図書館までは何マイル? ◆MATdmc66EY




140馬力の出力を誇るV型四気筒のエンジンを更にボアアップし、加えて吸気系及びツインターポチャージャー、
それに伴う駆動系の強化を行い、限界を超えたチューンナップを施された鋼鉄の鉄騎。
 モンスターマシン・ヤマハ・V-MAXの疾駆は暴走を遥かに上回る。
 その深く猛り狂う暴悪な大型肉食獣の咆哮に似た大音響が、夜の静寂を切り裂き、大気を獰猛に震撼させる。
 が、埒外のマシン操る乗り手の雄叫びは、それを遥かに凌駕している。

「AAAALaLaLaLaLaLaLie!!」

 かつて世界を席巻したマケドニア王国の『軍神アレスの御加護あらん事を』という意味の鬨の声を、時空を越えて震撼ているのだ。

「むほう、騎士王も騎乗しておったが……良いモノだ」

 ストットルを握り込む度に乗り手を振り落とさんと荒れ狂うマシンを高い騎乗スキルで押さえ込み、
飄々とした胴間声で、世界は余を魅了して止まんな、一人ごちる男の名をライダー、真名を征服王・イスカンダルと言う。
 英雄王との決戦に破れ、新たな夢を見る為の眠りに付いた筈の彼は、新たな戦いに招致された事を無粋であると思っていたが、不満には思っていなかった。
 何だかんだといっても武人であるし、生前は戦いに明け暮れた彼にとって、やはり戦いという行為に胸が高鳴るのだ。
 もっとも、彼にとってはこのバトルロワイアルという遊戯は茶番であるとも思っている。
 求めるならば奪う。望むのであれば略奪する。それが彼が生き抜いた世界の常識であるし、彼の王道、信念でもある。
 故に他人に命じられるまでもなく、彼は全てを征服する所存である。
 更に、一同集められたあの場には彼が敵するに相応しいと思える敵はアーチャー、つまり英雄王・ギルガメッシュしか存在しなかった。
 しかし、見たことも聞いたこともない、英霊ですらない有象無象の中にも未だ見ぬ好敵手が存在するかも知れない。
 ――強者は我が麾下にてこそ光輝く。
 故に彼は自身の前に立ちはだかる勇者を臣下に加えんと捜し求め、疾走しているのである。

「我が名は英雄王イスカンダル! 此処に招かれし強者は姿を現すがいい。尚も顔見せを怖じるような臆病者は、余の侮蔑を免れるものと知れ!」

 彼の激は世を蓋わんばかりに響く。が、虚しく木霊するばかりであった。



 姿を現そうとしない者達に苛立ちは募るが、戦いを前にした胸の高鳴りは遥かに遠い最果ての海のさざ波の音に似ている。


「AAAALaLaLaLaLaLaLie!!」

 道なき道を双輪が踏みしだく度にタイヤのコンパウンドが千切れ、悲鳴を上げ、彼の巨体ゆえにシャーシが軋む。
 腕を隆起させて暴れ跳ねるハンドルを捩じ伏せる。
 レッドゾーンを越え、タコメーターの針は時速250kmオーバーを指し示し、その速度故に視野狭窄が起こる。
 しかし、そのハンドル捌きは鈍る事はない。
 ただ、ひたすら前へ、前へと突き進む。
 が、彼はスロットルを緩めブレーキを掛けて異形の鉄騎を急停止させた。
 後輪を滑らせ進行方向に対し車体を垂直にし、慣性に耐えるように傾ける。
 二本のブレーキマークを作り出すタイヤはゴムの焼けるイヤな臭いを発する。

 彼が進軍を止めた理由は、ただ一つ。

「おお、忘れておった。イリアスを探さんと」

 偉大なる詩人ホメロスが著した、かれが愛し憧れてやまない長大な叙事詩、英雄譚。トロイア戦争を題材とし神代の英雄豪傑の鮮烈な生き様を謳いあけだ、文学の最高峰。
 片時も手放さず、戦いの最中であっても読みたくなれば、剣を奮いながら読み、或いは手綱を握ったまま読み、空いた手が無ければ付き従えた小姓に吟じさせた愛読書。

「ふむ、何処ならば手に入るか……」

 太く節くれだった指でデイパックを開けると地図を取り出す。マシンから降り、ヘッドライトで照らしながら位置を確認する。

「確か……図書館だったか」

 かつての戦いにおいて、入手した場所を探している、一人の朋友を思い出した。
 矮躯で口煩く、およそ戦場にはにつかわない若造。戦を共にし、共に歩み、彼が臣下に相応しいと誘い、それに応じた若き魔術師。

「そうさな、此度の戦……勝利したならあやつの顔でも見に行くか」

 肝を潰しひっくり返るともがらを想像し、相好を崩すと豪快な高笑いを響かせる。
 彼がこのバトルロワイアルで目指すのは優勝、そして願いを叶える事。英霊という稀人から、受肉して新たなる生を受ける為。
 征服の基点として、天地に根を張る彼自信の身体を得る。それが彼の悲願だ。

 彼の笑いはマケドニアの栄光と等しく轟き渡り、月は彼を祝福するように輝きを強くした。


【A-4・路上・深夜】

【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:健康
[装備]:ヤマハ・V-MAXセイバー仕様@Fate/Zero
[道具]:基本支給品一式 ・不明支給品~0~2
[思考・状況]  
1:図書館に行ってイリアスを手に入れる2:バトルロワイアルで優勝する。
3:有望な強者がいたら部下に勧誘する







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最終更新:2012年11月27日 00:07