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復讐者、何処かへ去る

「貴様…ッ!」

ストラウル跡地。
ようやく舞台は終末を迎えていた。

「ではワタシはこれにて」

未だ震える美琴を抱えていた司は、当然ながらヴァイスへ突進しようとした。
が、それよりも先に行動を起こしたのは。


パキパキパキィッ!!!

「! …通してくれませんかね?」
「断る」

ヴァイスにとっては飛び入り役者の一人でしかない、ヴェンデッタだった。
彼女は炎を閉ざした氷の如き表情を浮かべ、ヴァイスが今通ろうとした道を凍らせていた。

「貴様のやり方といい、さっきの発言といい…『あの女』を思い出してな……どうにも怒りを抑えられない」
「よせ! ヴェンデッタ!」

しかし彼女はゲンブの制止を受け入れるどころか。

「今は黙れゲンブ」
「ッ!」

ただならぬ怒気にゲンブはつい気圧されてしまう。
強まるそれに呼応するように、彼女の周りを冷気が取り巻き始めた。

「…死なす事は叶わずとも、せめて四肢を満足に使えなくしてやる!!!!!」

ヴェンデッタの右腕の氷が溶け出す。
それにより、禍々しい魔物の腕が露になった。
彼女はその腕でヴァイスを引き裂こうとするも、容易く避けられる。
そこで彼女は口から冷気を吐き、ヴァイスの腕を凍らせようとした。
しかしそれも避けられてしまった。

「やれやれ、その程度では四肢を壊すのは無理ですね」

ニヤリと笑い、いつの間にか手にしていたナイフを数本、ヴェンデッタの腹に突き刺した。

「ぐぅッ!」
「ヴェンデッタ!」
「来るな…」

ゲンブが駆け寄ろうとするが、ヴェンデッタはそれを良しとしない。

「フフフ…どうしました? もう終わりですか?」
「まだ…だ」
「…先程、『あの女』と言ってましたね? ヴェンデッタという名前を察するに…その人に恨みがあるのでしょう?」
「ああそうだ」

素っ気なく答えるヴェンデッタ。

「……どうです? ワタシと手を組みませんか?」
『!?』

突然の発言に驚く一同。

「ワタシといれば、アナタに相応しい、納得のいく復讐劇が出来ますよ。悪くない話だと思いますが?」
「誰が貴様みたいな奴と…」
「部外者は黙ってて下さい。それに」

一間置いてヴァイスは言った。


「アナタは復讐を果たせればそれでいいのでしょう?」


「………」

黙り込むヴェンデッタ。

「……ヴェンデッタ、奴の話には絶対に乗るな」
「そうだぜ。さっき自分から言ったろ、嘘つきだと」
「………」

ヴェンデッタの答えは。

「いいだろう」

「なッ!?」
「おま…正気か!?」
「フフフ…ではこちらへ」

ヴァイスの元に歩み寄るヴェンデッタ。

「ヴェンデッタ…」
「………」
「ではこの氷を溶かしてくれませんかね?」
「…分かった」


「―――だがその代わりにお前を凍らせる!」


「!?」
「フゥウウウウウーーーーーッ!!!!!!」

ヴェンデッタの口から冷気が放たれ、ヴァイスの腕を凍らせる。
生憎再びヤミまがいに邪魔されたが、霜が張り付く程度に凍らせれた。

「事実には事実を。そして嘘には嘘を、だ」
「く…ッ!」
「…我は、復讐者。だがその為に周りを犠牲にしようなどと考えていないし、するつもりもない。どれだけの時が流れようと…我は我のやり方であいつの血を手に染める!!!」
「…そうです、か」

ブワッ

「うわッ!」

舞い上がったヤミで身構えるヴェンデッタ。
晴れた時にはヴァイスはいなかった。

「………」
「ヴェンデッタ」
「…何だ」
「さっきから聞こうと思っていたが、中々その暇が無くてな。…何故助太刀に?」

それを聞いたヴェンデッタは薄く笑って言った。

「…心配だった。ただ、それだけだ」
「そうか…すまなかったな」
「ああ。また何かあれば助ける」
「ねえ!」

声をかけたのは、海猫だ。

「さっきは、ありがとうね。危うくやられるとこだったよ」
「いや、気にするな」
「アンタ強いわねー…あ、折角知り合えたんだし! 友達にならない?」

と、手を差し出す海猫。
しかし。

「すまない、気持ちはありがたいが……我は、人間の友になれない」
「え?」
「…では」

そう言い残し、ヴェンデッタは何処かへと姿を消した。


復讐者、何処かへ去る


(我は)
(人間と仲良くなれるような)
(存在ではない)

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最終更新:2012年07月08日 01:42