「…そっか。やっぱり、
カイムさんも…。」
突然苦しみだしたカイムを寺院にかつぎ込んだ
ゴクオーは、一部始終を全て春美に伝えた。
「やっぱりって、どういうことなんじゃ!カイムに何があったんじゃ!」
「…ゴクオー君、覚えてる?少し前に、カイムさんが一日眠った事。」
「え?ああ、覚えとる。シンと対峙した時に『無音空間』を使って…。」
そういい、ゴクオーははっと顔を上げた。
「もしかして、その時の封印が!」
春美は頷いた。
「カイムさんは奇怪音を覗く全ての能力や性質を犠牲にして『無音空間』を封印した。」
「じゃが、その封印が解除され、事実封印と犠牲の等価交換が無かったことになった。」
百物語組の中では例外的な強さを持つカイムだ。強制的に例外的な弱さに「引き落としていた」というべきか。
「失われていた力が、少しずつながら戻ってきているみたいね。それに体も頭もついていけなくなってる。」
「人間同然だったカイムが、突然逢魔ヶ刻に苦しみだした訳じゃな。」
「早いうちに対策できればいいんだけど…。」
幹久朗の時の一件を思い出してか、春美は眉間にしわを寄せた。
「カイムの場合、自分の力を制御できなくなって自滅してしまいそうじゃな。」
「…うん。それも避けたいけど、力の制御が効いても大変なことになる。」
「えっ…?」
「適応能力があったってことなのかな…。」
春美は今頃カイムが寝込んでいるであろう寝室に目を向けた。
「カイムさんの本来の力は『奇怪音と無音』だけじゃない。それどころか、「言葉」と「音」を全て掌握しているっていっても過言じゃない。」
「!!」
「だからいざ暴走されたら、前のようにはすまないかもしれない。」
「…カイム…。」
最悪だ。
シン・シーの行動再開だけでもかなりの負担なのに、この所百物語組の中だけでもトラブルが相次いでる。
ソウトの失態、
エトレクの意識不明。
ミナは未だ完全に語られることなく、幹久朗は
アカノミの異変を感じ取った。
おかしい。此処まで重なるなんて、何があったというのだ…。
「とにかく、カイムさんは一度休みを取った方がいいかもしれないね。」
「…じゃな…。」
「えっ?今日、界夢先生来てないんですか?」
素っ頓狂な声を上げる
ノルンに、トキコは頷いた。
「みたいなんだよねー。風邪ひいちゃって寝込んでるんだって。」
「まぁ、弱そうだもんな、あの先生は。」
「ちょ、ちょっとノア、あまり言っては先生に失礼ですよ。」
机に突っ伏しながら、ゴクオーはそんな他愛もない会話を聞いていた。
(…分かってはおるんじゃ、そんな甘い理由じゃないことくらい。)
引き金を引けば騒音を鳴らす
そんな極限状態の拳銃を
誰が好き好んで扱おうというのか
もしその指で激鉄を引いたなら
あえてこう呼ぼう
「クルッテル」と
最終更新:2011年08月08日 16:32