アットウィキロゴ

≪『失われた工房』VS『千年王国』≫

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 バイコーンヘッドを装着したアッシュが、突撃銃を乱射しながら走っていく。それに追従する様に、バレットシステムタイプのリバイアサンが三機続いて行く。

「バレット1、状況を報告してください!」
『こちらバレット1! 現在、敵の昆虫型生物兵器の群れと交戦中! 右も左も蟲だらけだ!』
「場所はどこです!?」
『ここから敵の本拠地が見える! 距離にして100メートル位!』
「了解! バレットチームは現状を維持してください!」
『了解(ラジャー)!!』

 バレット1=アッシュとの通信を切り、サヨリは別のチームへと通信を入れる。

「こちらHQ! ドグマ1、聞こえますか!?」
『聞こえてるよ!』

 通信機から聞こえてきたリキの声は、若干苛立っているようだった。

『何て数の蟲だ! 潰しても潰しても、キリがねぇ!』
『ああ、もう気色悪いったらないよ、もうー!!』
『嫌あぁぁぁ、来ないでえぇぇぇぇぇぇ!!』

 ドグマチーム=ドグマレンジャーは、こちらはこちらで苦戦しているようだった。雑音も酷いが、レンコの悪態とブランの悲鳴が通信機から聞こえて来る。

『HQ、こちらドグマ4。火炎放射器を使用しては駄目ですか?』
「HQよりドグマ4。火炎放射器の使用許可は出せません。と言うか魎、それは作戦前に伝えた筈ですが」
『聞いてみただけですよ、ジングウ……覚悟はしていましたが、流石にこれはキツイ……!』

 確かに、群れで押し寄せてくる蟲の大群に、火炎放射器は有効的だろう。しかし、使えない。周囲を木々に覆われた山林でそんなモノを使用すれば、あっと言う間に周囲は火の海となるだろう。そんな騒ぎになってしまったら、ムカイを倒すどころではない。逃げ足の速いあの男は、姿を眩ましてしまうだろう。

「この布陣、確実に自分の弱点を理解してますね、向こう」
「将棋と同じです。自分の持ち駒・総戦力を把握し、それぞれの特色を生かしつつ、またそれぞれが持つ短所を補った運用をする。それが『用兵』と言うものですよ」

 目の前の画面から一切目を離さずに、ジングウが答える。サヨリに対して説明しつつも、その集中力の大部分は目の前の戦況把握へと注がれている。

「こちらHQ。ビースト1、そちらはどうですか?」
『こちらビースト1。俺達は快適だよ、ミューデの坊主のおかげでな』

 ビーストチーム=ロイドをリーダーとした混成チームは、蟲による足止めを受けていなかった。

 チームの戦闘を歩くのはミューデ。その周囲は、霜が降りていた。息が白くなる程の冷気であり、襲い掛かってくる蟲達の動きは鈍く、中には飛び掛かる前に活動を停止した物もいる。彼らの周囲だけが、真冬に逆戻りしたような光景だ。

『やるじゃねぇか、ミュー坊。蟲が次々シャーベットになってくぜ』
『む、蟲のシャーベットって……美味しく無さそう』
『そっかぁ? 案外美味そうじゃね?』
『そら、お前はグリフォンだからな』

 イマの返事に、ロイドが冷静に突っ込む。蟲の対処に悲鳴を上げている他と比べ、彼らにはかなりの余裕がありそうだ。

『HQよりビースト1。これより、廃墟内へ突入する』
「気を付けて下さい。ムカイが開発したバイオアーマーは、こちらのバイオドレス以上の機動力を備えているようです。最悪、気が付いたら死んでいた、なんて事も有り得ます」
『そうならないようにする為に、突入チームに俺達改造人間を選んだんだろ?』

 自信に満ちたロイドの声が、通信機から聞こえて来る。ややあって、扉を蹴破るような音が聞こえて来た。

『――無粋だな、人様の家に土足で上がるなど』
『――ッ!!』

 通信機越しに、その声が聞こえた。

 忘れもしない、忘れるものか。

 ロイド達が息を呑むのが聞こえる。コンソールの前で、サヨリが何かを堪えるように唇を噛んでいる。

 現れた。現れたのだ。彼らの怨敵が。

ムカイ・コクジュ……』
『品の無い。こんな夜中に、アポも無く押しかけてくるなど。ホウオウグループの品位を疑いますね』
「負け犬風情にかける礼節など無い」
『ぬ……っ!!』

 マイクを掴みジングウが切り返すと、俄かにムカイの声に怒気が宿った。しかしそうなったのは一瞬の事であり、すぐさまムカイは冷静さを取り戻す。

『……ふ、負け犬と言うのは貴方もでしょう、ジングウ? 密かに用意したクローンボディに乗り換えて、意気揚々とホウオウグループに離反してみれば、結局眷属に出戻りとは何ですか、貴方のザマは? 本当に滑稽ですよ、私なら恥ずかしくて死んでしまう』
「…………」
『聞こえているんだろう、ジングウ? 見栄っ張りで、自己顕示欲豊富な、目立ちたがり屋の道化(ピエロ)君? 言いたい事があるなら君らしく、現場まで出て来たらどうなんだね?』

 ちら、とサヨリは隣にいるジングウの表情を盗み見る。それを見て知らず、彼女の口元には笑みが浮かんでいた。おそらくは、現場にいるロイド達も、そして通信を聞いているであろう、他の千年王国の所属者達も、皆が同じ事を思っていただろう。

 何を――分かり切った事を言っているのだ、この男は?

「――ムカイ・コクジュ。お前は、車から降りてわざわざ石を拾うのか?」
『何?』
「お前は、自分が進む進路上に石ころが「立ち塞がっていた」時、わざわざ拾って自分の道から退けるのか、と聞いている」
『な……』
「蹴飛ばせば済むモノを、撥ね飛ばせば済むモノを、そもそも踏み越えれば済むモノに対し、一々そんな無駄を重ねているのか、お前は?」
『き……さま……』
「そんなんだから、ホウオウグループに「すら」入れないんだよ、お前は」
『――貴様ッ!!』

 流石のムカイも、今回は冷静さが保てなかったようだ。一度引いた熱波が、先程よりも勢いを増して燃え上がる。

「そもそも通過点でしかないお前など、私がわざわざ出向くまでも無く、部下の力だけで十分なんだよ。まぁ、それでも気を悪くしないでくれ。そこにいる我が同胞達は、ホウオウグループでも指折りの精鋭達だ。必ずや、お前を駆逐し、踏み潰してくれる事請け合いだろう」
『ジングウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』

 ムカイが吠える。それと同時に、「かかかかっ!」と言うロイドの笑い声が通信機から聞こえて来た。いや、ロイドだけではない。彼と一緒にいるイマも大笑いしていた。

『言うじゃねぇか大将! 胸がスッとしたぜ』
『ああ、そうだ。任されたぜ、頭。絶対にこいつは俺達がぶっ潰す!』



 ≪『失われた工房』VS『千年王国』≫



 ――to be Conthinued

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年08月23日 20:00