ヴェーダからウパニシャッドへ

ヴェーダの多神教の世界にもやがて変化がきざしはじめる。
神々の威力に対してようやく疑いを抱くようになった人々は、
古来の神々を捨てて、諸神を統(す)べる最高の神を求め、
多様性を統一する一元的原理の探求へと向かう

リグ・ヴェーダ」の最も新しい層をなす第十巻に収められたいくつかの宇宙創造に関する詩篇には、一心論または汎神論(はんしんろん)の傾向があらわれ、さらに、万有の根源を唯一物に求める哲学的思索の展開も見られる。
例)

古来の神々にかわるべき再交信や原人を求めた詩人達は、
さらに純粋に抽象的な原理を宇宙の根源とする詩篇(第十巻一二九)をも生み出した。

  • 太初には日月も星辰(せいしん)もなく、空界も天もなく、有もなく無もなかった。
  • ただ唯一物が、闇に包まれて存在し、ひとり呼吸していた。
  • この唯一物が意欲をおこし、熱力(タバス)によって形あるものへと生まれ出てくるのである。

万有の根源たる一者が、苦行(タバス)の熱力によって万物を生み出すという考え方は、
後代に至るまで、インドの創造観の中心となる。

「神々は天地創造ののちに生まれたもの。
しからば創造の由来するもとを知る者はだれか」と問うこの詩篇は、
深い哲学的内容を他界拡張をもって展開したものである。
このような一元的原理の探求が、やがてウパニシャッドにおける哲学的思弁への道を開く。


ウパニシャッドに至る前段階


呪法の書である『アタルヴァ・ヴェーダ』も宇宙の根源に関する考察を含むが、こそでは人格神の影はうすれ、
時間(カーラ)・呼吸(ブラーナ)・支柱(スカンパ)などが最高者とみなされる。
それらと並んで、讃歌・祈祷句(きとうく)・呪句(じゅく)を意味する「ブラフマン」も賛美された。







最終更新:2007年07月10日 02:13
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