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http://www.affpri.or.jp/glossary/26g.htm
カナダ連邦政府を例にNPMの推進状況についてみることにする。カナダは1990年代大きな財政赤字に悩まされていた。1993年に成立した進歩保守党クレティエン党首が率いる政権が誕生したが,この政権が真っ先に取り組んだのが財政改革である。1994年から1996年に実施されたプログラム・レビューは,政府が何をどのように行うかについて再考するというもので,各省ごとに大幅な支出削減目標が示され,それに従ってプログラムの削減・見直し,さらに人員削減を実施するというものであった。農業食品省の場合,1992-1993年度の実支出額に対して1995-1996年度では41%の削減を目指し,実支出額を14%削減している(農業食品省「業績報告」1996年3月)。
カナダでは,その後は財政の好転ということもあってドラスティックな改革政策は採られていない。しかし,プログラムの実施責任者に求められるのは,「成果主義」(Results-Base)であり,政策評価もこの「成果主義」を支援するためのものである。各省庁に置かれた「評価部」(Review Branch)が評価するいわゆる内部評価であるが,プログラムの実施責任者であるマネジャーが評価に参加しているだけでなく,ステークホルダー,例えば農家の負債問題を扱うプログラムの場合は,銀行も評価作業に参加している。評価はプログラムが終了する前や次のステップに移るときに実施されている。わが国では評価結果の客観性が新聞記事をにぎわすことが多いが,評価の客観性よりも,成果を出すためにプログラムの実施責任者やステークホルダーを参加させ,問題点,次の施策の方向を検討しているのである。現政権寄りではないとみられている農業団体の一つもこのような評価作業に参加することを高く評価している。
最終更新:2006年06月03日 20:32