マスコミの財政赤字報道

1月27日、米国の格付け会社「スタンダート&プアーズ社」が、日本の国債の格付けを、「AA」から「AAマイナス」へ1段階、格付けを落とすとの発表が伝えられた。

日本の国債を含む公的債務が1000兆円に達するのを懸念しての格下げだが、NHKニュースでは、「改善努力如何でまた元の評価に戻す」という但し書付き、だという。異例の評価だ。菅政府の公的債務改善努力に期待をかけたような措置であるが、このスタンダード&プアーズの格下げ措置を見ると、

この格下げ情報が予め漏れていて、米国からの圧力を菅首相が斟酌して与謝野を突然経済財政大臣に任命したのではないか、とも憶測できるのである。


実際、昨年6月のカナダで開かれたサミットでは、その6月に鳩山前首相の辞任を受けてサミット出席したばかりの菅首相に対して、「日本の財政赤字の累増」に対して重大な関心があると表明されたことは記憶に新しい。しかし、就任早々でもあったからかなのか、それとも他意があったのか、日本に何らかの措置を求める議論は会議では起きなかった。

小論は、「もしG8サミットが日本を追いつめれば、中国に塩を贈るようなもの、菅首相の日本を一層中国に傾斜させる懸念があるため、日本の財政赤字を議論の対象にすることを控え、声明も出されなかったのではないか」、と推測したのだ。

11月のAPECで、菅首相が唐突にTPP参加を表明したことも、この米国筋の圧力に呼応したものだったのかも知れない。

通常国会の予算審議入りのタイミングとも符号する。 もしそうなら、

与謝野は、「政界渡り鳥」ならぬ、米国の意思を体現した「米国の代理人」だった

ということになる。
格下げニュースに、菅首相は、「そういうことに疎く、すぐコメントできない」と感想を述べたが、この首相の感想を批判する側も所詮同じレベルの認識度のはずで、批判する資格はないであろう。

国債が売られれば、いよいよ長期金利は上昇する。金利が1%上がれば、国債の元利払いの金額は、数兆円規模で膨らむであろう。税収が40兆円しかないので、国家予算が組めないリスクが現実のものとなる。政権与党を形成する亀井静香国民新党代表の持論、「国債を20兆円ほど発行して、公共事業に当てれば、景気はボーンと、いくらでも良くなる」なんていう出鱈目で、向う見ずの暴論に菅首相が与しているようでは、サミットに出る資格など初めからない。財政破綻の夕張市の現実が、日本全体に起きる。この国債格下げの現実を、政府もマスコミも、どう受け止めたのか? 野田財務大臣の直後の反応は、一民間格付け機関の評価であるから、政府としてのコメントを控える、と言うのが精一杯だった。 NHKのニュースも控えめの扱いだ。 敢えて平静を装っているのだろうか?

政治家もジャーナリズムも、「失われた20年」という他人事の表現で、1000兆円に積み上がった財政赤字の真の原因究明の努力をしない。


節操なく赤字国債を発行し続けて、国家債務の深刻な累積状態となったが、結局、情報源としてのマスコミが、表面化した事象を一過性で追うだけで、

継続的に真相を掘り下げて伝えようとしないその「報道慣性」によって形成されてきたところが大きい。この親(マスコミ)にして、この子(政府・国民)である。

最終更新:2011年02月02日 00:48
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