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今日も皆元気です(仮)

シュロは上機嫌だった。仕事とはいえ、ウスワイヤに保護されている子供達と話をすることが出来たからである。
このシュロという白髪の女。真面目なのは良いが普段とても無愛想なのだ。火波スザクやその仲間、子供達に対しては年相応の笑顔を見せることはあるが。
そんな彼女は今両腕に子供達から貰ったであろう大量のお菓子を抱え、ほんわかとしたオーラが見えた。
明らかに「幸せオーラ」を出している彼女に、白い海軍服を着た女性、アルニカが声をかけた。

「こんにちはー、シュロくん。なんだか幸せそうですねー。」
「あ、アルニカさん…そんな顔して、ます?あたし。」
「そうですねー、いつもの仏頂面が嘘のように消えていましたよー!」

仏頂面、その言葉にシュロは眉を顰めた。
人から事あるごとに「無愛想」等と言われる彼女。自分ではそんなことはないと思っているのだが…。
―――口が悪いのも原因の一つなのだろうか?

「シュロくん?」
「え?あぁ、すみません。そんなにあたし、普段機嫌悪そうな顔して…ます?」
「…んー、そうですねぇ。」

シュロの問いにアルニカは少しだけ首を傾げながら今まで見てきた彼女の表情を思い出す。

「そうだね、うん!恐い!ラッシュしてる時とかもう鬼…般若?ううん、悪魔!大魔王…サタンだね!サタン!あっはっはうぶぇっ」

アルニカが笑声を上げるのと、シュロが拳を腹に叩き込むのはほぼ同時であった。
どさどさと菓子が雪崩れ落ち、あっという間に床には菓子山が誕生した。
吹っ飛ぶ程の威力は無いとは言えど、無防備なその腹に何の合図も無く突然パンチをぶち込んだのだ。
吐き気を催すのとその場にうずくまるのには十分すぎる威力だった。

「うっぷ…く、危なッ!危なかった!もう少しで女あるまじき行為をするところだった!」
「誰がそこまで説明しろって言ったよ!なんだ般若って!」
「だ、だってほんとに恐いから…。」

右手で殴られた部位を摩りながら、青ざめた顔で立ち上がる。
うぇ、と短く息を吐いた後また殴られないようにと二歩ほど後退し距離を置いた。体が勝手に後ろに動いた、の方が正しいか。
といっても少し距離を置いたところでどうにかなるものではないのだが。
目前にいる彼女は素早く動くことが出来、RPGの職業で例えるなら「格闘家」さらに詳しく言えば「攻撃特化型」もう一つ言うと「近・遠距離の技を併せ持つ」

「…ったく、あんたに聞いたのが間違いだった!もういい!」
「う…ボク年上なのになんなんですかこの言われようは…。」
「あんたが大魔王だとか悪魔だとか言うからだろうが!」

パンチをした故に床へ落下してしまったお菓子達を拾い集めながらシュロが一喝した。
先程のほんわか女子オーラはどこへやら。…成る程これなら鬼と言われるのもわからなくは―――おっと。

「ほら、行くよアルニカさん。」
「え、行くってどこに…。」
「こんな量のお菓子、あたし一人じゃあとても食べれ、ません。何人か集めてお茶会でも…しましょう。」

全ての菓子を拾い終わったシュロが口を開き、アルニカに背を向けながら言う。
心なしか、彼女の頬は桃色に染まっているように見えた。

「…なんだ、皆と話したかったのならそう言えば良かったのにー。」
「ーーーッ!そ、そんなんじゃ…!」
「はいはい、照れない照れないー。」
「うわぁ撫でるな気持ち悪い!アホ!アホんだら!」
「…ど、どんどん口が悪くなりますねー、キミ…。」



「二人ともよくうちの店来てくれてるよねーありがとう!」

輝かしいばかりの笑顔でそう言ったのはシュロとアルニカがよく足を運ぶスイーツショップ「デコラキャンディー」の店長、「津芽矢間 飴実」だった。
ちなみにこの「津芽矢間 飴実」というのはアナグラムで本名は「天津芽 梓猯」というらしい。
偽名を名乗る理由は「なんとなく」なんだとか。アルニカと同じようなものだろうか。(彼女はアナグラムでもなんでもないが)

「うふふ~、キミのお店のお菓子を食べると元気が出るんですよう!」
「……すみ、ません。毎回大量に買っていっちゃう気が…。」
「謝ることなんてないよー、どんどん買っていってくれると嬉しいなっ!」

その隣に座っているのは。
「それにしても、凄い量のお菓子ですね…。」
「ウスワイヤに保護されている子供達に貰ったん、です。遊んでくれてありがとうって…。」
「子供が好き、なんですね。」
「ま、まぁ…あはは。」

いかせのごれ高校の養護教諭、玉置静流だった。

そして―――その隣には。
「…………。」
「るんるん。」
「……アルニカさん。」
「なんですかー?シュロくん。」
「皆、敢えて突っ込まないみたいだからあたしがツッコむが…。」

「なんで刀が椅子に座ってるん、です?」

そう、タマキの隣の椅子には刀がいたのだ。いた、というか立てかけられていた。
待ってました、と言わんばかりにアルニカがにやにやと嫌な笑みを浮かべだした。

「気持ち悪いから早く理由話せ。」
「ほんっとキミはヒドイですね!!」
「ま、まーまー!私も気になってたんだ。アルニカさん、聞かせてよ。」

えー、それでは。とアルニカが立ち上がり咳払いをする。
シュロのイライラゲージが上昇しているのが目に見えてわかり、飴実が身震いした。

「これはなんとぉ!あのヨリミツさんの「童子切」なのであーる!!」
「泥棒じゃねぇか!!」

間を置かず椅子から素早く腰を上げたシュロの凄まじい両足蹴りがアルニカの背中に直撃した。飴実は目を見開いて驚き、辺りにはポップコーンが飛び散る。
タマキはうわぁっ、と小さく悲鳴を上げド派手に地面に転がるアルニカに駆け寄る。
飴実とタマキには目もくれず、アルニカを上から見下ろし再び怒鳴った。

「あんたほんと何やってんだ!!」
「だ、だって素敵だったから…。」
「だからって盗んでいいと思ってんのかおバカ!」
「う、うぅ…ゴメンナサイ…。」
「ほらもう早く返してきて、ください!」
「はい……。」

「童子切」を持ち、がっくりと肩を落としながら部屋を出ようとするアルニカ。
よほどあの「童子切」が好きだったのだろう。持ち方も丁寧だ。

(ちょっと、かわいそうだったかな…。)

そんなことを思った、直後だった。

「もう少し女らしくしたらどうなんですかーーーーあ!!」

やられっぱらしではいられないと思ったのか。突如くるりと振り向いて「してやったり」な顔でシュロに向かって声を張り上げ、部屋の外へと逃げ出した。
タマキと飴実の近くで、何かが、確実に何かがぷつりと切れる音がした。

「あいつ…、あたしが最近同じようなことをウスワイヤのある奴から言われたの知ってて言ってんのか…。」
「しゅ、シュロさん…?」
「ごめん、なさい。ちょっと行ってきます。」
「行くってどこに…」
「限界だ…。てめー…特別にタダであたしの拳くらわせてやる!うらぁ!」
「うわあああ!!シュロさん!落ち着いて!」
「騒がしいな、何が…。」
「!? 兄貴!?どいて!!」
「え。」



「ご、ごめん、兄貴……。まさか来てるとは思ってなくて…。」
「……まぁ、直撃しなかっただけ良いとしよう。」

今にも泣き出してしまいそうな勢いでシュロは謝罪する。訓練でもないのに彼に拳を向けてしまったことが相当ショックだったらしい。
壁には大きな穴とヒビが誕生していた。
どれもこれもあの海軍服のせいだチクショー、などと思いつつ、見るも無残な姿になった壁へと視線を向けた。

「どうしようこれ…。向こう側見えちゃってるぜ。」
「…俺は知らんぞ。」
「私、直せる人連れてくるよ、待ってて。」

にっこり笑って部屋を飛び出した飴実。…逃げているように見えたのは気のせいか。
―――まぁ、取り敢えず。




「今日も、皆元気です!」



「……?なんであんたがしめてんだ!いつ戻ってきた!?」
「キャアー見つかっちゃいましたー!」
「シュロ、そんなツッコみまくりで疲れないのか?」
「……なんかもう、癖だね…。」

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最終更新:2012年08月08日 16:22