  馬鈴薯もあるし、羊も潰したな。卵は新鮮なのがあって  キャベツの漬け物もあるし、ベーコンもソーセージもある。  ソーセージは最近人気の、呼称と軟骨の入ったヤツだ」 勇者「じゃぁ、それ。それから、チーズな。  んで、岩塩振った羊肉の軟らかいところと、  野菜の壺煮に、リンゴも」 ****179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:54:31.80 ID:o0eNIb.P 酒場の主人「あいよう! 順番は適当でいいよな」 勇者「任せるよ~」 魔王「な、なんだ。勇者、手慣れているではないか」 勇者「そりゃ勇者だもの。あちこち旅してるから」  がやがやがや 魔王「そうか……。混んでいるな」 勇者「ああ、この店は結構人気があるんだ。  開門都市が人間に攻略する前からの老舗だし、  商売は堅実で、料理の味は良いときてる」 酒場の主人「おうおう、褒めてくれてるじゃねぇか。  おらよぅ、まずはチーズと、ソーセージだ。  たっぷり盛っておいたからな」 魔王「ありがとう……」 勇者「何かしこまってるんだ?」 酒場の主人「はははっ! しかたあるめぇ!  きっと、このお嬢様はこういう下品な店には  慣れてねぇんだよ。この童貞小僧っ! がはははっ!  デートの店くらいは選びやがれってんだ!」 勇者「そんなに自分の店をこき下ろして  泣きたくならないのかよ、おやっさんはよっ」 酒場の主人「こきゃぁがれ。この店は、下品でいいんだよ。  街で働いているそう言う連中が酒と旨いメシを目当てに来る。  そう言う店なんだからよ」 ****181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 22:56:16.42 ID:o0eNIb.P 魔王「……」もぐもぐ 勇者「どうよ、最近」 酒場の主人「あー。いい感じだよ。  どうだい? 広くなったろ。区画整理とやらで  道が一本つぶれて、その分店を少し建てましたんだ。  金を借りることも出来たし、  最近じゃ、食料も安く入ってくるようになった。  人が増えてるんだな、日々の稼ぎも何とかだ」 勇者「そっか。なら良かったよ」 酒場の主人「黒騎士さまのお陰って感謝もしてるんだぜ?」 勇者「よせやい」 有角娘「お代わりいかがですかー?」 酒場の主人「だ、そうだ。どうだい?」 勇者「おい、次は何を飲む?」 魔王「えーっと、その」 有角娘「葡萄酒とかいかがですか?」 魔王「じゃぁ、それ」 勇者「二つ頼むよ」 有角娘「うけたまわりましたぁ♪」 酒場の主人「まあ、ゆっくりしていってくれ!  羊が焼けたら運んできてやるよっ」 ****184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:01:41.33 ID:o0eNIb.P  がやがやがや   人間商人「塩はどんなあんばいだ」   魔族商人「儲かるって言えば儲かるが、安定してきたし    以前のように金塊を運ぶって感じではないな」   紋様店主「いやいやいや、大変ですよ。あははは」   旅の傭兵「そう言うこともあるかも知れぬなぁ!」  がやがやがや 魔王「――」きょろきょろ 勇者「どうした? ぽやんとして」 魔王「え、あ」 勇者「?」 魔王「う、うん」 勇者「もしかして、不味かったか?」 魔王「違うぞ。このソーセージはすごく美味しい」 勇者「じゃぁ、こういう店は苦手か? ごめんな」 魔王「いやっ。そんなことはないっ。ただ、その。  はじめてで。こんな風に賑やかで、楽しそうで。  そうではないかと思っていたが、やはりわたしは  世間知らずなんだな」 勇者「そっか」 ****187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:03:44.98 ID:o0eNIb.P   獣人狩人「今年の毛皮はよく売れた。これで土産が買える」   人間商人「では碧玉なんてどうです?    気になる娘さんに上げれば、2人の仲も進むこと    間違いなしですよ。あるいは鉄の鍋などは?    足がついていてどんな所でも使えますしね」  がやがやがや 魔王「――」 勇者「ん?」 魔王「あれらは、何を話しているのだろう?」 勇者「いろーんなことだよ。  ほら、あそこにいる獣牙の男は森から毛皮を売りに来たんだ。  彼はよい年頃だから、そろそろ独り立ちの時期なんだろう。  剣の鞘もまだ新品同然だし、随分ほっとしているな。  多分1人で街に毛皮を売りに来たのは  初めてなんじゃないかな? 良い値段で売れたんだろうな。  俺はあんまり詳しくないけれど、彼はこれで儲けをもって  集落に帰れば、一人前だ。結婚も認められるようになる」 魔王「そうか。……わたしは獣牙の政治や経済規模や  人口統計や支配者には詳しい。  文化だって一通りは知っているつもりだ。  だからそうやって説明されている通過儀礼としての  行商だって知ってはいるけれど、見たのは初めてだ」 勇者「うん」 有角娘「野菜の壺煮ですよ~♪ どうぞ」 魔王「暖かそうだ」 有角娘「暖かくて美味しいですよ! 召し上がれ」にこっ ****188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:05:49.61 ID:o0eNIb.P 勇者「あんがとさんっ!」 有角娘「いえいえっ」 魔王「……」こくっ、こくっ 勇者「美味いなぁ! もきゅもきゅ」 魔王「うん」 勇者「?」 魔王「いや、美味しいな。……それに」 勇者「……」  がやがやがや   水竜娘「あははははっ。お上手です」   旅の詩人「いえいえ、真心のみですよ」 魔王「みんな、楽しそうだ」 勇者「そうだな」 魔王「顔を真っ赤に火照らせて、笑っている」 勇者「酒場だし、そんなもんだよ」 魔王「そうなのか? でも」 勇者「もぐもぐ」 魔王「なんだか、すごいなぁ……。  胸の内側が、思いであふれそうな気分だ」 勇者「もきゅもきゅ」 ****191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:08:23.23 ID:o0eNIb.P 酒場の主人「ほいきた! こんどは子羊の網焼き、  岩塩とハーブ、タマネギ添えだ。  ――ん、どうした?」 魔王「ご主人。ここの料理は美味しい」 勇者「へ?」 酒場の主人「おやおや、どうしたってんだ、  美人のお嬢さんに褒められちまったよ。こりゃまいるな!」 魔王「いや、嘘偽りのない気持ちだ」 勇者「そりゃ、茹で馬鈴薯10連発のあとならなー」 酒場の主人「ま、いいやな! よし、葡萄酒をもってこい!  この2人に一杯ずつ注ぐんだ!  この方は魔王様直属の黒騎士殿なんだぞ!  考えてみれば、童貞でこれはすごいことだ!」 勇者「やかましいわっ!」 酒場の主人「我が店の最も栄誉ある常連様だ。  なんたって、あの解放作戦を  この店で計画してくだすったんだからな!」 魔王「そうなのか?」 勇者「まぁ」 獣人狩人「そうなのか? 黒騎士殿なのか!?」 人間商人「なんてこったい!  こんなところでお目にかかるとは!」 魔族商人「魔王様は大丈夫なんですけぇ?  なんでも大会議でお倒れになったと聞きましたが」 紋様店主「おかげさまで、私たちは商いを続けさせて  もらってますよ! 魔王様には感謝してるんです」 ****196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:12:00.20 ID:o0eNIb.P 魔王「え、あ……。あっと」 勇者「……よし」 ガタン! 有角娘「え? え!?」 酒場の主人「ほほう!」 勇者「あー! 聞いてくれ諸君っ!!  確かに俺は魔王直属の騎士、魔界の剣、黒騎士だっ!  心配には及ばぬ。確かに狂賊の一矢に魔王は倒れたが  その傷もすっかり癒えて、今日も魔王城からこの魔界  全ての平安の繁栄を祈っている!!   この魔王直轄地、開門都市を見ろっ!  人間と魔族が互いに杯を干し、喧嘩をしながらも  仲良くやっている。様々なものを売り買いしてなっ!   おやじぃ!」 酒場の主人「あいよぅ!!」 勇者「全員に好きなものを注いでくれっ!  最初の一杯の上がりは俺が持つぜ!  さぁみんな、杯を掲げろっ! 魔王様に乾杯だ!  あの方は喧嘩は弱いが、皆を気にかけることでは  並ぶものがないぞ! その一杯が魔王の力となることを  願って杯を干してくれっ!」 有角娘「あわあわ」ぱたぱた「どうぞ、こっちもどうぞ」 「「我らが魔王に栄えあれ! この地に永久の平安あれっ」」 ****202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:23:36.96 ID:o0eNIb.P ――蔓穂ヶ原にほど近い廃砦 器用な少年「ほれ、これで、こうやって、こうよ」 ガチャリ! 貴族子弟「ほほう。見事です」 傭兵の生き残り「うまいもんだ」 器用な少年「へっへーん!」 貴族子弟「いや、誰にでも取り柄があるものですね」 傭兵の生き残り「ははは」 器用な少年「くそぅ! お前ら今に見てろよ」 貴族子弟「褒めているのに」 傭兵の生き残り「いいじゃねぇか。坊主。  暖かい服も買ってもらったし、  メシも食わせてもらってるんだろう」 器用な少年「これは正統な報酬ってヤツだ!」 貴族子弟「そうそう。報酬です。貸し借りはない」 器用な少年「なっ。こう言っている」 貴族子弟「ただし。故郷の敵討ちのチャンスを  与えられたという意味で、まともな道義心のある少年ならば  当然のように感謝をするでしょうがね」 器用な少年「……それは、してる」 ****203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:25:24.32 ID:o0eNIb.P 貴族子弟「よろしいでしょう。  しかし、はぁ……。こりゃしつけは大変だ」 器用な少年「はぁー!?」 貴族子弟「いえいえ、こちらのことですよ。少年」 傭兵の生き残り「俺たちも良いんですかい?  隊長もいなくなっちまったのに」 貴族子弟「あなた方の隊長はわたしの依頼を  一分の隙無く果たしてくれました。  今度はこちらが契約を守る番です」 傭兵の生き残り「ならありがたいけどな」 器用な少年「よー。あんちゃん。こんな場所で良いのかよ?」 貴族子弟「ええ、逆に私たちの国に運び込んだら  きっと発見されてしまいますよ。監視されていると  思って間違いないでしょう。敵も馬鹿じゃない。  それに……。ずいぶんな量でしたからね」 傭兵の生き残り「そうですな。へとへとだ」 器用な少年「ところで、あれはなんだったの?」 貴族子弟「硝石です」 傭兵の生き残り「……宝石にしては汚かったな」 器用な少年「ただのくず石じゃねぇの?」 貴族子弟「ただのくずでで終わって欲しいですね」 ****222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/09/30(水) 23:59:02.59 ID:o0eNIb.P ――開門都市近郊、虹の降る丘 さくっさくっ 魔王「……」 勇者「……」 魔王「……うー」 勇者「起きたか?」 魔王「……起きた」 勇者「大丈夫か? そろそろ転移できるけど」 魔王「ダメだ」 勇者「は?」 魔王「いま転移したら終わってしまう」 勇者「ええと」 魔王「魔王の威厳も乙女のイメージも勇者との関係も終わりだ」 勇者「またまたぁ」 魔王「ううっー。とにかく今はダメだ」 勇者「わぁったよ。降ろそうか?」 魔王「うん」 勇者「ほい。……平気か?」 ****223 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 00:00:15.32 ID:chcZF3wP 魔王「割とダメだ」 勇者「あー」 魔王「お水あるかな」 勇者「持たせてくれたけど。親父は手回しいいなぁ」 魔王「……こくん、こくんっ」 勇者「……」 魔王「ううう。頭がぐらぐらするぞ」 勇者「相当飲んだものな」 魔王「魔王にあるまじきていたらく。  今なら理解できそうだ。  三軸以外の戦闘機動というものを。  ああ。世界は他にも次元があるのだなぁ」 勇者「何を言っているんだ」 魔王「首から上がデフレで、首から下はインフレなんだ」 勇者「なんだか良く判らないけれど、  凄まじい状態だって事は判った」 魔王「勇者に掴まってないと、世界から落ちる」 勇者「思うぞんぶん掴まっててくれ」 魔王「助かる、勇者」 勇者「酔っぱらいの開放くらいだぞ、俺が感謝されるのって」 ****225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 00:01:11.17 ID:chcZF3wP 魔王「そんなことはないのになぁ」ぐてん 勇者「おい、夜露で濡れるぞ」 魔王「ひんやりして気持ちがよい」 勇者「まったく」 魔王「メイド長がいないから怒られないのだ」 勇者「そうだけどさ」 魔王「勇者勇者」 勇者「ん?」 ぷす 魔王「ふふふ。ひっかかった頬つっかい棒~」 勇者「子供か、魔王は」 魔王「やけに愉快な気分だ」 勇者「子供ではなく酔っぱらいだった」 魔王「だって美味しかった」 勇者「美味かったな」 魔王「それに、乾杯してもらえた」 勇者「うん、そうだな」 魔王「……」 勇者「……」 魔王「ふふふふふっ」 ****226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 00:02:29.12 ID:chcZF3wP 勇者「どうした、突然」 魔王「無敵感満タンだ!」 勇者「機嫌治ったのか? 煮詰まり治ったか?」 魔王「うん、どっかにいってしまった」 勇者「そりゃ良かった」 魔王「あとはもふもふで完璧だ」 勇者「それは今度な」 魔王「けち」 勇者「濡れちゃうだろう」 魔王「けちけち勇者」 勇者「やっぱ、酔っぱらいだな」 魔王「あれを見ろ、勇者っ」びしっ 勇者「そんなのに引っかかるかよ。そういうのは  百万回くらい爺に騙されてるんだっての」 魔王「いいからっ」 勇者「なんだってんだよ」 魔王「虹が、降っているよ?」 勇者「ああ……」 魔王「綺麗だろう?」にこり 勇者「ああ」 ****227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/10/01(木) 00:04:13.15 ID:chcZF3wP 魔王「やっぱり負けるのはダメらしい」 勇者「うん」 魔王「わたしはこれから、計画の練り直しだ。  マスケットを敵に与えてしまったのはわたしのミスだ。  本来であれば、わたしは責任をとるために、  もっと強い武器を南部連合に提供しなければいけないと思う。  でも、それをすれば、死者の数はもっともっと増えてしまう」 勇者「ああ」 魔王「でも、わたしのそんな躊躇い……。  火薬を広めて良いのか悪いのかという躊躇いが、  マスケットを敵に量産させる結果を招いてしまったんだな」 勇者「……うん、そうだな」 魔王「なんのことはない。勇者に偉そうに講釈しておきながら  一番覚悟が出来ていなかったのがわたしだったというわけだ」 勇者「……」 魔王「何度でも思い知る。  やはりわたしは1人じゃ何も出来ない。  この件に関しても、もっと早くに相談すべきだったんだ。  彼女であれば、それを用いても被害を増やさない方法を  思いついたかも知れないのに」 勇者「うん」 魔王「吹っ切れた。  わたしもこの件から逃げ回るのはやめよう。  女騎士と話し合うべき時期が、来たのだと思う」 #right(){{&link_up(ページトップへ)}} ---- #center(){[[<前88-5へ>8-5]]|[[次9-2へ>>9-2]]} ----

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