裏表トリーズナーズ(後編)◆GOn9rNo1ts
シーン3
表(裏):問答終了(Change The World)
夢からの帰還。
現実への生還。
目の前の男は目を覚ました。
かかった時間は大体、十分くらいか。
「……なんだ、テメエか……」
「私で悪かったわね」
こちらを見て一瞬驚いたような顔をしていた後、何故かガッカリした様子で空を仰ぎ見る。
流れ星なんてロマンチックなものは流れちゃいなかったけど。
それでも明かりが少ないこの辺りでは輝く星々がはっきり見えて、綺麗、と表現しても良い。
そんな星空の下、意識を取り戻した
ラッド・ルッソは目を閉じ、何かの余韻に浸っているようだった。
その姿はここではない何処かを覗き込んでいるように虚ろで。
ちょっとだけ、口元がにやついているけれども。
何かを失ったような、悲しい横顔だった。
きっと、気のせいだろうけど。
「……どっちだった?」
こちらを見ようともせずに小さな声で呟くそいつは、悟りきった表情をしている。
何か夢でも見たのだろうか。深く詮索はしないことにする。
私は答える。ただ一言。それだけで済むのだから。
世界の選択を。神様の悪戯の結果を。
彼の人生の分岐点を。私の問答の終着点を。
「私の、勝ちよ」
「そうか」
向こうの返事も、それだけだった。
この男と以心伝心なんて、気持ち悪いことは言わないけれども。
それでも何となく、これで良いのかな、なんて思ったり。
ラッドは気持ちを切り替え終わったのか、瞳を開け、大きく深呼吸。
伸び伸びと空気を吸い込んでいる様は、とてもこちらを殺そうとした殺人者には見えない。
「おお、あったあった」
手探りでそこらに落ちていた例のコインを拾い上げ、だけど表か裏か確認する素振りさえなく。
そのことに少しだけ嬉しくなる自分がいるのは、どうしようもないことだ。
空高くコイントス。今度は大きな掌でつかみ取り、ゆっくりと手を開く。
覗き込むと、今度は裏だった。
運命なんて、こんなものだ。
ラッドはフン、と鼻を鳴らしながらコインを手でもてあそんでいる。
返してくれる気はないらしい、借りパクは感心できないが一々言うのも面倒くさいので放置。
そいつは憎たらしいニヤニヤ笑いでようやくこちらを見て、嗤う。
「よろしく頼むぜ、ミサカ・ミコト」
「ええ、短いつきあいだろうけどよろしく、ラッド・ルッソ」
今更過ぎる自己紹介。でも、今だからこそやっておくべきなんだと思う。
これから何処に行くのか、誰に会うのか、まだ分からないことは多いけれど。
それでも、私達は二人で、大きな一歩を踏み出した。
裏(表):反逆開始(Traitor)
◇ ◇ ◇
シーンEX
表(裏):いわゆる一つの萌え要素(White Angel)
「ああ、ところでよお」
これで裏表の話はおしまい。
殺人狂が方向転換し、超電磁砲が覚悟を新たにする、なんてことはない物語の欠片。
だから、今から始まるのは小さな欠片の小さな蛇足。
読んでも読まなくても同じ、付け足しの付け足し。
短くて意味のない、ショートストーリー。
「それ、似合ってるぜ」
目に飛び込むのは、乙女の唇を思わせる桃色の薄い生地。
戦闘にはそぐわぬ柔らかな質感が矮小な身体の曲線を顕わにしている。
些か、この少女には大きすぎる部分があったが、それもまたご愛敬。
そのぶかぶか具合は、彼女のこれからの成長を予期する指針でもある。
長すぎる袖とスカートは、砂鉄の剣でばっさりカット。
思わずぷにぷにしたくなる健康的な二の腕が。
その先から五筋に分化している、小枝のような細い指が。
闇夜にも映える、きめ細かな太ももの白さが。
見えそうで見えない、短すぎるスカートの絶対領域が。
女性の魅力を表す部位のそれぞれが己を輝かせるように自己主張し。
それでいて互いを損なうことなく、むしろ高めあうように調和がなされ。
完成された造形を完璧な衣服が彩り、それは一つの桃源郷。
御坂美琴はこの地に由縁のある新たなコスチュームをまとっていた。
いわゆる、ミニスカナースさんだった。
キャップを被っていれば完璧だったが、流石にそれは高望みが過ぎるってものだろう。
一応デイパックにはしまってあるけれど、多分使われる機会はない。
(な、なんでこうなるのよ……)
そんな格好の美琴に混乱の嵐が吹き荒れる。
口をパクパクしながら何か言葉を探しながら、熟したトマトのように赤く染まっていく小顔。
ただでさえ恥ずかしい見た目なのに、まさかこの男から『似合ってる』などと天変地異な言葉を貰うとは夢にも思わなかった。
ここにいたのが真紅だったらまだ素直に喜べたのに……そう思わずにはいられない。
ラッドも彼女の混乱を理解しながらも、爆笑をこらえながら言葉を綴る。
「いやあ、マジ可愛いぜ?白衣の天使、って感じだな」
「え、ええっと……」
ありがとう、じゃなくて。
どういたしまして、でもなくて。
馬鹿にすんな、もっと駄目だ。
こんな時、どう言えば良いんだろう…・
仲間を殺した相手にベタ褒められた時、どう反応すればいいのか。
分からない。そんな経験なんて、有るはずがないのだから。
素直に馬鹿にしてくれればこちらも憎まれ口を叩けるのに、褒め殺しにしてくるのだから質が悪い。
てっきり、ストレートに馬鹿にされるかと思っていたから色々と言い訳を。
……もとい理由を考えていたというのに。
血塗れなままだと明らかに警戒される、ということを見越して、とか。
時間が余ってたから暇つぶしに探していたら偶然見つかった、とか。
あんたには関係ないでしょ馬鹿野郎、とか。
最後はただの罵倒に近かったけれど、それでも頑張って考えていたのに。
今そんなことを言っては、こちらが馬鹿みたいじゃないか。
ともかく、喉の奥に用意してあった台詞が全部、胸の中にしまい込まれていく。
一生発することはないお蔵入り確定の言葉達。
もう忘れよう、と固く、頑なに決意した。
「は、はい!あんたの分もあるから!」
照れ隠しと共に、桃色を伴ったその腕が下から上へと振り上げられる。
ばさり、と何かが闇夜を舞い、ふわりふわりと彼女の同行者の許へと。
ラッドを狙うそれは、電撃の槍でもレールガンでもなく。
「これから色んな人と協力しなきゃいけないんだから。せめて見た目くらい、まともにしときなさいよね」
「おお、すまねえなあ、エンジェル様ぁ」
暗い世界で一層映える、真白の衣。
それを目の前にかざして満足そうに笑みを浮かべる殺人鬼。
気に入ってくれたようで何より。
なにしろ、彼の格好と来たら酷いものだったから。
服は大穴やら裂傷やらが目立ち、その機能を果たしていないし、ズボンだって似たようなものだ。
美琴も人のことを言えないボロボロっぷりだったので指摘はしなかったが、気にはなっていた。
思わず安堵の息を吐く天使の御前。
彼は、身に纏うボロ切れを素早く脱ぎ去った。
「へっ」
上半身を隠すことなく外界の大気に晒し、目の前に広がる筋骨隆々。
激戦をくぐり抜けてきたはずの上半身には傷一つ見えない。
大海原を思わせる雄大な胸は分厚く、叩けばいい音が響きそうだ。
その下に広がる腹筋は程良く引き締まり、彼が口だけの男ではないことを窺わせる。
いかなる気の迷いだろうか、釘付けになったその光景。
女性とは全く異なる魅力を醸し出した大人の肉体が。
普段は滅多に見ることがない異性の肌色が目の前にある。
……そこでようやく、意識が戻る。
「なななななななにしてんのよ?!」
「おいおい、こんくらいで悲鳴上げやがって……ガキが」
「へ、変態!露出狂!最っっっっっっ低!!!」
彼女の混乱を表すように不規則に飛び交う微弱な電撃。
それを軽いステップで避けつつ、鍛えられた筋肉が白衣に隠されていく。
病院の医師、つまりエリート中のエリート用であるそれは、何故か彼に似合って見えた。
「やっぱり白だよなあ」
彼を良く知る者には理解と恐れを同時に抱かせる、独り言。
首をかしげる美琴がそれを知る時が来るのか、来ないのか。
「表」である彼女が彼の「裏」に気付くことが出来るのか。
(とりあえず、使える奴は我慢するとして……邪魔する奴らはぶっ殺しても文句は言わねえよな?
ああ、あと足手まといになりそうな奴も、ばれねえようにちゃちゃっと殺っとくか。
手段は選ばねえさ、他の奴が死のうがどうなろうが知ったことか。
俺はあのギラーミンって屑をぶっ殺せばそれでいいんだからな!)
他人と手を組もうが、殺人狂はあくまでも殺人狂。
彼が取る手段は、最終的に殺人という行為に収斂される。
不殺の輩が仲間にするにはどうしようもなく不適合者。言うまでもなく最低最悪。
またしても白く染まった男が抱きし真っ黒な願いはただ一つ。
ルーアを殺した奴を、ぶっ殺す。
表と裏は決して交わらない。
互いのココロを一度も見ることなく、運命の針は進んでいく。
御坂美琴は気付かない。己が拾った内部指向性の爆弾に。
ラッド・ルッソは気付かない。殺意の対象(ギラーミン)は道化(フェイク)だと言うことに。
祝いの福音を奏でるように。
愚か者達を嘲笑うかのように。
ただ、殺人狂のポケットに入った一枚のコインだけがチャリンと小気味良く音を立てた。
裏(表):白鬼夜行(Kill And Live!)
【E-5/病院跡/一日目 夜中】
※病院は完全に崩壊しました。
※美琴の電撃とガウェインのハドロン砲の影響が広範囲に伝わっています。
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】:疲労(中)、 全身に打撲と擦傷(小)、脇腹に打撲(小)、胴体に貫通傷×3(小)、全て再生中
多大な喪失感、強い決意、≪体内:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero≫
【装備】:薔薇の指輪@ローゼンメイデン、ナース服
【道具】:基本支給品一式(水1/2消費)、基本支給品一式、不明支給品0~2個(未確認)、病院で調達した包帯や薬品類、
コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り89枚)、タイム虫めがね@
ドラえもん、
真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、
蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、
ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS、真紅の左腕(損傷大)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本、ナースキャップ
【思考・状況】
1:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
2:人は絶対に殺したくない。
3:自分と関わり、死んでしまった者達への自責の念。
4:
上条当麻に対する感情への困惑。
5:ラッドについては、警戒しながらとりあえず一緒にやっていく。
【備考】
※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
※会場がループしていると知りました。
※切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。
※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
※危険人物などについての情報は真紅と同様。
※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。
※全て遠き理想郷(アヴァロン)が体内にあることを知りません。
【ラッド・ルッソ@BACCANO!】
【状態】:不死者化、白衣@現実
【装備】:破魔の紅薔薇(ゲイ・シャルグ)@Fate/Zero
【道具】:コイン
【思考・状況】
0:とりあえず、美琴に付いていく。
1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。
2:脱出に使えそうな奴は出来るだけ殺さない。
3:邪魔する奴は殺す。足手まといも機を見て殺す。
4:ゼロは絶対に殺す。
【備考】
※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(
エルルゥ)、火傷顔の女(
バラライカ)を殺したと思っています。
※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。
※リヴィオとラズロの違いに気付いていません。また、ラズロ(リヴィオ)のことを不死者だと考えています。
※ゼロのことを不死者だと思っています。
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最終更新:2012年12月05日 02:58