暴走菅政権の「TPP暴走」


「バスに乗り遅れるな」と俄かに騒がしくなった。バスは、他ならぬTPP参加のことだ。
昨年11月、横浜で開催されたAPECで、菅首相が突如「TPP参加」は、日本経済の発展に不可避の道であると言明した。しかも、財界もマスコミも、大賛成なのだ。
一体どうしたことなのか? 待って欲しい。この道は、いつかきた道、にならないか? 少なくとも、立ち止まって振り返る余裕が必要だ。

この道は20年前、日本経済の「国際化は必然」とマスコミが音頭をとり、経済界が一斉に海外市場に走り出した道で、挙句の果てが「バブル崩壊」。不動産市場が壊滅したのではなかったか?


この道は10年前、日本経済の「グローバル化は世界の潮流」に適うものと謳われ、世界市場での競争に打ち勝つために、下請いじめと海外への生産拠点移転。その結果は、商店街の「シャッター通り化」と国内の「格差社会」を生み出したのではなかったか?

そして今、「TPP」に乗り遅れれば、輸出依存経済の日本は、「世界市場で締め出される」とする恐怖心が煽られている。TPPの結果を冷静に予測する識者の声は小さい。そのような主張は、流れに棹を差すようなものなのか? それとも、マスコミが敢えて、そういう声を封じているのだろうか? 

しかし、小論は敢えて主張し、マスコミ、経済界に警告する。 「拙速のTPP参加」こそ、「農業も製造業も共倒れ」となり、日本の経済社会、つまり国体そのものが崩壊する危険が大である、と。

なぜ、そういう道になるのか?

事は極めて単純だ。 農産物も工業製品も、生産物価格は、その中の「人件費」の額で決定されることである。


金利、輸送費、関税、流通マージンなどの製品価格に占める間接経費は、製造原価の中の人件費に比べれば、現代ははるかに小さい。かつて製鉄業が、新設臨海製鉄所に集中されたのは、重量のある鉄鉱石や原料炭を最新臨海製鉄所の高炉に集中することが生産効率を上げ、輸送コストを下げる最大のメリットだとされた経済合理性からだった。それと同じ理屈で、化成品、電子・電気製品・自動車などが部品の組立て産業化した現代は、人件費の安い国に製造工場を作るのが自然の成り行きである。

日本からの部品輸出が新興国に「関税ゼロ」で輸入されれば、化成品、電子製品・電気製品・自動車製造などは、原価がそれだけ安くなるから、製造産業はますます雪崩を打って日本から人件費の安い新興国に歓迎されて流れてしまう。マスコミや経済界は、TPPに参加して「関税ゼロ」を輸入国から互恵的に受けないと、韓国などがTPPに参加して関税ゼロの国へ輸出すれば、輸出競争条件で負けて、日本のその国への製品輸出は激減すると主張する。が、そもそも、同じ性能の製品ならば人件費の高い日本で製造される前に、人件費が極端に安い韓国や中国など新興国で「関税ゼロ」で部品輸入され、組み立て製品化されて日本や欧米諸国へ輸出されて、日本製品が海外市場で締め出される。日本自体も、これらの国からの輸入品で溢れる結果になるだけである。

APEC開催直前、米中の歓心を買うかのごとく、菅首相が国民的な議論もないままに、突然の思いつきの如く、思慮を欠いて言い出し、マスコミがこぞって「賛意」を示していることに、大きな危険が潜んでいると言わざるを得ない。

尖閣衝突事件で紛糾した日中関係の悪化から、中国の胡錦濤国家主席が横浜APECに参加するかどうか直前まで不透明だったため、中国の歓心を買おうとしたのであろうか? 日本の工業製品製造現場も、中華人民共和国の支配下に組み入れようというのだろうか? 

普天間で失点続きの日米関係改善のため、米、牛肉など農産品輸出に関心のある米国の要求に迎合したのであろうか?

TPP参加は、米中の双方が喜ぶということは、裏を返せば、日本にとって不利益、日本の経済社会が根底から破壊され致命傷になるのではないだろうか。

最終更新:2011年01月25日 18:16