モナー小説掲示板ログ保管庫@wiki(´∀`*)

【UNDER NIGHTMARE CITY】 (見切り人)

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
―――――ココハドコデスカ?

――――――ナゼ、ダレモイナイノデスカ?

―――――ワタシハココヲマモルベキモノ

――――――イツデモミナサントイッショノソンザイノハズナノニ

―――――ナゼ、ワタシハヒトリナノデスカ?

―――――――ワタシモミナサントイッショニイタイノニ・・・




――――なら、僕が貴方と一緒にいます。これからも、いつまでもずっと・・・・・・・・







「NIGHTMARE CITY 事件」

それはあの、世間を騒がせた極秘プロジェクト事件のことである。

プロジェクト参加者はみな子供であったこともあり、問題は世界中に知れわたられた。

そして政府は実験に関する事を公開し、今後は研究についての事の大半を中断すると発表をした。

あれから10年、人々からはその事件の事をすっかり忘れられ去られたように時は流れた。

全ての謎を解ききらずに、これから起こる事も知らずにゆっくりと・・・

そして今回、特別許可で行われる計画は後にこう呼ばれる事となった・・・・・





悪夢都市の下、【UNDER NIGHTMARE CITY】 と・・・




――――――――――――――STORY 1 [DREAM CITY] 計画―――――――――――――



[会社内部 廊下]


「いよいよ今日ですね」

「ああ、そうだよな。いよいよ計画が実行されるから今からもうわくわくしてるぜ」

2人の若者が話している。共に歳は十五歳前後だろうか。

一人はしっかりとした服装で、顔にはいつも笑みが浮かんでいる銀髪の青年だった。

そしてもう一人は渋谷あたりのストリートファッションと言った感じの服装で、髪は無造作ヘアーみたいであった。



「ところで、何でこの計画に参加しようと思ったんだ? タカラ」
  
「そう言うサコツさんもなぜ出ようとしたんですか?」

タカラという名の人物がそのまま聞き返した。

「いや、もうやっぱりアレだよ。なにせ仮想世界にいけるんだぜ!」

サコツは少し興奮気味に話していた。

「ゲームとかアニメみたいな事が実際に自分で体感できる事が俺の夢だったからよ」
 
「そうですか、なるほど・・・ サコツさんらしい回答ですね」
 
今のタカラが言った言葉が気に入らなかったのか、サコツは頭にきた様だ。

そしてその怒りをタカラに十倍返しで押し付けた。

「なんだよ!その人を見透かしたような言い方は!!いいだろ別に!!#」

「い、いや、すいません。ぼくの考えていた事との差が激しかったものですから」
  
「ほう、じゃあタカラの行く理由は何なんだ?そこまで言うからにはよっぽどたいそうな理由なんだろうな?」

サコツは自分に言われた事の腹立たしさとタカラの行く理由の知りたさで少し声を強調していた。



その事にタカラは不味いと思い、弁解をしようとした。

「いや、何もサコツさんを侮辱したつもりではないんですよ? 僕はただ・・・」

タカラがそう言いかけようとしたが、サコツにはその話は聞こえていなかったようだ。

「だから、どうしてこの計画に参加したんだ??」

サコツはもう言い訳はどうでもいいと言わんばかりであった。

「うーん・・・・・・」

タカラは、少しの間考えて腕を組んで考えていた。

そして何かひらめいたのか、サコツにこう言った。

「分かりましたよ。でも、この理由はあまり真に受けないで下さいよ?」

タカラの少し冗談っぽい話し方にサコツは少し考えたが、

「別にいいぜ。で、何なんだ? 行きたい理由は」

と返事を返した。

「僕が計画に参加した理由はですね・・・」

サコツはどんな理由があるかと心の中で少し期待をしていた。


しかし、タカラの回答がこの期待を簡単に打ち破る結果となってしまった。


「・・自分がこの計画になんとなく興味を持ったからですね」

「・・・・・・ ハァ?」

この意外な回答にサコツは一瞬タカラの言っている事が冗談のように聞こえた。

自分の考えていた事と、1ミリも合っていなかったのだから・・・ ;


「いや、だから僕がこの計画に興味を持ったから・・・」

「言いたいことはそんな事じゃない!」

サコツの感情はあきれを通り越して怒りに変わっていた。

当然だろう。全く自分の予想しなかった訳の分からない答えが返ってきたのだから。

「何なんだよ! 真に受けるなとか言っておきながらその期待ハズレな答えは!!」

「い、いや、ですが・・・」

「言い訳無用!!」

そう言って、サコツはタカラを足で蹴り飛ばした。


 ――ドカッ!


思いっきりしたのか、タカラはそのままバランスを崩して床に倒れこんでしまった。

「いたたた・・・ す、すいません。まさかこれほどまでに怒るとは思ってなくて・・・」

「当たり前だ! ったく、人のことも言えないじゃないか・・・」

もし他にこの廊下に人がいたなら、二人がいるのがすぐ分かっただろう。

しかし二人は、廊下には自分達しかいないことが知っていたようなのか、そんな調子で会話を続けていた・・・・・・



しかし、サコツの答えはあながち間違っていなかったかも知れない。

この事件の真実が、そう告げるのだから・・・




―――やっぱり、まだ言えません。あの事が本当かどうかを確かめるまでは・・・





[会社内部 社員研究室]



 ――ガチャッ



ある一人の男が関係者以外立ち入り禁止の研究室に入ってきた。

その男が科学者のような白衣を着ていることからしてどうやら会社の研究員らしい。

「やれやれ、やっと見つけたよ。長年ここで勤務をしているけど、いまだに部屋が覚えられないな」

「まったく、まだ覚えられねーのかよ。俺はもう三日で全部覚えちまったんだぞ」

中には先客がいた。その男も白衣を着ていることから、同じく研究員のようだ。

そしてその男は先に部屋に来ていた若い男に向かって挨拶をした。
  
「やあ、アソパソマソ君、調子はどうだい?」
 
「んー、まあ、今のところはな。リーマン」

リーマンと言う男があいさつをすると、てきとうな返事が返ってきた。

そしてその男はとなりに座り、一息ついて話しをした。



「今回の計画は、この会社にとってとても重要なプロジェクトらしいからね」

「ああ、そうだな」

「なにしろ今回の計画の代表に私たちは選ばれたのだからね。光栄なことだよ」

リーマンは自分の胸の希望をふくらませるように話していた。

しかしアソパソマソはリーマンとは逆に、今回の仕事に対する愚痴を言い始めたのである。

「だけどよ、機密プロジェクトやら知らねーけどよ、なんで俺たち二人『だけ』が計画に参加しなくちゃなんねーんだよ」

と、こんな事を言ったのだ。なぜこんな事を言ったのか?


その訳は、今回の計画の指導をまかされた研究員はリーマンとアソパソマソだけだったのだ。


「つーか、フツーに考えても少なすぎるだろ」
 
「まあまあ、私達だって研究員という立場なのだから、仕事のことに文句を言っても仕方がないだろう?」

「だからってもっと大人数で来てもいいのによ、二人だけだと大変だと思うぞ?」

「きっと会社側もベテランを少しだけ入れればいいと考えたと思うよ」

「だとしてもよ、俺は会社に入ってからまだ1年も経ってないんだぞ」

アソパソマソは今年入社し、仕事はできたもののこの口の悪さで会社からは迷惑だと思われていた。

しかしアソパソマソの仕事振りは他の大手企業からも大いなる絶賛を受けるほどの天才だったのだ。


しかしアソパソマソはそれでも納得がいかないようであった。

「頭が天才って言われてもよ、新人にこんな重要なプロジェクトを任せると思うか?」

「うーん、それは・・・」

リーマンも確かに少し不自然だと思った。今までアソパソマソと普通に接しているのはリーマンだけであったし、

会社もトラブルメイカーのアソパソマソをこの [DREAM CITY] 計画に参加させる理由も分からなかった。



と、ある理由が浮かんだ。アソパソマソ君がこういう性格だからこそ、自分もこの計画に参加させられているのではないか と。

それに自分はアソパソマソ君と唯一、一緒にいるから性格を直すのに一番適しているのではないか。

だから今回の計画で一緒に仕事をすることによって性格を直させようとしていると考えているのではないだろうか、と・・・

「? どうかしたのかリーマン?」

いきなり言われたのでリーマンは少し驚いてしまった。

「い、いや、なんでもないよ。別に」

「それなら別にいいけどよ」

どうやら感付かれていないと分かった時、リーマンはほっと一息をついた。

そして理由についてをアソパソマソに気づかれない様に説明をした。


「そ、それより君を入れた理由についてだけど・・・ それはまあ、君自身のためを思ってやらせたんじゃないかなぁ」

「・・俺自身のため? ハァ? 何のことか全然わかんねーよ・・・」

と、こんな仕事がらみの会話が延々と続いていた・・・




[会社内部 喫煙休憩所]



そこは人があまり来ない休憩室だった。

なぜなら、会社でタバコを吸う社員や客がめったに居なかったからである。

そのため、ここに居る人はタバコを吸わない人だらけで、みんな一息をついていた。

しかしそんな中に、ふてぶてしくタバコを吸う参加者がいた。


「ふぅ、やれやれ・・・やっと長ったらしい話が終わったぜ」

「もう俺なんか腰が痛くてたまんねーじゃネーノ」

と、やるせなく話をしていた。先ほどまで説明会があったのか、二人はだいぶ参っていた。

その二人はどちらとも不良っぽい服装をし、そして性格も気荒だった。

そのためか、他にここで休んでいた人はみんな二人の周りから遠ざかっていった。

「おいおい、どうやらみんな俺たちの事を怖がってるんじゃネーノ?」

「フーン、どうでも良いね」

そんな事にも気にせずにフーンとネーノは休憩室を我が物にくつろいでいた。

「ちょっとタバコ買ってくるんじゃネーノ」

「ああ、ついでに俺のも買ってきてくれ。バツボロだぞ」

「ちぇ、分かったんじゃネーノ」

「頼んだぞー、ちゃんと買って来ねーと北○百裂拳を食らわすからなー」

そしてネーノは休憩室を出て行った。そして一人残されたフーンは退屈そうにしていた。

「さて、ネーノも行ったし、何しとくかな・・・」

仕方なく休憩室においてあった本を読み始めたが、内容はこの会社のパンフレットやら、経済系の雑誌ばかりだった。

「チッ、まったく、少しはまともな物は置いてねえのか・・・」

しかたなく、ネーノが帰ってくるのをおとなしく待っておくことにした。


「・・・・・・・・・」


五分は経っただろうか。いまだにネーノは帰ってこない。

「遅すぎるぞ・・・・・ タバコ買ってくるのにどれだけ時間掛けてんだよ・・・・・」

「この会社内にタバコは売ってないわよ。多分外にでも買いに行ったんじゃないかしら?」

急に後ろから声が聞こえた。あわてて後ろを向くとそこには髪が長く、金髪の女性が立っていた。

「姉者か・・・なんでお前がここにいるんだ?」

「そう言うあなたこそここに居るのはおかしい方よ、フーン」

と、そっけない返事が返ってきた。

「まぁ、それはそうだが・・・」

そう言うと、姉者はこう言ってきた。

「・・良かったら少し話しない? 少しはおごってあげるわよ」

その話ににフーンは悩んだ様子であった。

「んー・・・・・・ 」


フーンは今金欠気味であり、最近はろくに飲みに行っていない。そのためこの誘いは

フーンにとっては好条件の話だったのだ。しかしフーンは、

(・・でも、姉者と一緒に行くのはちょっとな・・・ )

と思い、断ろうとしたが姉者は、

「あら、行かないなら別にいいわ。せっかく銘酒「AAカナディアン」でも飲ませてあげようと思ったのに・・・ 残念ね」

「うっ! AAカナディアン!?」

「AAカナディアン」とは、最近巷で流行している味が良いと評判なウイスキーである。

だが、人気がありすぎるため店で取り扱うはおろか、市場に出ることもめったに無い、幻の酒なのだ。

「・・・分かったよ。で、どこの店だ? 」

「あら、手が早いのね。会社の地下のバーよ」

そして二人は地下のバーに向かっていった・・・・・



[会社内部 地下バー]



二人は店の個室に入っていった。どうやら姉者が

「予約した姉者だけど、部屋はどこ? 」

と言っていたようなので、どうやら始めからここに来るつもりだったようだ。

その事にフーンはニヤリと笑い、こう言ってみた。

「予約していたみたいだが・・・ 始めから俺と飲みたかったのか?」

とフーンは冷やかしを入れてみた。しかし姉者は、

「違うわよ。予約を入れたけど一人で飲むのがつまらなかっただけ」

と軽く説明をし、フーンの言葉を無視した。

「フーン、あっそ・・・ 」

そして店員がやってきて、銘酒「AAカナディアン」を大事そうに持ってきた。

「お待たせしました。銘酒「AAカナディアン」でございます」

「別に言われなくても知ってる。それともここの店は偽物でも出そうって言うのか?」

フーンがそう言うと、店員はすぐに扉の取っ手に手を掛けた。

店員も飲みたかったのか、うらめしそうに後ろを見ながら部屋を出て行った。



「・・・で、なんだ? 話って?」

「話? ああ、そのことね・・・ 」

「おい・・・ 今、そのこと忘れてただろ?」

「別に・・・ 何でもないわよ」

「フーン、いいんだけどね。この酒が飲めるんなら」

バーの個室は、何か重い空気が流れ出してきた。そしてその中姉者が話を切り出した。

「今日言いたかった事は・・・ 今回の計画の事よ」

「あの [DREAM CITY] 計画の事か。お前にとっては忘れたくても忘れられねえ事だよな・・・ 」

「ええ・・・ あの「NIGHTMARA CITY 事件」の事もあるしね・・・ 」

その話の中、フーンは自分が気になっているあの事の話を切り出した。



「・・ それで、どうだ? 兄者、弟者、妹者達の様子は?」

「あの事件からすぐに病院で検査を受けたらしいけど、ほとんど異常無しですって」

「そうか・・・ で、なんでお前は自分の兄弟が危険な目にあわせたこの計画に参加しようと思ったんだ? 」


姉者こと本名 「流石 姉者」は、十年前の「NIGHTMARE CITY 事件」の時の参加者

「兄者」、「弟者」、「妹者」達の長女である。

その当時、姉者は十七歳であり兄者達が十四歳のころであった。



「・・ それは、あなたにも分かるでしょ。フーン」

「・・・ 兄弟をこんな目に合わせた会社の復讐か?」

「半分正解で、半分間違いよ」

「フーン、じゃあ一体何なんだ?」

そう聞いた時には姉者はすでに酒を飲みきり、二杯目を注ごうとしていた。


 ――トクトク・・・・・


グラスに注がれる琥珀色のウイスキーが適度に溜まると同時に、姉者はこう答えた。

「・・ 私はこの計画には何か裏があると思うのよ」

「裏?」

「ええ、あの「NIGHTMARE CITY 事件」の時にAI達の突然の反乱・・・」

「当事者の話じゃあ、AI管理プログラムが知識が付きすぎてしまったことが原因って言っていたが・・・」

「その時点でおかしいのよ」

「・・どういうことだ?」

姉者の不可解な答えにフーンは疑問を持った。

「まず、AI達は基本的にサーバーからデータを送られてきて、それを元に学習するシステムなのよ」

「フーン、なるほど、よく調べたな」

フーンの関心も聞こえていないのか、姉者はそのまま説明を続けた。

「そして、当事者の話での原因の説明・・・」

「で、それがどうかしたのか?」

「つまり、知識が付きすぎてしまったという「付きすぎた」という事は研究員達がそのデータをAIに送っていた・・・」

その時、一瞬時が止まったように思えた。今の会話の部分に決定的なおかしい部分があったのだから。



「・・ おい、それはまさか・・・」

フーンも姉者の言っている事を察したのか、グラスを持っている手を止めた。

「そう・・・ ちゃんとしたデータだけ送っていたなら、こんな事件など起きなかった。つまり・・・」

そう言った時に、フーンはその後を付け加えた。

「あの事件の発生は、『偶然』ではなく『故意』だった・・・ という事か?」

「その通りよ。会社側はこの事実を表に出さずに、いえ、最初から企んでいたことをこのような嘘で隠し通そうとしていたのよ」

「オイオイ、マジかよ・・・ 」

「・・・・・・・・・」


二人は共に黙っていた。いや、何も言うことができなかったかもしれない。

どちらも話すことができない。そのことの話題を切り出すこともできない。そんな嫌な雰囲気であったのだから・・・



と、そんな重い空気の中フーンは今の話の事で姉者に尋ねた。

「・・でもよ、そこまで分かっているならなんでマスコミにそのことを公表しねーんだ?」

「簡単よ。その理由は・・・・・・『証拠が無いから』」

「・・・ なに?」

「いくらこちらが言っている事が正論であっても、証拠が無ければただのデマ。今の社会はこんなものなのよ」

姉者がそう言うと、フーンはなぜわざわざ姉者がこんな事を言っていたのかが分かった。



「・・・ なるほどな。大体分かったぜ。お前がこの計画に参加した理由が」

「あら、どういうことかしら?」

「今回の計画のデータは、前回の「NIGHTMARE CITY」のプログラムとほとんど一緒だって言う話だ。つまり・・・」

そこでフーンが話している途中に姉者がフーンの答えを付け加えた。

「そこで決定的な証拠を探し、兄者達の仇を取る、とこう言う事よ」

「予想通り、か」

「怪我をした、してないはこの際問題じゃないの。私の所の兄弟達が実験に利用された・・・ それが我慢ならないのよ」

「フーン、なるほどな・・・」


話のひと段落が終わった時、アナウンスが聞こえてきた。


≪集合時刻まであと少しです。計画参加者は第2ホールまで集合してください。繰り返します・・・≫


「そろそろ時間ね」

「ああ、そうだな」

「お代は私が払っとくから、先に行ってて」

「はい、ゴチになりますっと・・・」

フーンが店の外に出ようとした時、姉者がこんな事を言いだした。


「そうだ、一つ聞きたいんだけれど」

「なんだ? やっぱりワリカンにしてくれってのは無しだぞ」

「フーンの・・・ この計画に参加した理由は何なの?」

「俺が計画に参加した理由ね・・・」

少し考えたが、フーンは

「何となく。暇だったからだ」

「・・・そんなそっけない性格は昔からね」

「フーン、どうでもいいよ」

そう言うと、フーンは店から出て行った。



そしてフーンは第2ホールに向かう途中、何か忘れていると思っていたら、

「おーーい、フーン!!」

とでかい声が聞こえたので後ろを振り向いたらネーノが走ってこちらに向かってきた。

「ハァ、ハァ・・・ まったく、どこ行ってたんじゃネーノ・・・」

「お、ネーノ。どうした? そんなに息切れして」

「どうしたもフーンが休憩室にいなかったからずっと探してたんじゃネーノ・・・ハァ、ハァ・・・」

「おー悪い、悪い。で、しっかり買ってきたんだろーな、タバコ」

「まったく、少しは反省するんじゃネーノ。ちゃんとあるネーノ」

そう言うと、ネーノはタバコをフーンに向かって放り投げた。

「おーサンキュー、サンキュー」

「急ぐんじゃネーノ。もう時間ギリギリじゃネーノ」

「おっと、それじゃ行くぞ」

そして二人は集合場所まで走っていった。しかしフーンは姉者が言っていた事が胸に引っかかったままだった・・・




―――やっぱし、この世は狂っていやがる。俺のダチもそうだったように・・・・・





――――――――――――――――STORY 2 最強と最凶の侵入者――――――――――――――――



[会社内部 第2ホール]


――ザワザワ・・・


アナウンスが流れてきてから五分後、会場にはすでにさまざまな参加者が来ていた。

そんな中に、タカラとサコツが息を切らして入ってきた。

「ふう、良かったぁ~。何とか間に合ったみたいだな」

「誰のせいだと思っているんですか。サコツさんがトイレに30分も入っていたからでしょう?」

「うっ、それを言うなよぉ・・・ どっちみち間に合ったからいいじゃねーか」

「まったく・・・ 少しは反省してくださいよ」

「分かった、分かったよ」

そう言っていると、前の大きい自動ドアから黒いスーツ姿の男がでてきた。その上にマントまで着けている。

そして、その男は参加者全員を集合させ、話を始めた。


「ようこそ、我が『White future』社へ」


その男はまず簡単に自分の自己紹介をした。

「私はこの会社の社長のラビッツ・マーチと申します。本日はこの計画にご参加いただき真にありがとう御座います」


「さて、今日はここにお集まりになられた皆さんをわが社の最新テクノロジーで架空世界にご招待いたします」

どこにでもあるような普通の挨拶を終わらせると、自分の雑談を始めた。


「今から10年前、皆様も知っての通りにある事件が起こりました。架空世界を管理するAIの反乱・・・」


「わが社は中止されたその計画の機械やシステムを改良して今回の計画を実行しました」

この事を知らなかった者もいたのか、ホールは少し騒がしくなった。



――おい、聞いてねえぞ! ふざけるな!!


――あきらかに危なすぎるじゃねえか!! ゴルァ!!


――あの事件の事をまた起こすつもりなの!? 信じられないわ!!



参加者の大半は社長を非難する言葉を言ったり、その事の抗議をしたりした。

当然の事だろう。自分たちの参加する計画に欠陥があると分かっていて参加する馬鹿はまずいない。



しかしラビッツはそんな事を予測していたかのように、顔に笑みが浮かんでいた。

「・・ そう、確かに危険と分かっているドロ舟に乗るお方はまずここにはいないでしょう」

そう言った後、ラビッツは自信に満ちて言った。

「ですが、ご心配はいりません!! 今回の計画では危険性のあるプログラムは一切使っていません」

ラビッツがそう言ったと同時に会場内が静まりかえった。

「そして、AIの方もわが社が独自で製作した物ですから普通の人に危害を加えることはありません」

今の言葉で安心したのか、会場は緊張がほぐれていく感じになっていく。

「ですから皆様にプログラム上の危険は全くありません。その事をここで約束いたします」

ラビッツが礼をするのと同時に少しの拍手が起きた。


 ――パチパチパチ・・・・・


「よかったぁー、危険がないんならもう安心だよな。タカラ」

しかし、タカラはその言葉を聞いていないのか、ホールを後にしていくラビッツ・マーチを見続けていた。



―――ラビッツ・マーチ、あの事が本当なら貴方は・・・



「・・・? どうした? タカラ」

「あっ、いえ、何でもありません」

タカラが慌てていると、次に一人の女性スタッフがホールに入ってきた。

「皆さん、こんにちは。これから参加者の皆様はわが社か開発したマインド・データシステムがある所へ行って貰います」


「そして、その仮想世界で皆様は一週間過ごしていただきます」

その言葉にサコツは、

「ちょっと待て!? 冗談じゃないぜ! 俺たちにも学校とかそう言うのがあるんだぞ!!」

「学校なんてキライだー、何て言っていたのにですか?」

「た、確かにそうだけどさ、流石に親に迷惑かけるのは・・・」

「その事に関してはご心配要りません。仮想世界内で一週間は現実世界で20時間ぐらいですから」

「なんだ、それなら大丈夫だな。良かったぁ」

「残念の間違えじゃないですか?」

「・・・ まぁ、本当はそうなんだけどさ」

そして一通りの説明を終えた後、スタッフの紹介となった。

「えー、まず私ですが、名前はエーといいます。今回の計画の説明係を務めています」

自分の自己紹介を済ますと、次は実際に仮想世界に行くスタッフの紹介になった。



「今回皆様といっしょに仮想世界にお供するリーマンさんです」

「どうも初めまして。皆さん楽しんでいってください」

そう言うと、参加者たちからの拍手があった。

「そしてもう一人、同じくお供するアソパソマソさんです」

「・・ どーでもいいけどよ、足引っ張るような真似だけはすんじゃねーぞ」

「ちょ、ちょっとアソパソマソさん、駄目ですってば、こんな時に・・・」

「分かったよ。よろしくお願いしますよ」



―――やはりやったか、アソパソマソ君・・・ 今回の計画中になにかトラブルが無ければいいんだが・・・



―――いや、こういう時こそ私がしっかりしていなくては、何の意味も無いんだ。



「え、えー、では私たちの自己紹介も済んだので今度は皆さんの自己紹介をお願いします」

参加者の自己紹介をするのが面倒だった人が多かったので、最初の人が自己紹介を始めるのに五分はかかってしまった。



「えー、僕の名前はタカラと言います。一週間よろしくお願いします」

「そして俺はサコツだ! みんなよろしくな!!」

そうするとサコツは得意げにバック転をした。参加者に自分の存在を見せ付けるためであろう。

周りから少しの拍手があった後、そのまま自己紹介は続けられた。

「激しく拙者の名は激しく忍者。今回この企画に出たのは激しく自分の精神鍛錬のため」

と、明らかに伊賀出身? みたいな忍者もいれば、

「ぼ、ぼくはマーク・チャーハンと言います。少しの間だけれどっ、ど、どうかよろしくお願いします!!」

と、なぜかフライパンを持っている上り症の少年までいた。他にも、

「俺の名前はフーン、こっちはオマケのネーノだ。以上」

「ちょっ、オマケってひどいんじゃネーノ」

「うっせーな、別いいだろ」

と言う風な参加者もいて、さらには、

「自分はノーネなんじゃノーネ。そこのネーノとは違うから間違うんじゃないんじゃノーネ」

「そこのって、見ず知らずの人からも言われたんじゃネーノ・・・」

「・・・ プッ」

とネーノがさんざんな目にあっていた。様々な人の自己紹介も終わり、エーは

「それではこれで全員ですね。自己紹介も済んだし皆さん私についてきてくださーい」

と参加者に呼びかけた。そして参加者全員は行く準備をした。



―――おっかしーな・・・ あいつがまだ来てねーぞ・・・・・ やっぱり行くのを止めたんじゃ・・・



と、フーンがそんな事を思った時、ホールの入り口から大きな声が聞こえた。



   「まだ参加者はいるわよ」



急にホールの入り口から声がしたので全員が注目をする。

そこには遅れてきた姉者の姿があった。

フーンは姉者のとこへ駆け寄り、すれ違いざまに話しかけた。


「おいおい、遅かったぞ・・・ てっきりお前が参加しないで帰ったかと思ったぜ」

「おあいにく様。私はそんなに飽きっぽい人間じゃないわ」

いきなり最後の参加者が来たことに動転したエーだが、気を落ち着けようとした。

「そ、それじゃあ、最後の方ですね。自己紹介を、その、どうぞ」

「流石 姉者。遅れてきたことは私用よ。その事については気にしないでね」

いかにも気になる自己紹介だったが、エーはもうかまわず参加者に呼びかけた。

「と、とにかく、これでホントに全員ですね。それでは皆様、私について来て下さい」

エーがそう言うと、参加者全員がエーの後に並んでマインド・データシステムのある所へ向かっていった。




[会社内部 マインド・プログラムルーム]



最初に部屋に入った人が目を丸くしてその室内を見わたした。

いかにも最新技術でできたと見えるような機械がその部屋中に置いてあったからだ。

室内はガラス張りに仕切られており、となりから見える様々な実験内容におどろかされていた。

見ただけの憶測だが、動物の声紋を取っている部分や、何か大型のアンテナが部屋にあってそれを元にデータを取っている所もあった。

「皆さん、こちらですよー」

エーがそう言うと、参加者はある一室に入れられた。


その部屋にはヘルメットのような機械が何個も置かれていて、そのヘルメットからのコードが壁につながっていた。

「このMMRから皆さんは仮想世界、「DREAM CITY」に行ってもらいます」

「おいおい、こんなヘルメットでホントにいけるのか? と言うよりMMRって何だよ」

フーンからの質問にエーは軽やかに答えた。

「大丈夫です。このマインド(Mind)マシーン(Machine)ラン(Run)には何重のも注意があって開発された物ですから」

「フーン、くだらないネーミングだな・・・」

フーンがそういっている間に、みんなはもうヘルメットを被っていた。

フーンも慌ててヘルメットを被ると、エーの最終チェックが行われた。

「仮想空間についての事は着いた時に自分が持っている説明書がありますので、それを元に生活をしていって下さい」

そしてとうとう壁についているボタンに手を出した。どうやらこのボタンを押すと出発するようだ。

「全て異常なしっと・・・ それでは皆さん、準備はいいですか?」

全員が返事をした時に、エーは壁のスイッチに手を出した。



―――それでは皆さん、良い旅を・・・・・


――ポチッ


エーがスイッチを押すと、部屋中に大きな機械音が広がっていった。

「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」

そんな風に叫んだのはサコツだけであったが、数分後には聞こえなくなった。

機械音が収まったと同時に、参加者全員が抜け殻のようになっていた。

おそらく精神の方は「DREAM CITY」に向かっている所なのだろう・・・





 ――ゴォォォォ・・・



身体が流されていくのを感じる。「DREAM CITY」に向かっている途中なのだろう・・・



―――――これが、精神のみの活動・・・・・


――――――そしてこれが、先輩があの時感じた感覚・・・・・


―――――身体が置いていかれるのを感じる・・・・・


――――――そして僕は、今行くんだ・・・・・






あ の 時 の 真 実 を 探 す 旅 に ・ ・ ・






[会社内部 社長室]


「そろそろ計画が実行された頃だな・・・ 」

窓辺で一人たたずむラビッツの姿があった。

「・・ しかし、これで本当に良かったのだろうか・・・ ?」

と、自問自答をしているようなのか、なにやら一人でブツブツつぶやいている。



「いや、これで良いのだ・・・・・・ 私にとってジャマだった二人も仕事を与えられたのだから・・・」


「そしてもし、トラブルがあっても二人にはいなくなって貰えるし、その二人の設計ミスと言う事にすれば良い・・・」

そう言うと、ラビッツの口元に笑みが浮かんだ。

「悪く思わないでくれたまえ、リーマン教授、アソパソマソ研究長、全ては我が会社の為なのだよ・・・」

そう言うと、今度はなにやら別のことをつぶやき始めた。

「しかし、あの事件のプログラムを私が手に入れる事が出来るとは正直思ってなかったよ・・・」


「この計画が成功すれば、我が会社も、社員も一気に世界NO.1の企業になるだろう」


「しかし、これだけでも良いのに、あのプログラムには素晴らしい『オマケ』も有ったみたいだからね・・・・・・」



しかし、何故かラビッツの表情はうれしいと言うよりも後悔の念があった。

自分のしていることが善なのか悪なのか分からないように・・・


「しかし、やはり本当に・・ いや、もう止めておこう。私自身が決めたことなのだ・・・」



「あの時以来、私は自分にとって正しい道を歩んできたはずなのだから・・・」






[????? ?????]


――― ・・・・!


・・・ 誰か何か言いましたか? それとも、僕の空耳でしょうか?


――― ・・ラ!!


いや、聞き違いではないようですが、一体誰が・・・


――― ・カラ! おい!!


ん・・・ この声、どこかで聞いたことがあるような・・・ 無いような・・・


「おい! 起きろ!! タカラ!!」

そう言うとタカラはやっと意識を取り戻した。目覚めた時にタカラが見たものは、雲ひとつ無い空と、見たことの無い姿の人物であった。



「あれ? その声はサコツさん・・・ ですよね?」



声の主はサコツであった。しかし、姿形はどちらかと言えば毛むくじゃらで、三角の耳も付いていた。


「当たり前だろ。俺たちはもうDREAM CITYに着いたんだぞ、鏡でも見てみろよ、お前の姿も変わっているぞ」

そう言うと、タカラは近くにあった泉の水面を覗き込んだ。

確かに、タカラの姿もサコツのような毛むくじゃらではないが、サコツと同じように三角の耳が付いていた。

そのうえ、タカラには長いしっぽも付いていて、姿はネコの様であった。

「本当ですね。あれ、でも参加者の皆さんがいませんが・・・」

「お前が寝ている間に全員起きて、一時間くらい前に街に行っちまったぜ」

「そうでしたか・・・ でもなんでサコツさんは行かなかったのですか? 今回の事楽しみにしていたのに・・・」

「いや、まぁお前が俺と一緒にいないと、一人ぼっちになっちまうからな」

「本当は一人で行くのが怖かったんじゃないんですか?」

「うっ!! いや、その・・・ そ、そんな訳ないだろ!!; 俺はそんなにガキじゃねーんだからよ」

「・・・・・・・・・」



―――うっ、タカラがこっちをじっと見つめてる・・・ やっぱばれちまったか?


―――でも、わざわざ待っていたからそうだろうと考えているかもしれないな・・・ でももし違ったら・・・・・・



サコツがそんなことを考えている間に、タカラは丘の上に行っていた。

そこからは、DREAM CITYの街が一望できた。

「わぁ・・・」

タカラは少し驚いた。そこには、さまざまな光景が目に移って見えてくる。

ショッピングモールが数々建っている商店街、何かを作っているのか、はるかに大きい煙突が立ち並ぶ工業街、

さまざまな高層ビルが立ち並ぶ、大都市を思わせるところ、そして、さまざまな小型店が立ち並ぶところなど、たくさんあった。



「ここが、DREAM CITY・・・」

「やっぱり凄いだろ!! 早く俺たちも行こうぜ!!」

そう言って、タカラを引きずっていこうとしたサコツだが、

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 案内人の人が言っていたじゃないですか。着いたら説明書をまず読むようにと」

「ちぇっ、分かったよ。で、説明書はどこだ?」

サコツがそう言った後に、目の前に光る球体が出てきた。

「な、何なんだこれ?」

「ぼ、僕に聞かないで下さいよ」

そう言っていると光る球体は形を変え、手紙のようになった。

タカラとサコツは、その手紙を拾い上げた。と、その瞬間手紙が消え、何やら空中にモニターが出てきた。

そしてそのモニターから、字が浮かんできた。どうやらこれが説明書らしい。

「凄いな・・・ これも科学力ってヤツか?」

「ちょっと黙っていてください。今から説明があるみたいですから」

そのモニターには、こんな事が書いていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計画参加者専用説明書

今回、このDREAM CITY計画にご参加頂き真にありがとうございます。

さて、計画に参加するに当たってDREAM CITYで出来ること、ルールがありますので以下の事をお守りください。


〔出来ること〕
・ DREAM CITY内での買い物は自由です。お金は自分の持っているキャッシュで出すことが出来ます。

・ お金は生活区域で引き出すことが出来ます。金額は一人10万円です。

・ 自分でお店を出したいと言う方は自営業区域でのみ許可します。先着順ですので営業する店がなくなる恐れもあります。

・ 店で売る物は食べ物、飲み物、酒類、玩具、機械製品などで、危険分類は武器のみ売る事を許可します。


〔ルール〕
・ 武器で人を殺害しないで下さい。生命補助装置が万が一切れた場合、殺害された人が死亡する事態もあります。

・ 20歳以下の人物は酒類を飲まないで下さい。

・ 武器類を使用する場合は、工業区のトレーニングルームへ行って下さい。それ以外の通常時で武器を使用することは許可しません。

・ 他の参加者の迷惑な行動をしないで下さい。

・ これらのルールを守らない場合は、強制的にDREAM CITYから退場していただきます。


                                      以   上
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「・・・ だそうですよ。サコツさん」

「ちぇ、せっかく酒がどんな味なのか試してみたかったのによ・・・」

「我慢して下さい。いくら架空世界でもルールはあるんですよ」

「分かったよ。じゃあ、長ったらしい説明も見たし、さっさと街に降りてみるか!」



そう言うとタカラとサコツは、街の方へ向かっていった。

二人が去った後の広場は静かに風が吹いていた。

丘からは、参加者たちが楽しそうに騒いでいる美しい街並みが見えていた。

その姿はもう夢の楽園と言っても良いだろう。

しかし、その夢が数日後、悪夢に変わることになる・・・・・・



最強、そして最凶の4人によって、全てがあの事件と同じように・・・・・・






[〈一日目〉DREAM CITY 生活区域]



様々な家が立ち並ぶ住宅街にリーマンとアソパソマソはいた。そして手には何やら小型のモニターが付いている機械を持っている。

「ここら一体の住宅街全て異常なしっと・・・ アソパソマソ君、そちらは終わったかい?」

「ああ、こっちも終わったぞ」

「そうかい。じゃあこの事を会社に送信するか・・・」

そう言うとリーマンはその機械のスイッチを押し、何やら操作を始めた。



――ピピピピピ・・・



タッチパネル式なのか、画面にすばやくタッチしていた。そしてリーマンが動きを止めたと同時に音が鳴った。



――ピーーーーーーー


≪データの全てをリアルワールドに送り込みました≫



「これで良しっと・・・ アソパソマソ君、お疲れ様」

「ホント、くたびれたぜ。このDREAM CITY全部を調査するのに2時間もかかっちまったぜ」

と言っていた。しかし実際には普通の専門家がこの仕事をするのに丸一日掛かる仕事だったのだ。




リーマンとアソパソマソは、近くにあったベンチで一休みをすることにした。

そして二人はそのまま空を見ていた。空には雲一つない快晴で小鳥が元気よく飛び回っていた。

「そーいえばリーマン、あと仕事は何があるんだっけ・・・ ?」

「だいたいのチェックは終わりましたし、後は参加者の見回りぐらいですかね」

「そーか・・・ あーもう、正直かなりしんどいな」

「大変なのは分かりますが、仕事をしないわけには行かないでしょう」

二人はそんな風にベンチに寝そべって話していた。




と、急に真上に影が通り過ぎた。素早く動いていたのか、見えるか見えないかの動きだった。

「おいリーマン、今何か通り過ぎなかったか?」

「え? いえ、私は何も見ていなかったですが・・・」

「おっかしーな・・・ さっきのは一体なんだったんだ?」

と言っている時だった。



「激しく見間違いじゃない。激しく自分がここにいる」



突然声がしたので二人は驚いてベンチから離れて辺りを探しだした。

と、そこへ声の主は木の影から素早く二人の目の前に現れた。

その男は、忍者のような地味な色の服装をし、忍者の使っているような刀を持ち、

その男は一目見ただけでも忍者だと思える姿であった。

普通の忍者と唯一違うところは、派手な真っ赤のマフラーみたいな物を首に巻いている事だけであった。

「な・・・ なんだ? この忍者野郎は」

「えーと、ちょっと調べてみます。・・・・・・ 参加者NO24 名前『激しく忍者』さん・・・ ですね」

「激しくその通り。激しく自分は忍者をしている」

「マジかよ、今の社会にまだ忍者がいたなんて・・・」

「どうやら本当らしいですよ。職業にも忍者とありますし」

先ほどの機械を見たままリーマンは言った。



「・・・ でもよ、忍者とかいったな。一体俺達に何の用だ?」

「激しく“何の用だ”とは?」

「決まってんだろ。用があるならさっさと言えよ。用がないなら帰れ」

「激しくそうだった。激しく重大なことを言いたい」

「重大なこと? それは一体なんですか」

リーマンがそう言うと、忍者は少し間を置いて答えた。




「激しくこの世界の様子がおかしい。激しく調査を依頼したい」

「なに、この世界がおかしい? なにを言うかと思えばそんなデタラメかよ」

「激しくデタラメでは無い。 激しくここ一時間辺りでわずかだが空気が変わった」

「何言ってんだ、ここは外なんだから空気が変わるのは当たり前だろ」

「激しくそうじゃない。激しく変わったのは空気の雰囲気だ」

「だーかーら、それはお前の勘違いだって・・・」

勘違いだって言っているだろうと言いかけた時、リーマンがこう言った。

「待って下さい、アソパソマソ君。少し話を聞きましょう」

「お、おい、ちょっと待てよ。こんな怪しいやつが言うことなんてデタラメだって」

アソパソマソがそう言うと、リーマンはこう言った。

 「アソパソマソ君、いくら相手が怪しいからと言って最初から話を聞かない事はよくないよ」


「それに相手は何かの異常があると言っているんだ。異常がある時の為に私達はいるんじゃないか」

「うっ・・・ 分かったよ。少しぐらいなら聞いてやる。で、一体なんで空気が変わったのがおかしいて言うんだ?」

そう言うと、激しく忍者は説明を始めた。


「激しく自分達忍者は常に気配を気にしている。激しくその訳は気配が変わると何かが動き出す前兆になる」

「激しくさっき空気が変わった。激しくこの感じは何か悪いことが起きる予感」

「悪い予感? チェックは全部したけれどもどこも異常はなかったぜ」

「激しくチェック上の問題じゃない。激しく誰かがここに悪事をする気」

「悪事? 一体誰がそんな事をしようとしているのですか?」

「それは自分にも激しく分からない」

「ほらな、やっぱりこいつはデタラメばっか言っているじゃないか」


その言葉に忍者は自分の心に怒りを覚えた。

「激しくデタラメとは違う!# 激しく嫌な予感は絶対!!#」

その怒りように二人はあっけに取られていたが、アソパソマソは、



「だってよ、根拠も証拠も無いのにこんなこと言われても信じられるかっつーの」



と言ったばかりに激しく忍者はさらに怒りだし、二人には手が付けられなくなってしまった。

その怒りようと言ったら近くで聞いていると耳がすぐ痛くなる位であった。

おそらく声の大きさはすでに100dBは超えているだろう。



そしてとうとうリーマンは、

「分かりました! 一応調査をしておきますので落ち着いてください!!」

と言うと激しく忍者は怒るのをやめた。

「激しく本当か!! 激しく助かる!! *」

「しかし我々にも他に仕事がありますから、全部再チェックするのに4日は掛かります」

「げっ、マジかよ! 俺もせっかくここまで来たからゆっくり休もうとしたのによぉ・・・」

アソパソマソがうなだれている中、リーマンはやれやれと言わんばかりに首を振っていた。



激しく忍者が感じていた嫌な予感は、まさかあんな事になる事を予想していた人は誰一人いなかった。




そしてその嫌な予感の起きる時間は、刻一刻と短くなっている事もまだ誰も知らない・・・・・・




[現実世界 廃墟ビル]


計画が開始されてから五時間が経ったころ、今は使われていないとあるビルの中に声が聞こえていた。



―――おい、あれはちゃんと手に入れたんだろうな?


―――任せろ。ちゃんと四人分手に入れてきたぜ。



と、中から声が聞こえてくる。中にはどうやら四人いる様だ。

ビルはかなり薄暗く、カーテンも掛かっていたため外の光はこなく、夜になった場合でも部屋の光は外には出なかった。

ビルの中には、様々な機械やパソコン、そして何処につながれているのかケーブルがあった。



そしてビルの中にいる人影が見えた。そして一人の男が意気揚々と話している。

「しかし、ホント楽に進入できたぜ。極秘といっても案外警備は薄かったみたいだしな」

「いや、十分警備は厳重でしたよ。だけど、貴方にとっては大した事無かったみたいですね、ジョルジュさん」

そう言うと、三人いる中でジョルジュと呼ばれている人物は自慢そうに言った。

「まあな。オレを止めることは超S級の警備システムでも不可能だぜ!!」

「どうでも良いが、あれは一体何処にあるのだ? ジョルジュ」

「ああ、フォールスが持って来てるだろ? 早く用意してくれ」

「全く、こういう事だけ私を使うんですから・・・・・ これですよ」

そう言うと、持ってきたものを一つずつ並べていった。それは何やらヘルメットの様な物だった。



「何だこのヘルメットは? このような物で本当に架空世界に行けるのだろうな?」


そう言った時に、フォールスはその事の説明をした。

「本当ですよ、クックルさん。実際に参加者がこれを使って『DREAM CITY』に行く準備をしている所を見ましたからね」

「・・・ まあ良い。それで、これはどうやって使うのか?」

クックルがそう言うと、奥の階段から下りて来た男が答えた。

「今ジョルジュが『White future』社にハッキングしている所だ。このまま行くとハッキング完了時間は7時間48分23秒だ」

その男は自分の腕時計を見ながら話していた。身なりからして、歳は20代前半といった所か。

「その声はウララーか・・・ 久しぶりに顔を見たと思うが、一体今まで何をしていた?」

「んー、ずっと寝てたw 」

「ウララーさん、いくらなんでも寝すぎですよ・・・ それが本当だとしたら一週間も寝ていたと言う事ですよ?」

「まあ、良いじゃないか。ボクも今まで徹夜だったんだから・・・ 」

「わはははははは・・・・・・」

クックルを除く三人はみんな笑った。ただ、本当に面白いのか皮肉で笑ったのかは分からないが・・・




そんな風な会話が続いた中、クックルはまたウララーに質問をした。

「・・ それで、このヘルメットの使い方がハッキングとどう関係があるのか聞きたい」

「分かった、教えてあげるよ。でも、君の固い頭に理解できるかは知らないよ?」

「はははははははw 、うまいシャレだなウララー」

しかし、そんな中でもクックルは眉一つ動かさず無表情だった。



「・・・ まぁ、良いよ。それじゃあ、説明するよ」



「まず、ジョルジュがハッキングをした後、このデータを向こう側に送るんだ」

そう言うと、ウララーの手に一枚のCDが取り出された。

「このCDのデータは向こう側のシステムを乗っ取る事ができるんだ」

「オレ特製のプログラムだぜ!! これを作るのに一ヶ月も費やしたんだぞ!!」

ジョルジュの自慢もむなしく、そのままウララーの話は続いた。

「まぁ、完全に乗っ取るのは無理だけど、監視プログラムの目をごまかすのが目的かな」


「そしてこっそり内部に侵入して、この『MMR』を中のプログラムと連結させて『DREAM CITY』に向かうって言う事」

「ほう・・・ しかし侵入する為だけにそのプログラムを使うのか?」

そう言うと、フォールスがこう言った。

「いえ、向こうにある使えるプログラムはこっちが頂くと言うつもりですよ」

「成る程な・・・ 全てを無駄無くする事は当然の事だからな・・・・・・」

クックルがそう言うと、ウララーはニヤリと笑ってこう答えた。

「ま、そういう事。さて、ボク達はジョルジュがハッキングが完了するのを待つか・・・」




   『全ては我が夢を叶えるため』




全員が一斉にそう言った。全ては自分の欲望を満たす為彼らは今、恐怖の堕天使となる・・・




[〈三日目〉DREAM CITY 自営業区域]



そこには、様々な人が行き交っていた。

自分の店を持った嬉しさに、気合を入れる者。

裏路地に言ってこっそり煙草を吸う者。

何かトラブルがあったのか、道端でケンカをする者・・・

そんな街並みの中、一つのバーがあった。少し小さいが、酒類は揃っている所であった。

そんな中、そのバーは今大変な喧騒になっていた。

店の中はメチャクチャで、中にはケガ人も出ている所であった。


「ほらイタメシ!! さっさとこれ運びなさい!!」

「ちょっ、ちょっと待ってください姉者さん・・・ まだチャーハンが完成して(ry 」

「そんなのどうでもいいわ!! あの馬鹿があんな事したせいで・・・ 」

と、どうしてこんな事になったのかというと、この世界の時間で三時間前のこと・・・





姉者は、情報収集が一番できるバーを店として営業することにした。

そして今日、いよいよ開店するところだった。

「荷物はこれで全部ね・・・ さてと、じゃあそろそろ店を・・・」

「あのー ・・・ すいません・・・・・・」

と、そこに一人の少年が立っていた。その少年は姉者の背の半分ぐらいの高さで、フライパンを背負っていた。

服装はそんなに大人っぽい物ではなく、十二~十四歳と言った所であろう。

姉者はその少年に気が付

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

人気記事ランキング
目安箱バナー