モナー小説掲示板ログ保管庫@wiki(´∀`*)

BLESS YOU (4418)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
広い砂漠が続く中、ダットという小さな国がある。
ダットには少し変わった特徴があった。
それは「左右の瞳の色が異なる者が生まれやすいこと」という事だ。
まぁ、特に争いもなく、身分もあまり気にせずに人々は暮らしている。
あ、そうそう。もう一つあったな。
このあたりの地一帯の風習として、「洗礼名」を授かるという事。
いわゆる第二の名前みたいなものだ。
・・・でもな、俺にとってはそんなモンどうでもいい。
俺がここに来た理由はダットのお宝だ。
この国のどこかにすごい秘宝がある情報を聞いたからさ。
嘘だろうが本当だろうが、金目の物ぐらいあるだろう。
この盗賊、ギーコッド・ハーニヤーンの手にかかればな!!


改めて紹介しよう。彼の名はギーコッド・ハーニヤーン。通称『ギコ』だ。
出身も知らなければ親も知らない、生まれながらの盗賊である。
ギコがダットを目指して何日経っただろうか。
やっとダットの城と思われる建物が見えてきた。
「そろそろか・・・、一体どんな奴らがいるんだろうか・・・」
ダットについての資料が少なかった為、ギコ自信も詳しく知る事ができなかったのだ。
「こんな砂漠に慣れてない奴が来てたら今頃死んでるな」
一人で愚痴を言いながらダットを目指した。

運命の歯車が回り出す『時』がこの数分後に起きる事を知らずに・・・。


グオオォォォ・・・
「うぉっ!?何だ、敵か?」
驚いてすぐさま剣を取り出すギコ。
ドォォン!!
「うわぁっ!!こいつ、さっきも出てきやがった奴だな!」
砂でできた敵だ。砂がない所が三カ所あった。恐らく目と口だろう。
その敵はギコの何倍もの大きさがあった。遠くから見たらギコが豆の様に見えてしまうほどだ。
「誰が豆だ!どっかの奴と一緒にしないでくれ!」
そんな事を言っていたギコに、突如現れた砂の触手が襲いかかった。
「危ねっ!アホな事言ってる場合じゃなかったぜ!そらよっ!!」
身軽な体でギコは攻撃を避け、敵に斬りかかった。
ズパァッ!
砂でできていたせいか、敵は真っ二つに斬れた。
「いや~、こういう奴は結構厄介だぜ・・・」
そう言い、剣を素早くしまった。が、
「さてと・・・? うわっ、しまったぁ!!」
砂の触手に捕まってしまった。
「くそ~、困ったな。アレ使うのも効くかどうか分かんねぇし・・・」
両腕を動かそうとしたが、あまりにも力が強かった為、身動きがとれなかった。
「はぁ、絶体絶命ってヤツかよ・・・」
敵を睨みつつ、ギコは苦笑した。

『ファイラ!!』
ドーーンッ!!
どこからか声がし、無数の火の弾が飛んできた。
「あちっ!魔法か・・・!?」
触手から解放されたギコは声のした方を向いた。
敵はもう出現しないようだ。
「ゴメン当たった!?キミ、大丈夫?」
「あぁ、俺は平気だが・・・助けてくれてありがとな」
ギコは珍しい物を見るような目で彼を見た。
「(魔法使いにしては変わった格好してるな・・・)」


「シィリス様・・・」
「えぇ、帰ってきたようね・・・」
「やはり先ほどの炎の魔法、昔より強くなられたようじゃな」
「その様ですね」
所変わって、ここはダット城の王室。
大きな窓から三人は外を見ていた。
ミニスター(大臣)のフゥ・ウンヒョン。
セージ(賢者)のシーラ・ネィ・ヨハン。
そして、プリンセス(皇女)のシィ・ダット・アマデウス。
「・・・きっと、立派なお姿で帰還されることでしょう」
と、フーン大臣。
「そうじゃな。三年も修行すれば、わしよりも魔力が強くなっているだろう」
愛弟子の帰りを誰よりも待っていた老賢者シラネーヨ。
「・・・じぃ、フーン大臣」
外を見たままシィリスは二人にこう言った。
「城の皆にこう伝えて。モナーさんを暖かく出迎える準備を」
「・・・分かりました」


「紹介が遅れたね。ボクはモナー。ダットのウィザード(宮廷魔道師)なんだ」
「え、ダット!?俺もそこに行く途中だったんだ!」
ギコはモナーの手を掴んでこう言った。
「俺はギコ!頼む!ダットの案内してくれ!」
そう、彼はなんといっても位が高い。きっと城に関係ある者だろう、とギコは考えた。
すると、モナーはあっさりとこう答えた。
「うん。なんていうか・・・君の戦いっぷりを見たら皆に紹介したくなっちゃってて」
随分と単純な性格のようだ。
「そ、そうか。アリガトな・・・」
こうしてギコはモナーと共にダットへ向かった。


「ここが・・・砂漠の国ダットか・・・」
想像以上に物が発達した国だった。
ロボットや人々が助け合い、空には物を運ぶ飛行機らしき機械が飛んでいたり・・・。
砂漠のど真ん中なのに噴水や小さな川があり、畑もちゃんとある。
誰がどう見ても豊かな国にしか見えないほどだった。
「変わってないな~」
モナーは懐かしむように独り言を言っていた。
すると、一人のカマナー(庶民)がモナーを見て、こう叫んだ。
「モナー様!?モナー様が帰って来たぞ!!!」
「モナー・・・様?」
ギコは目を点にして、モナーを見た。
相変わらずニコニコした表情だった。


庶民の波に押され、ギコごと城に入ってしまった。
流石にもう庶民はいない。
「お帰りモナーはん!」
「よかった、相変わらず元気そうだな」
「全ク、オ前ドコモ変ワッテナイナ!」
「ただいま。無事に帰ってきたよ」
モナーは城の皆に早速ギコを紹介した。
「この人はギコ。さっき砂のモンスターと勇敢に戦ったすごく強い人だよ」
「え、おっおい!そんな・・・」
すごく強い、と言われ、焦るギコ。
「へぇー。あなた旅の方?」
「まぁ、そんな感じだな」
城の中で盗賊だなんて流石にギコは言えなかった。
「そっか。アタシはガナー!このモナーお兄ちゃんの妹!まだクレリック(聖職者)だけどね!」
「い、妹!?」
確かによく見たらモナーと似ていた。
「俺はフサ。つい最近パラディン(騎士団長)になったんだ。よろしく」
「パラディン!?おめでとうフサ!」
「とうとうモナーより位が高くなってしまったよ」
フサが恥ずかしがって言った。
「アヒャ!俺、ツー。コレデモ最年少ノプリースト(司祭)ダカラナ」
「最年少、か。何歳なんだ?」
「女ニソウイウノハ失礼ダゼ?19ダ」
「おっと、悪かった」
ギコは気付かなかったらしい。
「ウチはノー。ダット城のメイド(召使い)やってるんや。よろしゅうな」
「あぁ、よろしく・・・」
多分、他国から来た者だろうとギコは考えた。
「もう遅いから今日は泊まっていきなよ。明日ダットの案内してあげるから」
笑顔でモナーはギコに言った。
「そ、そうか。宿屋探さないとな・・・」
「何言ってるの?この城に泊まるのよ!ねっ、皆?」
ガナーの問いに皆が頷いた。
「いいのかよ?こんな身分の低い奴を城に入れてもらうなんて・・・」
「イインダヨ!セッカクモナーガ呼ンダ客人ナンダカラナ!」
「ゆっくり休むとええよー」
「それに、こんな体験、一生できないしな」
この城の者は皆とても優しかった。
「じゃあ早速ギコはんの部屋を用意してき・・・!」
ノーの動きが止まった。
2階から二人の人影。
「お帰り、モナー。無事でなによりだよ」
「モ・ナンディ・オーマー、只今帰国しました。フーン大臣」
互いに笑顔を見せて挨拶した。
その時初めてギコは感じた。
「(そうか。モナーっていう名前があの『洗礼名』だったのか・・・)」
すると、フーンはギコの方を見て、顔の表情を変えずにこう言った。
「ギコ・・・だったか。何も無いが、ダットでのんびりくつろいでくれ」
「め、滅相もない!お、お言葉に甘えて休ませてもらいます!!」
つい緊張したせいか、ギコはおかしな言葉遣いになってしまった。
「モナー、シィリス様がお呼びだ。シラネーヨさんも待っている」
「分かりました。行きましょう」
モナーはギコに手を振って、フーンの所へ行った。
ただ、フーンの隣にいた男は、ギコの方を見つめたまま動かない。
フーンは彼の肩を叩き、モナーと三人でシィリスのもとへ行った。
「・・・アイツ、気ヲ付ケナ」
「? 大臣の事か?」
「アァ。ドウモ気ニ入ラネェンダヨ」
「何でだ?」
「噂なんやけど・・・大臣は他国のスパイやないかっていう話があるんや」
「他国の・・・スパイ?」


夜、大きな窓から三日月を眺めた。
ギコは豪華なベッドに座る。眠れないのだ。
「(まさか、こんなにあっさりと城に入れるとはな)」
まるで複雑な気持ちだ。
これは何かの罠じゃないか。とも考えたが、あの皆の笑顔を思うと、そうは感じられない。
「こんな気持ちは生まれて初めてだな・・・」
『そうかもね』
「!?」
とっさに扉の方を向く。
いつの間にか誰かが部屋に入っているのだ。
ギコの部屋は、電気を消していたので、月の光しか当てにならないのだ。
「お、お前・・・大臣と一緒にいた・・・」
「へぇ、覚えてたの」
「一番印象に残ってるからな」
確かにあれだけ見つめられていれば、誰もが印象に残るだろう。
「俺、ネイノード・インジャー。洗礼名はネーノ」
「思ったんだが、随分と名前を短くするんだな。ダットの国民は」
「ギーコッド・ハーニヤーンも短くしてるんじゃネーノ。ギコって」
「愛称みたいなものだ」
「洗礼名も同じ様なモンじゃネーノ」
淡々と答えていくネーノ。
「・・・で、何しに来たんだ?」
ギコは本題に戻そうとした。
「んー、ちょっと話があって。なんて言うか・・・」

「『お宝目当てにダットへ来た自称大盗賊』なんて事分かってるからって事」

「!!」
ギコは心底から驚いた。
「プッ・・・そんなに驚かなくてもいいんじゃネーノ?」
驚いたギコに笑いをこらえながら言った。
「いつ・・・分かった?っていうか何か余計な事までも・・・」
「あれっ、自分でも分かってるんじゃネーノ?」
そう、あの時。
見つめられてた時だ。
「そうか・・・。俺の心を読んでたんだな」
「悪かったな、あの時は。メイジ(魔道師)だからああしないと心読めないんじゃネーノ」
「メイジ・・・なるほどな」
「ギコは盗賊だからシーフ、か」
真面目な顔のギコに対し、ネーノはふざけた様な振る舞いをした。
「ちなみに・・・モナーさんもフーンも皆、知ってるから」
「なっ・・・!?」
「おっと、心配ご無用じゃネーノ。あんたを追放するとか、罰するとか、そんなの全くしないから」
なんという国だろうか。
普通だったらもう殺されているかもしれないのに、そんな対処もしない国があったなんて。
ギコは唖然するしかなかった。
この生きてきた18年間、正体がバレてこんな事になったのは初めてだ。
ネーノは開いていた窓に腰掛け、月を見る。
「約束通り、明日ダットを案内するんじゃネーノ?」
「・・・もう俺には、そんな必要はないはずだぞ?」
「何だ、帰るの?」
「もうここに用は無い」
「つまんない・・・」
「ハァ!?どういう事だよ?」
「だってさぁ」
ギコは話疲れたのか、ベッドに寝転がる。
ネーノは外を見たままギコの方を見ない。
「あんた、帰る所ないんじゃネーノ?ここにいれば?」
「ふざけるなっ!!」
ギコは大声を上げた。
「しっ!他の奴らが起きたらどうするんじゃネーノ!?」
「・・・・・」
「唐突に言った俺も悪かったけどー・・・」
「・・・どういう事だ、ネーノ」
「まあまあ、落ち着くんじゃネーノ・・・」
流石のネーノもこればかりは驚いた。
「・・・隠し事はもうしなくていいんだ、ギコ」
人が変わったかの様に真面目な表情になった。
「お前欲しかったんだろ?仲間っていうのを」
「な、何の話だy」
「嘘つくな」
「ついてねぇっ!」
ギコは頭を横に降り続ける。
「昔から一人で生きてきたんだ。・・・仲間なんざ知るかよ!」
「・・・あのな」
ネーノのつり上がった細い目が開いた。
「自分に嘘をついてると、一生後悔するはめになるぞ」
「っ!?」
綺麗な水色の目だ。
その瞳には、はっきりと孤独なシーフの姿が写っていた。
「俺もそうだった。ガキの頃、村から追い出された原因がそれだったからな」
「・・・やっぱりそうか。お前、ダットの奴じゃねぇ。『ラムダ族』だろ?」
「ごもっとも」
素直に認めた。
ラムダ族はダットからは遠く離れた森に住む、魔力が強い種族である。
特徴としては耳が微妙に長く、垂れ下がっている。
「話を戻す。お前が何を言おうと俺は全て分かってるんだ。無理に話さなくていいが」
「・・・・・」
ギコはあえて何も言わなかった。
別に眠かった訳でもないが、目を瞑ってネーノの話をじっと聞いていた。
「あと・・・モナーさんの事だけど」
「・・・あぁ、そうだよ」

「昔死んだ兄貴に似ていたんだ」


~続く~

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー