松茸大学 学園祭『マツフェス』
松茸大学の秋を象徴する祭典、「マツフェス」。
毎年10月末、学内全域を会場に三日間にわたって開催される。
テーマは年度ごとに異なり、過去には「菌と恋と経済学」「運動と祈り」「量子の森へ」など、理解できる者がいないにも関わらず人気を博している。
メインイベント
中央広場では、
薬学部による「松茸抽出香の調香ショー」が開催される。
ただし去年は香りの分子構造が自立行動を始め、一帯が“うっすら松茸味の霧”に包まれたため、今年から防護マスクの着用が義務化された。
文学部は「降霊朗読劇」を上演。観客の拍手が大きすぎると一部の照明が点かなくなるため、スタッフは静かに拍手する練習を行っている。
スポーツ健康学部は「マッスル盆踊り」で参加。掛け声の「祓えよ魂!」が毎年近隣の犬を怯えさせる。
経済経営学部は「松茸先物取引体験」を開催。参加者の半数はバーチャル松茸の価格暴落で破産するが、笑顔で「市場は生き物です」とコメントする。
理学部は「光る菌糸トンネル」を設営。通過者の一部が「自分の影が遅れて歩く」と報告しているが、広報は「演出の一部です」とだけ答えている。
模擬店・展示
模擬店の名物は「松茸型キャンディ」と「菌糸ホットドッグ」。
後者はどの学部が出しているか毎年不明で、販売ブースに“責任者不在”の札がかかっている。
文学部棟では「失われた卒論展」も開催。タイトルだけが残り本文がどこにも存在しない論文が展示され、訪れた人は静かに頷いて帰る。
夜のマツフェス
夜には「発酵ナイトライブ」が開催され、学生バンド「Spore 45」が恒例の曲『真理は泡立つ』を披露する。昨年は観客の合唱に共鳴して照明が発熱し、保健室が急遽“酸素バー”として運用された。最終日には松茸山の山頂で「発酵祈願花火」が打ち上げられる。打ち上げ音が「ポ
ンッ」ではなく「プシュー」と鳴るのが特徴で、一部の学生は“あれは気体の論文”と呼んでいる。
マツフェス最終日、講義棟の窓にだけ光る模様が浮かぶ。それを見た学生は口をそろえて言う
「来年のテーマ、もう決まったね」。
最終更新:2025年11月02日 03:18