『ふたりは竜生九子!』


天と地の境目に、龍神在り。
天を駆け、雨と共に現れ、海に潜むモノ。並び立つ者も無き、偉大なる"アマ"の王。
故に、王は孤独であった
永の孤独を憂いた王は、自らの血を引く者に新たなる龍の誕生を夢見た
そして、地に棲む生き物との間に設けた九の龍の仔。龍の血を引く彼等はいずれも優れた才覚を顕わした
しかし彼等の中から龍に昇る者は終ぞ出ず。龍は悲嘆に暮れ、慟哭す

"嗚呼、竜生九子不成竜"(ああ、りゅうのこはりゅうならず)

◆あらすじ

主役格は紅美鈴饕喰楽まぐら
封印されていた『竜生九子』の力を宿した宝物が何者かの手により野に放たれてしまう。
竜生九子が解き放たれる光を目撃し現場に駆け付けたリムドラグーン=紅美鈴は、唯一凶暴化をまぬがれた竜生九子の末子、椒 図(ショウズ)に頼み込まれ、彼女と契約を交わす

竜生九子を再封印できるのは同じ竜生九子の力を以ってのみ。
第零話、まぐらに取り憑くも、美鈴の中華料理の味が気に入って共闘を申し出た竜生九子の五子、饕 餮(トウテツ)を仲間に加え、残り7体の彼女の姉たちを探し、封印する長い旅が始まる…



 ふたりは竜生九子!

〜Dragon bastards IX〜 



ジャムドラクレリクス
モチーフ…ドラキュラ(="龍の子"≒竜生九子)+レリクス(遺物、残骸)
竜生九子の力を宿した九つの宝物が綺石獣化したもの。分類はツクモ。本来は契約を交わしたあるじの命に従うが、綺石獣化した影響で凶暴化しており、逆に宿主の意識を塗りつぶして乗っ取ってしまう。

【登場人物/味方側】

☆ショウズドラクス
→竜生九子が九子、椒図(しょうず)の力を宿したドラクレリクス。
外見は長い鉄鎖の両端に巨大な錠前と巨大な鍵を付けた代物(本体)
/サザエの殻のような帽子を頭にかぶり全身にチェーンやベルトの付いたチャイナドレスを着た、ピンク髪の小柄な少女(分身体)。
【一人称…『ワタシ』、身長…低、趣味…知恵の輪(解けない)、特技…舌でさくらんぼの茎を結べる、イメージカラー…撫子色
鎖で囲って鍵を掛けることでその範囲内の空間を『閉じる』ことが可能。なお、美鈴はストーリー序盤では単に鎖分銅として使用していた
解放された九体のドラクレリクスの中で唯一凶暴化しておらず、偶然出くわした美鈴に姉たちの再封印に協力してくれるよう頼み込む。
椒 図(ショウズ)…竜生九子の九子。姿は巻貝に似て、閉じることを好む。縄張りに余所者が入るのを嫌い、そのため門の握り輪の付け根に彫られる

☆トウテツドラクス
→竜生九子が五子、饕餮(とうてつ)の力を宿したドラクレリクス。
外見は饕餮文が彫刻された円柱状の青銅の壺(本体)
/頭に羊の角を持ち、饕餮文の模様の青銅色のベストの上に羊毛製の白いロングマフラーを巻いた青磁色の髪と縦縞瞳孔の金目でギザ歯の少女(分身体)。
【一人称…『オレ』、身長…並、趣味…食べ歩き、特技…早食い+ゲテモノ食い、イメージカラー…青磁色
任意のものを吸い寄せる力と、吸い込んだものをなんでも消化する力を持つ。
開放されて最初に見つけた饕喰楽まぐらに憑依。町中のあらゆるものを喰い荒らしていたところを発見され、一旦は戦いになるも美鈴の作る中華料理の味が気に入って『毎食違った味の料理を食わせる or お前を喰わせる』ことを条件に共闘を申し出る
饕 餮(トウテツ)…竜生九子の五子。姿は人面の羊に似て、飲食を貪ることを好む。あらゆるものを喰い荒らす悪獣だが、逆に悪しきものも余さず喰らうことから、魔除けの紋様として食器や酒器に彫られる。
+ …とうてつの ようすが…!?
神話によっては中華世界の東西南北の果てに住む四柱の邪神・四凶の一角とされることも。
その際の性格は悪辣であり、強者には媚びるが弱者には容赦なく襲いかかり、身ぐるみ剥いだ上で食べてしまうという。
+ 『ふたりは竜生九子!』其の捌"饕餮喰毒盆/あくじゅうこどくをくらう"
『まさかお前、オレがおとなしく再封印されるとでも思ってたのか?』

前話の終幕後、ふたたび封印されるため祠に向かう…と見せかけて、まぐらとの契約を切り逃亡。
その後、姫虫百々世(ひめむしももよ)と契約を結び、美鈴+ショウズの前に現れる。
「トウテツ姉さん!?」「…"竜に成りたいとは思わない"のでは、なかったのですか?」
『それは間違ってないさ。だってよ…』

『オレ自身が竜に成ったら、喰えないだろう?竜の肉が、さあ…』

あらゆるモノを喰ってきた。有機物・無機物、海幸・山幸、二足・四足・多足・無足…しかし。
そういえばまだひとつ、たべたことのないものがあったな。

『りゅうのにくって、どんなあじがするのかな?』









+ 『ふたりは竜生九子!』其の玖"竜生九子不劣竜/りゅうのこたちはりゅうにおとらず"
『…ワタシはショウズ。閉じられた扉を守るもの。竜の血を引いてはいますが、ワタシは竜じゃありません。』

美鈴が止めるより早くショウズに喰らい付いたトウテツ。しかし次の瞬間彼女の顔に浮かんだのは驚愕、そして困惑の表情…

「なん…で…だ!?」

困惑に満ちたトウテツの声が辺りに響く

「オレが候補を降りたことで"竜生九子蠱毒厭魅"は成ったはず…なのになんでお前は、竜に成っていないんだ…ショウズ!?」



【登場人物/敵手側】

☆サンゲイドラクス
→竜生九子が八子、狻猊(さんげい)の力を宿したドラクレリクス。
外見は雁首が獅子の頭の形をした長キセル(本体)
/ライオンのたてがみめいた赤髪に金眼の大柄な少女(分身体)。
【一人称…『私』、身長…高、趣味…アロマ、特技…燻製肉作り、イメージカラー…蘇芳色
炎や煙を吸い込んで霧を吐く力を持つが、逆用して霧を吸って炎を吐くことも可能。
狻 猊(サンゲイ)…竜生九子の八子。姿は獅子に似て、炎や煙を好む。一日五百里を駆けて虎豹を喰らうという。炎や煙を好むことから香炉に彫られる。高僧の尊称『猊下』の由来でもある
+ 『ふたりは竜生九子!』其の壱"赤獅欲核炎/ししかくをのまんとほっす"
『邪魔をするな!その炎を喰って、私は竜に成るんだ!』

饕喰楽まぐらとトウテツを仲間にした直後、地霊区の沖ノ島原子力発電所に出現。
"地上で最も熱い炎"である核の炎を喰ってその力でまがい物ではない本物の竜に成るため発電所内に侵入を試みる
そこへ駆けつけた美鈴とまぐら。蒸気パイプを破壊して霧を発生させ、炎を吹いて攻撃するサンゲイ。しかし…
「けっ、味もそっけもねえや」『…!しまった、霧が…!?』
トウテツに霧を吸い込まれて炎が出せなくなり、慌てて肉弾戦へと切り替えるが…
「ヴィリーム・ドラグーン・クロスカウンター!」
美鈴の強烈なカウンターを受け気絶。そのまま再封印となった。
「サンゲイ姉さんがまだ宿主となる人間と契約する前で良かった…でも、他の姉さんたちはきっともう、今頃…」

残る竜生九子 あと 6体


☆ガイサイドラクス
→竜生九子が七子、睚眦(がいさい)の力を宿したドラクレリクス。
外見は柄頭に山犬の頭が彫り込まれた柄と鍔だけの剣(本体)
/銀髪に狼耳のある、目つき鋭い赤目のスレンダーな体型の少女(分身体)。
【一人称…『某(それがし)』、身長…やや低、趣味…剣舞、特技…まばたきを我慢する、イメージカラー…猩々緋
持ち主の血の中の鉄分を使い自在に形を変える紅い鋼の刀身を作り出す力を持つ。
睚 眦(ガイサイ)…竜生九子の七子。姿は頭は山犬、体は竜に似て、殺戮を好む。激しい気性に凄まじい眼力を持ち一度目を付けた相手を決して逃さない、反面情に厚く家族を大事にする一面もある。殺戮を好むことから処刑刀に彫られる。
+ 『ふたりは竜生九子!』其の弐"刃狼駆妖山/じんろうやまをかる"
『竜に成る、成らない……いや……まずは目の前の貴様を斬る……話はそれからだ……』

解放後、風神区天狗岳・深夜の妖山学園に落下。
『これは…刀の柄、か?しかし、何故こんなところに…』
拾った妖山学園の用務員、魂魄妖忌の意識を乗っ取り、そのまま遮るものを斬り倒しながら直進を開始する…
+ 『これは夢、か?…いや、どちらにしても…』
ガイサイドラクスによって塗り潰された意識の片隅、かすかに残る魂魄妖忌の意識は昔の夢を見ていた
『おゆう様!おゆう様、いずこに居られまするか!?』
それは妖忌が神隠しに遭う直前。時は戦国乱世。炎上する城。敵兵を斬り捨てながら必死に主君である"おゆうの方"の行方を追う。
魂魄妖忌は元々はこの時代の者ではない。遥か昔の幻想町。そこで剣の腕と忠義を買われ、領主の姫・おゆうの方の護衛を任されていた
しかし敵軍の襲撃により城は落城。敵兵に囲まれ絶体絶命のところを神隠しに遭い…


そこへ駆け付けた美鈴・まぐらの二人はそれを阻止しようとするが…
『良い使い手…良い剣士…これは当たり…だ』
魂魄妖忌の剣の腕と、変幻自在のガイサイの赤刃の前に苦戦を強いられる
「ヴィリーム・ドラグーン…」「トウグル・マグラ…」
「「…ダブル・ファング!」」
一発逆転を狙い繰り出した連携技も、盾のように変形した巨大な赤刃に阻まれてしまう。
力を使い果たし倒れる美鈴とまぐら。歩み寄る妖忌。刃が振り上げられ…
「待ってください!」
ショウズが立ちはだかる。血を使い過ぎて霞む妖忌の目にその"桜色の髪"が映り…
『……おゆうの方、さま…?』『…!?』
ガイサイの意に反して妖忌の手から剣が落ちる。
妖忌の頭にショウズの鎖が輪を描き錠前が閉じる。守れなかった無念と共に記憶に鍵が掛かる音がする…

残る竜生九子 あと 5体


☆ハカドラクス
→竜生九子が六子、覇下(はか)の力を宿したドラクレリクス。
外観は底に蚣蝮の透かし彫りがされた長柄の柄杓(本体)/
水色の髪に碧眼、青みを帯びた肌に手足に水掻きを持つ小柄な少女(分身体)。
【一人称…『わたし』、身長…低、趣味…水音のサンプリング、特技…天気予報、イメージカラー…瑠璃色
柄杓の頭を付けた流水を柄杓の底の向いた方角へと逆流させる能力を持つ。
覇 下(ハカ)…竜生九子の六子。姿は首長竜に似て、水を好む。天界でのやらかしの罰として地上へと落とされて千年間運河の水位監視役を務め、刑期が明ける頃には地上の民から河の守り神とされていたという。水を好むことから建物の雨樋や堤防に彫られる。
+ 『ふたりは竜生九子!』其の参"竜魚梦天逢/たつのこあまのがわをゆめみる"
『この滝を登って、わたしは竜に成る…もう一度天の川に戻るんだ…』

地霊区の回転寿司屋『赤河童寿司』の店主・河城みとりの手に渡る。
みとりの所有する小舟に乗り込んで、自らの能力で幻想港から海流を逆流させて大量の水塊とともに三途河を遡上、上流にある九天の滝を目指す…
「竜生九子随一のまともな人格者」というショウズの説明を真に受け、説得を試みた一行であったが…
『嫌よ!』
竜になって再び天の川に帰る、というハカの決意は予想以上に堅く、やむを得ず河を遡る小舟の上で戦うことになる。しかし…
(こいつ、こんなに強かったっけ?)
水の上で地の利は向こうにあるとはいえ、二人掛かりでもトウテツが驚くほど攻撃が当たらない。むしろ…
『この流れなら、こうすれば…ふふ♪』
「…!?まぐらさん、避けて!」「ちょっと!なんでこっちを蹴るんですの!?」
挟撃しようとすれば同士討ちを誘導され、連携しようとすれば割り込まれる。
「まるでこちらの攻撃の流れを全て読まれているような…」『正解。水と同じで、全てのものは流れに沿って動くの。もうこの辺で通してくれない?』
千年間水の流れを見続けてきたハカが後天的に得た能力。それは流れを読み、先を見通す能力だった
「奥の手を使います」
美鈴が取り出したのは料理酒の瓶。それを一気に飲み干す
「ンフフフフ〜♪」『!?』
炸裂するのは酔拳。寝転び、飛び跳ね、ひっくり返る。まったく規則性(ながれ)の見出せない動きに困惑するハカ。
酔いを覚まそうと大波を起こし美鈴に水を浴びせようとするが、その水飛沫は全てトウテツに吸い込まれてしまい…
『も、もう一度、天の川に…戻りたかった…』
美鈴の一撃が炸裂。気絶したハカはショウズによって再封印されたのであった

残る竜生九子 あと 4体



☆ヘイカンドラクス
→竜生九子が四子、狴犴(へいかん)の力を宿したドラクレリクス。
外観は一方の端に銅鏡を、反対側の端に鉄瓶を鎖で繋いだ天秤棒(本体)
/黒衣を着て眼鏡をかけた、黒のメッシュの入った黄色い髪に金色の目の中肉中背の少女(分身体)。
銅鏡に映した相手の罪業を測り、その深さ・重さに応じた辛苦を与える毒を鉄瓶に満たす力を持つ。
【一人称…『小官』、身長…並、趣味…裁判の傍聴、特技…グラム単位で手に持ったものの重さがわかる、イメージカラー…墨染色
狴 犴(ヘイカン)…竜生九子の四子。姿は年老いた虎に似て、裁くことを好む。裁判を好むことから裁判所の窓や牢獄の扉に彫られる。
+ 『ふたりは竜生九子!』其の肆"大虫測業欲/とらはごうのふかさをはかる"
『……われわれ竜生九子が"竜に成れなかった"のは、なぜだと思う?』

幻想町役場の冴えない公務員にして闇の仕事人の裏の顔を持つ中年親父、秋村まことの手に渡る。


『…痛苦(いた)いか?』『た、助けてくれ…』
『…辛苦(くるし)いか?』『ク、クルシイ、クルシイ…』
『……助かりたいか?』『た、頼ム…金なら…金ならいくらデも…』
『駄目だな。安心しろ、死ぬほど苦しいだけで死にはしないさ』『〜〜〜〜ッッ!!』
職権を濫用して私腹を肥やしていた悪役人を拉致し、毒を投与。私刑を執行していた所に美鈴・まぐらが到着。そのまま戦いに突入するが…
『貴様が来るのを待っていたぞ、トウテツ』「どういうこったよ?」
ヘイカンの鏡がトウテツを映す。同時に鉄瓶に収まらない量の泡立ったドス黒い毒液が溢れ出し、秋村まことの一太刀がそれを毒霧に変え霧散させた
「「「「〜〜〜〜ッッ!!〜〜〜〜ッッ!!」」」」
劇痛が四人の五臓六腑を駆け巡る。それを見下ろしながら話しつづけるヘイカン。
『我々竜生九子はそれぞれ生まれついての"業"を背負っている。小官なら"どんな小さな理不尽も看過できない"、ガイシなら"一度殺すと決めた相手を赦せない"という風に…』
『この業が原因で竜になれぬのだとしたら、逆に業の克服さえ出来れば…と、小官は考えた』
『トウテツよ、竜生九子で一番業も欲も深いお前の業欲から出来た毒を克服する。そして小官は竜に成るのだ…』「…なるほど」『…!?』
トウテツがふらふらと立ち上がった
「これがオレの欲望の味、か。この味ははじめてだった、感謝するぜヘイカン姉貴…だがな」

「この業欲も…この痛みも…全部オレのもんだ…一欠片だって他人に…くれてやるもんか…誰に断って横から掠め盗ろうとしてやがんだ、ああ?」
「この業欲あっての饕餮(オレ)だ、これを捨てちまった饕餮(オレ)はオレじゃねえ…もしこの業欲が原因でオレが竜に成れねえんだとしたら、オレは竜に成れなくて構わねえ!」

『………』
ヘイカンはしばらく呆然と立ち尽くしていたが、はっと我に帰ると能力を解除、ショウズによる再封印をおとなしく受け入れた
『"竜は成ろうとして成るものに非ず"か…』
最後に謎の独り言を残して…

残る竜生九子 あと3体


☆ホロウドラクス
→竜生九子が三子、蒲牢(ほろう)の力を宿したドラクレリクス。
外観は刀身部分が音叉状になった二本の短剣。片方の柄には蒲牢、もう一方の柄には鯨のレリーフがある(本体)
/一対の竜の角を生やした黒髪青眼、よく日に焼けた肌の長身な少女(分身体)。
【一人称…『あたし』、身長…高、趣味…ホエールウォッチング+サーフィン+一人カラオケ+その他多数、特技…大声で二十歩先のロウソクの火を消す、イメージカラー…水縹色
刀身を打ち鳴らして音を立てることで共振現象を起こして対象を『割る』(何度か対象に当ててチューニングを行う必要がある)。
蒲 牢(ホロウ)…竜生九子の三子。姿は竜に似て、ホエール吠えることを好む。海岸に住み、鯨を見ると興奮して割れ鐘のような叫び声を上げるとされる。吠えることを好むことから釣り鐘に鯨とワンセットで彫られる。
+ 『ふたりは竜生九子!』其の伍"蛟竜吼暁闇/みずちやみよにほえる
『まだだ!!まだ足りない!!こんな音量じゃ!!足りないんだよォォォォ!!!!』

永夜区にある料亭『夜雀亭』の女将、ミスティア・ローレライの手に渡る。


『Woooo!!』『Fuuuu!!』『足りない足りない!!もっと!!魂込めて!!叫べェェェェ!!』
幻想町各地でミスティアのギターを伴奏にゲリラライブを開催。歌声に魅了されたオーディエンスを引き連れて輝針区・スクナイアを占拠。ライブ会場を満員にして幻想町全域が揺れるようなシャウトを放ちはじめる
『yeahhhh!!』『Jyaoooo!!』『もっと!!もっとだ!!叫べ!!吠えろ!!突き抜けろォォ!!!』
ホロウが本体である音叉刀を打ち鳴らす。それはオーディエンスたちのバラバラの叫び声を纏め、一本の巨大な"龍声"へと調律していく…

"縺ゅ◆縺励◆縺。縺ッ縺薙%縺ォ縺?k(あたしたちはここにいる)!"
"縺薙▲縺。繧偵∩繧(こっちを見ろ)!"

『……!?』
余人にはただの巨大な生き物の叫びにしか聞こえぬ咆哮であったが、同じ竜生九子のトウテツとショウズにはたしかにその意味が理解できた。そして、その目的も。
「ホロウ姉さんは竜を呼ぼうとしてる…この幻想町に…だけど」

(たしかにあたしたち竜生九子は竜になれなかった)
(けどそれは昔の話だ、今のあたしたちなら、きっと竜に成る資格がある)
(だから親父を呼び出して問いただしてやるんだ…『これでもあたしたちに竜になる資格はないか?』って)

「姉さんには悪いけど、阻止しないと…!」
竜が姿を現すとき、そこには豪雨と嵐と雷を伴うという。町中に突如、そんなものが出現した日には…


スクナイア・野外音楽堂。すでに会場のテンションは最高潮、轟く竜声は天を揺らし、上空には雨雲が渦を巻いている
ステージ上でホロウと対峙する四人…
「いいか、ホロウ姉貴の能力は使うのに時間がかかる、"調律"される前に速攻で仕留め…」『悪いねトウテツ、今のあたしには"これ"があるんだ!』

遯?「ィ繧亥聖縺肴栢縺代m(突風よ、吹き抜けろ)

竜声が響き、突風に吹き飛ばされるトウテツたち。竜は鱗類三百六十種の長にして水と天候を支配する竜宮の主、その一声は豪雨を齎し、嵐を呼ぶ。

あたしたちはここにいる!こっちを見ろ!

竜声が響き、渦巻く雨雲が加速する。そして…
『…………えっ?』
一条の豪雷がホロウを打つ。黒焦げになりながらその一瞬、確かにホロウは聞いた。彼女たちの父親、竜の答えを…

竜とは生き様、成るのに資格が要るもんでも、ましてや成ろうと欲して成るもんでもねえ

陽に焼けた肌をさらに黒焦げにして、口からは煙を吹きながらホロウが倒れ込む。その口元にわずか、笑みをたたえながら…
『"竜は竜に成りたいとは思わない"か…』

残る竜生九子 あと 2体



☆チフンドラクス
→竜生九子が次子、螭吻(ちふん)の力を宿したドラクレリクス。
外観は黄金の金魚鉢に入った水晶玉(本体)
/金髪縦ロールに紫眼、ふとましいふくよかな体型の小柄な少女(分身体)。
【一人称…『私(わたくし)』、身長…低、趣味…天体観測+下民どもの観察、特技…利き酒、イメージカラー…山吹色
自身より下に位置する円錐状広範囲の水分を吸収して干からびさせる能力と、吸収した水分を一気に放出して大津波を起こす能力を持つ。
螭 吻(チフン)…竜生九子の次子。姿は鯱(シャチホコ)に似て、遠くを望むことを好む。体内に大量の水を蓄えるとされることから火難避けとして寺院や城閣の屋根に彫られる。
+ 『ふたりは竜生九子!』其の陸"金鯱眺下天/しゃちほこけてんをみおろす"
『ホーッホッホ!絶景ですわ!絶景ですわ!』

セレナカンパニーCEO・綿月豊姫の手に渡る。
セレネの所有する小型シャトルで衛星軌道の高みに登り、そこから美鈴たち四人に降伏勧告を挟み水分吸収攻撃を仕掛ける。


束の間の休息、門番亭で昼食中にその異変は起きた
「なんだか喉が渇きますね、水を…おや?」「…トウテツ姉さん?」「オレまだ飲んでねえよ!」
全身が渇いていく奇妙な感覚、そして見ている前でコップやスープの水が蒸発していく奇異な現象…
『ショウズ・トウテツ…それに契約者の御二方、私の声が聞こえますかしら?』
門番亭のテレビが勝手に点き、画面に高笑いする金髪縦ロールの少女の顔が映し出される
『私は竜生九子が第二子チフン…今空の遥か高みから貴女方を見ていますわ』
『率直に言いますわよ、降伏なさい。今回の攻撃は言わば宣戦布告、次は貴女方が干からびるまで徹底的にやりますわ』
『とは言え、かわいい妹たちに私もそこまでやるつもりはございません、貴女達にここまで届く攻撃手段は無いでしょう?降伏するのが賢明ですわよ!』

「で、どうしますの?美鈴さん」「確かに一方的に攻撃されては対抗出来ませんが…」「いや、手なら無いこともないぜ」
門番亭内で作戦会議を行う四人。悩む他の三人にトウテツがにやりと笑う…

『やる気のようですわね…ではせめて、苦しまないように一気に決めてさしあげますわ!』
港へと移動した一行に、今度はフルパワーのチフンの脱水攻撃が襲う
「…今です!」
海へと飛び込む四人。周囲の海水が削り取るように大粒の塩の結晶を残しながらごぼごぼと音立てて消え去っていく…
『逃しませんわ…うっぷ』
『少々、水分を吸収し過ぎましたわ…放出を、って、あら?』
吸収した水分を放出しようとしたチフン。しかし宇宙空間でそれをしようとすれば、当然…

"☆"三

全身塩塗れの四人が海上から見上げる空を、一条の流れ星が流れた…

残る竜生九子 あと 一体


☆ヒキドラクス
→竜生九子が長子、贔屓(ひき)の力を宿したドラクレリクス。
外観は贔屓の姿を模した全身鎧(本体)
/九姉妹中随一の大柄な体躯に、黄銅色の髪に翠眼の少女(分身体)…Bowsette?
【一人称…『吾輩』、身長…特大、趣味…鍛錬、特技…ピアノ、イメージカラー…鈍色
右手で殴った相手をダメージを与える代わりに"重さ"を奪い、左手で殴った相手に"重さ"を与える能力を持つ。
贔 屓(ヒキ)…竜生九子の長子。姿は亀に似て、重きを背負うを好む。怪力の持ち主であり、背中に山をも背負うことができるとされる。重きを背負うことを好むことから石柱の土台や建物の基盤に彫られる。
+ 『ふたりは竜生九子!』其の漆"剛亀揺宝山/おおがめやまをゆるがす"
『言うなればこれは蟲毒。竜生九子互いに喰らい合い、最後に生き残ったひとりが竜と成る』

上海アリス学園・青龍組の生徒で奇跡獣人の臥龍円めぐむを契約者とし、宝珠町・宝仙花岳採掘場の最深部で最後に一人勝ち残った妹の到来を待ち構えていた。

『…宝仙花岳に向かいなさい。ヒキ姉様が、そこで待っているはず、ですわ』

前回のラスト。幻想町沖合に氷漬けの状態で着水したチフンは再封印される前に四人に言伝てを残す。
チフンが封印を解かれた際に長子ヒキから言われた一言
"おそらく最後の一人になるのはお前かガイサイだろう、吾輩はここで待つ。最後の一人になったらここに来い…竜に成るのは誰か、決着を付けようではないか!"


『トウテツに…ショウズか。お前たちが勝ち残ってくるとは思わなかったぞ』
宝仙花岳の坑道最深部。そこにはヒキの本体の鎧をまとっためぐむと分身体をあらわしたドラクレリクスの長子ヒキの姿があった
『"蠱毒"というものを知っているか?』
蠱毒。壺の中に毒蟲を放り込み互いに共喰いさせる古代中国に端を発する呪術のひとつ。最後まで生き残った一匹は神霊となり、祀れば福徳をもたらし呪詛に用いれば必中必殺の毒となる、と伝えられる
『蟲の蠱毒は神を生む。では竜生九子の蠱毒なら、竜が生まれるのではないか?…と、吾輩は考えた』
『すべては竜に成るため。そのために妹達の封印を解き"竜に成る"という念を擦り込んで解放した…吾輩を解放した裏世界の神の力を借りてな』

『では始めようか、竜に成るのは貴様か、吾輩か…!』
ヒキの右腕が大地を打つ。それと同時に…
「「「「…!?」」」」
宝仙花岳が僅かに浮き上がる。ヒキの右腕を通じて"重さ"が山から吸い取られていく…!?

『憎みたければ憎め、怨みたければ怨むがよい…お前たちの怨念も業欲も魂魄も一切合切、吾輩が背負う』

『全てを背負い、吾輩は竜に成るのだ!』

山一つ分の超重量を吸収し、全身を軋ませながらヒキが吠える
そして…

「姉貴、オレは…」「ヒキ姉さん、ワタシは…」

「「"竜に成りたい"とは思わない」」『…!?』

"お見事、正解だ"
二人が声を合わせてヒキに答えたその時、天から何者かの声が響く
"そもそも生まれつき竜であったなら、竜に成りたがる必要もない。竜に成るという竜生九子生まれついての業欲を棄て去ることに成功したお前たちこそ、天に登り竜となる資格あり"「「…!?」」
二人の背中から力が溢れ出す…

『どういうことだ!?吾輩を竜にするのでは無かったのか!?』
"甘ったれるな"
"…竜に成り上がる機会を与える、と言っただけだ。実際、竜生九子全員に平等に機会はあったはずだが?"
ヒキの怒声に何者かの声が応える

"それに、お主にも機会はまだ残っているぞ?"『…どういうことだ?』
"現在、竜に成る資格を有するのは眼前のショウズ・トウテツの二人…だがまだ竜に成ったわけでは無い。あくまで『資格あり』というだけの話…で、あれば…あとは、解るな?"

『力で以て竜に成る資格を奪ってみせろ、と?…よかろう!元より吾輩はそのつもりよ!小賢しい謎掛けよりも殴り合い(こちら)の方がよほど吾輩の性に合うわ!』



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最終更新:2024年03月30日 08:25