少しですがグロ表現があります
いかせのごれ高校から徒歩10分ほどの場所に建つマンションの一室。
そこには銀色の髪に赤い瞳の少年――
エドワードと、
赤黒い髪に金色の瞳の青年――
クロウが
テーブルを挟んで対になるような形で座っていた。
「…わざわざ僕達の家に来るなんて珍しい。要件はなんです?」
「分かっているだろう。この前まで起きていた連続殺人事件に聞きに来た」
クロウの言う連続殺人事件。つい数日前までいかせのごれで起きていたものだ。
被害者に共通する点は無く、おまけに犯人の手掛かりも無しということで
住民を不安の渦に巻き込んだ事件だ。15人もの被害者が出たところで
ようやく事件は幕を降ろしたようだ。今でもメディアではちらほらと事件の事が流される。
しかしこの事件には、恐らく一般人には分からないであろうメッセージが隠されていた。
事件の起きた場所を線で結ぶと、
ホウオウグループのマークが出来上がる。
ホウオウグループ内の者の中にはこのマークに気づいた者も何人か居た。
クロウもその1人。ホウオウグループ内の者の犯行だと確信したのだろう。
ホウオウグループ内でそれなりに顔が広い者の1人、エドワード。
その事について彼に手掛かりを聞きに来たようだ。
「まぁ、とりあえず飲みながら話しませんか」
エドワードがそう言うと同時に、台所からエドワードの双子の妹、
エレナがお盆に3人分の紅茶とお茶請けであろうクッキーを運んできた。
「この茶葉、美味しいんですよ」
エドワードが紅茶を口に運ぶ。茶葉の香りがふわりと広がる。
エレナも彼の隣に座り、紅茶を口に運んでいた。
「茶を飲みに来たわけじゃない。知っている情報があれば教えろ」
不満げにクロウが要件を告げる。それもそのはず。
この事件はクロウの頭痛の原因だったからだ。
「確かに僕は顔が広い方ですけど、この事件に関しては何も知りません。
というか、僕達もこの事件には驚きましたよ」
「…お前もこの事件については何も知らないのか」
「ええ」
「…そうか」
目ぼしい情報が得られず、クロウは肩を落とす。
しばらくは、頭痛が収まりそうにない。そう思うだけで、憂鬱な気分だ。
「他の人たちには聞いてみたんですか?」
「いや、お前が最初だ。お前なら何か知ってると思ったんだがな…」
「そうですか…お役に立てなくてすみませんね」
エドワードがお茶請けのクッキーを齧りながら申し訳なさそうに告げる。
「別にかまわん。他をあたる。……そういえば、もう一つ確認することがあった」
「何か気になることでも?」
ぱしゅっ
空気が何か狭いものから発射される音がした。
その瞬間、エドワードの頭は半分が消失していた。
クロウの手に握られていたもの。サプレッサー付きの銃だ。
銃弾に押されるように、エドワードの身体は椅子ごと後ろへ倒れこんだ。
床・窓・カーテンに血がぱたぱたと飛び散る。白い欠片は頭蓋骨だろうか。
脳はなすすべなく吹き飛ばされ、細かくちぎれ、まるで血の海を泳ぐ蛆のようだ。
椅子と共に床にしたたか背中を打ち付けたエドワードの身体は、びくびくと数回痙攣していたが、
やがて動かなくなった。
エドワードの頭をぶち抜いた本人であるクロウは表情を変えることもなく、
冷めかけた紅茶を飲んでいた。それは当然であろう。
しかし、冷静なのはエレナもだった。唯一の肉親である兄が
殺されたというのに、彼女もクロウと
同じように紅茶を飲んでいる。
一体何故――――――?
その答えは、数分後に明らかになった。
至るところに飛び散った血や骨、脳が突然動き出したのだ。
まるでビデオを巻き戻しするように、それらはエドワードの欠けた頭へと動いていった。
飛び出した全てが元の場所に戻ったころ、彼の身体が寝起きの人間のようにのろのろと動いた。
「…5分か」
腕時計を見つめながら、クロウが口を開いた。
そして、上半身を起こしたエドワードがクロウを見つめながら言う。
「全く、いきなり何をするかと思えば…びっくりするじゃないですか」
「そうむくれるな。今日は「それ」も確認するつもりだったからな。
しかし、段々時間が短くなっているな、ますます化け物じみてるぞ」
「ええ、昔は1日かかってたんですけどね」
「全く、頭部を破壊しても滅ばないとはな。吸血鬼伝承はあくまでも物語というわけか」
その言葉に肯定するように、エドワードはにやりとした笑みを浮かべる。
そう、エドワードとエレナの兄妹は吸血鬼なのだ。
しかし様々な物語に登場する吸血鬼とは違い、日光や頭部の破壊、おまけに
心臓に杭を打ち込んでも彼らは死ななかった。
クロウはそれを理解した上で、エドワードに銃を向けたのだ。
復活までの時間を計測するために。
「そろそろ帰るとするか。目ぼしい情報も得られなかったしな」
「そろそろ暗くなりますしね。まぁクロウさんは気をつける必要も無いと思いますけどね」
皮肉めいたクロウの言葉に、エドワードも同じように皮肉で返す。
クロウが玄関に近づいた時、エドワードが声をかけた。
「クロウさん」
「なんだ?」
「…僕とエレナは、これから何年、何十年、何百年生きるんでしょうね」
「知らん」
「ですよね。あ、クロウさんのお葬式があったら参列しますからね」
「…いらん」
がちゃり、とドアを開け、クロウはエドワード達の住むマンションから去って行った。
情報を持っていそうな者を頭の中で探しながら、歩き出す。
そんなクロウの姿を、ベランダから見送る人物がいた。
連続殺人事件の犯人、エドワードだった。
恐らくクロウの頭痛はしばらく収まらないだろう。エドワードは思わず笑みをこぼす。
クロウが来た時、真っ青だった空は太陽が傾き、美しい夕焼けへと変わっていた。
空が暗くなるにつれ、街の街灯が灯りだす。夜はもうすぐだ。
The darkest place is under the candlestick.(
灯台下暗し)
最終更新:2011年10月05日 21:47