俺の父は飲んだくれの馬鹿だった。
そんな親父にオフクロは泣いていた。
それを見て、なんか気が抜ける。
「おめーらは、俺の言うことを聞いてればいいんだよ !」
親父の拳がオフクロの頬にかすり、あいているほうの手で俺を叩いた。
しかし、ある事をきっかけにあの親父が父さんを呼べるようになる。
あの殴られた時からオフクロの様子が変だった。
心配して俺が「医者行ったほうがいいよ」と言うと、
「大丈夫」といい、行かなかった。
数週間後…オフクロが倒れた。
そしてあっさりと逝っちまった。多分、ストレスが原因だろう。
死んでから3日後…のんきに親父が帰ってきた。
歌を歌いながら帰ってきた姿を見て、俺は全身からこみあげてくる怒りを抑えることができなくなり、親父の顔面に1発パンチをした。
親父はその場で倒れて、「なんだてめぇ」と言いそうな顔をして俺を見上げた。「お」と言いかけた親父に俺は怒鳴った
「親父…なんで気が付かなかった、なんでオフクロが死ぬんだよ!
誰が悪い!?えぇ!何でだ!答えろ!」
周囲の人達、野次馬が集まってきた。こいつらもむかついた。
だからまた怒鳴った
「なんでお前達が…来るんだよ!?なんか関係あるんか!」
野次馬たちが散らばっていく。その中には逆ギレしてるやつもいるし、
つまんねーのみたいな背中をした奴もいた。
みんな『面白そう』と思って集まる。
考えてるうちに親父が答えた。その様子は逆ギレでもなく開き直りでもなく、
真剣な目をしている。
「俺が悪かった。お前達の心もしらずに金だけ取っていく…
最低な父親だな。俺は死ぬ覚悟ができている。さぁ」
意外な答えに俺はすっきり怒りが引っ込んでしまった。
こうしているうちに雪が降ってきて、だんだんつもってきた。
それでもまだ親父はたっていて動かない。
そんな光景を見て俺はため息をついた。
「父さん。風邪引くぞ。はやく家に入ろう」
「と…うさん?今なんて・・・」
「風邪引くぞ!」
「じゃあ入るか」
雪に足跡をつけて、家に入った。父さんと。